メーカー「特定原産地証明書が欲しい」と言われて困っている

工場 自由貿易(EPA)
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あなたは、何かの商品を作るメーカーです。いつもながら業務に励んでいると、いきなり、輸出者から特定原産地証明書を取ってほしい!とお願いされたとします。「え?何?….特定原産地証明書って?」と聞きなおすと、日本商工会議所のサイトを参考にして取得をお願いします!と、突っぱねられる始末です。

さて、製造者であるあなたは、とても困惑しています。なぜ、いきなり製造者である私が「特定なんとかを取らないといけないの?..というか、そもそも輸出者は、何の目的があるんだ?」という疑問が次々とわいてきます。

そこで、この記事では、そんな混乱気味の製造業者(メーカー)の方に向けて、輸出者が意味すること、特定原産地証明書の概要などをご紹介していきます。つまり、輸出者からの特定原産地証明書の要求に対して、製造者(メーカー)は、何をすればいいのか?を順番に説明しています。

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輸出者から特定原産地証明書を求められた!何をすればいいの?

ある日、突然、輸出者から「特定原産地証明書(とくていげんさんちしょうめいしょ)」を要求されることがあります。おそらく、多くの製造者の方は、この書面が何であるのかもわからない中、いきなり取得してほしいとの依頼で混乱するかと思います。一体、特定原産地証明書とは、どのような物なのでしょうか? 輸出者は、何を望んでいるのでしょうか?

輸出者は何を求めている?

特定原産地証明とは、日欧EPATPP11、または、日タイEPAなどの自由貿易において、国境をまたぐときに発生する物品に対する関税を削減するための書類です。この特定原産地証明書を輸出国側で発行して、輸入者に送付することによって、輸入国側で関税の減税や免税が受けられる仕組みになっています。

この特定原産地証明書のポイントは、

1.輸出国側で発行をする

2.それを輸入国側の税関に提出することにあります。

この2つの条件を満たすことで、初めて関税ゼロで輸入ができるようになります。つまり、輸出者は、1番の輸出国側で用意するべき「特定原産地証明書」を取得するために、商品の製造者であるあなたに依頼をしてきているのです。

なお、輸出者が貴社に求めていることをより具体的に申し上げると…

  • 貴社が日本商工会議所へ企業登録をした後
  • 原産品登録をして、
  • いつでも生産者同意通知ができる状態

にすることを望んでいます。少し専門的な用語がでてきましたね。企業登録、原産品登録、生産者同意通知の3つです。これらについては、後程、詳しく説明していくため、この時点では、輸出者が求めていることは、これら3つのことだと覚えてください。

輸出者がしたいこと

特定原産地証明書を発行して輸入者に送付

それを行うために……

輸出者が製造者に求めていること

  1. 企業登録
  2. 原産品登録
  3. 生産者同意通知

の3つを求めています。

製造者は何をすればいい?

個人輸入ガイド

これまでの説明で、輸出者が製造者に対して求めていることはお分かりいただけたかと思います。では、具体的には、製造者は、何をすれば、良いのでしょうか。少し複雑に感じるかもしれませんが、製造者が行うことを順番に説明していきます。それが以下の6つのステップです。それぞれを順番に確認していきましょう!

1.生産者登録をする。
2.原産品であることを証明する資料を作る。
3.原産品の審査を受ける。原産品の審査を受けて、原産品登録を完了させる。
5.輸出者に、生産者同通知をする。
6.作った書類に関する資料を保存しておく

1.日本商工会議所に企業登録をします。

日本商工会議所に企業登録をします。日本商工会議所は、日本で唯一、特定原産地証明書を発行できる機関です。まずは、この日本商工会議所に企業登録をしましょう!製造者であるあなたは「生産者」として登録します。登録は、個人または法人のいずれかとして行います。当てはまる方で登録しましょう!

