「タイから船便で輸送したい」「タイへ船便で輸送したい」
今回は、日タイ間又は、タイと第三国など、船便に役立つ知識をご紹介していきます。
タイとの船便
ほほえみの国・タイとの貿易をされていますか? 日本とタイとの間の貿易は、自動車関連品などを中心に様々な物がやりとりがされています。もちろん、果物などの一次製品も盛んです。
最近は、中国国内で仕入れをしていた方たちが、タイ国内にシフトする動きもあります。いわゆるタイの輸入ビジネスです。
- タイへの輸出
- タイからの輸入
このどちらの取引をするにしても、必ず「船便を検討するタイミング」が訪れます。そして、この記事では….
「何キロから船便にすればいいのか?」
「船便にするメリット、デメリットは?」
このようなお悩みを抱えている方に向けて記事を書いています。なお、この記事とあわせて、国際物流の基本をまとめている「カイコン・国際物流マニュアル」も合わせてご覧ください。
船便の定義
当記事のご紹介する「船便」の定義を確認します。船便とは、字のごとく、船で輸送する方法です。あまりにも当たり前です。ただ、私が言う「船便」は、あなたのイメージする物とは違います。
当サイトの船便は、20フィート(6mや40フィートのコンテナまたは、LCLと呼ばれる大きな単位で輸送することです。一般的な小包による船便ではないためご注意ください。
例えば、タイ国内で古着、パーツ、財布など、様々な商品を仕入れた。合計で500キロ前後にもなる。このような状況で検討するのが、この記事でお伝えする「船便」です。
もし、一般的な小包の船便輸送を希望する場合は、バンコク市内にある「バーンラック郵便局」にいき「LogisPost World」などで発送します。おそらく、一カ月、二か月の日数がかかる代わりに最も安く輸送できます。
船便を検討するタイミング
コンテナ(FCLやLCL)を使った船便といっても…..
- タイから日本なのか?
- 日本からタイなのか?
- タイから別の国なのか?
など、いくつかのパターンがあります。ただ、どのような場合でも….
- 国際郵便、DHL、フェデックスなどで運ぶときの送料
- コンテナ輸送(FCL又は、LCL)するときの送料
上記の1と2を比較検討し、配送日数や輸送料金などを含めて判断する点は同じです。物の量も少なく、配送期間が短いときは、航空便。一定の物量があり、安く運ぶときは、コンテナ輸送(LCL)です。
では、この比較をするときの基準は、どこにあるのでしょうか? 明確な数値があるわけではないですが、一回の発送量が300KGから500KG前後に達した場合、2番のコンテナ輸送に切り替えた方がメリットが大きいです。
もちろん、500キロ以上でも航空便での発送はできます。しかし、コスト的な部分で、海上輸送よりも割高になる可能性が高いです。(海上輸送と航空輸送の差は、3倍~5倍)
- 物量の分岐点の目安:300kg前後
- 2週間~3週間前後
海上輸送を選択するときの注意点
「航空便を利用してきた。最近は、一回に500キロ前後になってきたから、船便を検討したい」
基本的に、どんな商売でもボリュームを増やす場合は、必ず「船便」を検討するべきタイミングが来ます。当サイトは、その目安として300キロ前後をご案内しております。
では、300キロ前後の荷物があるなら、必ず船便にした方がいいのか?というと、そうではございません。上記の300キロは、あくまで量を基準にした「一つの目安」です。実際は、取り扱う商品、納期、日本側のコストなどを総合的に判断する必要があります。
例えば、腐りやすい商品や納期が厳しいもの(緊急性が高いもの)を無理に船便では運びません。日タイ間の船便は、おおむね9日から14日間ほどかかり、そこから引き取りまでは、さらに三日ほどかかります。まずは、この配送時間で検討する余地があります。
次に、船便に関わる輸送諸経費の部分です。確かに、航空便より船便の方が”海上輸送費”は圧倒的に安いです。ただし、実際は、この海上輸送費の他、見積もるべき費用がたくさんあります。
例えば、タイから20フィートのコンテナ1本で輸入したとしましょう。
タイから日本までの海上輸送費(サーチャージ含む)は1000ドルです。仮に、10000枚のワンピースを輸送する場合、1枚のワンピース辺り0.1ドルの費用で輸送ができます。
ただ、この計算は、完全に抜け落ちている部分があります。それが何かをお分かりですか? 日本側の諸経費です。例えば、本来、船便は、次の費用を含めて、航空便と比較検討するべきなのです。
- CFSチャージ又は、THC
- 日本側の通関手数料
- 取り扱い手数料
- 税関検査代金
- ショートドレージ代
