この記事は、海外の食品を輸入し、販売するための知識を説明しています。
海外の食品を輸入販売するための知識
この記事は約16,000文字で構成されています。内容も幅広いため、記事を2つに分けています。
ご自身のレベルに応じてお選びください!
食品輸入の知りたいことで探す!
超初心者向けレベル・食品輸入の全体像
商売目的で食品を輸入するときは、食品検疫所に食品等輸入届出書(以降、食品届)を出します。食品検疫所とは、厚生労働省の下部組織で、主に食品の安全性を管理する機関です。この機関に対して、食品等輸入手続き(食品届)をして、その確認を受けなければらないです。
- 食品を商売目的で輸入する人が行う手続き
- 食品届を提出すること!
この手続きについて、次の3つの観点で考えます。(国際郵便等での食品申請は、こちら)
- 食品とは?
- 輸入禁止の食品とは?
- 商売目的とは?
1. 食品とは?
食品衛生法では、食品のほか、直接、食品に触れる容器や包装も含まれます。
- 食べ物
- 食品を入れる容器
- 食品が触れる可能性がある機械類
その他、意外なことに乳児向けのあらゆる製品が対象です。
2. 輸入禁止食品に該当しない?
以下は、食品でも何らかの理由から、その輸入が禁止されている物です。ここに含まれていないかを確認しましょう!
代表的な輸入禁止食品
- BSE(牛海綿状脳症)発生国の牛肉(輸入停止措置が解除されていない場合)
- 特定の食品添加物を含む加工食品
- 特定の農薬が基準値を超える農産物
- 生きた動物、未処理の乳製品(一定の国からの輸入は禁止)
厳格な規制が適用される食品
- 特定の健康食品・サプリメント(医薬品と見なされる場合)
- 遺伝子組み換え食品(GMO)
- 放射性物質が基準値を超える食品
3. 商売目的とは?
商売目的とは、規模、金額の大小に関わらず、食品を輸入し、販売することです。ただし、商売目的の輸入でも規制対象外になるケースもあります。
- サンプル品として輸入
- 展示用として輸入(不特定多数に配る場合は必要)
- 社内検討用に輸入
社内確認用、サンプル用など、特定の人数下で商品の品質等を確認する目的で輸入するものは規制の対象外です。ただし、不特定多数に配る前提の物は必要です。もし、食品届の規制外の物を輸入する場合は、税関に対して「確認願い(食品検疫所が発行)」を提出します。

個人と商用の線引きは、おおむね10KG程度です。
食品届の相談先と手続き方法
食品届は、輸入地を管轄する食品検疫所が担当しています。なお、税関は、食品検疫所の確認後、輸入許可を出します。(他法令の確認)
1. 最重要ポイント
「輸入できるか?(規制をクリアできるか)」を確認することが第一です。
2. どこで食品届について確認するのか?
日本全国の食品検疫所です。又は、お付き合いがある通関業者です。
3. 自分で相談・手続きをするのか?
自分又は、通関業者です。代行料はかかりますが、通関業者に依頼できます。ただし、どちらの場合も輸入者が食品届に必要な書類を準備をします。
食品届の申請と税関手続き
食品届の申請は、食品が到着する7日前から、輸入地を管轄する食品検疫所に対して行うことができます初回輸入は、食品検査(指導検査)が行われることを前提として、必ず小規模にします。最初は、輸入実績を作ることを優先しましょう。
食品の審査が終わると「食品等輸入届出済証」が発行されます。これで食品としての申請は終わりです。あとは、税関の審査が終わり次第、輸入許可を受けられます。
1. 最重要ポイント
初回は、必ず小規模で輸入することです。万が一、輸入不許可になると、その損失は非常に大きいです。商品代、輸送代、申請代、その他全ての費用(廃棄代金)は輸入者が負担します。当然ながら、これらの費用を肩代わりしてくれる人はいません。
2. 初回の輸入は実績と検証の意味が強い。
初回の輸入は、商品の輸入実績の構築と安全性や売れ行き、パッケージ等の検証をする意味が強いです。例えば、初回からコンテナ単位で輸入するなどは、避けた方が良いです。非常にリスクがある行為です。
3. 税関と食品検疫所の関係
- 食品検疫所/厚生労働省が食品の安全性を確認する
- 食品検疫所が食品として問題がないことを確認する(確認済)
- 税関は、2の確認済みであることを前提に輸入許可を発布する。
国際郵便(DHL等)で食品を輸入する場合の例
では、実際の食品輸入の流れを確認してみましょう! 一つの方法として国際郵便を使い食品の輸入をするときの流れを紹介します。
- 気になる食品が見つかる。
- 食品検疫所にざっくりと輸入可否を確認
- ある程度okであれば、海外サイトに問い合わせをして、食品届に必要な情報を取得する。
- 輸出者に成分リストや製造工程書などを作成してもらい、食品検疫所に相談
- 検疫所と相談をしながら、書類を仕上げる。
- 貨物到着の7日前から、輸入地を管轄する検疫所に「食品届」を提出する。このとき、あわせて貨物のトラッキング番号(追跡番号)
- 貨物到着後、税関から「食品届が必要な旨」を書いたはがきが届く。
- 実際に検査や追加資料の提出などの審査される。
