この記事では、メーカーがEPAの原産地証明書(特定)を発行する手順を説明しています。
あなたは、何かの商品を作るメーカーです。いつもながら業務に励んでいると、いきなり、輸出者から「特定原産地証明書を取ってほしい!」とお願いされます。「え?何?….特定原産地証明書って?」と聞きなおすと、日本商工会議所のサイトを参考にして取得をお願いします!と、突っぱねられる始末です。
さて、製造者であるあなたは、とても困惑します。なぜ、いきなり製造者である私が「特定なんとかを取らないといけないの?..というか、そもそも特定原産地証明って何よ!」との疑問ばかりです。
そこで、この記事では、メーカー様が特定原産地証明書の発行プロセスを説明していきます。つまり、輸出者からの特定原産地証明書の要求に対して、製造者(メーカー)は、何をすればいいのか?がわかります。
輸出者から特定原産地証明書を求められた!何をすればいいの?
ある日、突然、輸出者から「特定原産地証明書」を要求されることがあります。おそらく、多くの製造者は、この書面が何であるのかもわからない中、いきなり取得してほしいとの依頼で混乱するはずです。
一体、特定原産地証明書は、何でしょうか? そして、輸出者は、何を望んでいるのでしょうか?
輸出者は何を求めている?
特定原産地証明とは、EPAと呼ばれる貿易協定を利用する際に、輸入国側の関税を削減するために、輸入国側の税関に提出する書類です。つまり、輸出者は、メーカーの商品が「日本の原産品であることを証明する書類」を必要としているのです。
- 輸出国側(日本側)で発行をする
- それを輸入国側の税関に提出する。
したがって、メーカーが理解するべきことは、輸出者は、日本側で発行された特定原産地証明書が必要なこと。そして、その証明書は、基本的に、メーカーが取得する必要があることです。
では、メーカーは、具体的には、どのような手順で「特定原産地証明書」を手に入れたらいいのでしょうか? まさに、その手順をこの記事で公開しています。
輸出者があなた(メーカー)に望んでいること
輸出者は、製造者(あなた)に対して、次のことを望んでいます。
- あなたが日本商工会議所に企業登録登録をすること
- 原産性に関する資料を集めること
- 資料がそろったら、日本商工会議所に原産品判定をすること
- 原産品判定番号を取得すること
- 生産者同意通知ができる状態にすること
輸出者は、上記の5つを望んでいます。少し専門的な言葉ができきましたね!後ほど、詳しくご紹介していくため、どうぞ、最後までお読みください。
メーカー(あなた)がするべきこと
メーカーであるあなたは、次の手順に従って、特定原産地証明書を取得します。(生産者同意通知)*なお、ここでは、特定原産地証明書の取得=生産者同意通知は、同じだとお考え下さい。
- 企業登録をする。
- 原産品であることを証明する資料を作る。
- 原産品の審査を受ける。原産品の審査を受けて、原産品登録を完了させる。
- 輸出者に、生産者同通知をする。
- 作った書類に関する資料を保存しておく
1.日本商工会議所に企業登録
まずは、メーカーであるあなたが日本商工会議所に対して「企業登録」をします。企業登録とは、EPAを輸出者又は、製造者(メーカー)として利用するときに必要な手続きです。利用料金は無料。数年おきに更新すれば、ずっと登録が維持されます。
製造者であるあなたは「生産者」として登録します。登録は、個人または法人のいずれかとして行います。当ちなみに、日本商工会議所と商工会議所は、全く別物ですから注意しましょう!
2.原産品であることを証明する資料を作成
企業登録には、およそ3営業日から一週間ほどかかります。すぐに登録が完了しないため、現在は不要でもとりあえず~の形で登録だけ済ませておくのが良いです。企業登録が完了する迄の間に、次のステップである「原産品判定」のための基礎資料をそろえます。(作成します)
- 企業登録が完了
- 発給システムを使うためのログイン情報を取得
- 発給システムから「原産品判定」をする
上記が企業登録から、原産品判定の流れです。そして、この原産品判定をするときに必要なのが「商品の原産性を立証する資料」です。つまり、あなたが作る商品は「本当に日本製なのか?」を資料等で立証するのですね!
- 企業登録=原産品発給システムを使うための登録をすること
- 原産品判定依頼=原産品発給システムを通して、原産品であることを証明すること
原産品判定依頼とは?
原産品判定依頼とは、特定原産地証明書を取得する予定の商品(あなたの会社の商品)が、本当に日本の原産品であるのか?を資料などで立証することです。このようなことを言うと、
- 「うちの会社は、日本の工場で生産しているから日本産だ」
- 「日本のパッケージだから日本産だ」
- 「自社の中国工場で作っているから日本産だ」
と言いたくなる気持ちはわかります。しかし、EPAにおける原産性とは、上記のような観点から判断はせず、すべて「原産地規則」から判断します。逆に言うと、本当に日本の工場で生産していても、原産地規則を満たさない限り、日本の原産品としてはみなされないのです。
原産地規則とは?
