この記事は、貿易で使うドレーについて徹底的に解説しています。ドレーの費用、ラウンド料金制、見積もり方法、ドレーで荷受けをする場合の注意点をまとめています。
なお、コンテナのドレー料金のタリフを調べたい方は、こちらをクリックしてください。
ドレージの意味(Drayge)
ドレージとは、馬による「荷車」のことです。馬が荷物を引っ張りながら輸送している姿をイメージしてください。この馬に相当するのが「ドレー」と、荷物がコンテナです。
ドレーのヘッド部分とシャーシ部分(chassis)
こちらがドレーのヘッド、シャーシです。頭の部分に20フィート(6m)や40フィート(12m)のコンテナをつなぎ運びます。国内の輸送先までは、コンテナのまま運ぶため、輸送先ではデバンをします。
ドレーとドレージ、シャーシの違い。
ドレーとドレージの言葉の意味は次の通りです。
- Dray=単なる名詞
- Drayge=コンテナの陸上輸送の総称
- chassis=車台
ドレージは、国境や海港との間をスムーズに輸送するために不可欠な仕組みです。港と港、港と指定の場所間を往復走行するのが特徴です。

ドレーやドレージの言葉の違いはなく、実務上は「ほぼ同じ意味」です。
ドレーのメリットとデメリット
ドレーのメリット、デメリットは、以下の通りです。
メリット
- コンテナのまま運べるので、港からスムーズに配送できる。
- 輸送時間が短縮できるため、納品スピードが早くなる。
- 荷受け側がしっかり準備していれば、コストを抑えられる。
デメリット
- 距離が長くなるほど料金が高くなる(ラウンド制という仕組みのため)
- 時間指定に制限がある場合もある。
- ドレーの運転手が不足しており、希望通りに手配できないことがある。
このように、ドレーには効率的な面もありますが、使い方によってはコストやスケジュール面で注意が必要です。
次は、ドレーを使うタイミングについてご紹介します。
ドレージが関係するときはいつ?
ドレー、ドレーと言葉は聞いたことがある。でも実際、どういう物かわからない方も多いでしょう。特に、海外通販など、比較的、小さな単位の取引経験しかなければ、なおさらです。ここで輸出や輸入取引の内、ドレー輸送が関係するタイミングを確認していきましょう!
まず一つめの条件は「コンテナ輸送単位」で取引をしていることです。輸出でも、輸入でもコンテナ単位が前提です。その上で、次のタイミングでドレージが関係します。
- 輸入のタイミング
- 輸出のタイミング
- 港近郊の移動(ショートドレージ)
1.輸入のケース/港から指定地への輸送
輸入時とドレーは、次のタイミングで関係します。
- 実入りコンテナを載せた本船が到着する。
- 港におろす&輸入通関
- 許可後、コンテナのまま指定の納品場所に輸送する。
- デバン(中身の取り出し後)後、空のコンテナを港に返してもらう。
輸入の場合、3番と4番のタイミングでドレーが関係します。
2.輸出するケース/指定地から港への輸送
輸出時とドレーは、次のタイミングで関係します。
- 通関業者(フォワーダー)に船の予約をする。
- 港から空のコンテナを引っ張ってもらう。(輸送してもらう)
- コンテナに荷物を積める。
- 実入りのコンテナを港に輸送する。
上記の内、2番と4番のタイミングでドレージが関係します。輸出場合は「カット日」が設定されているため、それに間に合うように手配する必要があります。
3.港近郊の移動(ショートドレージ)
その他、ドレージは、次のシーンでも利用されています。輸入者として関係するのは、一番の税関検査にともなうコンテナ移動。いわゆる「ショートドレージ」です。ショートドレージをした場合は、通常のドレージ代金の他、ショートドレージ代金が発生します。
- 税関検査のためのコンテナ移動
- 港近郊の保税倉庫への移動
ドレーの種類
次にドレーの種類を紹介します。ドレーには、以下の種類があります。20F、40Fは長さを示します。(6m、12m)そして、2軸、3軸とは、シャーシについている軸(タイヤ)の数を示します。3軸は、ある一定の重量物を運ぶときに使用します。
- 20F・40Fの2軸
- 20F・40Fの3軸
- 20Fと40Fの2軸兼用
- 20Fと40Fの3軸兼用
- 低床タイプ
2軸と3軸の使い分けは、次の法律に基づき行われています。
- 道路交通法
- 道路運送車両法
- 道路法
上記法律に基づく、具体的な数字上の区分けは、次の通りです。
- 20フィート 2軸 20000kg、3軸 24000kg
- 40フィート 2軸 24000kg 3軸 30000kg
例えば、B/Lなどのコンテナ一覧を見て、その中に20フィート×22000KGのコンテナがある場合は、日本国内で輸送をするときは「3軸シャーシ」を利用します。=タイヤにかかる重量を分散するため。ドレーの手配をするときは、必ず2軸、3軸を伝えましょう。
コンテナ自体は、国際的な形式になっていますが、それを「国内輸送」する際には、各国の法律の規制を受けます。特に国内輸送時の「最大重量」と「偏荷重による傾き」には注意します。
例えば、何らかの原因で貨物が左や右に偏っている場合、走行時には重大な事故につながる可能性がありますね!また、コンテナの積載重量が法定を上回っている場合も同様です。ドレージ輸送をするときは、最大重量と傾きに気を付けましょう!
