貿易書類の一つに「貨物到着案内(Arrival Notice/アライバルノーティス)」があります。本船が入港する間際(前日など)に船会社(フォワーダー)から発行される書類です。
輸入者は、この書類を受け取ることで、貨物を引き取るための準備を始められます。
そこで、この記事では、アライバルノーティスの見方、目的、役割、搬入確認番号などを説明していきます。また、本記事では、本物のアライバルノーティスを使っています。
この記事の要点
- アライバルは、本船入港の前日にフォワーダー等から発行される。
- アライバルが発行されると予備申告に入れる。
- アライバルは、Notify Partyに発行される。
- アライバルが届かない場合は、発行元の代理店に連絡する。
- アライバルノーティスの費用は、輸入申告上の加算費用に該当する(CIF換算)
- オーシャンフレートとは、海上運賃そのものを指す。
- Port of Destination=貨物が陸揚げされる場所
アライバルノーティスの見方 発行のタイミング!
アライバルノーティスが発行されるタイミングは、ETA(本船入港日)の前日又は数日前です。こちらがアライバルノーティスです。
船会社(フォワーダー等を含む)がB/L(船荷証券)上の輸入者(荷受人=コンサイニー)又は、Notify Partyに対して発行されます。Notify Partyとは、アライバルノーティスを通知する先です。
例えば、このNotify Partyに、この後、依頼する通関業者にしておけば、通関業者にも通知されます。希望する場合は、売り手側に要望しておきましょう!なお、何も指定していない場合は、「SAME AS CONSIGNEE=荷受人(輸入者)」と記載されています。
アライバルと予備申告の関係
もし、この後の輸入通関を通関業者に依頼している場合は、アライバル到着後に「予備申告」に入ります。予備申告とは、輸入貨物をできるだけ早く引き取るために、必要書類を揃えた上で、貨物の搬入(本船から降ろされている状況でも)税関に対して審査をお願いする仕組みです。
荷物を早く引き取りたい場合は、予備申告を利用しましょう!
ポイント1.Arrival Noticeが届かない!?
アライバルノーティスが届かない場合は、このNotify Partyが自分(輸入者)になっています。Notify PartyがSAME AS CONSIGNEE以外になっている場合は、そこに通知されています。ご自身で必要な場合は、アライバルノーティスの発行人に請求しましょう!
ポイント2.アライバルノーティスの発行パターンは2つ
- あなたが船会社に依頼している→ 船会社(代理店)が送付
- あなたがフォワーダーに依頼している→ フォワーダーが送付
- アライバルノーティスは、貨物の到着通知
- 入港日の前日又は数日前にFAXや電子メールなどで送付される。
- 通知先は、アライバルノーティスの「NOTIFY PARTY」をチェック
- アライバルが届かないときは、輸出者又は日本側の代理店に問い合わせ
アライバルが持つ2つの意味や目的
アライバルノーティスには、次の2つの意味があります。
- 貨物を受けとるために日本側でかかる費用の通知
- 税関申告用の書類(加算要素の証明書)
1・貨物を受けとるために日本側でかかる費用の通知
「海上運賃は、輸出者側が負担しているから、輸入者側では一切の負担がない」と考えるのは早計です。実は、輸入者は、すでに輸出者が輸送費を支払っていても(フレイトプリペイド(支払い済み」)、日本側の港内で発生する費用を負担する義務があります。(一部のインコタームズを除き)そして、この費用を通知するのが「アライバルノーティス」の役割です。
*アライバルノーティスに記載されている費用の例示
輸入者は、アライバルノーティスを受け取った後に、アライバルを発行した「代理店(フォワーダー等)」に対して、諸費用の支払いオリジナルB/L(必要な場合)を差し出します。
関連知識:「サレンダーB/Lの確認ができない!」の原因と対処方法
この結果、貨物を受け取るための「D/O」を入手できます。(最近は、D/Oレスが多い)これで貨物を搬出する準備は完了です。この後、税関から「輸入許可書」が発行されると貨物を引き取れます。
アライバルノーティスの費用計算ツール あなたの費用は適切!?
*通関業者に依頼する場合は、D/Oの処理を含めて代行する。
貨物を引き取るための2つの条件
- 輸入許可を受けていること
- D/Oの処理が完了していること
輸入許可書とは?
は、税関の審査が完了し、外国貨物が内国貨物に切り替わったことを証明する書類です。その後、ヤード又は、保税倉庫は、D/O処理の完了、輸入許可の取得の2つをクリアしている場合に貨物を搬出します。逆に言うと、この2つの条件を満たさない限り、貨物は一切引き取れません。
CIF(運賃込み条件)でも支払う必要があるの?
