この記事は、貿易をするときに船会社と直接契約するリスクとMQCの仕組みを説明します。
国際輸送を依頼するときに悩むのが、適切な依頼先です。主な依頼先は、船会社、通関業者、フォワーダーなどがありますが、いまいち、適切な依頼先がわかりません。やはり、費用が安くなるイメージの船会社が良いのでしょうか?
そこで、この記事では、直接、船会社へ依頼するときのリスクについてご紹介していきます。
直接、船会社と輸送契約が安全!?
輸入ビジネスで成功するには、なるべく工場(製造者)と直接取引をして、自社との間に業者を挟まなないことがポイントです。あなたと、工場との間に「○○代行」と名の付く会社が入るほど、最終的な利益はどんどんと小さくなると考えます。しかし、国際輸送の場合は、必ずしもこの考え方は正しくないです。
国際輸送費を削減する目的で、船会社と直接契約することは大きな間違いです。国際輸送の場合、輸送サービスの提供元である船会社と直接契約をするよりも、船会社とパイプがある「フォワーダー」と契約をした方がメリットがある場合が多いです。
なぜ、フォワーダーと契約をするべきなのでしょうか? そのあたりは、フォワーダーの果たす役割の記事をご確認ください。今回は、料金面以外の観点で、船会社と直接契約するときのリスクについて説明していきます。
船会社と直接契約するときの4つのリスク
荷主が船会社と直接契約するときのリスクには、大きく分けると次の4つです。
- GRI(運賃値上げ)
- 船会社の変更に対応する必要がある。
- 航路改編
- MQC未消化のリスク
1.GRI(運賃値上げ)
GRIとは、船会社が一斉に輸送料金の値上げをすることです。船会社と直接契約をしているときは、荷主は、このGRIの影響をダイレクトに受けます。
2.船会社変更に対応する必要がある。
契約している船会社が採算性の面で輸送自体をやめたときは、自らの力で新しい船会社を手配する必要があります。
例えば、韓進海運が破産したときは、フォワーダーと契約していた荷主は、フォワーダーが新しい船会社を手配してくれました。一方、船会社と直接契約を結んでいた荷主は、自らの手で新しい船会社を見つけなければならなりませんでした。同じ状況に陥っている荷主がいる中で、自ら新しい船会社を見つけるのは非常に大変です。
3.航路改編
船会社は、営利団体のため、採算性が悪い航路などは、航路を変更したり、廃止したりする可能性が十分にあります。船会社と直接契約をしているときは、船会社が航路の変更をするたびに、それに応じた輸送計画の変更が必要です。
4.MQC未消化のリスク
荷主が船会社と有利な条件で輸送契約をするときは「月間で○○本以上を輸送を依頼する」という最低保障数量(MQC)が設定されることが多いです。つまり、各荷主は、このMQCを達成する条件の下、輸送料金を安くしてもらいます。もし、荷主がMQCを達成できないときは、船会社からペナルティが課せられます。
実際、MQCを消化できないときのリスクは、現実的に発生しており、ある船会社は、MQCの未消化の荷主に対して一斉に訴訟しています。船会社と直接契約を結ぶ荷主は、この「MQC未消化に陥るリスク」も考慮しておく必要があります。
以上、4つが荷主が船会社と直接契約するときのリスクです。もし、これらのリスクを考慮しても、なお直接契約するメリットがあるときは、そのまま船会社との契約を続ければいいです。ただ、多くの荷主は、輸送量や上記のリスクなどを考えると、フォワーダーと契約する方が有利な場合が多いです。
フォワーダーの中には、これら4つのリスクをすべて負担するところもある!
フォワーダーといっても小さい所から大きい所まで様々ですから、一概に判断できません。しかし、船会社とのコネクションがあり、長期間に渡り輸送実績を作っているフォワーダーは、輸送実績、輸送アレンジ力、価格交渉力、緊急対応力などで非常に力があります。当然、上記4つのリスクもすべて負担してくれます。
したがって、少なくても月間1000本ほどのコンテナを扱わない荷主の方は、間違いなくフォワーダーと契約した方が良いです。月間1000本以下にも関わらず、船会社と直接契約している荷主の方は「安くなっている」と思い込んでいるだけであり、多くは、フォワーダーと契約しても同じ料金である場合が多いです。同じ料金であるなら、上記4つのリスクをカバーしてくれるフォワーダーと契約した方が良いですね!
貴社の国際輸送は、このようなリスクをしっかりと考えて選定されていますでしょうか?
月間1000本以下の荷主なら、独立系NVOCC(フォワーダー)を選ぶべき理由
まとめ
- 船会社との直接契約=安いは誤解!
- 月間のコンテナ数が1000本ほどないと、価格上、有利な扱いは受けられない。
- 船会社と直接契約する荷主は、上記4つのリスクを内包していることを覚えておくべき
- 力があるフォワーダーは、上記4つのリスクを負担してくれる。
- よって、ほとんどの荷主は、フォワーダーと契約した方が良い。