輸出産品の内、武器開発に流用できる可能性が高い物は「輸出貿易管理令(外為法)」で規制されています。リスト規制とキャッチオール規制の2つでコントロールしています。規制対象の産品を輸出する人は、規制内容を確認し(該非判定)、対象の場合は、経済産業大臣より輸出許可を受けます。
い地域①(旧ホワイト国)は、後者の「キャッチオール規制」について優遇する国々です。この記事では、い地域①(旧ホワイト国)の意味、概要、優遇策と韓国に関する情報、アメリカのホワイト国などを説明していきます。
ホワイト国(い地域①)とは?
輸出貿易管理上、どこの国へ輸出するのか?は大切です。同じ商品を輸出するときでも、ホワイト国なのか、ホワイト国以外なのか?によって、規制対象になるのかかが変わるからです。
い地域①(旧ホワイト国)の意味と定義
ホワイト国とは、日本が設定する外為法(輸出貿易管理令等)で設定するキャッチオール規制に対して、優遇措置を与えている国です。2023年現在は「輸出貿易管理令別表第3の国」や「い地域①」などと表現されています。
輸出貿易管理とは、世界の平和を維持する為に武器開発につながる恐れがある「貨物」や「技術情報」を経済産業省が管理する仕組みです。規制対象の貨物は、輸出貿易管理令の下、リスト規制とキャッチオール規制の2つから判断されます。旧ホワイト国は、この内、リスト規制の取り扱いに対して優遇する国々です。
- い地域①の国(旧ホワイト国)=キャッチオール規制の対象外
- い地域①以外の国=キャッチオール規制の対象
輸出貿易管理の詳細は「ゼロからわかる輸出貿易管理入門」をご覧下さい。
い地域①(ホワイト国)の優遇措置は、厳格に管理されており、ホワイト国を経由した非ホワイト国への迂回輸出(日本→韓国→北朝鮮)は認められていません!
い地域①(旧:ホワイト国)の一覧
ホワイト国には、以下の26か国が該当します。一部の国は当てはまりませんが、基本的には先進国と言われる国々がホワイト国の対象です。これらホワイト国に輸出するときは、リスト規制の対象にはなるものの、キャッチオール規制は、対象外です。「ゆるやかな規制」とは、このキャッチオール規制の不適用を意味します。
*タイ等、ほとんどの国は、このグループA(旧ホワイト国)には、含まれていません。
ヨーロッパ | オーストリア、ベルギー、ブルガリア、イギリス、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス |
北米 | アメリカ、カナダ |
オセアニア | オーストラリア、ニュージーランド |
南米 | アルゼンチン |
アジア | 韓国(2023年6月現在、追加予定) |
い地域①×グループA(ホワイト国)のメリット
い地域①(ホワイト国)に指定されていると、次の2つのメリットがあります。
- キャッチオール規制の対象外になる。
- 一般包括許可(ホワイト許可)を受けられる。
1.キャッチール規制の対象外になる。
キャッチオール規制とは、武器開発に転用できる物としてリスト化されている物以外でも、ある一定の「要件(客観要件とインフォーム要件)」を確認でき次第、輸出の許可を必要とする仕組みです。
■アメリカ商品の海外通販&仕入れ
- 商品ページをラインで送るだけ輸入ができる。
- リチウムイオンなどの危険品を輸送できる。
- アメリカの大型家具を輸入できる
- 日本へ出荷してくれない商品を転送してくれる。
例えば、全体の貨物がA~Zまでの22種類があるとします。このうち、A~Dまでの貨物は、禁止リストに指定されている、E~Zの貨物は、禁止されていないとします。この場合、E~Zの部分の貨物について考えると、次のように解釈ができます。
「A~Dだけを禁止しているだけだから、E~Zまでは規制の対象ではないから無条件に輸出しても良い」
リスト規制の弊害です。これをカバーするのが「キャッチオール規制」です。キャッチオール規制は、リスト規制から外れた産品をまとめて規制します。ただし、反面、輸出効率が下がるため、輸出管理を徹底している国(い地域①)は、キャッチオール規制の対象外としています。
キャッチオール規制には、大量破壊兵器のキャッチオール規制と通常兵器のキャッチオール規制があります。
2.一般包括許可を受けられる。
輸出貿易管理令の輸出には、包括許可と呼ばれる仕組みがあります。ある一定の期間や相手など、輸出先の条件を限定することにより、個別の許可を不要としています。
包括許可の内訳は、次の通りです。いわゆるい地域①(旧:ホワイト国)は、一般包括許可に含まれます。その他の国は、特別一般包括許可または、特定包括許可により輸出許可を受けます。
今回、韓国は、グループB(ホワイト国以外)に降格したため、この特別一般包括または特定包括により手続きをとることになります。
参考情報:韓国がホワイト国から除外されるとどうなる?
韓国がホワイト国から除外されると「キャッチオール規制」の対象国の扱いを受けます。キャッチオール規制とは、客観要件とインフォーム要件の2つから成り立ち、どちらかに当てはまるとき、許可を必要とします。
韓国では、この内、客観要件の「需要者確認」が厳しいと思います。需要者確認とは、輸出先の相手だけはなく、輸出先から流れる先(エンドユーザー)を含めて武器開発の懸念がないか?を確認することです。報道もされている通り、韓国は、北朝鮮との取引をしている可能性が高いため、韓国をホワイト国から除外することは当然です。
2019年8月2日追加:ホワイト国の通称廃止。グループ化表記に変更
2019年8月2日、ホワイト国から韓国を削除する閣議決定。合わせて、これまでの「ホワイト国」の表記から、グループAなどの表記に変更されることになりました。以前のホワイト国は、グループAに所属。閣議決定で格下げになった韓国は、グループBに所属します。
グループ | 意味 | 主な国 |
グループA | 輸出令別表3の国・地域=旧ホワイト国 | アメリカなど、主要先進国(旧ホワイト国) |
グループB | 輸出管理レジームに参加し、一定要件を満たす国(韓国) | 韓国、トルコなど |
グループC | グループA・B・D以外の地域 | 中国、ベトナム、インド、シンガポールなど |
グループD | 輸出令別表3-2、別表4の地域 | 北朝鮮、イラク、イラン、アフガニスタン、コンゴ、コートジボワール、エリトリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン |
2023年6月現在のグループ区分
い地域②、ろ地域、は地域①、は地域②、に地域①、に地域②、ほ地域、へ地域、と地域①、と地域②、ち地域、り地域
追加情報:韓国の「い地域①」に追加する為の意見募集(2023年4月28日)
詳細は、経済産業省のページをご覧下さい。
アメリカのホワイト国はどうなっている?
アメリカでいうホワイト国(名称なし)は、EAR(米国輸出規制)のサイトにある「Commerce Country Chart」に記載されています。表中の×が少ないほど、優遇されている国を示します。他にバツが少ない国を見ると、ほぼ日本のホワイト国と同様の国を指定していることがわかります。
まとめ
輸出貿易管理上、ホワイト国とは輸出管理や規制が徹底されているため、ゆるやかな規制がされている国を指します。具体的には、ヨーロッパやアメリカなどが対象です。ホワイト国に指定されている場合は、キャッチオール規制の対象から除外されます。これは、一般的な国々へ輸出するときよりも、緩やかな規制です。。
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