は、輸出者が日本までの輸送費用と、海上保険代金は、輸出者が負担する条件です。すでに輸送費を支払っているはずなのに、なぜ輸入者が負担する費用があるのでしょうか?これは、日本港「まで」の表現からわかります。実は、CIFは、日本の港につけるまでを条件としているため、そこから先の部分でかかる費用は、輸入者側が負担します。
2.税関申告用の書類(加算要素の証明書)
2つ目の目的は、通関用の書類です。税関への申告価格は、すべての諸費用を合計した価格(CIF)と決められています。CIFの最も一般的な加算費用は、次の通りです。
- 商品代金
- 日本に到着するまでの運送費
- 海上保険代金
この内、アライバルノーティスは、2番の輸送費の部分を証明する書類として活用します。具体的な通関での利用方法をご紹介します。
まず、輸出者が船積みを終えると、シッピングアドバイスの書類と共に、インボイス、パッキングリスト、B/Lなどの書類の写しがファックスやEメールなどで送付されていきます。輸入者は、これらの書類を送られてきたら、取引がある通関業者に再送付して輸入通関のための書類チェックと作成をお願いします。
通関業者から書類に関する質問や不具合の修正などいくつかのやり取りを重ねると、税関に対する申告の準備が完了します。このときの輸入書類は、インボイス、パッキングリストなど、アライバル以外の一式が揃った状態です。(アライバルだけが無い状態で半分完成させておく)その後、船が入港する間際にアライバルノーティスが発行されたら、輸送費部分を加えた後、税関に対して「予備申告」をします。
税関の予備申告を受けている間、港では搬入作業が行われます。この搬入されるまでの数日を利用し税関の審査(予備審査制度)を受けます。
予備申告の結果、税関審査が終了。かつ貨物の搬入確認ができしだい輸入許可が下ります。もし、税関検査のときは、検査の打ち合わせをし、検査を受けた後に問題がなければ輸入許可に至ります。アライバルノーティスは、輸入申告の内、輸送費部分を証明する意味で極めて重要な書類です。
関連疑問:搬入確認番号とは?
搬入とは、船から荷物がおろされてコンテナターミナルや保税倉庫に「保管」されることを意味します。そして、搬入確認番号とは、この搬入がなされたことを個別に確認したいときに利用する物です。搬入状況は、ナックスで確認できますが、まだ端末に反映されていなかったり、緊急の場合だったりするときは、直接、倉庫などに確認するときがあります。このとき搬入確認番号を使います。
具体的には、アライバルノーティスの下部に記載されている「CFS倉庫」又は「蔵置予定場所」の所に記載されている会社に電話をし「搬入番号○○●の貨物は、いつ搬入が完了する予定ですか?」などと聞きます。ただし、基本的には、このような確認作業も含めて、すべて通関業者が代行します。
アライバルノーティスは、税関申告における輸送費用の部分を証明するために活用するもの
アライバルノーティス の見方を覚えよう!
アライバルノーティスには、様々な記載項目があります。ここでは、アライバルノーティスを上下に分割して、パーツごとに、それぞれの意味を説明します。
アライバルノーティスの上半分
用語 | 意味 |
1.SHIPPER(シッパー) | 輸出者 |
2.CONSIGMEE(コンサイニー) | 輸入者 |
3.PRE CARRIAGE | 積み替え前の本船名(この貨物はニューヨーク→プサン→大阪と移動しています。) |
4.PLACE OF RECEIPT | 荷受け地 |
5.OCEAN VESSEL | 積み替え後の本船名(プサン→大阪の船です。) |
6.PORT OF LOADING | 積み地 |
7.PORT OF DISCHARGE | 揚げ地 |
8.PLACE OF DELIVERY | 荷渡し地 |
9.ETA | 船が日本の港へ到着する日を示します。FCL(コンテナ)で輸入するときは、原則的に、このETAの翌日に搬入が上がります。LCLの場合は、翌々日に搬入があがるようになっています。関連記事:「搬入があがるってどういう意味?」 |
10.Shipping Marks | 荷印(梱包箱などに示されているマークです) |
11.B/LNO | B/L番号 |
12.搬入確認番号 | 倉庫に搬入(保管)されたのかを確認するための番号です。 |
13.フォワーダー(代理店) | フォワーダー名が書かれています。 |
14.フォワーダー名(代理店) | D/Oは、どこで交換できるのか?を示しています。 |
15.B/L TYPE | B/Lのタイプを示しています。この場合は、WAY BILLであるため、B/Lの差し入れは不要です。 |
16.重量と容積 | 貨物の物量を示しています。215.91kg 2.03M3=貨物の容積を表しています。この中でなじみが薄いのが容積だと思います。容積とは、縦、横、高さをかけて求められる値のことです。この計算によって、貨物が「どれくらいの空間を占有するのか」を求めています。 仮に重さだけを基準にすると「綿の1トン」と「鉄の1トン」では、大きな差が生まれてしまいますね。これでは不公平です。そこで重量と容積の両方を基準にするようにしています。輸入ビジネスでは、この貨物の総重量と容積によって輸送費が変わってくるため、ご注意ください。 |