2軸シャーシと3軸シャーシの違いは?写真や図で確認
2軸と3軸の違いは、シャーシ後方にある後輪部分のタイヤの数です。
関連疑問:隣接軸重とは?
隣接軸重とは、隣り合う(青枠又は赤枠同士のこと)軸重の合計のことです。重さの制限は、車軸の距離で決まります。
- 隣接する軸の距離が1.8m未満=18t
- 隣接する軸の距離が1.8m以上=20t
ドレーの料金/費用
ドレー代金は、次の2つの方式により料金が決まります。
- フラット制
- ラウンド制
1.フラット制
フラット制は、月間の配送本数、配送ルートなどがある程度、固定されている条件の下、配送料金を月単位で固定する仕組みです。月間に一定の輸送量がある場合は、フラット制の方が料金の削減や交渉をしやすいです。
2.ラウンド料金制
ラウンド制とは、港から往復距離を基準にして、標準料金(タリフ)を調べる。その後、標準料金に荷主毎の料率をかけます。
例えば、港から配送先までの片道距離が20キロの場合は….20×2=40で「ラウンド40」の料金区分です。片道距離×2がラウンド料金の考え方です。また、このラウンド40やラウンド50などの距離ごとの価格は「タリフ(標準料金)」が決められています。
- 往復距離→タリフと見比べる
- タリフの金額×荷主毎の料率
- 2の結果が実際に支払う料金
費用相場とタリフ、計算方法は?
ドレーのタリフは、昭和に決められた全国一律(ほぼ)の料金表です。ただし、このタリフは、あくまで「標準料金」の事であり、実際にドレー代金として支払う料金は「料率」に基づき決まります。料率とは、ある数値に対してかける「指数」です。
*後述でタリフの計算ツールがあります。
例えば、一つ1000円の物に対して料率が40%であれば、400円です。実は、ドレーの料金もこの標準料金と料率の関係があります。
ドレーのタリフ金額×荷主毎の料率=支払うべきドレー代金
これが荷主である、あなたがドレー代金として支払う代金の計算方法です。料率は、通関業者やドレー会社との付き合いの程度で変わります。
- 継続的な依頼であること
- 実績があること
などを基準にして、荷主毎に決まっており、基本的に「新規の荷主」には厳しい負担を求めてくることが多いです。
例えば、ラウンド60、タリフが80,000円の所に配送するとしましょう。このとき、荷主Aには、タリフの40%を提示して、32,000円の請求をする。他方、荷主Bには、60%を提示して、48,000円を請求するなどがあります。
- 荷主A=80,000×0.4
- 荷主B=80,000×0.6
同じラウンド(距離)でも、これまでの取引実績により「料率」が上下します。つまり、どれだけタリフの金額がわかっても正確な支払額はわからないのです。もし、ドレージ代も含めて、輸入コストを知りたい場合は、こちらからご依頼ください。

タリフ金額×荷主毎に設定されている料率=荷主が支払うドレー代金
上記の式を覚えましょう!
税関検査時のショートドレージは?
税関検査などをするときは、コンテナターミナルから、税関検査場まで近距離輸送することがあります。この近距離輸送は「ショートドレー」という扱いであり、通常の配送料金に加えて、+10000円~15000円ほどの料金が加算されるのが一般的です。
三軸シャーシの追加料金は?
