スーパー銭湯オーナー向けの貿易ビジネス
全国のスーパー銭湯が設備更新の時期を迎えています。多くの施設は1990年代後半から2000年代にかけて開業しており、建物・設備の老朽化が進んでいる時期です。そこで今、多くのオーナーが改修計画を検討しているのではないでしょうか。
ですが、その改修、”元に戻すだけ”で本当に良いのでしょうか?この機会を単なる修繕で終わらせるのではなく、施設の魅力を根本から再設計し、新たな収益の柱を作る絶好のチャンスと捉えることができます。その手段の一つが、輸出入ビジネスの導入です。貿易と聞くとハードルが高い印象がありますが、実は温浴施設との相性は非常に良いのです。
国内外のニーズが大きく変化する中、施設そのものを単なる入浴の場ではなく「体験価値を提供する空間」へと進化させることが求められています。輸入によって海外の魅力を導入し、輸出によって日本の価値を発信する。そんな双方向のビジネス展開が、スーパー銭湯の新たなステージを切り開く鍵となります。
輸入ビジネス:海外の設備や文化を取り入れて施設価値をアップ
まず注目したいのが、施設改修と同時に海外の温浴文化や設備を取り入れるという考え方です。たとえば、ドイツ発祥のアウフグース文化、フィンランドのサウナストーブ、韓国のチムジルバン形式などは、日本でもじわじわと支持を集めています。これらを施設に導入することで、「本場体験ができるスーパー銭湯」としての差別化が図れます。
香り付きのサウナ水や輸入アロマ製品
香り付きのサウナ水や輸入アロマ製品など、導入しやすい商品から始めることも可能です。施設内に専用エリアを設けたり、演出付きのプログラムとしてイベント化するなど、使い方は多様です。実際、サウナ施設ではドイツから専門アウフギーサー(演出担当者)を招き入れて差別化を図る動きも出ています。
没入型空間
また、海外のスパ施設では光や音を取り入れた没入型空間が主流になっており、照明演出やBGM機器の輸入導入も視野に入れることで、非日常感の強い設計が可能です。入浴に留まらない「滞在型体験」を提供することで、リピーター率も向上が期待できます。
輸入製品には関税や品質基準、電気製品であればPSEマークなどの制度対応が求められることもありますが、多くは専門業者やフォワーダーが支援可能です。まずは小ロットの仕入れから始めて、実際の反応を確かめるステップがおすすめです。改修と同時に試験的な導入を行えば、リニューアル後の来場者の反応を計測しやすくなります。
輸出ビジネス:日本の入浴文化や製品を海外へ届ける
次に注目したいのが、日本ならではの浴用品や演出要素を海外に輸出するという視点です。例えば、桶、手ぬぐい、のれん、浴衣、木製サウナ備品、温浴施設向けのロゴ入りアメニティなどは、海外では非常に珍しく、”和の象徴”として高評価を得ています。

固有の名称、地名を入れているアメニティグッズです。
近年では欧米やアジアでもサウナ文化が浸透し始めており、その中で「日本式」の演出を導入したいと考える海外施設オーナーは少なくありません。そうした施設に対して、日本で使用している実績ある製品をそのまま提案・販売するというモデルが成り立ちます。
まずは越境ECサイトでテスト販売
販売方法としては、越境ECサイトの開設、展示会での販路開拓、JETROなどによる海外バイヤー紹介制度などがあります。ECについては、BASEとBuyee連携を使えば、最初から海外対応が可能な日本語ECサイトの構築も簡単です。
さらに、実店舗や観光地で物販を行っているスーパー銭湯であれば、それらの商品群を越境ECと連動させることで、国内外の顧客に向けた販路を同時に開拓できます。独自ブランド展開によって、「この施設でしか買えない和グッズ」としてプレミアムな商品価値を演出することもできます。
成功確率とリスク:小さく始めるのが鍵
輸出入ビジネスには確かにリスクもあります。輸入では仕入れコストや品質不良、輸出では現地規制や決済トラブルといった点が代表的です。しかし、これらはすべて「段階的に」「外部パートナーと組んで」進めることで最小化できます。
