日本、中国、ベトナム間には、RCEP(経済協定)があります。経済協定を利用して輸出入をすると関税の削減メリットを受けられます。この記事では、RCEPのメリット、デメリットの他、中国・ベトナム輸入でRCEPを利用するための具体的な手順を解説します。
RCEP(アールセップ)
RCEP(アールセップ)は、REGIONAL COMPREHENSIVE ECONOMIC PARTNERSHIPの略です。日本語名では、東アジア地域包括的経済連携です。包括的連携の名前の通り、日本、中国、ベトナムの他、いくつかの国が加盟しています。
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RCEPの加盟国の一覧と最大の特徴
RCEPの加盟国数は、日本、中国、オーストラリアなどの6か国+東南アジアに加盟する10か国の合計16国です。協定の最大の特徴は、日本と中国が同じ協定に含まれる点です。実は、RCEPの加盟国の中には、すでに別の経済協定を結ぶ国も多く、インパクトとしては小さいです。やはり、日本としては、中国との初の貿易協定の意味が強いです。
最大の特徴は関税の削減
RCEPにより、中国・ベトナム・日本のそれぞれの市場が開放しあいます。具体的には、物品が輸入される際の関税を削減したり、撤廃しあったりします。(譲許=じょうきょ
例えば、日本製品を中国向けに輸出する場合は、中国税関にてRCEPに定めた税率が適用されます。当然、この逆も同じです。仮に中国のアリババ等から商品を輸入している方は、それらの商品についても日本側で関税の優遇を受けられます。
RCEPの5つのメリット
その他、RCEPには、次の3つのメリットがあります。
- 中国の巨大な市場にアクセスしやすくなる。
- 中国経由の輸出または、中国材料の加工にメリットあり。
- アリババ等の通販サイトでも利用可能
1.中国の巨大な市場にアクセスしやすくなる。
中国への輸出入など、巨大な人口をかかえる中国市場へのアクセスが簡単になります。2019年4月1日から中国は、特恵関税を卒業しています。この特恵関税の代わりとしてRCEPを適用して輸入ができます。
2.中国経由の輸出または中国材料の加工にメリットあり
2019年現在、中国におけるFTAの締結状況は次の通りです。もし、RCEPが締結された場合は、主に次の2つのビジネスモデルに恩恵があります。
- 日本から部品を輸出→中国の工場で加工→第三国へ輸出
- 中国の原材料を輸入→日本の工場で加工
1.日本から部品を輸出→中国の工場で加工→第三国へ輸出
日本から中国に材料を輸出した後、中国の工場で最終完成品に加工。それをRCEPの域内、または中国とFTAを結んでいる国に輸出すれば、貿易取引で関税無税で輸出ができます。
2.中国の原材料を輸入→日本の工場で加工
他方、中国の半完成品を日本に輸入。それを国内の工場で加工した後、日本国内に流通させるなどのビジネスモデルを取り入れている人にも便利です。
3.アリババ等の輸入でも利用可能
中国輸入で使うことが多い「アリババ」等から商品を購入するときもRCEPの恩恵を受けられます。基本的に、輸入価格が20万円以下の場合、輸入国側で原産地証明書を提出することなく、免税や減税を適用してもらえます。
中国&ベトナム輸入でRCEPを利用する方法
RCEPの利用には、次の4つの条件があります。
- 日本、中国、ベトナムなどのRCEP加盟国で製造した商品であること
- RCEPの原産地規則の条件を満たすこと
- 原産地規則を満たすことを書類で立証できること
- 税関からの求めがあった場合、根拠書類を提出できること
例1:中国の商品を輸入し、日本にRCEP輸入する場合
- 中国の工場で生産する
- 中国側(製造者や輸出者)が商品の原産性(RCEPの原産条件)を満たすことを証する書類を作成する。
- 中国側の製造者又は輸出者が中国の指定機関で特定原産地証明書を取得する。
- 中国側の製造者又は輸出者が日本側の輸入者に特定原産地証明書を送付する。(貨物と一緒又は、書類だけEMS等で送付する)
