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米の輸入制度を完全解説!関税・調整金・検疫・SBS制度のすべて

1993年。日本国内で深刻なコメ不足が発生しました。日本国内にある備蓄米を放出しても想定以上の不作で国内需要を満たせません。そこで行ったのがタイからの輸入です。米品種の違いはあれど、これにより「コメショック」を脱したのでした。

日本ではコメの自給率が高いため、コメは輸入されていないと思いがちです。しかし、実際は、さまざまな理由から一定量のコメを海外から輸入しなければならない状況です。とくに、アメリカ、タイ、中国、ベトナムなどからの輸入が目立ち、加工食品向けや業務用、備蓄用など、さまざまな用途で活用されています。

この記事では、日本がなぜコメを輸入しているのか、どのような制度で管理されているのか、さらには関税制度、検疫手続き、調整金の仕組み、個人輸入の実務などについて詳しく解説します。これからコメの輸入事業を検討している方に向けて、実務レベルで必要となる知識をお伝えしていきます。

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米の輸入

日本のコメ輸入制度とは?自由化はされている?

日本のコメの輸入は、1995年のウルグアイ・ラウンドで導入された「ミニマム・アクセス(MA)制度」に基づいて行われています。

ミニマム・アクセス=最低、輸入量(強制的に輸入する義務)

日本は、この制度に基づき、年間約77万トンのコメを他国から輸入しています。米は、3つの輸入方法(買い付け方法)があります。

  1. 政府調達(一般方式)
  2. 政府調達(SBS方式)
  3. 政府調達以外(MA域外の輸入を指す)
1-1.  政府調達(一般方式)

政府購入型×MA一般方式は、次の通りです。

  1. 政府がコメを代わりに輸入する事業者(A)を決める。
  2. A名義で輸入する。
  3. 政府は米(Aが仕入れた物)を買い取る。(買取価格)
  4. 政府は、入札を実施し買取希望の業者を募る。
  5. 政府は、入札で決まった業者に米を売却する(受け渡し価格)

主に加工用や飼料用にされます。

1-2.  政府調達(SBS方式)

SBS方式の仕組みは次のとおりです。

  1. 輸入者と国内の実需者(米を必要とする事業者)がペアで入札に参加
  2. 国の売り渡し価格(1の業者が入札)と買い入れ価格の差が大きい物から落札
  3. 国、輸入者、実務者の3者で契約をする。
  4. 契約後、国が仲介(輸入者と実務者)し、買取と売却を実行する。
2.  政府調達以外

なお、MA枠でのコメ輸入には極めて高い関税が課されます。具体的には、1キログラムあたり341円(49円/kgの関税と292円/kgの調整金)

制度関税調整金
政府調達×MA一般××
政府調達×SBS方式×
292円/kg
政府調達以外49円/kg292円/kg

日本が輸入しているコメの量と国別の内訳

コメの年間輸入量は、2023年時点では約75万トン程度が輸入されています。そして、その大部分がMA枠内での輸入です。これらは外食産業、食品加工業者、災害備蓄などに向けて流通しています。

アメリカ産の米

輸入先国としては、アメリカが最大です。(=全体の過半数)アメリカからは主に中粒のカルローズ米が輸入されており、日本の加工食品業界(パックご飯、弁当用米、菓子原料など)で活用されています。

次点はタイ産の米

次いで多いのがタイです。タイからは細長く香りのあるインディカ米が多く輸入されており、カレーやアジア料理専門店での需要があります。また、中国、ベトナムなども主要供給国であり、とくに加工・工業用の需要が高い傾向があります。

国別輸入量の変化は、為替相場、物流状況、現地の気候などにも影響されるため、安定供給を確保するには複数国からの調達体制を整えることが望ましいです。

輸入実績と輸入価格

財務省統計局の資料によると、2024年におけるコメの輸入状況は次の通りです。

2024年、10カ国中の上位5カ国(数量順) 1006.30-010
国名数量KG単価(円)
アメリカ合衆国317987142
タイ278972102
オーストラリア30653116
中華人民共和国25604119
台湾4556147
2024年、11カ国中の上位5カ国(数量順) 1006.30.090
国名累計数量KG単価(円)
タイ726160
スリランカ325105
ベトナム192137
アメリカ合衆国176189
インド141217

(※2024年時点、財務省統計より)

上記は、コメが日本の港に到着したときの価格です。この価格に関税、調整金、業者の利益等が上乗せされて小売り価格になります。なお、農林水産省からの売却情報は入札結果に掲載されています。

例えば、令和6年12月20日のWTO・SBS枠)の結果をみると…

  • アメリカ うるち精米中粒種
  • 買い入れ価格=トン当たり206,113円(政府が業者Aから購入する価格)
  • 受け渡し価格=トン当たり521,473円(業者Bが政府から購入する価格)

そして、この差額(315,360円)が調整金です。なお、調整金は292円ですが、なんと、政府は、この調整金にも消費税をかけているようです。(二重課税)

貿易統計の見方 輸入価格の他、輸出チャンスがある市場も調べられる!

