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【遡及発給】特定原産地証明書の過去にさかのぼるとは!?

この記事は、日本からの輸出のお話です。現地にコンテナが着いたとき、輸入者側から「特定原産地証明書が欲しい」と言われることがあります。特定原産地証明書とは、輸入国側で提出すると、関税を削減したり、低くしたりする効果がある特別な書類です。輸入者の中には、特定原産地証明書の存在を知らず、現地に貨物がついてから要求してくる所もあります。

「現地の港に貨物がついている、でも日本の特定原産地証明書を取得していない」

という状況のことです。この場合、選べる手段は、次の2つです。

  1. 通常輸入申告する
  2. 遡及発給を受ける(特定原産地証明書の事後発行)

この記事では、2番目の遡及発給についてご紹介していきます。

  • 遡及発給とは、船積みに原産地証明書を取得すること
  • 船積み後でも特定原産地証明書の発行はできる。
  • 船積み後に発行する場合は、原則一年以内。
  • 遡及発給は、協定毎、輸入国側税関によって対応が異なる。
  • 遡及発給を受ける場合は、取得日数などを考えて、貨物の保管を考える。

 



 

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船積み後の特定原産地証明書の取得

貿易相手(輸入者)が現地税関に輸入申告をするときに、こんなことに気づきます。「日本の特定原産地証明書を出せば、関税が大きく減額される」です。これに気づいた輸入者は、日本側の輸出者へ「特定原産地証明書を取得してほしい」と伝えてきます。輸出者は、いきなりすぎる要求にあわててしまいます。実際に、このような状況になると、かなり慌てます。

では、輸出者は、どのような手順や考え方によって、この特定原産地証明書を遡及発給すれば良いのでしょうか? すでに現地の港に貨物が到着しているとなれば、一日単位で保管料が発生します。このような費用などを含めて、どのように判断すればいいのかをお伝えしていきます。

関連記事:原産地証明書と特定原産地証明書の違いとは?

船積みされた貨物の原産地証明書を取得する! 遡及発給とは?

これから説明する内容は「船積み後」であり、すでに日本の港から貨物が出ていることを想定しています。特定原産地証明書は、この船積み後かかが大きなポイントです。基本的に特定原産地証明書は、船積みに取得します。しかし、何らかの理由によって、船積み後に取得するときは、過去にさかのぼる「訴求発給(そきゅうはっきゅう)」を受けます。

先ほどの例でいえば、日本から輸出された貨物は、海外の港に着いています。この貨物について特定原産地証明書を取得することも、遡及発給です。しかし、実際の所、この遡及発給を本当に受けるべきかは、次の2つのポイントから考えることをお勧めします。闇雲に遡及発給を受けるべきではないと考えます。

  1. 遡及発給を受けるための諸経費と関税額
  2. 現地の税関が遡及発給に対応しているのか?

1.遡及発給を受けるための諸経費と関税

遡及発給を受けるための日数・諸経費と削減できる関税額から検討します。基本的なお話しとして、特定原産地証明書の発給には、およそ3週間~4週間ほどの日数がかかります。仮に現地の港に貨物を留め置いたまま日本の特定原産地証明書を取得すると、2週間~3週間ほどのデマレッジ(港保管料)が発生してしまいます。このデマレッジと削減できる関税額を比べて、どちらがお得なのか?を計算します。

仮のお話として、毎日、港での保管料が5000円かかるとすれば、5000*20=100,000円です。特定原産地証明書を取得して関税を削減できたときの効果が100,000円分であれば、デマレッジと関税削減分がプラスマイナスゼロです。つまり、日数がかかっただけで、関税の削減効果はまるでないです。

2.相手国によっては遡及発給に対応していない可能性もあります。

外国の税関(EPA相手国の税関)によっては、遡及発給された特定原産地証明書を受け付けてくれないところがあります。もう少し正確に申し上げると、制度としては存在する。しかし、現地税関職員の知識不足によって「遡及発給された特定原産地証明書を無効」と判断してしまう可能性があります。そのため、遡及発給を希望するときは、日本で遡及発給を申請する前に外国税関に「遡及発給した特定原産地証明書を受け入れてくれるのか?」と確認されることをお勧めします。

遡及発給を実行するかを考えるプロセス

ここまで説明した2つのポイントをふまえて、特定原産地証明書を遡及発給するときは、以下のような手順で判断してください。

1.現地の税関が遡及発給した原産地証明書を受け入れてくれるか確認

協定の制度としては存在するけれど、実務の方で機能していない国も多々あります。日本で遡及発給をするときは、最初に「貿易相手の国の税関が対応してくれるのか?」を確認しましょう!輸入者などを通して、現地の税関に確認を取りましょう!

2.削減できる関税額とかかる手間やコストを比べて効果があるのか?

次に証明書を取得するときの諸費用と、削減できる関税額を計算します。遡及発給するためには、ある一定の日数が必要です。この間、港での留め置き料(保管料)などが一日単位で発生します。この費用と「削減できる関税額」を見比べて、特定原産地証明書を取得するメリットがあるのかを考えます。

3.日本商工会議所へ申請開始

この1と2をじっくりと考えた結果、やはり特定原産地証明書を遡及発給するのであれば、日本商工会議所へ申請します。最初の企業登録だけで約1週間かかるため、なるべく早く申請することをお勧めします。詳しくは「EPA貿易スタートガイド」の記事をご覧ください。

遡及発給を検討するときに輸入者側で考える2つのこと

特定原産地証明書を取得するには、一定の日数がいるため、すでに輸入国側に貨物がついているときは、次の内、いずれかを選びます。

  1. 輸入申告せず、港で留め置く(保税状態)
  2. 輸入許可前引き取り承認(BP通関を実施するのか?

1.輸入申告せず、港で留めおく

一つ目は、現地に貨物が到着しても輸入申告せず、保税状態にする方法です。この場合、入港後、ある一定の日数を経過した時点から、一日当たりの保管料(デマレッジ)が加算されます。この状態で、日本で特定原産地証明書の取得を目指します。一日経過するごとに貨物の保管料が発生するため、スピード感をもって証明書を取得する必要があります。

2.輸入許可前引き取り承認(BP通関)を実施

2つめは、輸入許可前引き取り承認(BP通関)です。こちらは、貨物の関税に相当する担保を提供する代わりに、貨物を引き取れる方法です。緊急性が高く、一刻でも早く貨物を引き取りたいときに選びます。日本側で特定原産地証明書を取得した後、現地税関に差し入れることにより、担保が解除される仕組みです。

遡及発給を受けるときは、輸入者と相談して、どちらの対応をとるのかを決めるようしましょう! ちなみに、この記事でご紹介した方法は、あなたが輸出者の立場を想定していますが輸入者であっても同じです。(逆に読み替えるだけです。)

まとめ

船積み後でも特定原産地証明書を発行できるのが「遡及発給」です。ただし、この制度を闇雲に使って発行することはお勧めしません。なぜなら、発行にはある一定の日数がかかること、その間、港などで貨物を留め置くときは、費用が発生するからです。仮に特定原産地証明書を取得すれば、関税の削減ができたとしても、証明書を取得するまでの費用が関税の削減額を上回るようであれば効果がなくなってしまいます。だからこそ、しっかりとしたコスト計算が大切です。

このようなことを考えて、特定原産地証明書を遡及発給するのかを検討しましょう!

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