三軸シャーシを使う場合は、+5000円程の請求がされる場合が多いです。
各種追加料金/サーチャージ(追加費用)
ドレージには、通常のドレー代金の他「サーチャージ(加算金)」があります。ここでは、その種類と内容について確認していきます。主な物は、次の通りです。
各種割り増し料金
- 深夜早朝割り増し 午後10時~午前5時 3割
- 冷凍、冷蔵コンテナ 2割
- 冬季割り増し / 北海道 11/16~4/15 2割
- 冬季割り増し / 新潟、富山、長野、福井、石川、鳥取、島根 12/1~3/31 2割
- 休日割り増し 日曜日祝日 2割
1.ディテンションチャージ
ドレージと関係する代表的なチャージが「ディテンションチャージ」です。これは、港からコンテナを搬出した後、空のコンテナを一定の期間内に返却しないときに発生する加算金です。これと似ているチャージは「デマレッジ」です。こちらは、フリータイムを過ぎた後に、コンテナターミナルから引き取るときにかかります。
- デマレッジ=フリータイム期間外にコンテナターミナルから引き取るときに発生
- ディテンションチャージ=一定の期間内に港に空コンテナを返却しないときに発生
2.待機料金
指定の納品先へコンテナを輸送したら、約2時間までは、その場で運転手が待機しています。もし、デバンの時間が二時間を過ぎた場合は「待機料金」が発生します。運転手の待機料金は、一時間当たり5000円ほどが相場です。
- 標準の待機時間=納品場所にコンテナを付けてから2時間
- 二時間を経過すると待機料が発生する。
3.台切り
ドレーは、大きく分けると、ヘッド部分とシャーシ部分の2つに分かれます。コンテナは、シャーシ部分に固定されて、ヘッド部分が引っ張ることで輸送します。先ほど述べた通り、ドレーは指定の場所につけてから2時間までしか待機はしません。二時間以降は待機料金が発生します。
もし、デバンに大幅な時間がかかりそうであれば、最初から「台切り」を検討します。台切りとは、ヘッド部分とシャーシを切り離し、シャーシ部分のみをデバン現場(バンニングJ)に置いて、次の現場に向かうことです。
この場合、荷主は、二往復分のドレー代金を支払う義務が発生します。
台切り計算ツール
4.高速代金
もし、当日配送などを依頼している場合で、非常に緊急的に輸送したい場合は、高速を使うこともあります。この場合は、当然、通常のドレー代金の他、高速代金も発生します。
ドレー代金の標準料金は、以下のツールで計算ができます。
ドレー代金の計算ツール(タリフ)
ドレー代金は、標準料金表が基になり、これに荷主毎の「料率」をかけて求めます。
荷主が支払う料金=タリフ×料率
下の四角に「料率」を入れます!表示される金額が荷主が支払うべきドレー代金です。料率は、荷主毎に大きな違いがあるのでご注意ください。また、下に表示される距離は「往復」です。
参考情報:2020年10月現在、東京地区のドレー平均相場:タリフの60%~70%前後
1.港からの往復距離
2.基準価格(タリフ)
3.荷主(通関業者ごとの料率)
ドレー代を含めた正式な輸送代を知りたい方は、こちらより見積もり依頼をお願いします。
見積もり方法と手配方法
ドレージの手配は、通関業者を通して行う場合と自身で行う場合の2つがあります。月間、ある程度の取り扱い本数がない限り、通関業者やフォワーダー経由で手配することが多いです。
通関業者経由でドレーを手配する場合は、当然、通関業者のマージンが発生します。もし、月間である一定の輸送本数がある場合は、荷主自ら、各地の港近くにあるドレー会社に問い合わせましょう!
ドレー使用時の注意点 デバン時間を厳守!
ドレー使用時の注意点は、「デバン作業(コンテナから荷物を出す作業)を早く終わらせること」です。できる限り、短くすることが何よりも重要です。標準作業時間は、コンテナが到着してから2時間です。この時間を超えると待機料が発生します。
たとえば、こんなケースがありました。
- 朝8時にドレーが現場に到着
- 10時になってもデバンが終わらない → 待機料金が発生
- 正午は昼休みで作業ストップ
- 13時に再開し、14時にやっと終了
- 結果、5時間分の待機料金が発生しました。
ドレー会社は限られた運転手でスケジュールを管理しています。上記のように予定より大幅に遅れると、次のコンテナの引き取りができなくなってしまいます。何らかの問題がある荷主と判断されると、次の対応をとられることもあるので注意しましょう!
- 配送を断られる
- 通常料金の2〜3倍を請求される
- 高速代など、追加費用をすべて請求される

不誠実な対応は、料金や拒否という形で返ってきます。コンテナ輸送はコスト削減のための方法ですが、対応次第で逆に費用が増えることもあるのです。
少しでもデバン時間を短くするには?
