海外のショップで商品を購入すると、配送手段として「国際郵便」か「国際宅配便」を選べます。国際郵便と国際宅配便は「公的配送会社」と「民間配送会社」の違いです。
例えば、アメリカの場合は、USPSがアメリカ合衆国郵便公社(公的配送会社)、UPS、FedExなどが国際宅配便(民間配送会社)です。これら二つの配送方法は「公益性」「有事の際の荷物の届きやすさ」「関税決定の方法」に違いがあります。
ときどき「今回は関税が発生した。発生しなかった」などと嘆いている人がいます。実は、このような不思議な現象も国際郵便と国際宅配便の「課税の仕組み」の違いから生まれてきます。
なぜ、輸送方法によって商品の課税が変わるのでしょうか? 今回は、国際郵便と国際宅配便の違いを説明していきます。
国際郵便(EMS)と国際宅配便(DHL等)
国際郵便と国際宅配便の位置づけ
国際郵便と国際宅配便は、日本と海外との間で荷物をやり取りする上で重要です。ある人は、外国の友人へプレゼントをするために使います。また、ある人は、外国のネットショップから商品を輸入するときに使います。国際配送には、大きく分けると、次の2つのネットワークがあります。
- 公的配送ネットワーク
- 民間配送ネットワーク
公的配送ネットワークは、郵便。民間配送ネットワークであれば、FedEx、DHL、TNT、ヤマトなどです。これらの違いを具体的に確認していきましょう!以降、公的配送会社を「郵便=EMS」、民間会社を「FedEx」として説明をしていきます。なお、EMSとFedexの略称は次の通りです。
- EMS=ExpressMailShipping
- DHL=Dalsey Hillblom Lyn
郵便とFedExの比較ポイント
郵便(EMS) | 民間(FedEx) | |
公益性 | 高い | 低い |
料金の計算方法 | 実重量 | 容積 |
料金 | 全体的にFedExの方が高い。 | |
配送できる国の数 | 180 | 220 |
通関の厳しさ | 抜けることがある | 厳格 |
配送日数 | 同等。若干、FedExの方が早い。 | |
荷物の追跡の細かさ | 更新が荒い | 更新が丁寧 |
税金の支払い方法 | 配達員に支払う | 後日、郵送 |
*細かいことを言えば、民間配送会社にもより細かい違いがあります。
例えば、TNTは、最も配送できる国の数が多いことで有名です。また、配送料金も実重量と容積重量の2つから比較検討する仕組みを取り入れています。各社の違いをすべて列記するのは難しいため、より詳しい情報は、各社のサービスサイトをご覧ください。
決定的な2つの違いとは?
上記表をご覧になるとわかる通り、郵便とFedExにはいくつかの違いがあります。この中でも決定的に違う点は、次の2つです。
- 通関の厳格さ
- 容積と実重量
郵便系の方が通関の基準が緩く、重量よりも容積が大きな物を運ぶときに便利です。FedExは、この逆です。よって、両社を使い分ける基準は、次の通りです。
- 容積が大きく、重量が軽い物=EMSが便利
- 容積が小さく、重量がある物=FedExが便利
それでは、この結論に至る内容を細かく確認していきましょう!
公的配送会社と民間配送会社の違い
公的配送会社の郵便は「万国郵便連合(国際機関)」の下で運営されています。機関の存在意義は、「世界中のどこにいても郵便を届けることができるようにする」です。日本では、この万国郵便連合に基づく郵便事業を「日本郵政」が担当しています。
また、外務省は、万国郵便連合を次のように説明しています。
UPU(万国郵便連合)は、郵便業務の効果的運営により諸国民の間の通信連絡を増進し、文化、社会及び経済の分野における国際協力に寄与することを目的とし、設立以来国際郵便業務の発展のための中心的な役割を果たしている。
引用元:外務省
郵便事業の目的は、利益よりも公益を重視することを重視しています。この考え方がよく表れたのが「2011年の東日本大震や2016年の熊本大震災のとき」です。
当時、道路などのインフラも壊れてしまい、さまざまな混乱が生じていました。この状況下で民間配送会社の大手「Y社」や「S社」は、荷物の配達を停止しました。物流コストや人員、インフラなどの状況を総合的に判断して「配送の停止」を決断されたのだと思います。これは「営利企業」であれば、当然の判断です。
しかし、日本郵政の対応はこれとは別でした。万国郵便連合の精神にのっとり、できる限り配送を続けたのです。万国郵便連合は、地域や社会の発展に協力することを目的としています。当然、利益も求めていますが、それよりも「公益性」を大切にしています。
一方、民間ネットワーク(Y社やS社)などは、あくまで「利益企業」です。利益とコストのバランスをみて配送をきめています。この判断の結果として、民間ネットワークでは「配送を停止すること」が認められています。
それでは、これを「貿易の分野」で考えると、どのような違いになるのでしょうか?
公的配送会社と民間配送会社の荷物検査(通関)の違い
公的配送会社と民間配送会社は、公益性の違いの他、商品に対する通関の仕組みも違います。
例えば、海外のネットショップで商品を購入するときは、配送方法を選ぶ欄があります。この選択のときに「配送料の安さ」と「納品日数」だけで選ぶ人は多いです。しかし、実はもう一つ判断の材料に加えられるものがあります。それが「通関制度の違い」です。
*これより先は、公的配送会社を「国際郵便」、民間配送会社を「国際宅配便」と表します。
公共ネットワーク/国際郵便の通関制度
「国際郵便」で運ばれてきた商品が日本に到着すると「税関外郵出張所」にて、税関職員による書類審査と検査(必要なとき)が行われます。
税関の検査はすべての小包に対して行われません。書類の簡易チェックで問題がありそうな物に対して検査をします。書類のチェックで問題がない、または、現物検査でも問題がないときは、そのまま通常の手続き(関税を決定)に進んでいきます。
税関検査は、X線検査、麻薬犬検査、開封検査の三種類があります。検査をした後に、税関職員が関税額をけっています。(賦課課税方式)もし、小包の課税価格(関税を計算する母体)の合計が20万円以下の物は、ほぼ自動的に「簡易税率」が適用されます。
次に国際宅配便の通関制度を確認していきましょう!