コメの関税制度と調整金の仕組みを理解する

日本にコメを輸入するときの最大のハードルが「関税」と「輸入納付金」です。

関税

まず関税についてですが、MA枠内での輸入には原則として関税が課されず、非常に低い税率での輸入が可能です。一方で、枠外からの輸入には非常に高額な関税が設定されており、実質的には商用輸入が成立しない水準です。(理論上は可能)

最大、342円/kgの関税(調整金含む)+8%の輸入消費税がかかります。(ミニマムアクセス枠以外の輸入)

調整金(SBS方式)

SBS方式で輸入する場合は、輸入納付金がポイントです。輸入納付金とは、輸入業者が政府に対して支払う価格調整費用で、落札価格に加算される形で発生します。この金額は入札時点で決定されるため、調達コストに上下が生じやすいです。


 

根拠法令:調整金の額(精米を参照)

バターの輸入調整金とも似ています。→バターが高い本当の理由|関税と輸入制度の裏側を徹底解説

米を輸入するときの原価計算例(枠外輸入の例)

輸入原価(仕入れコスト)=輸入価格(CIF価格)+関税+消費税+調整金(米麦等輸入納付金)+国内輸送費・保管費

計算条件 2025年月現在の例

  • 輸入価格(商品価格): 1kgあたり150円
  • 関税: 1kgあたり341円/kg(域外の輸入)
  • 消費税率: 8%
  • 輸入量: 200kg

計算手順

1. 輸入価格(商品価格)の合計

輸入する商品の総額を計算します。

  • 輸入価格合計=輸入量×単価
  • 輸入価格合計=200×150=30,000 円
2. 関税の合計

関税は輸入量に対して課されるため、以下の式で計算します。

  • 関税合計=輸入量×関税率(1kgあたり)
  • 関税合計=200×341=68,200 円
3. 消費税額の計算

消費税は、商品の価格と関税を合算した金額に対して課されます。以下の式で計算します:

  • 消費税額=(輸入価格合計+関税合計)×消費税率8%
  • 消費税額=(30,000+68,200)×0.08(消費税率8%)=7,856 円
4. 総輸入コストの計算

総輸入コストは、商品の価格、関税、消費税をすべて合算したものです。以下の式で求めます

  • 総輸入コスト=輸入価格合計+関税合計+消費税額
  • 総輸入コスト=30,000+68,200+7,856=106,056円
結果
  • 輸入価格合計: ¥30,000
  • 関税合計(調整額含む): ¥68,200
  • 消費税額: ¥7,856
  • 総輸入コスト: ¥106,056

この結果から、アメリカから商業目的で200kgのコメを輸入した場合、最終的なコストは約106,056円となります。

詳細資料:主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の施行に関する告示(米麦等輸入納付金)

輸入検疫と食品衛生上の法的手続き

コメは植物性食品であり、輸入時には2つの法令の規制を受けます。

  1. 植物防疫法
  2. 食品衛生法

1. 植物防疫法

コメに害虫や病原菌が付着していないかどうかを輸入港で確認し、必要に応じて燻蒸処理などが行われます。検疫をパスしない場合、積戻しや廃棄の対象になるため、輸出元での衛生管理が重要です。

2. 食品衛生法

次に、食品衛生法に基づいて「輸入届出」を厚生労働省へ提出します。輸入届出には原材料情報、加工工程、製造工場の衛生証明書などが求められ、輸入初回には検査命令が出される可能性があります。

とくに問題になりやすいのが「残留農薬」や「ポストハーベスト農薬(収穫後に使用する防カビ剤等)」の基準です。日本と輸出国とで使用可能な農薬の基準が異なるため、現地の農薬使用履歴や検査証明書の取得が重要です。とくにアメリカや中国、東南アジア各国からの輸入では、事前に現地業者と明確な確認が必要です。