- 検査が決まれば、指定分析機関に依頼をする。
- 分析結果が出て基準を満たせば食品届申請は終了
- 同時に税関から輸入許可が下りる。
なお、DHLやフェデックス等も食品申請に対応していますが、生鮮食品は扱わない、または一定重量以上でないと受け付けないなど、制約がある場合があります。食品といっても、比較的、保温設備が緩やかな貨物のみを扱う印象です。
フェデックス等が扱う食品例→ フェデックス等が扱う食品例:食品類(菓子、飲料など)、水、食品添加物、保存料、箸、ワイン、ビール、コーヒーメーカー、乳幼児用のおもちゃ、サプリメントなど
以上が食品を輸入するための簡単な流れです。より詳しく知りたい方は、ここから先の記事をご覧ください。専門機関に相談を希望する方は、通関業者又は、ミプロが便利です。
「一般レベル」食品の輸入に必要な手続きと資格
ここから先は、一般レベルで解説していきます。食品等輸入届出書の代行や、輸入代行と手続き代行の決定的な違いは、以下のリンクをクリックしてください。(文章末に移動)
食品輸入に関係する法律(食品衛生法27条)
食品輸入関連の法律は、食品衛生法です。
- 販売の用=商売目的であること
- 食品に該当する物であること
- 輸入者が手続きをすること。
第二十七条 販売の用に供し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装を輸入しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、その都度厚生労働大臣に届け出なければならない。
引用元:e-gov
ポイント1. 商売目的の物を規制する
輸入目的が「個人使用」又は商売目的の線引きは、次の通りです。
- 個人使用 = 自分自身で食べるために輸入すること。かつ使用範囲が限定されること
- 商売目的 = 規模・金額の大小に関わらず、販売するために輸入すること
例えば、無償で知人にあげる。友達と共同で輸入する。不特定多数の人に無料・有料で配布する行為は、商売目的=食品届が必要な行為とされています。なお、一回の輸入量が10kg相当を超えるのか?も大きな判断ポイントです。
ポイント2. 「食品」とは、この定義に当てはまるもの
食品衛生法の「食品」とは、次の内、いずれかに当てはまる物です。
食品衛生法の対象 | 意味 |
すべての食べ物 | 食べ物:口に入れるすべての食べ物。ただし、医薬品、医療機器、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に含まれる物は除く |
添加物 | 食品を製造・加工をするときに添加する物 |
器具 | 飲食物を入れる器。又は製造、加工、運搬、保管、陳列などをするときに食品に触れる可能性があるすべての器具や機械。(除外:農業・水産業における食品の採取の用器具) |
容器包装 | 食品・添加物を入れ、又は包んでいる物。 |
おもちゃ | 食品衛生法第62条第一項に規定する物 1.乳幼児が口に入れる可能性がある物→ぬいぐるみなど 2.乳幼児用アクセサリー、ブロックがん具、ボール、ままごと用具、知育がん具、つみき、電話がん具、人形、うつし絵、起き上がり、おめん、折り紙、がらがら、動物がん具、人形、粘度、乗り物がん具、風船、粘土など |
その他 |
|
ポイント3. 輸入は「実輸入者」しか認めない
食品届ができる輸入者とは、実輸入者であり、関税法95条の税関事務管理人は対象外です。
例えば、海外に居住しながら、日本に輸入する場合は、実輸入者となってくれる輸入者が必要です。海外に居住しながら、日本で販売したい!と考えている方は、この部分のルールをクリアが必要です。
上記3つに該当する場合は、輸入時に食品衛生法に基づく手続き(食品届)が必要です。ただし、以下に該当する場合は、食品届は不要です。
関連知識:食品届が不要なケース
- 乳幼児以外を対象とするおもちゃ
- 添加物、器具、容器包装、おもちゃの「原材料」
- 食品衛生法4条の器具及び容器包装に該当しない機械、器具、容器
- 食品として販売しないことが明らかな食品
- 個人用、試験研究、社内検討、展示用、サンプル品
- 10キロ以下の食品
- 輸入された全量が再輸出される物
- 医薬品、医薬部外品
- 輸入貿易管理令別表1に規定された食品
- 原塩(食用でない岩塩)、食用油脂(製造工程を経ることが前提)、コプラ、粗糖、粗留アルコール(製造用)、糖蜜、麦芽、ホップ
無償のサンプルは、食品届は不要です。ただし、10KGを超える場合やサンプルを不特定多数の人に渡す場合は食品届は必要です。なお、食品届が不要なときは「確認願い」を提出します。
関連知識:複数の法律で規制されている物がある
食品には、食品衛生法の他、家畜伝染病予防法など、他の法律が関係する可能性がある物もあります。その場合は、関係する分、確認済が必要です。
- ソーセージ等の肉類=家畜伝染病予防法
- 野菜など=植物防疫法
- 酒=酒税法
- サプリメント、美容関連品=薬機法
関連知識:食品の許可、販売、資格等の必要?
