輸出する貨物のうち、武器の転用や開発につながるおそれがある物を規制するのが「輸出貿易管理令(ゆしゅつぼうえきかんりれい)」です。この法律は、具体的な品目をリスト化して規制する「リスト規制」と、リスト以外の物をまとめて規制する「キャッチオール規制」の2つで成り立っています。輸出者は、これらの規制から、輸出する商品が「規制対象になっていないのか?」を確認しています。
しかし、輸出規制の対象になるのかの判断は、輸出する貨物だけで行いません。「どこの国へ輸出するのか?」によっても、輸出規制の対象になるのかが変わってきます。この場合のどこへ?とは、輸出先の国と、そこへ住んでいるユーザーのことを指します。もし、この輸出先が「ホワイト国」であるときは、武器管理が徹底されている国として、輸出貿易管理上の規制が緩やかになります。
この記事では、ホワイト国とは、どのような国々を指すのか?という定義と、一覧についてご紹介していきます。
ホワイト国とは?
目次
輸出貿易管理上、どこの国へ輸出するのか?は大切です。同じ商品を輸出するときであっても、それがホワイト国なのか、ホワイト国以外なのか?によって、規制対象になるのかかが変わってくるからです。ホワイト国の条件は次の通りです。
ホワイト国の条件と定義
ホワイト国とは、日本と同じように輸出のコントロールをしていて、世界の平和を脅かす貨物を出さないことを徹底している国々のことです。これらの国々は、それぞれが輸出管理を徹底しているため、日本としても必要最小限の規制に留めるようにしています。
ホワイト国の一覧
ホワイト国には、以下の27か国が該当します。一部の国は当てはまりませんが、基本的には先進国と言われる国々がホワイト国の対象になります。これらの国々へ輸出するときは、リスト規制の対象にはなるもの、キャッチオール規制については、対象外になります。「ゆるやかな規制」とは、このキャッチオール規制の不適用にあります。(詳しくは後述)
ヨーロッパ | オーストリア | ベルギー | ブルガリア | イギリス |
デンマーク | フィンランド | フランス | ドイツ | |
チェコ | ギリシャ | ハンガリー | アイルランド | |
イタリア | ルクセンブルク | オランダ | ノルウェー | |
ポーランド | ポルトガル | スペイン | スウェーデン | |
スイス | ||||
北米 | アメリカ | カナダ | ||
オセアニア | オーストラリア | ニュージーランド | ||
南米 | アルゼンチン | |||
アジア | 韓国 |
ホワイト国以外は、どのような種類がある?
ホワイト国は、輸出規制の強さを緩めている国々です。では、このホワイト国以外には、どのような区分けがあるのでしょうか? 世界の国々は、次の3つのグループのいずれかに分かれています。「1.非ホワイト国」「2.懸念国」「3.武器輸出禁止国」の3つです。
1.非ホワイト国とは?
基本的にほとんどの国々は、この「非ホワイト国」に該当します。頭に「非」がついていることからわかる通り、ホワイト国以外の全ての国々が対象になります。これらの国々へ輸出するときは、キャッチオール規制の対象になります。
例えば、この非ホワイト国の中には、台湾、中国、タイ、インド、シンガポールなどが該当します。ただし、次に示す「懸念国」と「武器輸出禁止国」に指定されている国は、このグループには入りません。
2.懸念国とは?
懸念国(けねんこく)とは、国内の政情が不安定で、特に戦争が勃発しそうな国々のことを指します。具体的には、輸出貿易管理令別表4で指定されている北朝鮮、イラン、イラクのことを指します。イランは核開発、北朝鮮は核開発に加えて、ミサイルなどをぶっ放す「問題国家」です。これらの国々が「懸念国」として指定されています。
3.武器輸出禁止国とは?
国連において武器に関する輸出が禁止されている国々を指します。具体的には、以下の11か国のことを言います。基本的には、アフリカや中東系の国々が指定されることになります。
アフガニスタン | コンゴ民主共和国 | コートジボワール | エリトリア |
イラク | レバノン | リビア | 北朝鮮 |
ソマリア | スーダン |
ホワイト国だとどうなるのか? キャッチオール規制との関係
先ほど、輸出する国がホワイト国であると、緩やかな規制になるとお伝えしました。この緩やかな規制とは「キャッチオール規制の対象外」とすることを指します。
キャッチオール規制とは、禁止リストに表示されていない物を一括で規制するための仕組みのことです。
例えば、全体の貨物がA~Zまでの22種類があるとします。このうち、A~Dまでの貨物は、禁止リストに指定されている、E~Zの貨物は、禁止されていないとします。この場合、E~Zの部分の貨物について考えると、次のように解釈することができます。
「A~Dまでだけを禁止しているだけだから、E~Zまでは規制の対象ではない=輸出ok?」
具体的に禁止物品をリストで規制すると、そのリストに書かれていない物は「規制の対象外」になってしまう可能性があります。これがリスト規制の根本的な問題です。この問題を解決するべく、リスト規制からもれてしまう部分(例:E~Zまでの部分)をまとめて規制するのが「キャッチオール規制」です。ホワイト国への輸出は、このキャッチオール規制の対象から除外されます。
ホワイト国に指定されていると、キャッチオール規制の対象外になります。
予備知識
キャッチオール規制には、大量破壊兵器キャッチール規制と通常兵器キャッチオール規制があります。上記で述べた「どこのグループに属する国か」によって、この規制の対象の範囲や基準が変わります。輸出先がホワイト国の場合は、どちらのキャッチオール規制の対象にはなりません。ただし、ホワイト国であっても「リスト規制」は行われるため、忘れないように注意しましょう!
キャッチオール規制について詳しく知りたいときは「キャッチオール規制のまとめ」ページをご覧ください。
まとめ
輸出貿易管理上、ホワイト国とは輸出管理や規制が徹底されているため、ゆるやかな規制がされている国を指します。具体的には、ヨーロッパやアメリカなどが対象になっています。このホワイト国に指定されている場合は、キャッチオール規制の対象から除外されます。これは、一般的な国々へ輸出するときよりも、緩やかな規制をしているだけになります。ホワイト国とは「キャッチオール規制の対象外の国」ということになります。