原産地規則とは、●●と●●の条件を満たす場合、それを日本の原産品とみなすなどのルールを言います。原産地規則は、利用する協定(TPP、日欧EPA)や、品目ごとに細かく決められており、すべて「原産地規則ポータル」に記載されています。(税関運営)
つまり、次の手順で進めていきます。
- 輸出者に対して、輸出先の国、適用したいEPA、輸出先国側のHSコードを聞く。
- 原産地規則規則ポータルで、上記の情報を基にして、原産地規則を特定する
- 原産地規則に決められているルールを理解し、対応する資料を作成する
原産地規則ポータルから原産地規則を探すには?
例えば、原産地規則ポータルを使い、HSコードを基に原産地規則を調べると、次のような記述があります。
何だか少し難しいですね。この中に記載されていることは、次の2つです。
- 「第七二〇六・一〇号から第七二一〇・六九号までの各号の産品への当該各号が属する項以外の項の材料からの変更」
- 「原産資格割合が四十パーセント以上であること(第七二〇六・一〇号から第七二一〇・六九号までの各号の産品への関税分類の変更を必要としない。)」
一つ目の「第七二〇六…」がCTCルール(関税分類変更基準)を使って証明するときの原産地規則であり、2つ目の「原産資格割合が四十パーセント」がVAルールによる証明を表しています。製造者は、どちらか好きな方のルールを使って原産地を証明します。
当然、CTCルールって何? VAルールって何?との疑問が生まれると思いますので、詳細は、次の2つの記事を確認しましょう!
3.原産品の審査を受けて、原産品登録を完了させる。
原産品に関する資料ができたら、いよいよ企業登録をしていた発給システムにログインして、商工会議所に対して、原産品判定依頼をします。
システムを通して原産品判定依頼をすると、商工会議所から「原産性を証明する資料を提出してほしい」と、言われます。この要求があったら、メールなどを使って、対比表(CTCルールを使った場合)またはワークシート(VAルールを使った場合)を送ります。
OEMで生産している場合は、これらの資料と併せて「生産者委託証明書」なども提出することがあります。これは、商工会から求められた物を提出すると考えましょう。
もし、申請内容と、証明書の内容に不具合があると、何度も修正することになりますので、お気を付け下さい。ほとんど書類を整えていないと、そのダメ出しだけで数週間かかり、輸出納期を過ぎてしまうこともあるため注意が必要です。無事に審査が通ると、原産品品登録が完了します。
■大切なこと
- 発給システムから申請するときは、必ず証明書類をすべて用意してから行う。
- 根拠書類がない状態での申請は、大きなトラブルになる。
- 証明書類の質を上げるべき。商工会議所は、重箱の隅をつつくようにチェックする。
- あまりにもいい加減な書類であると、それだけで数週間の時間がかかる。
4.輸出者に、生産者同意通知をする。
原産品登録が完了したら、いよいよ特定原産地証明書を発行します。しかし、実は輸出者であるあなたは、特定産地証明書の発行はしません。
実際に特定原産地証明書の発行をするのは、商品の輸出者です。メーカーであるあなたは、輸出者に対して「生産者同意通知」をすることで、以降の手続きは、輸出者ができます。
生産者同意通知とは、生産者が登録した原産品情報を使って、輸出者が特定原産地証明書の発行依頼ができる仕組みです。「原産品情報を使って」と聞くと、なんだか企業情報が勝手に知られる気がしますね。しかし、その点は、何も心配いりません。同意通知は、輸出者に対して、取得した原産品番号を使い、証明書を発行して良いと許可をすることです。
例えば、生産者同意通知によって、日本商工会議所に提出した生産に関する情報等が輸出者に筒抜けになるわけではないです。
■行うこと
原産品登録が完了したら、あなたの商品を輸出する人(輸出者)に「生産者同意通知」をしましょう!
5.作った書類に関する資料を保存しておく
輸出者に生産者同意通知が終ったら、これですべて完了です。もし、別の輸出者から商品を輸出したいとの引き合いがあれば、その輸出者に対して同じように「生産者同意通知」を行えば良いです。
さて、最後に重要なことをお伝えします。それは「書類の保存」です。実は、特定原産地証明書に関する書類は、指定の期間、保存しておくことが決められています。協定によって保存期間は異なりますが、3年間または5年間と決められています。
詳しくは「特定原産地証明書に関する保管書類と期間」をご覧ください。
まとめ
- 輸出者からの「特定原産地証明書が欲しい!」の言葉には、企業登録、原産品判定、そして生産者同意通知をしてほしいことが含まれています。
- 生産者は、自社の商品が原産品であることを証明する書類を用意した後、原産品判定→生産者同意通知までを行います。
- EPAの原産品とは、協定で決められている原産地規則を満たす物です。日本生産品であっても、原産地規則を満たさないか限り原産品にはなりません。
- 生産者は、原産地規則ポータルを使い原産地規則を調べて、CTCルールまたはVAルールで証明します。
- 証明書の作成に使った資料などは、すべて指定の期間内、保存しておくことが求められます。
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