食品の輸入は、誰でも自由(個人、個人事業主、法人問わず)にできます。また、輸入の方法(コンテナやems)等も関係ないです。一部の品目を除き、販売するための許可や資格等も不要です。
具体例:規制が強い食品例
- IQ品目(輸入割当:例 にしん、ほたてなど)
- 酒類を輸入するとき→お酒の販売ライセンス
- 海外の食品基準ではクリア。しかし、日本ではNGの物

基本的には、誰でも自由に食品を輸入できます。しかし、一部の品目には規制やライセンスがあります。なお、食品衛生法に違反して輸入すると「違反者リスト」に掲載されます。
食品輸入の全体的な流れ!
食品を輸入するときの全体の流れは、次の通りです。
- 海外の食品製造者から必要な書類(原料表など)を取り寄せる。
- 食品の適合性を検討する。
- 食品検疫所に上記の書類を提出し事前相談を受ける。
- 実際の輸入手続きをする。
食品の輸入は、製造者からの情報や資料を取り寄せることからスタートします。そして、この流れには、次の5つのポイントがあります。
- 食品輸入3つのリスクを小さくする。
- 食品輸入で必要な書類例
- 食品検査の種類と流れ、違い。
- 関税率と消費税(軽減税率)
- 事前相談先(問い合わせ先)
1.食品輸入3つのリスクを小さくする
まず、食品が安全であることが何よりも重要です。食品の安全性は、次の3つの観点で評価します。
- 違反が多い食品ではない?
- 過去、食品衛生法違反をした製造者ではないか?
- 貿易保険、貿易条件でリスクを小さくしている?
1.違反が多い食品ではない?
海外食品は、品目によって食品衛生法に違反する率が違います。これは「食品衛生法違反事例」をみるとわかります。この中には、どこの国から来た、何という商品から、○○を検出したなどの事例が掲載されています。まずは、このリストの中に、輸入予定の食品が掲載されていないかを確認してみましょう。
2.過去、食品衛生法違反をしている製造者ではない?
商品を製造している会社が「過去に食品衛生法違反をしているのか?」を調べることも有効です。同じく厚生省は、食品衛生法違反リストを公開しています。(内容例:日本側の輸入者、海外のシッパー(輸出者)、製造者、どんな商品か?どのような問題があったのかなど)
3.貿易条件や貿易保険でリスクを小さくする。
貿易は、必ず契約書や保険によって、万が一のリスク回避策を考えておきます。食品輸入の場合であれば、「製造方法に問題があった」「輸送途中に問題(例:温度管理)などのリスクがあります。これらのリスクを契約書や保険等により、小さくします。
2.食品輸入で必要な書類例
食品の輸入には、次の書類が必要です。食品等輸入届出書を除き、すべて任意の書式です。
- 食品等輸入届出書(輸入者が作成 テンプレートのダウンロード先)
- 衛生証明書(輸出国政府機関が作成 食肉や食肉製品、乳製品、カキ類を輸入するとき)
- 原材料リスト(製造者(輸出者)が作成)
- 製造工程書(製造者(輸出者)が作成)
なお、事前届出制度や計画輸入者制度を利用する場合は、追加の書類が求められます。また、二回目以降に同様の食品を輸入する場合は「試験成績書」、食品届の対象食品ではない場合は「確認願い」が必要です。
3.食品検査の種類と流れ
食品輸入の提出から、実地検査、許可までの流れは、以下の通りです。
- 輸入予定の食品に関する資料を取り寄せる。
- 食品検疫所に事前相談する。
- 外国から貨物が到着する。
- 食品届書を提出して審査を受ける。
- 審査の結果、食品検査を受ける。
- 結果が出る。合格の場合→届け出済証が発行される。
- 輸入が許可される→貨物を引き取れる。
- 輸入不許可の場合は、破棄又は積戻しをする。
食品検査の種類
- 命令検査
- モニタリング検査
- 指導検査
詳細は、以下2つの記事を参照してください。
食品届に関係するのが【登録検査機関】です。
Q.登録検査機関とは?
