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海外から来た荷物が何らかの原因により破損等をしている場合、誰にクレームを言えばいいのでしょうか? 船会社? フォワーダーですか? そこで、この記事では、貨物ダメージが発生したときの求償方法、クレームノーティスの仕組みをご紹介していきます。
この記事の要点
- 到着貨物にダメージがあった場合は、すぐに保険会社に連絡。
- 写真撮影など証拠の保全に努める。
- 同時に船会社に対して「クレームノーティス」を作成し、ダメージを宣言する
海上保険の求償とクレームノーティス
せっかく商品を輸入できたと思ったら、貨物がダメージを受けていて、使い物にならないことがあります。ダンボール(外箱)が無残な形をしているのは当たり前です。中には「なぜ、ここに穴があく?」と、思わず考え込んでしまうダメージもあります。
例えば、コンテナの穴による水濡れです。コンテナは、船の甲板部分(デッキ)に積載されるため、塩分を含んだ海風や炎天下にさらされることが多いです。当然、それらの影響によりコンテナへのダメージは大きく、コンテナの外壁部分に穴があきます。そして、穴から大量の塩水が入り貨物にダメージを与えます。
塩水によるダメージは、商品的な価値をほとんどなくすため、結局、商品を破棄するか、送り返すかのどちらかの選択を迫られます。もし、この損害を誰も補償してくれないときは、輸入者がすべて被害を受けることになりますね。これに対処するのが海上保険です。
海上保険は、水濡れによる貨物事故他、荷役作業中、船の荷崩れ、座礁(ざしょう)、沈没などのリスクも補償してくれます。貿易上、必須の保険です。この記事は、貨物ダメージを発見した際、どのような流れで保険金を請求すれば良いのかを説明します。
海上保険を請求する2つのパターン
海上保険の請求は、次の2つのパターンがあります。
- 荷受け時に損傷がわかる(LCL貨物、在来船、航空貨物など)
- 荷受け時に損傷がわからない(FCL貨物)
コンテナの貨物は、コンテナを開けない限り、ダメージの有無がわかりません。一方、LCLは、CFSにて、コンテナから荷物を取り出す(デバン)ため、引き受け前に貨物のダメージがわかります。まずは、輸送形態による違いを頭にいれておきましょう!
海上保険を請求(求償)するまでの流れ
海上保険を請求する流れは、次の4つです。
- 貨物のダメージ発見
- 保険会社に報告
- 保険会社による調査
- 支払いを受ける
ただし、大前提として「コンテナ単位/FCLであるのか?」「コンテナ未満/LCLであるのか?」の違いがあります。まずは、ご自身がどちらの輸送方法かを確認してください。船荷証券のFCLかLCLでわかります。
関連記事:FLCとLCLの違い
1.貨物がFCL(コンテナ単位)の場合
コンテナ単位で輸入するときは、貨物のダメージを発見するのが「自社でデバン(コンテナから出す作業のこと)」をするタイミングです。コンテナは、荷主のもとに到着するまでは、誰にも開封さなれいからです。(税関検査のみ)コンテナ到着後、貨物にダメージが見つかったら3日以内に保険会社、フォワーダー等に通知します。
具体的には、保険会社には、貨物のダメージ報告と対応手順の確認します。船会社には「Notice of Claim」を発行して、貨物へのダメージが発生したことを宣言します。FCLの場合の求償手続きは、これらのポイントを含めて、以下の1~8のステップで進めていきます。
- 輸入許可を得て、港から貨物を引っ張ります。
- 自社の倉庫でデバンしていたら…貨物のダメージ発見!