民間ネットワーク/国際宅配便の通関手続き
国際宅配便は、各配送会社の通関士が税関へ荷物の申告を行います。この配送会社には「FedEx」「DHL」「UPS」「TNT」などがあります。
国際郵便は、税関が関税等の課税処理をします。一方、国際宅配便は、税関に対して「各配送会社の通関士が申告」をします。税関は、各社の通関士によって申告された書類の中に「疑念がある場合」に税関検査を行い、商品の関税を決めます。特に疑念がない貨物は、各社の通関士の申告通りに関税と消費税が納付されて輸入手続きは終了です。
ちなみに、商品の関税は、課税価格の合計が20万円以下の場合、簡易税率を適用して申告します。しかし、あらかじめ配送会社に対して「荷物の受取人」や「発送人」からの申し入れがあれば「一般税率(難しい関税の仕組み)」で申告することも可能です。
国際宅配便の関税等の支払い方法
FedEx/フェデックスなどの国際宅配便で関税や消費税が発生した場合は、どのように支払うのでしょうか? 大きく分けると次の2つがあります。
- 配達員に対して荷物と引き換えに支払う。
- 後日、請求書が届く
1.荷物と引き換えに配達員に支払う。
例えば、UPSの場合は、荷物を受け取るときに関税や消費税など納めます。(配達員に)
2.後日、請求書が発行される。
他方、FedExの場合は、支払う税金が15000円以下の時は、荷物を受け取るときに諸税を支払わず、二週間後あたりに請求書と輸入許可書が一緒に送られてきます。請求書が届いたら、中に入っている振込用紙又は、銀行振り込みで諸税を支払い、すべての受け取りが完了します。 15000円を超える場合は、FedExのカスタマーサポートから電話がかかってきて、輸入申告前にクレジットカード×電話口で諸税の支払いをします。その後、輸入手続きがされます。
例:8/26日に輸入許可→ 9/10日に請求書が届く。
請求書と輸入許可書が一緒に届きます!
FedExの手数料例
- 納税額(関税+消費税)の合計が50000円迄=1AWBにつき一律最低料金の1000円
- 納税額(関税+消費税)の合計が50000円超え=その合計額の2%が通関手数料
都市伝説・国際郵便の方が課税をスルーしやすい!?
「同じ商品を輸入しているのに、今回は関税がかかった」という事例があります。これは上記の「税関手続きの違い」も関係しています。
このように関税がかからないケースの原因として以下の二つが考えられます。
ケース1.一万円以下免税ルールの適用
小包あたりの合計の課税価格が一万円以下の場合は免税になるルール(一万円以下免税ルール)があります。もし、あなたが同じ商品を輸入していたとしても、以前よりも商品価格が安くなっていたりすると、1万以下免税ルールによって、関税が免除されて輸入できることがあります。
ケース2.税関が商品の課税を見逃した
これは、厳密にいうとあってはならないことです。しかし、輸入貨物の関税が決まる仕組み上、仕方がないことです。
先ほど申し上げた通り、国際郵便の関税は、税関職員が決めています。日々大量の荷物が運ばれてくる中、税関は、この業務を限られた人員で行います。そのため、本来、課税しなければならない貨物を課税しない「課税モレ」が発生しやすくなっています。
一方、国際宅配便の関税は、各社の通関士が荷物の申告(関税率を決めたり、関税計算をすること)をします。国際宅配便は税関から「通関業の許可」を受けています。これによって、人の貨物に対する関税額を計算して代わりに税関への申告ができます。
税関から通関業の許可を受けている場合「申告内容と貨物が適正である」ことが求められます。これが税関からの配送業者への評価になるわけです。そのため、国際宅配便は、小包の中にある商品などをなるべく詳しく聞き出して、申告内容と商品の中身にズレがないように努めるわけです。
このような事実をふまえると「課税されずに通関されやすい!?」国際郵便を選ぶ人が多い理由がわかります。
よくある疑問
クーリエとの違いは?
FedEx、DHL等は、別名「クーリエ」とも呼ばれています。この違いは「クーリエとは?」をご覧ください。
FedEx等の輸入許可書と輸出許可書の入手方法
FedExの輸入許可書は、配送完了後、郵便物として後送されてきます。EMSの場合は、輸出・輸入ともに郵便局へ依頼をすれば入手できます。
EMS、FedExは関税元払いはありますか?
EMSの場合は、関税元払いやCOD(着払い)に対応する「UGX」があります。FedEx等は、アカウントを開設した後、ウェブ上で輸入国側の関税等を「元払い」にできます。
FedExにクール便はある?
があります。
まとめ
国際郵便と国際宅配便は、「公益性」に関する考え方の違いがあることがわかりました。これによって災害時の配送に違いがでます。しかし、貿易ビジネスの場合は、それ以上に通関制度(関税がきまる仕組み)の違いによって、支払う関税が変わるのが違いです。
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