食品の成分等を分析する機関です。厚生労働省が「検査をする基準を満たす機関」として定めています。日本の登録検査機関と外国の検査機関があります。これらの機関で分析・発行された証明書を使い、食品届を申請します。
- 輸入者は通関業者に食品届の申請を依頼します。
- 通関業者が登録検査機関に分析を依頼。
- 通関業者が食品検疫所に食品届申請、税関に見本持ち出し許可申請
- 見本持ち出し許可を与えられた機関が保税地域から貨物を抜き取る。
- 分析機関が貨物を分析する。
- 分析書として発行が完了する。
- 食品検疫所に分析書を提出して問題がないことを確認する。
- 食品検疫所から「確認済証」が発行される。
- 税関から輸入許可が下りる。
Q.食品検査の具体的な仕組みや費用は?
食品の輸入検査は、登録検査機関が見本を持ち出し許可を得て保税地から持ち出し、分析して、日本の食品の規格基準に合致するのかを確認します。
食品検査の費用の内、モニタリング検査は、無料です。国が統計データを取得する目的のため、その費用までを輸入者が負担しなくてもよいからです。輸入者が負担する検査は、命令検査または、自主検査のどちらかの検査です。
どちらの場合も検査自体は、食品検疫所がするのではなく、食品検疫所から認定を受けている登録検査業者が行います。検査費用は、検査する貨物と、検査項目によって異なります。もし、食品検査になったときは、分析業者へ依頼をして、必要な費用を聞きます。ちなみに、この食品検査は、通関業者経由で頼むと、マージンをのとららます。
登録検査業者の例:日本食品分析センターなど
食品検査機関に電話をして、例えば、「〇〇国から〇〇という商品を輸入する際に、●●という検査が必要になった」のように伝えると良いでしょう。」必要な費用などを教えてくれます。無事に食品に関する検査が終わると、登録検査機関から食品検疫所に試験結果が送信されます。
食品検疫所は、この試験結果が食品の規格基準に適合していれば、食品届け出済証を発行して、食品届を終えていることを証明してくれます。あとは、この書類を税関に提出すれば、他法令の確認(食品届)ができ、輸入許可に至ります。
4.食品・食器の輸入関税、消費税、軽減税率
食品を輸入関税は、高めに設定されています。基本的に、日本は、工業製品には低い関税をかける一方、食品系には高い関税率をかしてます。食品を輸入するときは、高い関税率を含めて輸入原価を算出します。積極的に特恵関税やEPA(自由貿易協定)を使います。
- 具体的な相談は、税関の関税監査官へ
- 関税率を確定させたい場合は「事前教示制度」を活用します。
また、食品を輸入するときは、関税の他、商品代金+送料+保険他+関税額の合計に対して8%の消費税がかかります。(食品には、軽減税率が適用されます。)なお、食器の消費税は、通常通り10%が適用されるため注意しましょう!
5.事前相談先(問い合わせ先)
食品の輸入相談は、税関ではなく、全国にある13の検疫所に相談しましょう!
事前相談をするときは、輸出者側から以下の情報がわかる資料を用意しておきます。(情報がない状態での事前相談は受け付けてくれない可能性が高い)
- 製造者の住所、製造者名
- 原材料リスト
- 製造工程表
- 容器包装の種類
- 保管方法や温度、用途など
以上、5つが食品輸入の大切なポイントです。必ず覚えましょう!
自ら食品の輸入可否を判断するチェックリスト!
実際に自ら食品の輸入可否を判断する場合の4つのポイントをご紹介します。
- 食品の規格基準に合っている?
- 添加物の使用基準、医薬に該当する成分は含まれていない?
- 厚生省の監視強化リストに入っていない?
