輸出する貨物のうち、武器開発に転用できる物を規制するのが「輸出貿易管理令(外為法)」です。この法律は、具体的な品目をリスト化して規制する「リスト規制」と、リスト以外の物をまとめて規制する「キャッチオール規制」の2つで成り立ちます。規制対象の産品を輸出する人は、規制内容を確認(該非判定)、対象であれば、輸出先ごとのルールに従い手続きを進めます。
輸出規制の対象になるのかは、輸出する貨物だけでは判断しません。「技術」も対象です。そして「どこの国に輸出するのか?」も関係します。この場合のどこへ?とは、輸出先の国と、輸出先から販売される最終ユーザーなどを含めて判断します。もし、輸出先が「ホワイト国」であるときは、これら輸出貿易管理上の規制が緩やかになります。そこで、この記事では、ホワイト国の定義と、一覧についてご紹介していきます!
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ホワイト国とは?
輸出貿易管理上、どこの国へ輸出するのか?は大切です。同じ商品を輸出するときであっても、それがホワイト国なのか、ホワイト国以外なのか?によって、規制対象になるのかかが変わるからです。ホワイト国の条件は次の通りです。
ホワイト国の条件と定義(グループA)
ホワイト国とは、日本と同様に輸出のコントロール(キャッチオール規制を導入)して、世界の平和を脅かす商品や技術の菅理を徹底している国です。ホワイト国に指定されいる国は、それぞれでも輸出管理を徹底しているため、必要最小限の規制に留める優遇をしています。ただし、ホワイト国の優遇措置は、厳格に管理れており、ホワイト国を経由した非ホワイト国への迂回輸出(日本→韓国→北朝鮮)などは認めていません。
ホワイト国の一覧(締約国)
ホワイト国には、以下の26か国が該当します。一部の国は当てはまりませんが、基本的には先進国と言われる国々がホワイト国の対象です。これらのワイト国に輸出するときは、リスト規制の対象にはなるものの、キャッチオール規制は、対象外です。「ゆるやかな規制」とは、このキャッチオール規制の不適用にあります。(詳しくは後述)
*タイ等、ほとんどの国は、このグループA(旧ホワイト国)には、含まれていません。
ヨーロッパ | オーストリア | ベルギー | ブルガリア | イギリス |
デンマーク | フィンランド | フランス | ドイツ | |
チェコ | ギリシャ | ハンガリー | アイルランド | |
イタリア | ルクセンブルク | オランダ | ノルウェー | |
ポーランド | ポルトガル | スペイン | スウェーデン | |
スイス | ||||
北米 | アメリカ | カナダ | ||
オセアニア | オーストラリア | ニュージーランド | ||
南米 | アルゼンチン | |||
アジア | 8/2 韓国→除外決定! |
グループA(ホワイト国)のメリット
ホワイト国に指定されていると、次の2つのメリットがあります。
- キャッチオール規制の対象外になる。
- 一般包括許可(ホワイト許可)を受けられる。
1.キャッチール規制の対象外になる。
キャッチオール規制とは、武器開発に転用できる物としてリスト化されている物以外であっても、ある一定の「要件(客観要件とインフォーム要件)」を確認でき次第、輸出の許可を必要とする仕組みです。
例えば、全体の貨物がA~Zまでの22種類があるとします。このうち、A~Dまでの貨物は、禁止リストに指定されている、E~Zの貨物は、禁止されていないとします。この場合、E~Zの部分の貨物について考えると、次のように解釈ができます。
「A~Dだけを禁止しているだけだから、E~Zまでは規制の対象ではないから無条件に輸出しても良い?」
いわゆるリスト規制の弊害です。これをカバーするのが「キャッチオール規制」です。キャッチオール規制は、リスト規制から外れた産品をまとめて規制します。ただし、反面、輸出効率が下がるため、輸出管理徹底している国(グループB=ホワイト国)は、キャッチオール規制の対象外です。
キャッチオール規制には、大量破壊兵器のキャッチオール規制と通常兵器のキャッチオール規制がある。
2.一般包括許可を受けられる。
輸出貿易管理令の輸出には、包括許可と呼ばれる仕組みがあります。ある一定の期間や相手など、輸出先の条件を限定することにより、個別に許可を取らなくても良いようにしています。包括許可の内訳は、次の通りです。いわゆるグループA(ホワイト国)は、一般包括許可に含まれます。その他の国は、特別一般包括許可または、特定包括許可により輸出許可を受けます。
今回、韓国は、グループB(ホワイト国以外)に降格したため、この特別一般包括または特定包括により手続きをとることになります。
許可 | 意味 |
特別一般包括許可 | グループA以外の地域を仕向け地とする一定の品目を包括的に許可 |
一般包括許可(グループA限定) | グループAを仕向け地とする一定の品目を包括的に許可(電子申請) |
特定包括許可 | 継続的に特定の相手と行っている輸出を包括的に許可 |
別返品等包括許可 | 返品等に対する包括的な許可 |
特定子会社包括許可 | 日本企業の子会社に対する包括許可 |
一般包括許可とその他の包括許可の違いとは?