個人でコメを輸入する際の実務とリスク

コメの個人輸入は、少量であれば可能です。具体的には、次の条件を満たすことを「個人」としています。個人扱の場合は、調整金や関税は免除されます。

  • 規模の大小に関わらず、商売目的でないこと
  • 年間の合計輸入数量が100KG以下であること
  • 自己消費であることが明確であること
  • 本人、家族や知人の分の自己消費やお土産であること

上記の全てを満たすことが「個人使用」です。逆に満たさない場合は、商業目的の輸入とされて、調整金の納付が必要です。

なお、個人輸入でも、前述した植物検疫の対象となるため、たとえばECサイトでタイ米やカリフォルニア米を購入して海外から直送する場合でも、輸入者としての義務が発生します。書類不備や誤った分類によって、輸入が差し止めになるリスクもあります。

輸送手段(航空便か船便)、パッキング形態(真空包装、クラフト袋など)、ロットサイズなども通関処理に影響します。できる限り輸入経験のある通関業者や食品輸入代行業者に相談することで、トラブルを未然に防ぐことができます。

輸出国政府機関が発行する検査証明書(Phytosanitary Certificate)を添付します。

今後の動向とコメ輸入ビジネスの可能性

日本国内では、農業人口の高齢化や耕作放棄地の拡大などを背景に、コメの生産量が年々減少しています。一方で、外食・加工食品市場は拡大を続けており、今後、コメの輸入がより重要な役割を果たす可能性があります。

TPPやRCEPなどの国際的な貿易協定の拡大によって、今後関税制度が見直される可能性もあり、実務者はその動向に注目する必要があります。仮にMA枠の拡大や関税率の引き下げが行われれば、新たなビジネスチャンスが生まれることになります。

また、地政学的リスク(国際紛争、通貨危機など)や、物流面での混乱(運賃高騰、港湾の混雑)も輸入業務に大きな影響を与えます。これらに備えるためには、複数の調達ルートを確保し、長期契約を活用するなどの戦略が必要です。

今後、輸入ビジネスを成功させるためには、単なる価格比較にとどまらず、制度理解、品質管理、法令遵守、供給安定性の4つの視点から全体戦略を構築することが求められます。

コメ輸入に関する補足情報:実務者が押さえておきたいポイント

SBS入札の実施スケジュール

SBS方式でのコメ輸入は、年間複数回に分けて農林水産省のもとで実施されます。通常は年度ごとに10回前後の入札が予定され、それぞれの入札公告や結果は農水省のウェブサイト上で公開されます。事前に予定を把握し、必要な書類や手続きを整えておくことで、スムーズな入札参加が可能となります。

検査機関と食品検査体制

輸入したコメが食品衛生法に基づく検査命令の対象となった場合、厚生労働省が指定する登録検査機関(例:日本食品分析センターなど)にて検査を実施する必要があります。検査には数日~1週間程度かかる場合があり、物流スケジュールにも影響するため、検査対応の準備を事前に整えておくことが重要です。

HSコードの確認と関税分類

コメの輸入には関税分類(HSコード)の特定が必要です。いわゆる精米は、次のHSコード、関税率が適用されます。米以外の商品なら、特恵枠、特別特恵枠、EPA等がありますが、コメの場合は、それらの優遇枠は一切存在しません。

  • 1006.30.010=政府調達(無税)
  • 1006.30.090=その他(341円/kg)

ただし、CPTPPの内、オーストラリア産の米を輸入する場合は、他国よりも優遇された税率が適用されます。

関連する補助制度との関係

輸入米の流通においては、政府の備蓄米制度や加工業者向け支援制度などが間接的に影響を与えることがあります。とくに外食・加工向けに一定条件を満たすことで活用できる助成金や価格調整措置があるため、関連制度の最新情報も把握しておくと有利にビジネスを進められます。

まとめ

  • 日本はWTOの合意に基づいて、年間約77万トンのコメをミニマムアクセス制度で輸入
  • 主な輸入先はアメリカ、タイ、中国、ベトナムで、品種・用途・価格帯に違いがあります
  • 関税制度は枠内ゼロ、枠外は700%超の高率で、実質的な輸入制限となっています
  • SBS方式では調整金の仕組みがあり、価格変動リスクがあるため事前の制度理解が不可欠です
  • 輸入時には植物検疫と食品衛生法に基づく届出が必須であり、農薬基準にも注意が必要です
  • 個人輸入も可能ですが、自己使用目的であること、手続き面の備えが重要です
  • 今後は制度変更、国際交渉、物流の不確実性に備えた柔軟かつ堅実な戦略構築が求められます
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