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バターが高い本当の理由|関税と輸入制度の裏側を徹底解説

日本は、バターの価格が高いと言われることが多いですが、その背景には関税や輸入制度が深く関わっています。日常的に使う食品でありながら、他の乳製品に比べて価格が安定しないことに疑問を持つ方もいるでしょう。

この記事では、バターの輸入に関する関税制度や輸入手続き、国内の需給調整の仕組みについて解説します。

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バターの価格が高い理由とは?

バターの輸入と関税制度

海外からバターを輸入するには、高い関税と調整金が課されます。これは、日本の酪農業を保護する目的で設けられたものであり、輸入バターの価格が上昇する大きな要因です。現在、日本のバターには2種類の関税が設定されています。

  • 枠内税率:35% + マークアップ(追加料金)
  • 枠外税率:29.8% + 985円/kg または 29.8% + 1159円/kg

関税率の詳細は、税関のホームページへ

枠内税率とは、政府が定めた輸入枠の中で輸入されるバターに適用される税率です。一方、枠外税率は、この輸入枠を超えた場合に適用される税率であり、非常に高額な追加料金が発生します。そのため、輸入業者が自由にバターを仕入れることは難しく、結果として日本国内のバター価格は高止まりしやすくなっています。

バターの輸入制度と国家貿易制度

日本では、バターの輸入は「国家貿易制度」によって管理されています。これは、政府がバターの輸入を一元的に管理し、輸入量を調整する仕組みです。具体的には、独立行政法人農畜産業振興機構(ALIC)がバターを輸入し、国内の乳業メーカーに供給する仕組みです。

一般の貿易業者が自由にバターを輸入できないため、市場への供給量は政府の調整によって決まります。これにより、国内の酪農家が過度な輸入品との競争にさらされることを防ぎ、国産バターの価格を維持する役割を果たしています。

畜産経営の安定に関する法律


 

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)とバターの関税

近年、多くの貿易協定が締結される中で、バターの輸入規制がどのように変わるのか気になる方も多いでしょう。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)では、バターの関税削減・撤廃について議論されましたが、結論としては「現行の国家貿易制度を維持しつつ、TPP枠を設ける」形に落ち着きました。

TPP枠とは、TPP参加国から一定量のバターを低関税で輸入できる仕組みですが、その輸入量には制限があります。そのため、大規模な関税撤廃には至らず、日本のバター価格が大きく下がることはありませんでした。

バターの価格が高い4つの理由

バターの価格が高い背景には、以下の4つの要因があります。

  1. 高関税:輸入バターには高い関税が課される
  2. 輸入制限:国内の需給調整のため、政府が輸入量を管理している
  3. 国内生産保護:国内の酪農業を守るため、国産バターの供給が優先される
  4. 買い入れ制度:価格の安定をする反面、高くなる理由でもあります。

独立行政法人に登録している「指定乳製品輸入者(民間)」が輸入した乳製品(バター)は、輸入したら、一旦、全量を独立行政法人に売却します。

その後、独立行政法人が市場価格を考えた上で、調整金などを上乗せして、民間企業へ売却(払下げ)します。この仕組みによって、市場に流通するバターの価格をコントロールしています。

バターが高くなる理由は、設定する関税率が高い他、この買い付け制度の存在にあります。

バターやチーズの関税率を削減するには?

バターの関税率は、いわゆる聖域とされています。2024年現在、各種のEPAを適用してもバターについては、関税率を削減することが難しいです。

しかし、ある制度を利用することで、バターの関税率の他、調整金をゼロにすることができます。それが「特別特恵」、通称、LDCの活用です。バターの原産国が特別特恵関税が適用される国である場合は、関税率及び調整金は無税です。

詳細解説:バターやチーズを安く輸入(関税削減)するなら特別特恵/LDC!

最新のLDC指定国は外務省のページをご覧ください。

乳製品の輸入全般と手続き

バターに限らず、乳製品を輸入する際には厳しい手続きが求められます。特に、動物由来の食品であるため、衛生基準や検疫の規制が厳しく設定されています。

  • 家畜衛生条件の確認:輸入国の衛生基準が適用され、特定の国や地域からの輸入が制限される場合があります。
  • 輸出国政府機関発行の検査証明書の取得:輸入する乳製品が安全であることを証明する書類を準備する必要があります。
  • 指定された空港や港からの輸入:特定の輸入地点が決まっており、すべての港や空港で輸入できるわけではありません。
  • 指定検査場所への搬入と輸入検査申請:動物検疫所にて厳格な検査を受けた後、輸入が許可されます。

輸入検疫の対象となる乳製品

輸入検疫が必要な乳製品には、以下のものが含まれます。

  • ミルク(生乳・低温殺菌乳・加熱処理乳)
  • クリーム(ホイップクリーム・コーヒークリームなど)
  • バターミルク(脱脂乳から作られる副産物)
  • ホエイ(チーズ製造時にできる副産物)
  • バター(動物由来の油脂を多く含む)
  • チーズ(プロセスチーズ・ナチュラルチーズなど)

これらの乳製品を輸入する際には、動物検疫所での検査が必要です。輸入に時間がかかるケースもあるため、輸入業者は事前にしっかりと準備が必要です。

まとめ

日本のバター価格が高い理由には、関税、輸入規制、国内生産保護の3つの要因が大きく関わっています。政府が輸入量を管理し、関税を設定することで、国内の酪農業を守る仕組みが作られています。その結果、輸入バターの流通量は限られ、高価格が維持される傾向にあります。また、乳製品全般の輸入には厳しい手続きがあり、衛生基準や検疫の規制をクリアしなければなりません。

今後、TPPなどの貿易協定によってバターの輸入条件が変わる可能性はありますが、現時点では大幅な関税撤廃は行われておらず、価格が劇的に下がることはないと考えられます。

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