- 食品の製造者が過去に衛生上の問題を犯していない?
1.食品の規格基準に合っている?
日本で食品に定めている「規格基準」にあうことが条件です。つまり、「食品の体をなしているのか?」という観点で考えます。この規格には、一般規格と個別規格(材質別の規格)があります。
詳しくは厚生省の規格基準をご覧ください。
2.添加物、農薬、放射能の使用基準
一般的に、食品の中には、様々な添加物が含まれています。これらの添加物は、日本では禁止にしていたり、使用量が制限されていたりするものがあります。また、医薬に分類される成分もNGです。
輸入予定の食品成分と次のリストを照合します。この確認の結果、「単なる食べ物」であることを証明します。また、このときの注意点は、パッケージなどに効果や効能を標榜すると、一発で薬機法違反になるため、あわせて注意します。
主なチェック項目
- 食品の中に禁止されている添加物は入っていない?
- 認められている添加物でも、その使用基準を守っている?
- 成分の中に「医薬」に該当する物は含まれていない?
- 食品の展示スペース、ポップ、パッケージなどに、効果や効能を標榜していない?
- 残留農薬の基準は規定以下?(0.01ppm以下)(指定食品のみ)
- 放射線やカビの混入は?(指定食品のみ)
その他、品目別の審査ポイントはこちらをご確認ください。
- 添加物りスト
- 医薬品とみなす成分
- 効果・効能を標ぼうしない限り食品とみなす成分
- 残留農薬のポジティブリスト
- 食薬区分リスト
3.検査強化リストにされていない?
厚生省は、日本に初めて輸入される食品や、過去の食品検査において食品衛生法を違反している可能性が高い物について、輸入の監視強化をしています。食品を輸入するときは「監視強化対象の国または、商品ではないのか?」なども確認します。もし、監視対象の場合、命令検査が輸入の都度必要になったり、モニタリング検査にあったりする可能性が高いです。
監視強化対象となっている食品は、輸入食品監視指導計画の中で詳しく紹介されています。
4.過去、食品衛生上の問題を起こしていない?
食品検疫所は、過去の輸入データをすべて記録しています。そのため「この製造者の食品は、食品衛生法に違反している可能性が高い」ことを把握しています。仮にその監視対象の製造者が作った食品を輸入すると、後述する命令検査やモニタリング検査に当たりやすくなります。外国から食品を輸入するときは「誰が製造しているのか?」も重要です。
違反情報の把握は、厚生省の違反事例発表のページで確認できます。
【実務具体例】食品を輸入を実現するための流れ
最後に、これまでのポイントを踏まえながら、実務上の流れを確認していきましょう! 全体の流れは、次の通りです。
- 輸出者に依頼して資料を取り寄せる。
- 食品検疫所と税関に事前相談する。
- 貨物到着&審査
- 輸入審査と税関検査(食品検査)
- 輸入許可と貨物の引き取り
- 食品表示法への対応
1.輸出者に依頼して資料を取り寄せる。
外国の食品を輸入するときは、輸出者より次の3つの資料を取り寄せます。具体的には、レターヘッドに、輸出国側の製造者・包装者の名前、所在地、会社または工場名などを英語で記載してもらいます。レターヘッドとは、外国の書類で一般的に用いられる、書類上部に記載される会社名や住所などが記載された部分を指します。
- 成分リスト(原材料リスト)
- 製品の製造工程フロー図
- 製品完成形の写真
しかし、実際の所、何らかの理由によって、製造工程表や原材料表などの書類を入手できないこともあります。そのときは、輸出者などから十分に情報を仕入れた後(裏付け資料を取り寄せるなど)日本側で作成することも認められています。ただし、輸入者側が作成したときは、その旨がわかるように、輸入者の氏名、社印などを合わせて書類中に記載します。
取り寄せる資料の代表例
資料は、フォーマットも決められておらず、輸出者ごとに違います。もし、輸出者が「資料フォーマットが欲しい」と言われた場合は、輸入者側でフォーマット(エクセルなど)を作成し、それに記入、捺印後、返送してもらうことが多いです。
- 成分リスト(原材料リスト)
- 製品の製造工程フロー図
- 製品完成形の写真
1・成分リスト(INGREDIENTS LIST)
成分リストの中に食品に使っている原材料や添加物を一覧でまとめます。添加物の場合は、化学式を含み、その内容量(割合)等も記載が必要です。仮に香料が含まれているときは「何の香料なのか?」まで説明します。また、原材料の一部の中に、加工品があるときは、その加工品の原材料も一覧にします。つまり、親>>子>>孫のように、含まれるすべての原材料を記載します。
2.製品の製造工程フロー図(Food Production Flow Chart)
どのような工程を経て食品が完成品になるのか?この流れを説明した資料が製造工程フロー図です。例えば、絶対、滅菌処理をしなければならないのに、その工程が一切されていないなど、工程の中に不十分な点がないかを確認されます。
3.商品パンフレットや完成品の写真
完成品の写真は、包装紙やパッケージの様子を説明する資料です。また、補完する資料として、商品を説明するパンフレットなども有効です。
以上、3つがどんな食品に対しても必要な資料です。その他、衛生証明書や食品検査成績書なども必要となる場合があります。輸入する食品ごとに異なるため、詳しくは検疫所に確認しましょう。どの食品でも輸出者との交渉時に、資料を用意できるのか?を含めて確認することが重要です。
2.食品検疫所と税関に事前相談
食品を輸入する際には、食品検疫所や税関のほか、動物検疫所や植物検疫所が関与する場合もあります。これらは、輸入品目により異なります。
例えば、単なる加工食品であれば、食品検疫所と税関のみです。これが生鮮食品になると、食品検疫所、植物防疫所および税関が関係します。多くは食品検疫所と税関のみで足りますが、その他の機関も関係する可能性があることを覚えておきましょう!