詳細記事:企業登録の方法

2.原産品であることを証明する資料を作ります。

企業登録には、およそ3営業日から一週間ほどかかります。その間に、企業登録完了後に行う「原産品判定」のための基礎資料を作成します。実は、この部分が最も大変であり、躓きやすい所であるため、何度も読み直されることをお勧めします。

まずは、先ほどの企業登録と、原産品判定の関係性です。実は、企業登録の後に行う原産品判定依頼は、どこかに紙などを提出するのではなく、すべてオンライン上で手続きをします。このオンラインシステムのことを「第一種特定原産地証明書発給システム」と言います。このシステムは、インターネット上で提供されていますが、誰でも使えるわけではありません。

先ほどの企業登録を終えた企業のみが使うことができます。第一種特定原産地証明書発給システムのURLは、一般には公開されておらず、企業登録が完了した人のみに公開されています。

具体的には、企業登録が完了すると、企業登録が完了した旨を伝える郵便が日本商工会議所より届きます。この中に、発給システムのURLと、そのシステムにログインするためのアカウント情報が記載されています。このアカウント情報を使い、発給システムを使うことになります。そして、この発給システムによって行うのが原産品判定依頼です。

・企業登録=原産品発給システムを使うための登録をすること
・原産品判定依頼=原産品発給システムを通して、原産品であることを証明すること

原産品判定依頼とは?

原産品判定依頼とは、特定原産地証明書を取得しようとしている商品(あなたの会社の商品)が、本当に日本の原産品であるのか?を資料などで立証することです。このようなことを言うと、

「うちの会社は、日本の工場で生産しているから日本産だ」

「日本のパッケージだから日本産だ」

hunadeのサービス

「自社の中国工場で作っているから日本産だ」

などという勘違いをしてしまうことが多いので、改めて正しい知識をご紹介します。

自由貿易(EPA)でいう原産品とは、EPAの協定で決められている原産地規則を満たす物です。この原産地規則を満たさない限り、本当に日本で作られていたとしても、日本産とはならないとされています。もう一度、申し上げます。EPAにおける原産品とは、協定で決められている原産規則を満たす物です。

では、この原産地規則とはどのような物なのでしょうか? それを調べる所が税関が運営している「原産地規則ポータル」です。このサイトを使えば、あなたの商品を輸出するときに必要な原産性ルールがすべて記載されています。ただし、このサイトを使うときには、一つだけ必要な情報があります。それが「輸入国側で適用されるHSコード」です。

HSコードとは、世の中にある様々な物品を6桁の数字で示したものです。リンゴだったら○○、3000CC以上の乗用自動車であれば○○など、品目ごとに6桁の数字が決められています。あなたの会社が取り扱っている商品にも、必ず何らかのHSコードが当てはまるはずです。でも、そんなコードなどはわかりませんね。そのため、これを輸出者に確認してもらうようにします。

つまり、あなたは…..

  1. 原産地規則を調べるために、原産地規則ポータルを使う。
  2. このサイトを使うときは、HSコードが必要になる。
  3. でもそのHSコードがわからない。だから、輸出者に「輸入国側のHSコード」を確かめてもらわなければならない。

ことが必要になります。もし、輸出者がHSコードはわかりませんと答えたのなら、その輸出者は完全に素人ですから、すぐに取引を中断するようにしましょう! 一般的な輸出者であれば、現地HSコードの特定のお願いに対して、自らの輸入者に頼んで確認してくれます。

ポイント:輸出者を通して現地税関が認めるHSコード(貴社の商品に対応するコード)を確認してもらいましょう。必要であれば、商品内容を説明する書類も必要になります。

■やることのおさらい

  • 輸出者に商品のHSコードを確認してもらう。
  • 特定してもらったHSコードを使って原産地規則ポータルで原産品情報を確認する

特定してもらったHSコードを使って、原産地規則ポータルで原産品情報を調べると、次のような記述が書かれています。何だか少し難しいですね。この部分のことを少し説明します。この中に記載されていることは、大きく分けると次の2つになります。

1.「第七二〇六・一〇号から第七二一〇・六九号までの各号の産品への当該各号が属する項以外の項の材料からの変更」

2.「原産資格割合が四十パーセント以上であること(第七二〇六・一〇号から第七二一〇・六九号までの各号の産品への関税分類の変更を必要としない。)」

一つ目の「第七二〇六…」がCTCルール(関税分類変更基準)を使って証明するときの原産地規則であり、2つ目の「原産資格割合が四十パーセント」がVAルールによる証明を表しています。製造者は、どちらか好きな方のルールを使って原産地を証明できるとされています。

しかしながら、一般的には、まずはCTCルールで証明を試みてできないときに、VAルールでの証明を行うことが多いです。まずはCTCルール、だめならVAルールと覚えておきましょう!ちなみに、これら2つの証明方法は、これを説明するだけで、多くの文量が必要なため、別記事で紹介をしています。

