日本に輸入又は日本から輸出するときは、税関へ申告し、それらの許可をもらいます。基本的に必要書類を揃えるだけで許可を受けられます。しかし、商品によっては、税関の許可を受けるために、別の行政機関の確認が必要になる場合があります。
例えば、食品、植物、化粧品等を輸入するときなどです。これらは、関税法以外でも規制されているためです。関税法以外の観点で確認することを「他法令の確認」と言います。
他法令の確認は、非常に重要です。この確認をおろそかにすると、多大な費用負担につながり、最悪、輸出国側に積戻しをしたり、破棄処分になったりすることもあります。
そこで、この記事では、他法令の基本知識をご紹介していきます。
他法令の確認
他法令の確認とは、特定品目を輸出入するために税関以外の行政機関が法令上の適合性を確認することです。
- 食品関連 → 食品検疫所による食品検疫
- 肥料・飼料 → 植物防疫法
他法令の根拠:関税法70条
第七十条 他の法令の規定により輸出又は輸入に関して許可、承認その他の行政機関の処分又はこれに準ずるもの(以下この項において「許可、承認等」という。)を必要とする貨物については、輸出申告又は輸入申告の際、当該許可、承認等を受けている旨を税関に証明しなければならない。
関税法70条の要約
- 輸入者は、税関から輸入許可を受ける前に関連法令の確認を受ける必要がある。
- 税関は、上記の関連法令に問題がないことを確認して輸入許可を出す。
食品、植物など、一部の品目には、非常に関係するため注意が必要です。もし、これらの法令をクリアできなければ、全量破棄や積戻しにも至るケースもあります。(*全量破棄や積戻しは、ともに輸入者の責任で貨物を処分すること)
輸入×他法令の例示
日本に輸入する時に関係する他法令の一例は次の通りです。
外為法(外国為替及び外国貿易法)
国際的な平和及び安全の維持のため、武器や軍事転用可能な貨物・技術の輸出入を規制する法律です。また、外国との取引や資本取引も管理しています。 例:海外送金など
代表品目
- 武器・銃砲・銃弾
- 原子力関連品目
- 先端材料・化学製品
- 高性能コンピューター・センサー
- 精密工作機械
- 炭素繊維・セラミックス
管轄省庁
ワンポイント
武器開発につながる恐れがある、あらゆる品目が規制の対象です。特に工具類、センサー類を含めた機械類を輸出するときには注意が必要です。
ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)
絶滅の危機にある野生動植物の国際取引を規制する条約です。対象種を3段階に分類し、取引を禁止または制限しています。
代表品目
- 象牙製品
- ワニ革製品
- 希少動物の剥製
- ラン科植物
- サボテン科植物
- べっ甲製品
管轄省庁
- 経済産業省
- 関連リンク:ワシントン条約の手引書、ワシントン条約の個人特例
ワンポイント
特に革関連製品や特別な植物を輸入する人は注意が必要です。
食品衛生法
食品の安全性を確保し、国民の健康を保護することを目的とする法律です。輸入食品の検査、規格基準の設定、添加物の規制などを行い、食品による健康被害を防止します。
代表品目
- 生鮮食品・野菜・果物
- 加工食品全般
- 食品添加物
- 食器・容器包装
- 調理器具
- 食品用洗剤
- 乳児用の製品
管轄省庁
- 食品検疫所(厚生労働省)
- 関連リンク:初めての食品輸入の手引き書、食品表示法の基礎
ワンポイント
直接、口に入れる物はもちろんのこと、口に入れる物に触れるあらゆる製品が対象です。また、乳児用のおもちゃ、ぬいぐるみなども規制の対象です。
医薬品医療機器等法(薬機法)
医薬品、医療機器、再生医療等製品の品質、有効性及び安全性を確保するための法律です。製造から販売までの規制を行い、保健衛生の向上を図ります。
代表品目
- 医薬品・漢方薬
- 医療機器・手術器具
- 体外診断用医薬品
- 化粧品
- 医薬部外品
- 再生医療等製品
管轄省庁
- 厚生労働省
- 関連リンク:化粧品の輸入ガイド
ワンポイント
いわゆる薬機法です。海外からマッサージ、化粧品、石鹸、歯磨き等、CBDオイル、サプリメント、アロマ、美容器具、化粧品など、○○効果等を標榜する全ての商品が関連します。口に入れたり、肌に塗布する物を扱う人は要注意です。
例えば、これを飲めば痩せる~、肌のハリが改善するなど
家畜伝染病予防法
家畜の伝染性疾病の発生予防とまん延防止を図る法律です。輸入される動物や畜産物の検査・検疫を行い、国内の畜産業を保護します。
代表品目
- 生きた家畜(牛・豚・鶏など)
- 畜産物(肉・卵・乳製品)
- 動物の臓器・皮革
- 精液・受精卵
- 飼料・敷料
- 家畜用医薬品
- はちみつ
- バター
管轄省庁
- 動物検疫所(農林水産省)
- 関連リンク:肉を輸入する方法
ワンポイント