- 日本側の輸入者は、中国で発行された特定原産地証明書を日本の税関に提出する。
- 輸入申告時点のRCEP関税率を適用して輸入ができる。
例2:日本で商品を製造し、中国にRCEP輸出する場合
- 日本の工場で生産
- 日本側の輸出者/製造者が「原産性を満たすことを証する書類」を作成
- 日本側の輸出者/製造者が日本商工会議所で特定原産地証明書を取得
- 日本側の輸出者/製造者が中国の輸入者に特定原産地証明書を送付する。
- 中国の輸入者は、日本で発行された特定証明書を中国の税関に提出する。
- 輸入時のRCEP関税率(日本向け譲許表に基づく関税率)が適用される
中国製品を製造し、日本でRCEP輸入するのか?又は、日本製品を輸出し、中国側にRCEP輸出するのか?でプロセスが逆になり、あなたがするべきことが変わります。
- 輸入者の場合:中国側で発行される特定原産地証明書が届くのを待つだけ
- 輸出者の場合:日本側で特定原産地証明書を取得し、中国の輸入者に送付する
RCEPを中国輸入で利用する場合の手順
まずは、RCEPを中国輸入で利用する場合です。今回は、以下3つの事例をご紹介します。
- 中国の市場などで商品を買い付けて日本に発送(持ち帰る)する場合
- アリババ等のECで既製品を輸入する場合
- アリババ等のECでODM輸入する場合
1.中国の市場などで商品を買い付けて日本に輸入する場合
例えば、次のケースを考えてみましょう!
- 中国国内の市場(イーウー等)で商品を買い付けて日本に発送している場合
- 中国の輸入代行サービスを使い商品を輸入している場合
上記、どちらの場合も原産性の立証が難しいため、RCEPを活用して輸入するのは難しいです。ただし、次の全ての条件を満たす場合は、RCEPを適用できる可能性があります。
- 一回の輸入総額が20万円以下であること
- 商品のパッケージ等やラベル等に「Made in China」を確認できること
- インボイス等の書類に「Made in China」の記載があること
2.アリババから既製品を輸入する場合
すでに製造されている既製品をRCEP輸入する場合は、次の手順で行います。
- 中国ECサイト上の商品URL、商品写真等をまとめる。
- 輸入予定の日本税関(不明であれば、どこでもOK)に事前教示を依頼=HSコードの特定ができる。
- 2のHSコードを使い、実行関税率表で関税率を調べる。(日本側の関税率の特定)
- 2のHSコードを使い、ウェブタリフで品目ルールを調べる。(輸入商品の原産地ルールの特定)
- 元々、関税がかからない物はRCEP不要(使わない)と判断する。必要な場合は、6番に進む。
- 中国の輸出者に、日本側のHSコード(2番)、品目ルール(3番)を伝える。
- 中国の輸出者(生産者)は、日本のHSコードと品目ルールを基準にして原産地証明書を取得
- 日本に特定原産地証明書が届く。その後、輸入申告時に税関に提出する。
2.アリババ等のECでODM輸入する場合
中国の工場でオリジナル商品を製造し、日本側に輸入する場合も手順は同じです。違う点は、注文をするときに、日本側でRCEPを適用できるように製造をお願いします。
RCEPを利用するには、中国の工場で商品を製造する条件の他、原産性を確認する書類の用意や原産品とみなす加工作業をしていることが条件になるためです。
例えば、ある商品を日本側に輸入する予定であり、その商品のHSコードが●●、原産地規則が「CTH」と指定されている場合は、それらを中国側の輸出者(製造者)に伝えます。製造者は、日本側から伝えられた原産品ルールを満たすように商品を製造し、原産地証明書を取得します。
- 日本側のHSコードと原産品ルールを特定し、中国側に伝える。
- 中国側の輸出者(生産者)は、原産品ルールをクリアするように商品を仕上げる
- 中国の輸出者は、2のルールに従い原産地証明書を取得し、日本側に送る。
- 日本の輸入者は、日本側で関税削減の恩恵を受けられる。
RCEP×中国輸入の場合は、上記のポイントを意識して活用しましょう!
