【陶器風呂】メーカーが知っておきたい輸出チャンスと販路戦略

陶器製の風呂桶は、その美しさと素材の温かみから、国内では高級旅館やこだわりの住宅で重宝されています。しかし、日本国内の住宅着工数は年々減少し、伝統的な焼き物メーカーも新たな販路を求める必要に迫られています。そんな中、海外の高級住宅市場やリゾート開発の現場で「日本式の陶器風呂」に注目が集まっているのをご存じでしょうか？

本記事では、陶器風呂メーカーをペルソナとして、海外輸出の可能性と実践的な販路開拓のヒントをお伝えします。

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巨大な陶器風呂の海外輸出チャンス

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巨大な陶器風呂の海外輸出チャンス

焼き物の技術には自信があるが、販路は国内に限られている。コロナ禍以降、旅館や住宅リフォームの案件も減少傾向。そんな中、「海外で売れるのでは？」という声が社内で出るが、具体的にどう始めればよいのか分からない——。このように感じている陶器風呂メーカーの方も多いのではないでしょうか。実は、今こそ“日本の入浴文化”が海外で評価されており、陶器風呂というプロダクトはその象徴になり得るタイミングにあります。

陶器製風呂桶の輸出は、単なる製品販売ではなく、日本文化の提案型輸出です。だからこそ、海外のターゲット層や販売チャネルを正しく見極め、物流や設置条件などの障壁に先回りして対応することが成功のカギとなります。

この記事では、需要のある国と地域、販路構築の手段、そして輸出時の課題と解決策をご紹介します。

なぜ今「日本式の陶器風呂」が注目されているのか？

前提として、日本の「湯に浸かる文化」自体が世界的に関心を集めています。欧米では基本的にシャワー文化が中心ですが、富裕層やデザイナーの間では“和の癒し空間”への関心が年々高まっています。

NetflixのドキュメンタリーやPinterestなどのSNSでも、日本旅館の露天風呂が頻繁に紹介されており、「日本の伝統的な入浴スタイル」＝“癒し・贅沢”というブランドとして定着しつつあります。その中でも、陶器製の風呂桶は、量産型のユニットバスでは再現できない美しさ・肌触り・保温性を持ち、日本らしさを体現した商品として高評価を得ています。

また、素材のサステナブル性や、自然との調和を重視するトレンドにも合致しており、特に欧米やオーストラリアの建築家・デザイナーからの支持が拡大中です。

陶器風呂が求められる国とその理由

アメリカ（カリフォルニア・ニューヨークなど）

アメリカでは、日本建築や和風庭園への関心が強い層を中心に、日本式バスタブへの需要があります。特に、西海岸やニューヨークなどの富裕層住宅では、浴室を“癒し空間”として演出する傾向があり、素材・形状にこだわるユーザーが多いです。

東南アジア（タイ・ベトナム・シンガポール）

高級ホテルやリゾートスパが競うように「日本旅館風」や「露天風呂」を取り入れています。こうした施設では、見た目のインパクトが重要なため、陶器風呂の存在感や質感が評価されます。特に信楽焼や美濃焼などブランド性のあるものは歓迎される傾向があります。

ヨーロッパ（ドイツ・フランスなど）

サステナブルデザインの流れの中で、焼き物や木材といった自然素材が好まれています。日本の伝統技術やストーリーのある商品に対する信頼も厚く、「アートピースのようなバスタブ」として扱われるケースもあります。

輸出における実務上の課題とその対処法

1. 輸送に関する問題

陶器風呂は重量がある上、割れ物です。国内輸送であっても取り扱いには注意が必要ですが、海外輸送となればなおさらです。基本的にはFCL（コンテナ単位）での輸送が推奨されますが、小ロット輸出や現地代理店を通じた納品も事例として存在します。輸送時は木枠梱包＋防振対策に加え、輸送保険への加入も忘れずに行いましょう。

2. 排水・設置規格の違い

各国で水道規格や排水口サイズが異なります。そのため、設置用の図面（寸法・排水位置・重量など）を英語で準備し、必要であれば現地用パーツの案内も付け加えましょう。設計事務所や施工業者がそのまま使える資料を整備することで、採用されやすくなります。

3. 関税と通関分類（HSコード）

陶器製の浴槽は「陶磁製の衛生陶器（HS: 6910）」に分類されるケースが一般的ですが、国により税率や書類要件が異なります。最寄りの通関業者やJETROに確認することをおすすめします。

収益モデルの一例

陶器風呂の価格帯は製品単価で20万円〜80万円程度が相場です。製造原価が10万円程度の場合、1点あたりの粗利は最低でも5〜20万円が見込めます。送料や関税、梱包費用を含めても高付加価値商材としての魅力があります。輸送をバイヤー負担（FOB条件）とすることで、さらに利益率を確保しやすくなります。

販路構築の実践アイデア

販売ターゲットの明確化

建築設計事務所
リゾート・スパ施設の開発業者
富裕層住宅向けのインテリアデザイナー

これらの層は、単なる“機能性”ではなく“演出・体験価値”を求めており、陶器風呂との親和性が高いです。

アプローチ手段

海外展示会（例：Maison&Objet（仏）、ICFF（米））に出展
Archiproducts、Houzz Proなどの建築・インテリア系BtoBサイトに掲載
英語カタログ・導入事例の整備
InstagramやPinterestでの世界観発信
JETROの海外販路開拓支援を活用（商談会・市場調査）

支援制度の活用

中小企業基盤整備機構（J-GoodTech）やJETROの「海外展開支援事業」などを活用することで、展示会出展や越境EC登録、翻訳・通訳などの初期コストを補助してもらえる場合があります。輸出初心者には心強い制度です。

サービスと一体化

輸出の際には、「販売＋輸送＋設置サポート」の三位一体で提供する姿勢が評価されます。特に現地の建築業者と連携して“安心して導入できる体制”を整えることが、信頼獲得に直結します。

陶器製の風呂桶は、日本の美意識・素材文化・職人技を凝縮した製品です。それを単なる商品として輸出するのではなく、空間体験そのものとして提案すれば、海外でも十分に通用します。製造力に加えて、設置や使用に関する配慮、情報発信、パートナー開拓を並行して行うことで、「ニッチ高付加価値」の道が開けます。今ある焼き物技術を活かし、世界に向けて“癒しの文化財”を届けてみませんか？

参考情報：高級衛生陶器市場規模・予測 2025 に 2032