海外からお肉を輸入する人、海外へ輸出する人のどちらも規制の対象です。
植物防疫法
植物に有害な病害虫の侵入や蔓延を防ぐための法律です。輸入される植物や農産物の検疫を実施し、国内の農業生産を保護します。
代表品目
- 生鮮果物・野菜
- 観賞用植物・種子
- 球根・苗木
- 穀物・豆類
- 木材・竹材
- 園芸用土壌
管轄省庁
- 動物検疫所(農林水産省)
- 関連リンク:植物を輸入する方法
ワンポイント
加工されていない
あらゆる植物が対象です。
例えば、丸太は植物防疫法の対象です。他方、丸太から製造した角材は対象外です。コーヒーの生豆は、対象。焙煎は対象外です。ようは、輸入時の状態で海外の病害虫が死滅しているのか?が重要です。
銃砲刀剣類所持等取締法
銃器や刀剣類の所持、使用、輸出入を規制する法律です。治安維持のため、これらの武器の取り扱いを厳しく管理し、不正な使用や流通を防止します。
代表品目
- 銃砲・エアガン
- 刀剣類(日本刀・剣)
- 銃砲部品・付属品
- 実包・空包
- 火薬類
- 模造刀剣類
管轄省庁
- 警察庁生活安全局保安課(最寄りの警察署)
- 関連リンク:刃物の輸入
ワンポイント
例えば、海外からモデルガンを輸入する人や包丁(ナイフ)を輸入するときに関係します。
特にこんな商品は注意!
- 酒類
- 電波を発する全ての物
- ACアダプタを使う全ての家電製品、
- 金魚や鯉、生きている犬などの動物
- ペットフード、塩
- 自動車やバイク、自転車等
- 肥料、農薬
- 漢方、アロマ、食器、肥料、証明、洗剤、木材、はちみつ、ハムなどの肉類
その他の注意点
例えば、マスクですね!こちらは、他法令には該当しませんが、パッケージに何らかの誇大広告(例:ウィルスを99%カットなど)をすると、景品表示法違反に該当する可能性があります。また、サプリメントは、効果・効能を標榜することですね!
例えば、これを飲んだから○○間で○○になる。○○効果があるなどをうたうことは禁止されています。効果・効能等を標榜すると薬機法違反+景品表示法違反にも該当します。
また、他法令は、必ずしも一つだけ適用されるのではなく、品目によっては、2個、3個と複数の対象になることがあります。
他法令は、複数適用される可能性があります!
輸出の他法令一覧
- はちみつ → 家畜伝染病予防法
- 牛肉の枝肉 → 家畜伝染病予防法及び輸出貿易管理令
- 観賞用の魚(鯉や金魚以外 → 輸出貿易管理令
- 唐辛子→ 植物防疫法
- 中古自動車 → 道路運送車両法
- 文化財 → 重要文化財保護法
詳細は、税関の輸出関連の他法令一覧をご覧ください。
他法令の調べ方
他法令は、税関の実行関税率表や統計品目表の他法令コードに公開されています。
- 実行関税率表
- 税関の事前教示(相談)
1.実行関税率表
実行関税率表とは、品目毎に関税率を設定している表です。この表には、関税率やHSコードの他に「他法令コード」が記載されています。
実行関税率表を開きます。次に該当する思われる品目の「税率」をクリックします。もし、どの品目に該当するかわからない場合は、税関の事前教示を利用します。
税率ボタンをクリックした後に表示される画面です。おそらく、画面の右側が見切れていると思うので、画面下部のバーを右方向に移動します。
右端に「他法令コード」があります。(例:FD)
他法令の一覧が表示されると思います。この一覧の中から該当するコードを見つけます。
2.税関の事前教示
各地の税関でも該当する他法令、関税率やHSコード等を教えてくれます。なお、税関の回答内容に一定の拘束力を持たせる「事前教示制度」もあります。
他法令コードの一覧
- AN (家畜伝染病予防法)
- CR (化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
- FD (食品衛生法)
- FM (主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)
- IA (特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)
- IL (輸入承認)
- IQ (輸入割当)
- JK (事前確認 (冷凍くろまぐろ等))
- MA (畜産経営の安定に関する法律)
- NA (麻薬及び向精神薬取締法)
- PA (医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
- PD (毒物及び劇物取締法
- PL (植物防疫法)
- SP (砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律)
- WA (ワシントン条約)
他法令の中でも特に注意すべき品目4選
輸出入する貨物の内、特に次の貨物には、注意しましょう!