アライバルノーティスの下半分
番号 | 意味 |
1.コンテナ番号 | コンテナを識別するためのコンテナ番号です。 |
2.Freight&Charges | フレイトプリペイド(輸出側支払い済)であっても、日本側の港ではチャージが発生します。 |
3.Exchange rate | ドルから日本円への換算レートを表示しています。 |
4.貨物搬入場所 | 日本に貨物が付いたら「どこに搬入されるのか」を示しています。今回の貨物は、LCLであるため、コンテナから貨物を出した後、指定の倉庫(●●運輸倉庫)へ保管されることがわかります。 ここで注目したことがあります。それが「搬確」という部分です。搬確とは、搬入確認の略です。 いつコンテナから取り出されて、それがいつ搬入されるのか?は、輸入許可を受ける上で重要です。そのため、輸入者や通関業者は、この搬入確認のタイミングを電話などで聞くことがあります。その搬入確認をするときは、次の情報を示してほしいという意味になります。 |
5.振込先 | アライバルに記載されている料金は、こちらの口座へ支払います。支払うと、D/Oをリリースしてもらえます。 |
6.フレイト | 船賃がどのような支払い状態なのかを示します。この場合であれば、フレイトプリペイドになっているため、船賃は輸出国側で支払われています。この逆は、「フレイトコレクト」です。この場合は、輸出国で船賃が支払われていないため、輸入国側で支払う必要があります。FOBなど 関連記事:フレイトコレクトとプリペイドの違いとは? |
7.D/Oに関する注意事項 | 実際に貨物をピックアップするときのD/Oに関する注意事項を説明しています。 |
8.各種チャージ | 日本側で発生する諸チャージです。この費用を支払うことで、D/Oを受け取ることができます。実際に貨物を引き取るときは、自分が手配する運送会社に輸入許可書とD/Oを渡すか、ご自身の車などで引き取ることできます。 |
9.D/O交換先 | D/Oを交換するための場所が書かれています。ここへ行き、アライバルノーティスと、指定の現金または小切手を納付すると、D/Oを受け取れます。一般的に通関業者といわれる業者にお願いするときは、このD/Oのピックアップなどもすべて無料で行ってくれます。 |
/hunade_toggle]
以上がアライバルノーティスの見方です。少し、混乱する部分もあるかと思いますが、一つずつ意味を理解していけば、さほど難しくもないです。ご自身で受け取ったアライバルノーティスをご覧になり、再度、各項目の意味の確認をされることをお勧めします。それでは、最後によくあるアライバルに関わる困った事例と対処方法を2つほどご紹介します。
アライバルノーティスのトラブル事例
1.アライバルノーティスが届かない場合は?
アライバルノーティスは、船が入港する前日前に「NOTIFY PARTY」に発行されます。下の画像の場合、「SAME AS CONSIGNEE」と記載されているため、CONSIGNEE=NOTIFY PARTYです。
もし、前日になってもアライバルノーティスが届かない場合は、B/Lのコピーに「アライバル希望等」を記載し、代理店(フォワーダー等)にFAXすることで、アライバルを入手できます。代理店の調べ方は、「本船名+港+代理店」でわかります。
例えば、SITC×名古屋港であれば、日東物流さん又は、三井倉庫さんが代理店です。判断ができない場合は、電話等をかけて、本船名+VOY番号+コンサイニー名等を伝えれば、確認ができます。
アライバルノーティスの右上の「D/O発行場所~」等に記載されている代理店に依頼します。
2.サレンダーの確認ができていないからD/Oを渡せない
これは、元地回収状態になっていない、かつ、D/O交換時にB/L原本を持参していないとき」に指摘されます。輸出国側でB/Lを差し出しているにも関わらず、この状況にあるときは、輸入国、輸出国側の双方のフォワーダーから、再度、元地回収の確認を依頼します。単なる外国間での連絡ミスにより、元地回収の情報に反映されていないことがあります。
もし、輸出国でB/Lの原本を差し出していないときは、B/Lの原本が届くことを待ちます。または、急ぎの貨物であるときは、貴社が取引している銀行に「LG」を発行してもらい、船会社にLGを差し出してD/Oを引き取ります。この場合、BL原本が到着したら、船会社にB/L原本を差し出し、LGを返却してもらいます。返却してもらったLGを取引銀行に返却して完了となります。
まとめ
- アライバルノーティスは、船の到着を案内する書類
- 発行元は、船会社の代理店又はフォワーダー
- 入港日の前日又は入港日の数日前に発行される
- アライバルには、加算費用の合計を証明する目的とD/O取得の目的がある。
輸送費の最適化記事
この記事をお気に入りに登録