CTCルールでの証明方法

VAルールでの証明方法

■やることのおさらい

  • 原産地規則ポータルで原産地規則を確認したら、それを証明するための基礎資料を作成します。
  • 原産地規則には、CTCルールとVAルールの2つがあります。
  • 輸出者は、どちらの証明ルールを使ってもOKです。ただし、一般的にはCTC→VAの順番で考えた方がいいです。

3.原産品の審査を受けて、原産品登録を完了させる。

原産品に関する資料ができたら、いよいよ企業登録をしていた発給システムにログインして、商工会議所に対して、原産品判定依頼をします。

システムを通して原産品判定依頼をすると、商工会議所から「原産性を証明する資料を提出してほしい」と、言われます。この要求があったら、ファックスやメールなどを使って、対比表(CTCルールを使った場合)またはワークシート(VAルールを使った場合)を送ります。OEMで生産しているなどの場合であれば、これらの資料と併せて「生産者委託証明書」なども提出することがあります。これは、商工会から求められた物を提出すると考えましょう。

もし、申請内容と、証明書の内容に不具合があると、何度も修正することになりますので、お気を付け下さい。ほとんど書類を整えていないと、そのダメ出しだけで数週間かかり、輸出納期を過ぎてしまうこともあるため注意が必要です。無事に審査が通ると、原産品品登録が完了します。

参考記事:企業登録から原産品発給システムの使い方

■大切なこと

  • 発給システムから申請するときは、必ず証明書類をすべて用意してから行います。
  • 何も用意せず、不正に特定原産地証明書を取得すると、後から大きなペナルティを受ける可能性があります。
  • 証明書類は、しっかりとした内容にしましょう。商工会議所は、重箱の隅をつつくようにチェックします。
  • あまりにもいい加減な書類であると、それだけで数週間の時間がかかることがあります。

4.輸出者に、生産者同意通知をする。

原産品登録が完了したら、いよいよ特定原産地証明書を発行します。しかし、実は輸出者であるあなたは、特定産地証明書の発行はしません。

実際に特定原産地証明書の発行をお願いするのは、あなたの商品を輸出しようとしている人です。つまり、輸出者が特定原産地証明書の発行依頼をすることになります。しかし、ご存知の通り、原産品登録は、生産者であるあなたがおこなっているため、他人である輸出者は、このままでは特定原産地証明書の発行ができません。そこで重要になるのが「生産者同意通知」です。

生産者同意通知とは、生産者が登録した原産品情報を使って、輸出者が特定原産地証明書の発行依頼ができる仕組みです。「原産品情報を使って」と聞くと、なんだか企業情報が勝手に知られてしまう気がしますね。しかし、その点は、何も心配いりません。この同意通知とは、あくまで原産情報の使用を許可していることだけが伝わるのみです。いわゆる商品に関する情報は、一切外部に知らされません。

■行うこと
原産品登録が完了したら、あなたの商品を輸出する人(輸出者)に「生産者同意通知」をしましょう!

5.作った書類に関する資料を保存しておく

輸出者に生産者同意通知が終ったら、これですべて完了です。もし、別の輸出者が貴社の商品を輸出したいという引き合いがあれば、その輸出者に対して同じように「生産者同意通知」を行えば良いです。

さて、最後に重要なことをお伝えします。それは「書類の保存」です。実は、特定原産地証明書に関する書類は、指定の期間、保存しておくことが決められています。協定によって保存期間は異なりますが、3年間または5年間と決められています。詳しくは「特定原産地証明書に関する保管書類と期間」をご覧ください。

まとめ

  • 輸出者からの「特定原産地証明書が欲しい!」の言葉には、企業登録、原産品判定、そして生産者同意通知をしてほしいことが含まれています。
  • 生産者は、自社の商品が原産品であることを証明する書類を用意した後、原産品判定→生産者同意通知までを行います。
  • EPAの原産品とは、協定で決められている原産地規則を満たす物です。日本生産品であっても、原産地規則を満たさないか限り原産品にはなりません。
  • 生産者は、原産地規則ポータルを使い原産地規則を調べて、CTCルールまたはVAルールで証明します。
  • 証明書の作成に使った資料などは、すべて指定の期間内、保存しておくことが求められます。

特定原産地証明書の取得をサポートしてほしい!

関連記事:「EPA」輸出者が特定原産地証明書を取得するための2つのポイント

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