たとえば、海外の成功事例として注目されるのがラオスの薬草サウナ(Herbal Steam Sauna)です。これは伝統的な薬草を煮出したスチームを使い、香りと発汗効果で癒しを提供するというものです。

実際、私自身もラオスで体験済みです。寺院?のような建物の中にひっそりとあるサウナです。中に入ると真っ白なミストで見えなくなるくらいです。とても良いと思いました。
近年はバックパッカーや健康志向の欧米人から注目され、ローカル体験型観光の目玉として成長しています。これをヒントに、スーパー銭湯でも薬草・ハーブ系の輸入を通じて独自性があるサービスにもできる可能性があります。ラオスでは低投資・高回収型モデルとしても機能しており、初期投資を抑えつつ文化体験として差別化できる好例です。
フィンランドやバルト三国のサウナ文化
フィンランドやバルト三国のサウナ文化を取り入れた施設の多くでは、サウナイベント・演出付きプログラムによって、体験価値の向上とリピーター率の改善に成功しています。実際にあるフィンランド式導入施設では、導入後半年で平日来館者数が15%、サウナ利用客の平均滞在時間が20%向上したという調査結果もあります。
成功確率についても、一般的な新規事業での成功率が10〜20%前後と言われる中、 ・段階的にテスト導入する ・支援制度(補助金)を活用する ・顧客体験をSNSやレビューで可視化する といった対策を組み合わせれば、成功確率を50%以上に引き上げる事業者も実際に存在します。特に地域性や独自性の高い温浴文化と組み合わせることで、競合が少なく、長期的なファンを作りやすい傾向があります。
また、観光庁・農水省・自治体による補助金や支援制度を活用することで、初期投資のリスクを軽減できます。こうした制度を組み合わせると、実質的なコスト負担を大きく下げることも可能です。特に地域振興や観光拠点型施設としての認定を受ければ、自治体との共同プロモーションなども行いやすくなります。
訪日外国人を呼び込むには「思考の転換」が必要です
輸出入と並んで重要なのが、訪日外国人を呼び込むための視点の転換です。「日本人向けの温浴体験」をそのまま輸出しても、海外の方には伝わりにくいことがあります。むしろ、彼らの目線に立って「日本らしさ」「写真映え」「珍しさ」をどのように見せるかを再設計する必要があります。
ラオスやベトナム、タイなどの東南アジアでは、現地の伝統文化を生かしたハーブスチームや薬湯が観光客から高い評価を得ています。その成功要因は「ローカル体験」×「健康・リラックス」×「SNS映え」という3要素の融合にあります。日本の銭湯文化でも、これを再現することは十分に可能です。
英語・中国語の案内板、多言語Webサイト、写真撮影OKの演出コーナー、浴衣レンタル、体験型コンテンツ(桶作り体験など)など、さまざまな工夫が可能です。中込農園や平田観光農園など、訪日外国人を上手に取り込んでいる観光施設は、必ず「外国人目線の体験価値設計」がなされています。
また、SNSを活用した情報発信も不可欠です。訪日外国人にとっては、事前にどんな施設でどんな体験ができるかを視覚的に確認することがとても重要です。インスタグラムやYouTubeなどの媒体を使って、実際の体験動画や裏側紹介を投稿しておくことで、海外からの信頼感・関心度が格段に上がります。
観光誘致と施設差別化は、輸出入とも密接に関わってくる重要な要素です。SNSやクチコミで発信されれば、販路拡大と施設集客の両輪を実現することができます。
まとめ
- 改修時期は、輸出入ビジネスを始める絶好のタイミングです
- 海外文化の導入によって施設の魅力が大きく高まります
- 日本の浴用品や文化を輸出することで、新たな販路が生まれます
- 小さくテストしながら進めれば、成功確率は高くなります
- 外国人観光客を取り込むには“視点の転換”と“発信力”が必要です
基幹記事
輸出入と国際輸送の手引き
1.取引先を探す。
3.船積み準備
4.法規制
5.国際輸送
関連記事
◆スポンサード広告