- D/O処理費
- 輸入許可後のドレージ代金
つまり、航空便から海上輸送の切り替えの検討は、次の費用を計上した上で行う必要があります。特に、これまで、航空便(小包)で配送をしてきた方は、海上輸送の諸経費を「実際よりも少なく見積もる可能性」が高いため注意しましょう。
航空便 | 海上輸送 |
航空便料金 |
海上輸送代は、海上運賃の他、日本側で様々な諸経費がかかる。
タイからの海上輸送代金と日数例
「タイから日本に海上輸送する場合は、いくらくらい? 何日ほどかかる?」
この疑問にお答えするために、タイの港「Laem Chabang」から、各国主要な港までの国際輸送代金、日数、FTA締結状況をまとめてみました。もちろん、ここに記載の日数や料金は概算です。さらに詳しく知りたいときは、後述する「タイからの見積もりを取る方法」をご覧ください。
表の見方と注意点
- 2020年12月現在の価格(大幅に上昇している)
- 価格はUSドル
- 上記の価格は、オーシャンフレート(港から港の海上運賃のみ)
- 関税制度は、タイから対象国に輸出したときに利用できるFTAを示す。
- 輸入の見積もりツール 国際輸送・通関から販売原価まで算出
タイ発→ | 40feet | 輸送日数 | 関税制度 |
日本/東京 | 2000~ | 14 | 日タイEPA 日アセアンEPA |
インド/Jawaharlal Nehru | 1500~ | 12 | アセアン-インド |
インドネシア / ジャカルタ | 2500~ | 7 | アセアン |
シンガポール | 2000~ | 9~ | アセアン |
香港 | 2400~ | 9~ | アセアン-香港・中国 |
中国 / 上海 | 2400~ | 12 | アセアン-香港・中国 タイ-中国 |
韓国 / PUSAN | 1900~ | 14 | アセアン-韓国 |
マレーシア / Port of Tanjung Pelepas | 1900~ | 8~ | アセアン |
ベトナム / Ho Chi Minh | 1900~ | 8~ | アセアン |
アメリカ/ロングビーチ | 4000~ | 30 | |
アメリカ/ニューヨーク | 10000~ | 40 | |
ドイツ/ハンブルク | 6500~ | 40 | |
オランダ / ロッテルダム | 5200~ | 35 | |
台湾 / Port of Kaohsiung | 1900~ | 10 | |
ドバイ / Jebel Ali | 5300~ | 13 |
タイ着、タイ発の送料の見積もりをとるには?
タイから日本。日本からタイ。タイから第三国など、タイを軸に国際配送する場合の輸送料金の見積もり方法をご紹介します。なお、この記事と合わせて「フォワーダーに伝えるべき9つのポイント」も参考にして、海上輸送の見積もりに必要な情報を確認します。
タイを軸にした配送料金の見積もりは、次の2つの方法があります。どちらかの方法で見積もりを取得し最適な物流を構築しましょう!
- タイのフォワーダーズ協会に登録しているフォワーダー
- NIPPON47への見積もり依頼
1.タイのフォワーダーズ協会と有力9選
タイで営業するほとんどのフォワーダーは「タイのフォワーダーズ協会」に登録しています。まずは、ここの中からいくつかの業者をピックアップするといいと思います。
もし、選定が難しい場合は「こちらのサイト」が選んでいる以下のリストを参考にしてください。
Bollore Logistics | ファッションと高級品の配送が得意。シンガポールからの陸送輸送サービスにも注目! |
DB Schenker | 2014年、タイで事業を開始し40年を迎える。タイ国内に17のオフィスと15を超える倉庫を所有する。マレーシア、シンガポール、ラオス、カンボジア、ベトナム、中国、ミャンマーなど、タイの周辺国との接続も確立している。 |
DSV | 医療製品の輸送が専門。商品のラベル貼り、梱包、倉庫保管などにも対応 |
Hazchem | 危険貨物を運べるフォワーダー。 |
KUEHNE + NAGEL | 大量に出荷をしているため、価格交渉力がある。 |
Leschaco | バルク貨物、特殊コンテナ輸送や危険物の輸送を得意とする。 |
Sinptrans | 中国系企業。主にバルク船、ロールオンロールオフ船、タンカーサービスなどを得意とする。 |
Toll Group | アジア太平洋およびオセアニアゾーンが中心 |
Unique Translink | タイ企業。主な業務は通関 |
2.NIPPON47への見積もり依頼