3.食品検疫所による事前審査
食品届出書は、貨物到着の7日前から事前に提出ができます。わからない点があれば「事前輸入相談」などを活用して、できる限り事前に確認しておきましょう。
実際に貨物が到着してからの手続きをすると、万が一のトラブルの際に大きな痛手を負います。
食品検疫所は、輸入者から提出された食品届や関連資料に目を通して、輸入を認めるのか判断します。このとき、書類上では判断が難しいときに、食品検査をします。
食品検査のときは、輸入者が費用を負担して、食品検疫所の指定検査機関に成分分析(後述)をお願いします。この成分分析の結果は、食品検査機関から食品検疫所に通知されます。通知された内容に問題がなければ、食品検疫所から「食品輸入の届け出済証」が発行されます。輸入者は、この発行された食品輸入届出済証を税関へ提出します。

輸入食品は事前相談、買い付け契約の前に行うのが鉄則です。日本の輸入規制上問題がないとの確認を得た上で商品を仕入れると考えましょう!
4.輸入審査および税関検査(食品検査)
税関及び食品検疫所は、それぞれ輸入検査をする可能性があります。税関は、関税徴収の観点、食品検疫所は、食品安全上の観点で検査をします。これらは、関連機関(食品検疫所及び分析センター)が調整をして、同時に行うことが多いです。食品検査には、次の三つがあります。
- 命令検査
- 自主検査(指導検査)
- モニタリング検査
輸入が許可されなかった場合の対応策は?
食品の検査を受けた結果、食品衛生法の基準を満たさない場合は、どのようになるのでしょうか。大きく分けると、次の三つの内、いずれかを選択します。
※通常は、1の対応方法が現実的です。
- 積戻し又は破棄
- 成分変更(食品の製造段階からの変更)
- 日本の保税区内で規制をクリアするように加工
1. 再輸出(輸出元へ返送)
- 貨物を輸出国へ返送する(ただし、輸送費が発生)
- 一部の業者は返品可能な契約を提供しているため、事前に確認
2.成分変更による再申請
- 食品の成分・添加物を修正し、再検査を受ける
- 事前に食品検疫所へ相談し、規格に適合するよう調整
3.日本国内で適法に加工
- 保税区域で食品加工を実施し、日本の規格に適合させる
- 加工後、新たに申請を行うことで輸入許可を取得
5.輸入許可と貨物の引き取り
税関は、この食品輸入届出済を受けとると、関税徴収に関する審査が終わった段階で「輸入許可」を出します。これが食品届の提出~税関が輸入許可を出すまでの全体的な流れです。
ここまでの流れのおさらいは次の通りです。
食品届の提出から輸入許可までの流れ
- 税関へ輸入申告+食品検疫所へ食品届の提出
- 食品検疫所の審査を受ける。必要があれば現物調査
- 現物調査になったら、輸入者の負担で分析機関で成分を分析
- 成分分析の結果は、食品検疫所へ通知される。
- 分析通知の結果、食品の安全性が確認されたら、届け出済証が発行される。
- 税関は、届け出済証の確認+関税徴収に関する審査が終わると、輸入許可を出す。
6.食品表示法への対応(輸入許可後の販売準備)
食品の輸入許可が下りると、いよいよ輸入食品を国内販売できます。ただし、食品類を国内販売するときには、いくつ守るべき法律やルールがあります。以降は「輸入許可後」のお話です。
- 食品表示法/景品表示法
- PL保険(製造物責任保険)への加入
1.食品表示法とラベル対応