一般包括許可とその他の包括許可では、申請に必要となる書類が変わります。一般包括許可の場合は、統括責任者及び該非確認責任者に関する登録書を出すだけです。一方、特別一般包括許可や特定包括許可の場合は、2~最大5種類の書類が必要です。
韓国がホワイト国から除外されるとどうなる?
韓国がホワイト国から除外されると「キャッチオール規制」の対象国の扱いを受けます。キャッチオール規制とは、客観要件とインフォーム要件の2つから成り立ち、どちらかに当てはまるとき、許可を必要とする仕組みです。
韓国では、この内、客観要件の「需要者確認」が厳しいと思います。需要者確認とは、輸出先の相手だけはなく、輸出先から流れる先(エンドユーザー)を含めて武器開発の懸念がないか?を確認します。報道もされている通り、韓国は、北朝鮮との取引をしている可能性が非常に高いため、韓国をホワイト国から除外することは当然です。
では、今後の韓国経済と実際の通関実務の現場には、どのような影響があるのでしょうか?
韓国経済とホワイト国除外の影響!?
これまでの韓国は、ホワイト国に指定されていたため、キャッチオール規制の不適用の特権を受けてきました。しかし、今後は、上記の包括許可を取得しない限り、輸出毎に許可のための審査を受ける必要があります。また、キャッチオール規制の対象になるため、これまで規制を受けていなかった品目まで包括許可を取得する必要があります。(許可が出るのか?は別のお話)
また、若干、発展しすぎた予想ではありますが、日本政府は、韓国をホワイト国から除外することで、韓国にいる製造企業の撤退を促しているのではないか?と考えます。これまでは、物価の低いアジア圏の中で、唯一、ホワイト国であったため、先端素材を輸入してそれを製造する企業には、韓国に進出するメリットがありました。しかし、今後は、他のアジアとほぼ同様の扱いになるため、韓国に製造工場を設ける理由が小さくなると考えています。
単なる製造工場としての「場所」であれば、韓国よりも優良な所はいくらでもあります。感情的な部分でも商売がしやすい国も多いです。そういう意味でも、日本政府は「さっさと韓国から撤退しろ」とのメッセージを出しているような気もします。ちなみに、直接の関係はございませんが、韓国は、国家間の条約を守らない国としても認識が広がっています。
ウィーン条約の27条にも規定されている通り、条約は、各国の国内法に優先されるべき存在であり、国内法を援用して、条約等を破ることはできないとされています。やはり、世界各国が合意したルールすら守れない国にホワイト国認定はおかしいです。
第二十七条(国内法と条約の遵守) 当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。この規則は、第四十六条の規定の適用を妨げるものではない。
引用元:同志社大学
予備知識1
キャッチオール規制には、大量破壊兵器キャッチール規制と通常兵器キのャッチオール規制があります。上記で述べた「どこのグループに属する国か」によって、この規制の対象の範囲や基準が変わります。輸出先がホワイト国の場合は、キャッチオール規制の対象にはなりません。ただし、ホワイト国であっても「リスト規制」は行われます。
キャッチオール規制の詳細は「キャッチオール規制のまとめ」ページをご覧ください。
予備知識2.輸出貿易管理令に違反するとどうなる?
輸出貿易管理令は、外為法の中に規定されています。つまり、輸出貿易管理令に違反をして不正に輸出した場合は、最悪、逮捕されます。また、経済産業省の公式サイトで「違反会社」として掲載されるため、社会的なイメージダウンは避けられません。今後、韓国企業などによる日本人技術者の引き抜きなどが行われる可能性もありますが、この場合は「技術情報」にあたり、輸出貿易管理令の規制下に置かれるはずです。
追加情報:ホワイト国の通称廃止。グループ化表記に変更(2019年8月2日)
2019年8月2日、ホワイト国から韓国を削除する閣議決定。合わせて、これまでの「ホワイト国」の表記から、グループAなどの表記に変更されることになりました。以前のホワイト国は、グループAに所属。閣議決定で格下げになった韓国は、グループBに所属します。
グループ | 意味 | 主な国 |
グループA | 輸出令別表3の国・地域=旧ホワイト国 | アメリカなど、主要先進国(旧ホワイト国) |
グループB | 輸出管理レジームに参加し、一定要件を満たす国(韓国) | 韓国、トルコなど |
グループC | グループA・B・D以外の地域 | 中国、ベトナム、インド、シンガポールなど |
グループD | 輸出令別表3-2、別表4の地域 | 北朝鮮、イラク、イラン、アフガニスタン、コンゴ、コートジボワール、エリトリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン |
アメリカのホワイト国はどうなっている?
アメリカでいうホワイト国(名称なし)は、EAR(米国輸出規制)のサイトにある「Commerce Country Chart」に記載されています。表中の×が少ないほど、優遇されている国を示します。他にバツが少ない国を見ると、ほぼ日本のホワイト国と同様の国を指定していることがわかります。
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まとめ
輸出貿易管理上、ホワイト国とは輸出管理や規制が徹底されているため、ゆるやかな規制がされている国を指します。具体的には、ヨーロッパやアメリカなどが対象です。ホワイト国に指定されている場合は、キャッチオール規制の対象から除外されます。これは、一般的な国々へ輸出するときよりも、緩やかな規制です。。