「タイの現地フォワーダーに、直接依頼するのはなんとなくこわい。」このような方は、日系かつ、日タイ間の航空便輸送を得意とする「NIPPON47(弊社のパートナー企業)」をお勧めします。
NIPPON47は、日タイ間の安定的な航空輸送量を武器として、タイ現地の日系、タイ系の輸送会社を圧倒する価格力を持ち合わせています。そんなNIPPON47は、実は、日タイ間の海上輸送、もしくは、タイ発の第三国への輸送にも対応しています。
例えば、NIPPON47の事務所に行き、航空便を使い小さな単位で輸送するつもりだった。ところが、最終的な荷造りを終えてみると、500KG近くにってしまったとしましょう。
この場合、NIPPON47は、航空輸送の料金と海上輸送の料金を提示してくれるため、輸送料金と輸送量、輸送日数等から最適な物流を選べます。
何かのトラブルの際の対応力を考えよう。
海上輸送の見積もりは、スーパーのように価格だけで飛びつくと酷い思いをします。結局、国際輸送を依頼する相手は、トラブルの際の対応力がある所につきます。平時の対応力はどうでもいいです。トラブル時の対応力が重要です。
その点、日系の佐川系列。タイの現地で長きにわたり営業している。タイ語が堪能な日本人スタッフが常駐するNIPPON47は、輸送見積もり依頼するべき一社だと思います。
荷造りと書類の用意
ここまでの内容で海上輸送の見積もりの取り方がわかりました。ここから先は、もう少し踏み込んだ内容を説明していきます。
例えば、上記の海上輸送の見積もり依頼は、次の2つのパターンが考えられます。
- 現地で買い付けをしたものを自分で発送処理して送る。
- 現地の業者から購入した後、業者の責任でタイから日本の指定地に発送する。
1番の場合、シッパーは、自分もしくは、依頼するフォワーダー。コンサイニーは、自分です。2番は、シッパーが輸出者。コンサイニーは、自分です。
これらそれぞれの場合の輸送契約を確認しておきましょう!
1番のケース:シッパー&コンサイニーが自分
現地で購入した商品をどこかにまとめて一括発送します。輸入国側のコンサイニーも自分のため、基本的には「DDP等」でフォワーダーに見積もりを依頼します。
*まとめて一括発送の部分は「バイヤーズコンソリ(サービス)」として提供する業者もいます。
このケースの問題点
タイ国内で購入したときに発生したVATの処理
2番のケース:シッパー(第三者)&コンサイニーが自分
現地の販売店(輸出者)から商品を購入し、それを日本に輸出してもらうケースです。一般的な輸出取引です。この場合は、EXW、FCA、CIPのいずれで見積もりを取ります。輸入者側の負担が小さく難易度が低いのは「CIP」又は「CPT」です。
例えば、あなたが輸入者だとして、タイ側の輸出者と交渉をする場合を考えてみましょう。
インコタームズFCAで合意した場合は、輸出者と引き渡しポイント(タイ側のコンテナターミナルや保税地)を確認した後、あなたが指定するフォワーダーに、タイ側の引き渡しポイント(合意点)から、日本の指定地までの見積もりを依頼します。
もし、インコタームズCIP(例:CIP YOKOHAMA CY)で合意した場合は、輸出者が横浜港までの輸送費を含めた価格を提示してくれるため、あなたが別にフォワーダー等に海上輸送費を依頼する必要はございません。
関税を負担する人
上記の通り、海上輸送費は、適用するインコタームズによっても、見積もりを取るべき人や、見積もりの対象が大きく変わります。また、輸入国側(例:タイから日本の場合は、日本)で関税を負担するべき人も変わります。
例えば、タイ側のシッパー(便宜上のフォワーダー等も含む)、日本側のコンサイニーがどちらも自分であれば、インコタームズをDDPにしても特に問題となることはございません。
以上、タイからの~又はタイへの海上輸送を検討する方の基本知識でした。
その他、日タイ間の輸送で役立つ情報
日タイ間の海上輸送は、どの港を使うのが多いのでしょうか? この答えがわかれば、最適な輸送ルートを構築するために役立ちます。基本的には、本船が多い=価格競争が生まれると考えられます。
タイの主要港
タイの主要な港は、次の4つです。
- Laem Chabang(THLCH)=最もメジャーな港
- Bangkok Port/クロントイ(THBKK)=公共企業体
- Map Ta Phut(THMAT)
- Sattahip(THSAT)
その他の港
その他の港は、次の通りです。南部方面は「Songkhala」、ラオス国境近くには「Chiang Saen Port」などがあります。タイの場合、南北に非常に長く、船と合わせて、陸路での往来も活発に行われています。この陸路に強いフォワーダーを見つけるのも良いです!