- 外為関係の貨物
- 玩具・乳児用品
- ハム、ソーセージなどの食肉関連
- 化粧品、サプリ、バスソルトなどの美容関連品
1.外為関係の貨物
- 小型無線機を輸出する。
- ○○測定器を輸出する。
- 漁船を輸出する
など、物品の大小にかかわらず、武器開発につながる産品や日本の産業に致命的な損害を与える可能性がある貨物は、輸出貿易管理の対象です。非常に細かく指定されているため、必ず確認をしましょう!
2.玩具・乳児用の関連用品
おもちゃや乳児が使う関連用品は「口に入れる可能性」があるため食品衛生法の確認が必要です。しかし、一律にこの規制が適用されるわけではありません。
例えば、輸入する商品の説明部分に「6歳以上を対象にした~」「本体と付属部分が分離しないようにする」などと表記することで、食品衛生法の規制を受けないときもあります。
もし、他法令の規制を受けない貨物のときは、税関に「他法令の非該当証明書」を提出します。これにより、税関の審査が完了しだい、輸入が許可されます。
食品衛生法の規制を受けるか、受けないかは、個々の商品の形状・パッケージによっても異なるため、詳しくは最寄りの食品検疫所に相談します。
3.ハム・ソーセージ・食肉関連用品
基本的に口に入れる食べ物は、食品衛生法の適用を受けます。その他、肉類は、家畜伝染予防法が関係します。外国のハムやソーセージなどを輸入する方は要注意です!
4.石鹸、バスソルト、アロマ関連品
東南アジアの国々では、南国特有の果物を利用した石鹸があります。色、形、香りとも日本人の心を掴む製品に仕上がっているため、これを購入して日本で販売したいと考える人が多いです。しかし、この類のビジネスは、薬機法が関係するため要注意です。
- 化粧品を輸入する起業などを考えないほうが良い理由
- 化粧品の輸入代行会社まとめ 個人かつ小資金でも可能なの?
行政機関に他法令の確認をするときの注意点
食品検疫所、税関、植物防疫所など、貨物について他法令の確認を受ける場合は、必ず以下の項目を書類などに記載して、トラブルになったときの証拠として保管します。
- 相談日時
- 相談先(税関、名古屋食品検疫所等)
- 担当者の電話番号
- メールアドレス
- 担当者の名前
- どういう問い合わせをし、どういう回答を得たのか?
これらの項目を時系列で書き留めておきましょう。以降、何らかの諸問題が発生したときに、保存した情報を基に弁解できる余地ができます。
参考:他法令に違反するとどうなる?
「海外から商品を購入できる=日本に輸入はできる」
このように考えては危険です。日本の輸入規制上、禁止されている?いないのか?、必要な書類は、用意できるのか?で考えます。
もし、この順序を間違えると…..
- 成田空港にCBDオイルが到着しているのに貨物をとめられている。
- 名古屋港に乳児向けのぬいぐるみが到着しているのに留められている
- サプリのパッケージに効果や効能が標榜されているから留めらている
などの様々なトラブルにつながります。当然、トラブルが発生しているときも貨物を保管する料金は、どんどんと積算されていきます。どんなに急いでも2週間から3週間はかかります。その間の費用は、すべての輸入者の負担です。
ようやく分析結果が出たと思ったら、どうやら日本では禁止されている成分が検出されました。したがって税関としては、輸入不許可。貨物は全量破棄又は、積戻しの選択をします。もちろん、これらの費用を含めて、輸入者が負担します。
手順を踏まない輸入は、どれほどリスクが高いかご理解いただけましたでしょうか?輸入他法令は、輸入ビジネスを実行する上で非常に重要です。決して軽く考えず、輸入を実行する前に入念に準備をしておくことが重要です。
関連記事:通関用語 他法令(たほうれい)って何?|フォーサイト
まとめ
- 一般的な貨物は税関の輸入許可飲のみ
- 関税関係法令以外の法律が関係する貨物がある。
- 上記の貨物を他法令=輸入規制という。
- 他法令はしっかりと理解してから輸入を実行すること
輸出入と国際輸送の手引き
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