武器や武器の開発につながる貨物は、輸出規制されています。この規制には「貨物自体の規制」と「役務(えきむ)の規制」の2つがあります。貨物の規制とは、貨物その物の輸出を制限することです。
一方、役務取引とは「貨物を作るための技術提供」を規制するものです。具体的には、輸出規制されている貨物の「製造や使用に必要な情報」です。輸出者は、これら2つの規制から、輸出取引に問題がないかを確認します。
今回は、貨物を作るための技術情報=役務取引の輸出規制について解説します。
役務取引とは何か?
武器その物や武器の開発につながる貨物は、輸出規制がされます。この規制と合わせて行われるのが「貨物の技術情報を提供すること=役務取引」です。ここで言う技術情報とは、貨物の設計書や仕様書、製造や使用に関する必要なマニュアル、取り付け図などです。これらを手段や目的を問わず提供することを規制します。
技術情報と手段・目的とは?
技術情報例
- 貨物の仕様書
- 図面及びマニュアル
- 組み立て方法や据え付け方法など
手段や目的例
- 海外での技術指導
- 海外からの研修生受け入れ
- 電子的な送信、ダウンロードなど
- 紙に印刷して渡したり、何らかの媒体に記録したものを渡すことなど
それぞれについて詳しく説明していきます。
技術を提供するための4つの事例
貨物の生産に関する技術の提供(役務取引)は、主に次の4つのパターンがあります。1番と2番は、研修生を介して技術の提供を行う仕組みのこと、3番は、電子的な何かによって技術を渡すこと、4番は、マニュアルなどにして、貨物として提供することなどになります。これらの方法によって、後に説明する特定の国の人に対して、特定の技術を提供するときは、輸出規制の対象になる可能性があります。
1.海外で技術指導をすること
提携関係にある海外の企業へ技術指導などの名目で、自社の社員を派遣して、現地で指導することです。この場合、現地での指導=役務の提供とみなされて、輸出規制の対象になる可能性があります。
2.海外からの研修生受け入れて技術指導を行うこと
海外の提携関係にある企業から、国内の自社工場などへ研修生(非居住者)を受け入れて指導することです。日本国内で行われているとはいえ、外国人(非居住者)への指導が役務の提供とみなされる可能性があります。
3.電子的な方法で送信すること、ダウンロードによる提供など
貨物の技術面の情報を電子的な何かに変換して提供することです。
例えば、電子メールに添付して送付する、自社サーバーにアップロードして提供する。クラウドなどを経由して、送信する方法などがあります。いずれも、相手に「製造技術を提供すること自体」が輸出規制の対象です。
4.紙に印刷して渡したり、何らかの媒体に記録したものを渡すこと
貨物に関するマニュアルなどを作成して、それを印刷して冊子などにして送付することも役務取引の対象です。その他、パソコンなどにインストールして渡したり、フラッシュメモリなどの記録媒体に情報を入れて渡したりすることも役務取引の対象になります。
全ての役務取引が規制の対象になるのか?
役務取引は、上記4つのパターンのいずれかに当てはまることが多いです。しかし、これら4つのいずれかに当てはまる場合でも、すべての役務取引が規制の対象にならないです。外為法25条では、規制対象の役務を次のように規定します。この2つの内、どちらかに当てはまる役務取引を行うときは、経済産業大臣の許可が必要です。
ポイントは、特定の技術(規制されている貨物を製造するための情報)、特定の国(輸出規制の対象になっている国)、居住者、非居住者などにあります。これらの組み合わせによって、役務取引が規制の対象になるのか、ならないのかが違ってきます。逆にいうと、条件に当てはまらない限り、役務取引の対象になることはありません。
- 特定の技術を特定の国に提供する取引をする居住者と非居住者
- 特定の技術を特定の国に住んでいる非居住者に提供するための取引を行う居住者
居住者と非居住者、特手国、特定技術とは?
基本的に居住者とは、日本に住んでいる日本人、非居住者とは、外個に住んでいる外国人のことを指します。しかし、この定義に関しては、もう少し細かな決まりがあります。決まりによっては、日本人でも非居住者になったり、逆に外国人が居住者の扱いになったりすることもあります。詳しくは「輸出貿易管理令の居住者と非居住者とは?」をご覧ください。
特定の国に住んでいる非居住者に対して、特定の技術を提供することです。この「特定」の部分は、経済産業省が提供している「マトリックス」に詳しく書かれています。
詳細解説記事:輸出管理の居住者と非居住者とは?
まとめ
輸出規制をしている貨物は、貨物その物の規制はもちろんのこと、その貨物を作るために必要になる情報(製造情報や使用情報)なども規制の対象です。この技術情報を提供することを「役務取引(えきむとりひき)」と言います。役務取引が規制の対象になるのかは「特定の国へ特定の技術を輸出しているのか」その取引を「居住者と非居住者の間で行っているのか」などが判断する材料になります。
ただ、どのような条件であったとしても「貨物が輸出規制の対象になっている場合」は、その貨物を製造するための情報も規制の対象になることを覚えておきましょう!
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