デバン作業をスムーズにするために、以下のような準備をおすすめします。
- シッパー(輸出者)に積み方の写真をもらう
- 写真やパッキングリストでデバンの段取りを組む
- 人手が足りないなら便利屋などに応援を頼む
- 作業そのものを他社に任せるのもアリ
最近は女性スタッフがデバン現場で活躍することも増えています。だからこそ、段ボール1つの重さにも配慮が必要です。荷崩れしないように積んでもらうことも大切です。
また、自社で設備や人手が足りないなら、無理をせずプロに任せるのも選択肢です。港の近くにある会社なら、ショートドレージからデバン、トラック配送まで全部してくれるところもあります。→デバンオントラ(後述9
もちろん、それなりにお金はかかりますが、自分で人を雇ったり準備したりする費用を考えると、結果的に大きくは変わらないことが多いです。
自社のリソースは本業に集中を
もしあなたが輸入販売をしているなら、本来の仕事は販売やマーケティング、商品企画です。
デバン作業などに時間を取られるよりも、本業に集中できる環境づくりが大切です。専門業者に任せられる部分は、どんどん任せていきましょう。
その他のドレーの戦略
ドレーは、港から日本国内の納品先までコンテナを運ぶための手段です。この輸送には、主に次の2つの方法があります。
① ショートドレー&トラック配送(デバンオントラック)
この方法は次のような流れです。
- コンテナを港近くの倉庫まで「ショートドレー」で運ぶ
- 倉庫でデバン(荷下ろし)する
- 中身を一般トラックに積み替えて納品先へ運ぶ
この方法では、自社で人手や作業スペースを用意しなくてもいいため、荷受け作業がスムーズになります。
かかる費用の例:
- ショートドレー代
- デバン作業代
- トラック配送代
② ドレーでそのまま配送
こちらは、コンテナをそのまま納品先まで運び、現地でデバンする方法です。多くの場合はこちらが使われています。
ただしこの方法では、以下の準備が必要です。
- デバン作業をする人手
- コンテナを置いて作業するスペース
かかる費用:
コンテナドレー代(1本分)
どちらを選ぶべき?
ショートドレー&トラック配送は手間が少ない分、コストがやや高めです。ドレーでそのまま配送は安価ですが、自社で作業をする必要があります。
人手や作業環境の有無、コスト感をトータルで見て、どちらが合っているかを判断しましょう。
その他、ドレーに関するお役立ち知識
- インコタームズとドレージの関係
- ドレー代金の課税と消費税の免税の関係
- ドレーの運転手は手伝わない。
1.インコタームズ(CIF)とドレージの関係
インコタームズとドレージの関係は、どのようになっているのでしょうか? これは、適用するインコタームズにより異なります。
例えば、CIFであれば、売り手がドレージ代金を負担する義務はないです。他方、DDPなどの「D系インコタームズ」であれば、輸入国側のドレー代金を支払う可能性が高いです。
2.ドレー代金の課税と消費税免税の関係
一般的に、港で輸入許可を受けると、貨物は内国貨物に変化するため、これを運ぶドレー代金も消費税の課税対象です。実は、ドレー代金の消費税を削減するポイントは、輸入許可を受ける時期の調整にあります。
日本側のコンテナターミナルに到着後
- 輸入許可を受けずに国内配送する→ 配送料に対する税金は無税
- 輸入許可を受けてから国内配送する→配送料に対する税金は課税
輸入許可を受ける時期を調整することで、港から内陸国までの大部分の輸送代金を免税扱いにでき、必要最小限度の消費税に抑えられます。なお、港から離れた所にある保税地を「インランドデポ」と言います。
3.注意点:運転手は荷下ろしを手伝いません
ドレーの運転手が「荷下ろし(デバン作業)を手伝ってくれる」と思っている人がいますが、それは大きな間違いです。
ドレー運転手の仕事はコンテナを運ぶことだけで、荷物を運ぶ義務は一切ありません。たとえ段ボール1つでも運んでもらうことはできません。極端に言えば、運転手がトラックの中で休んでいても、それは問題ではありません。
なぜなら、ドレー代には運ぶだけの費用しか含まれていないからです。現地での荷下ろしを手伝う料金は入っていません。
この点を勘違いすると、現場でトラブルになる可能性がありますので、しっかり理解しておきましょう。
まとめ
- ドレーとは、コンテナを輸送するトラックです。
- ドレー代金はラウンド料金制です。
- ラウンド料金とは、輸入港~配送先までの往復距離です。
- ラウンド料金制には基準価格ある。実価格は、基準価格に荷主ごとの料率が適用する。
- ドレー不足は深刻。地方にある港揚げも活用しよう。
- ドレージ代金には、運転手がデバンを手伝う料金は含まれていない。