日本国内で食品を販売するときは「食品表示法」を守る義務があります。食品表示法とは、輸入食品の裏側に貼り付ける以下のラベルのことです。原材料名、アレルギー、輸入者情報などを表示して、誰でも簡単に確認ができるようにします。
また、この食品表示と合わせて気を付けることは、薬機法や景品表示法です。薬機法とは、医薬に指定されている物以外について「効果や効能」を標榜(広告)することを禁止する物です。
例えば、サプリメントのパッケージ部分に「これを飲めば、筋肉をつける効果がある」などと表記することです。また、この薬機法とは別に、本来よりも誇大に表示をして、消費者に誤認を招く可能性がある物は「景品表示法」の規制を受けます。
商品の広告方法、パッケージの文言等も全て規制の対象であるため、十分な確認が必要です。
2.PL保険の加入
商品の販売によって、誰かにケガや病気にさせてしまったときは、その商品を製造した人に責任がいきます。これは「製造物責任法」通称、PL法といいます。輸入食品の場合は、食品を輸入した物が製造者となり、製造物責任法の義務を負います。
例えば、日本には認められていない添加物を含む食品がが発見された場合、市場に流した食品を全量回収する命令が出される可能性があります。回収にかかる費用、返金保証など、とても大きなお金がかかりますね!これを補償するのが「PL保険」です。
食品輸入の王道とは? 小さく初めて実績を積む
食品の輸入ビジネスを始めるときは、必ず小さく初めて大きくすることが重要です。弊社では、食品関連のサポート業務をしていますが、全く実績がない状態で、いきなり20フィートや40フィートで食品を持ってくる方がいらっしゃいます。
そんな方々からの依頼内容を見ると「またか...」と感じます。食品の輸入は、必ず「小さく」始めることが重要です。それは、様々な原因により「輸入不許可」になる可能性があるからです。特に輸入実績が全くない方は、非常にリスキーです。
食品輸入は、まず少量から始め、輸入実績を積んで徐々に規模を拡大するのが基本です。様々なリスクを考えても、やはり、これが一番お勧めの方法です。この記事をご覧になっている方は、ぜひ、この部分をお忘れにならないようにお願いします。

小さく初めて輸入実績を積む。その後、少しずつ規模を拡大していく。
よくある疑問
Q,品目別のワンポイントを教えてください。
品目 | ワンポイント |
玩具/おもちゃ/ぬいぐるみ | 指定おもちゃに該当するのか?該当する場合は、規格基準を守ること |
健康食品/サプリ | 医薬品とみなされる成分が含まれていないか、食品として販売できるものか注意が必要です。効果・効能を謳うと薬機法に抵触する可能性があります。 |
機械類、食品容器 水筒、ジューサ | 食品届の対象は、実際に食品が触れる部位のみ。材質別の規格有 |
食器用洗剤は? | 食品届の対象外です。 |
冷凍食品 | 殺菌条件、密封加工の部分に注意 |
調味料 | 日本では認められていない食品添加物に注意 |
ジュース | 清涼飲料水の成分規格、製造基準、保存基準を確認 着色料に注意 |
生鮮野菜・果物 | 残留農薬のポジティブリストをチェック。カビに注意。発色等をさせるための薬品等の使用禁止、医薬成分に該当する物にも注意 |
スパイス | 香辛料、スパイスには定義の違いあり。着色料やカビに注意 |
Q.食品等輸入届出書の代行はできますか?
Q.輸入代行と通関手続きの代行の違いとは?