- Songkhla(THSGZ)南部方面にお勧め
- Rayong(THRYG)
- Phuket(THHKT)
- Si Racha
- Chiang Saen Port
- Chiang Khong Port
- Ranong Port
Lat Krabang ICD
バンコク市内近郊には、2つの港があります。Laem Chabangとバンコクポートです。この2つの港の中間にあるのが「Lat Krabang ICD」です。それぞれの位置関係は、次の通りです。
Lat Krabang ICDは、1996年に操業を開始。バンコク港やレムチャバン港の混雑の解消と収容能力を上げるために設置されました。レムチャバン港とICDは鉄道でも連結されており、約25%が鉄道により搬入されているとも言われています。また、税関施設、検査場、検疫等もあり、こちらで通関を終わらせられます。
バンコク港 | ICD | レムチャバン | |
バンコク市内 | 15km | 30km | 130km |
タイから日本への輸送で使われている港
タイから日本に輸送する場合に使用される港のリストです。左側がタイ。右側が日本です。Laem Chabangで船積みをして、日本側の名古屋や東京で揚げる場合が多いようです。
タイ → 日本 | |
タイの港/割合(%) | 日本の港/割合(%) |
Laem Chabang [THLCH] 50.1% | Nagoya [JPNGO] 11% |
Bangkok [THBKK] 30.2% | Tokyo [JPTYO] 11.1% |
Songkhla [THSGZ] 9.5% | Kobe [JPUKB] 10.7% |
Bangkok Modern Terminals [THBMT] 6.8% | Yokohama [JPYOK] 10.5% |
Bangkok [THTPT] 1.9% | Osaka [JPOSA] 10.2% |
Moji [JPMOJ] 8.9% | |
Hakata [JPHKT] 7.5% | |
Shimizu [JPSMZ] 5.1% | |
Chiba [JPCHB] 4.9% | |
Yokkaichi [JPYKK] 4.4% |
日本からタイ輸送で使われる港
日本からタイの場合の輸送です。輸出時は、名古屋・横浜で船積みをすることが多いようです。日タイ間の輸送では、どうやら「名古屋港」が大きなポイントです。
例えば、名古屋から比較的近い港を使っている場合は、あえて名古屋まで荷物を横持ちするなどをしてから本船に乗せた方が、コンテナの便数や価格上からも有利になる可能性が考えられます。
日本 → タイ | |
日本の港/割合(%) | タイの港/割合(%) |
Nagoya [JPNGO] 16.2% | Laem Chabang [THLCH] 51.6% |
Yokohama [JPYOK] 16.0% | Bangkok [THBKK] 41.2% |
Tokyo [JPTYO] 15.8% | Bangkok Modern Terminals [THBMT] 5.3% |
Kobe [JPUKB] 14.4% | Phra Khanong [THKRU] 1.7% |
Osaka [JPOSA] 12.3% | Bangkok Thai Prosperity Terminal [THTPT] 0.2% |
Hakata [JPHKT] 4.8% | |
Moji [JPMOJ] 4.7% | |
Shimizu [JPSMZ] 4.3% | |
Yokkaichi [JPYKK] 3.4% | |
Chiba [JPCHB] 1.5% |
中国からタイへの輸送で使われている港
最後は、中国からタイの輸送です。中国とタイは、陸路での輸送も活発だと判断できます。中国とタイは、FTAも締結をしているため、この部分も交流を後押ししているはずです。
中国側とタイ側の港は、次の通りです。
中国 → タイ | |
中国の港/割合(%) | タイの港 |
Shekou [CNSHK] 13% | Laem Chabang [THLCH] |
Shanghai [CNSHA] 13% | Bangkok [THBKK] |
Ningbo [CNNGB] 12.9% | Bangkok Modern Terminals [THBMT] |
Xiamen [CNXMN] 10.2% | Phra Khanong [THKRU] |
Yantian [CNYTN] 9.9% | Bangkok Thai Prosperity Terminal [THTPT] |
Qingdao [CNTAO] 9.3% | |
Nansha [CNNSA] 8.8% | |
Tianjin Xingang [CNTXG] 4.2% | |
Dalian [CNDLC] 3.8% | |
Qinzhou [CNQZH] 2.1% |
タイとの関税を削減するには?
タイと日本との間には、日タイEPA及び日アセアンEPAが締結されています。日タイ間で取引をする場合は、いずれかの協定を利用することで、日本側又はタイ側の関税を削減できます。
もし、タイからアメリカ、タイからフィリピンなど、日本以外の国に貨物を送る場合は、タイが締結している「FTA」を確認しましょう。タイが締結するFTAは「タイのFTAまとめ」又は「RTA Database」でお調べください。
タイを含めた物流戦略
日本からタイに商品を届ける。この物流を構築するときにシンガポールをハブとする方法があります。
例えば、日本からシンガポールに商品を輸出。このとき「日アセアン協定」を適用する。シンガポールの保税倉庫で保管をしておき、需要に合わせてタイを含めた周辺国に輸送する方法です。
この方法であれば、元々、日アセアンで輸出をしているため、シンガポールへの輸出他、シンガポールから先の東南アジア全域に対して、関税無税で輸出(輸送)ができます。bollore logisticsの「Weekly Door-to-Door Services from Singapore to Bangkok 」は、このハブ使用を前提として、シンガポールからバンコクまで3.5日でトラックサービスを提供しています。
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