参考情報:RCEPを中国輸出で利用する場合
次にRCEPを中国輸出で活用する場合をご紹介していきます。RCEPの輸出は、これまでのEPA輸出と同じです。必要となる知識や手順も同じです。詳しくはEPA輸出ゼロからの挑戦をご覧ください。
RCEP輸出具体的な手順
- 中国側の輸入者にHSコード(中国税関が回答したHSコード)を確認してもらう。
- 1のHSコードを基準にウェブタリフでRCEPの原産性ルールを確認する。
- 1のHSコードを基準にワールドタリフで中国側の関税率を確認する。
- 2及び3の結果、RCEPを使う場合は、5に進む。断念する場合は、通常輸出(MFN輸出)
- 日本の輸出者又は、製造者は、日本商工会議所に企業登録する(約一週間)
- 2の原産性ルールを基準に原産性を立証する資料を用意する。
- 「企業登録完了後」6の資料が用意できたら、原産品判定依頼をする。
- 日本商工会議所に6の資料を提出し、審査を受ける。
- 資料の出来が悪いと、何度もダメ出し&質問される。
- 原産品の審査が通過したら、原産品登録完了(約1週間~2週間)
- 原産品登録が完了した物に発給申請をする(一日)
- 取得した特定原産地証明書を中国の輸入者に貨物とは別に送付する。
- 中国側の輸入者は、日本の特定原産地証明書を中国税関に提出する。
- 関税の削減を受けられる
最大のポイントは原産性資料の作成
RCEP輸出原産性の証明方法は、次のいずれかです。
- 第三者証明制度(日本商工会議所)
- 認定輸出者による証明
- 輸出者または生産者による証明(10年以内に実施)
基本は、日本商工会議所による証明方法を選びます。原産性資料を作成し、日本商工会議所に提出し審査を受けます。そして、この流れにある「原産品であることを確認できる資料の作成」が最大のポイントです。
原産品であることを確認する資料とは、総部品表(原材料表)や製造工程フロー図、対比表などを指します。輸出者(製造者)は、これら原産品であることを確認できる資料を用意した後、日本商工会議所の審査を受けます。
この資料は、自動車でいう「免許」と同じであり、輸出者(製造者・生産者)が100%作成及び確認する義務があります。特定原産地証明書は、この資料を用意した後、日本商工会議所に原産品判定依頼をします。
「この商品は、日本の工場で製造しているから日本の商品だろ!」と主張する方がいます。しかし、残念ながらこの主張は、RCEPの原産品としては認められないです。
実際、原産性資料のでき次第で審査に一カ月以上かかることもある
RCEP輸出成功可否は、一にも二にも原産性資料の作成です。この資料作成がうまくできないと、何度も何度も日本商工会議所からダメ出しを受けて、簡単に一カ月以上の月日が流れてしまいます。
例えば、あるサプリメントを輸出するときの対比表は、以下の通りです。このように完成品に含まれる原材料や部品リストのHSコードを採番し、一つの表に仕上げます。
これ以外にも製造工程フロー図と呼ばれる資料の作成も必要です。
一つの完成品に対して、一つの資料を用意し、日本商工会議所に提出します。正直な所、通関士として長い期間勤務した経験(採番行為)がないと、採番行為(HSコードの特定)には、非常に多くの時間がかかります。基本的には、資料の作成部分は、外注されることをお勧めします。
もし、必要な場合は、対比表作成支援サービスをご検討ください。
中国のサプライヤーの住所から日本の指定住所まで国際輸送する全手順を解説!
まとめ
- RCEPは、東アジア地域の自由貿易協定
- この協定のポイントは「中国」
- 中国を活用した貿易ビジネスをする人には、大きなメリットがある。
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