- 保険会社に状況の報告と取るべき対応を相談
- 船会社に対して「Notice of Claim」を発行して、貨物のダメージを宣言します。=予備クレーム
- 日本海事検定協会などに依頼して、サーベイを実施(客観的に損傷があることを立証する)
- サーベイにより損害額が確定。この金額を保険会社に請求します。=本クレーム
- 保険会社は、輸入者に対して損害額を支払い。
- 保険会社は、船会社に代位請求権を行使して損害額を請求
- 船会社から保険会社に損害金が支払われて、この件は終了
以下で特にポイントになる点をご紹介します。
3.保険会社へ詳細な状況を報告
輸入貨物にダメージがある場合は、できるだけ早く保険会社に通知します。遅いほど、保険金が支払われる可能性は低いです。なお、このときは、できるだけ多くの証拠書類を保存します。具体的には、写真を大げさなほど撮り、どのような被害が発生しているのかがを写真を通して判断できるようにします。できれば、どれくらいの貨物がやられているのか? 商品価値はどれくらい失われているのか? なども説明します。
4.船会社へクレームノーティスを発行(予備クレーム)
貨物にダメージがあるときは、保険会社とは別で船会社に「Notice of Claim」を作成して、正式な書面として提示します。この写しを担当する保険会社にも渡します。海上保険の請求は、この3と4の部分の初動をいかに早くできるかにかかっています。船会社への通知は、到着後、3日以内。航空貨物の場合は14日以内と決められています。期限を超えると、無事に運送完了とみなされます。
以上がFCLで貨物ダメージが発生していた場合の求償手順です。次に「LCL(コンテナ未満単位)」のときの求償方法をご紹介します。
■ポイント
- コンテナ輸送は、第三者による損傷認定(リマーク)がつかない。
- したがって、証拠保全や第三者機関に依頼して、客観的に損害を立証する必要がある。
- クレーム通知は、船便で3日。航空便で14日まで決まっている。その後は、一切、クレームは不可
2.LCL(コンテナ未満貨物)における求償方法
コンテナ未満で輸入される貨物は、ダメージが判明するタイミングが違います。これは、LCLの特徴でもあります。コンテナ未満で輸入されると、まずは本船からコンテナごとおろされます。その後、コンテナを港近くの倉庫へ移動して、ここでデバン作業(取り出すこと)をします。このとき、係りの人が、貨物のダメージ状況を確認していきます。ダメージが見つかれば「リマーク」されて情報として上がってきます。
貨物情報は、港湾系の業者と税関などをつないでいる「ナックス」に登録されます。残念ながら、一般の方は、デバンされた時点でリマーク(何らかのダメージ)があるかどうかはわかりません。もし、心配なときは、通関業者を通しリマークの内容を確認します。リマークがある場合は、デバンをした倉庫に対して「デバンニングレポート」を取り寄せます。
在来船の場合:ボートノートに記載されている。
デバンニングレポートには、貨物のダメージ内容が詳しく書かれています。よくあるリマークは「slightly broken」です。これは、貨物全体のおおむね30%以下が破損していることを意味します。どのような表現が、どれくらいのダメージにあたるのは「ナックスのサイト」で定義されています。
デバンニングレポートは、後ほど、保険請求の時に必要になるため、自社で直接取り寄せるか、通関業社経由で取り寄せるようにしてください。LCLの保険求償は、これらの点を含めて、以下の1~9の流れによって手続きをします。
- 本船からコンテナがおろされます。
- 港近くにある倉庫へ移動してデバンされます。
- デバン中に貨物状況を確認していきます。問題があれば、リマーク表示します。
- 貨物の搬入が上がると、リマーク表示を確認できます。通関業者は、リマークの内容を確認するために、デバン倉庫に「デバンニングレポート」を請求します。
- デバンニングレポート上、特に問題がなければそのまま進みます。問題があれば、さらに電話などで状況を詳しくききます(デバン倉庫へ)
- 5で貨物のダメージが大きいと判断した場合は、輸入者へその旨を伝えます。
- 輸入者は、貨物にダメージが発生したことを保険会社に伝えます。同時に運送会社に対してクレームノーティスを通知します。
- 保険会社は、デバンニングレポートや貨物の写真などで損害額を判定します。(サーベイ)
- 損害額が確定したら、保険会社は、輸入者に対して保険料金を支払う。
- その後、保険会社は、代位請求権を行使して、運送会社(船会社)に対して損害額を請求します。
コンテナ未満で輸入するときは、港でのデバン作業によってダメージが発見されます。そして、このダメージは「デバンニングレポート」として報告されます。輸入者は、このデバンニングレポートを入手して、できるだけ早く保険会社に伝えます。そのときは、デバン倉庫にお願いをして、写真などの証拠保全をお願いして下さい。
デバン倉庫は、どこに書いてあるの? → アライバルノーティスの右下あたり記載されている倉庫です。
まとめ
海上保険を請求するときは、輸入する貨物が「コンテナ単位(FCL)」か「コンテナ未満(LCL)」かによって、請求までの流れが変わってきます。ただし、重要なポイントは同じです。「1.ダメージを発見したらできるだけ早く保険会社に伝えること」「2.ダメージを証明する証拠をたくさん保存すること」「3.勝手な判断をしないこと」の3つです。これらを守るようにすれば、海上保険の求償手続きはできます。
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