ご覧いただいた通り、輸入手続きは非常に複雑です。おそらく簡単にはできないはずです。となると、すぐに思いつくのは「代行」です。ただし、代行には、次の2つの意味があるため注意しましょう!両者は明確に違います。
- 輸入代行
- 食品手続きの代行
1.輸入代行
輸入代行とは、A、Bの人物がいたとしましょう。BがAに対して輸入代行を依頼した場合は……
- Aが日本に輸入する(輸入者)
- BがAから買い取る(国内転売)
この場合、Bは輸入といいつつも、実態はAから国内転売を受けた形です。この場合、Aが輸入者となり、Aが輸入品に対するすべての責任を取る必要があります。したがって、この形での輸入代行は、商品的な品質がしっかりしていないと、成り立ちにくいです。
2.食品手続きの代行
一方、食品手続きの代行を確認してみます。Aが輸入者。その手続きを通関業者Bに依頼したとしましょう。この場合は、次の形です。
- AがBに食品届の代行手続き依頼をする。
- Bは、輸入者Aの名前で食品届及び輸入申告をする。
- Aを輸入者として輸入許可が下りる。
- 以降、Aが輸入者の扱いとなり、製造物責任法の責任を負う。
一般的な食品の輸入代行は、2番の食品手続きの代行を意味します。あなたの考えている代行と違う場合は、今一度、よく確認をした方が良いです。ちなみに、食品手続きの代行を依頼する場合でも、食品届に必要な各種資料を用意するのは輸入者であるあなたです。
あなたは、代行の意味を正しく理解していますか? 同じように感じる場合でも、実は責任等が全く違います。この点を確実に理解するようにしましょう!
Q.ポジティブリストとは何ですか?
ポジティブリストの対義語は、ネガティブリストです。意味は「この成分(原材料)が含まれているならOK」です。つまり、ポジティブリストに含まれていない原材料が使われている場合は、輸入不可です。
実は、改正食品衛生法第18条第3項及び告示370号により、容器包装の内、材質が「合成樹脂」の物には、ポジティブリストが設定されました。完全移行は、令和7年5月31日であり、令和3年現在は、経過措置期間とされています。
詳細は、厚生労働省の資料をご覧ください。
Q.すでに日本で販売されている商品にも手続きは必要ですか?
必要です。あなた(輸入者)が輸入した実績がない限り、同じように食品手続きが必要です。
Q.遠方の場合の手続きは?
通関業者等に依頼をすれば、遠方にいながら食品検疫に対応できます。また、ご自身でする場合は、郵送でもできる点を覚えておきましょう!
Q.食品輸入で便利な制度はありますか?
品目登録制度、事前届出制度、計画輸入制度などがあります。特に食器類を輸入する場合は、品目登録制度を活用している方が多いです。
Q.参考情報:国別の輸入手続きの違いは?(EU・アメリカ・中国・シンガポール・タイ)
国別の輸入手続きの違い 各国によって、食品輸入の基準や必要な書類が異なります。以下の国別の規制を確認し、事前に適切な準備をしましょう。
アメリカ(FDA)
- 食品施設登録(FFR) が必要
- Prior Notice(事前通知) を提出しなければならない
- GMP(適正製造基準) に基づいた製造工程書の提出
EU(欧州連合)
- EU規則(Regulation EC 178/2002) に準拠
- 食品接触材料に関する規制(プラスチックや容器の成分規制)
- 特定食品はEFSA(欧州食品安全機関)の審査が必要
中国
- AQSIQ(国家品質監督検査検疫総局) への登録
- 輸入食品の安全基準(GB規格) に準拠
- サンプル検査が義務付けられることが多い
シンガポール
- AVA(シンガポール農食品獣医庁) の審査
- HSコード別に異なる課税規則あり
- 特定の食品は事前輸入許可が必要
タイ
- FDAタイ(食品医薬品局) の登録
- 輸入食品ライセンスが必要な場合あり
メリットとリスクを検討するべし!
ご自身で食品を輸入できれば、商売の幅がぐっと広がります。すでに述べている通り、食品に含まれる物は、食べ物だけではなく、口にくわえる、含める可能性がある器具等も含まれます。
例えば、食器などもその対象です。食品届を必要とする商材を扱うことによって、誰でも輸入ができる商品を扱うよりも、参入障壁を高くできます。もしかすると、少数の人しか手を付けていない輸入分野を発見することになるかもしれません。これがメリットです。
逆にデメリットは「全量破棄」です。食品の規格基準に合わない商品は、輸入ができません。もし、日本の港まで持ってきてしまったら、輸入商品の破棄はもちろんのこと、送料なども含めてすべてが損失です。これが最大のリスクです。
まとめ
海外の食品を輸入する場合の手続きをお伝えしてきました。商売目的で輸入する場合、厚生省へ「食品輸入届」を提出して、その確認を受けます。食品の輸入許可を受けるにあたり重要なことは「食品検査」です。
この検査の結果、食品の安全性基準に問題があると判断されると「全量破棄」などの厳しい命令が下されます。食品を輸入する人は、最悪なケースとしてこのようなリスクもあると考えておくべきです。


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