タイ税関・VOT還付に潜む罠
あなたにクヤシイ想いをして欲しくない。
タイには、VAT(観光客向けの税金還付制度)があります。これがあればこそ、財布の紐が緩くなりますが、そこにはタイ税関が仕掛ける巧妙なトラップが張り巡らされていいます。
以前、私はマンマとこの罠にハマりました。楽しみにしていた還付金を1バーツ足りとも受取れないという、極めて損失の大きなハプニングを実体験し、唇を噛みました。あなたには同じ想いをして欲しくありません。
ドキュメント「私はこうして還付金を失いました」
まずはVATなんぞやから、ごく簡単に説明しましょう。本来支払う必要のない税金を納めた外国人観光客へ還付の権利を与えるものであり、2,000バーツ以上の買い物をした場合、しかるべき手続きを経ることで支払済みの税金分が「帰国時に空港で」取戻せる制度です。リンクをご参照ください。
税をとりもどせ! VAT還付に初チャレンジ
その存在を知ってはいたものの手続きの煩雑さに厭戦感を抱き、これまで利用したことがありませんでした。
しかしながら、ある滞在で多くの高額品を購入する予定だったことから、VAT還付を試してみることにしました。VAT対象店で品物を購入後、店員に還付希望を伝えると書類を作成してくれま
した。以後、同様にして購入と書類受領を繰返し、そこそこの還付金が見込めるまでになったのです。
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VATマーク。目印が掲示されていない場合もあるので、買い物前に確認しておきたい。
「よーし、ちょっとしたヘソクリができるぞ」
ところがどっこい捕らぬ狸の皮算用、空港の窓口で地獄に突き落とされたのでした。
MeはShock! 返金窓口で予期せぬ展開に茫然自失
出国手続きを終えると、たくさんの免税店が軒を連ねています。利用したことはなくとも、VAT還付窓口がそこに鎮座していることは以前から知っていました。(※以下参照画像はスワンナプーム空港)
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出国手続後、この窓口で還付金を受取れるのだが……
「例の窓口にこの書類を持参すれば税金が払い戻されるんだろう。チョロいもんだぜ」なぞと高を括っていた私。そこへ思いがけぬ言葉が係員から浴びせられたのです。
「あんた、このVATは無効よ」
思い出しても腹が立ちますが、やりとりを再現してみましょう。
係員「ダメねぇ、ここにスタンプが押してないでしょ。無効よ」
私「スタンプって? 購入店の店員が押し忘れたってことですか?」
係員「違うわよッ! あんたが税関でもらう必要のあるスタンプのことッ」
私「じゃあ、今からもらってきます」私
係員「無理よッ! スタンプは出国手続前にもらわなくっちゃダメなことッ」
私を見る係員の目に冷笑が浮かんでいました。確かに案内板には、「税関のスタンプなくば返金能わず」の表記がなされていたのです。
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もはや引き返せない最終関門で、これ見よがしの警告文。おいおい、今更言われても遅いって!
ええええええぇー! と大きな声を上げてしまいました。気づいた時には後の祭り。出国手続前にやるべきことをやらないと、もはや1バーツも返ってこない仕組みだったのです。
傾向と対策。VAT還付へ仕掛けられた罠とは?
そこそこのお金を失った私でしたが、後に冷静になって振り返ると、そこには人間の心理をついた罠が潜んでいることにハッとさせられたのでした。
罠1.「パスポートを常に持ち歩いていない。購入したい商品が突如見つかるときがある」
実際問題、パスポートを常に持参して観光する人はいないでしょう。その気がなくても衝動買いすることもあります。
しかしVAT還付には対象店が作成した書類が必要です。その際、パスポート持参が条件です(※)。なお、後日に手続きを申し出ても拒否されます。
(※)お店によってはコピーでも受付けてくれますが、店員ガチャ、運次第です。
罠2.手ぶらで帰国したいため、購入した商品を日本に送ってしまった
帰国する際、手持ちの荷物は少ない方がラクです。そのため、買い込んだ商品をEMSなどで日本に別送しようと考える人がいます。手ぶらで帰国、というわけです。
ところが、VAT還付には購入した現物を「税関係官」と「返金係員」にそれぞれ証拠として二度提示する必要があるのです。つまり、事前に商品を別送して手元にない場合には、返金を受けられないのです。
罠3.空港に到着すると、何はともあれチェックイン手続きをしてしまう
帰国するための空港に到着した人100人に聞きました。「真っ先に行くところはどこ?」というクイズがあったならば、ダントツの1位は「チェックインカウンター」でしょう。なにしろ飛行機に乗り遅れたくない心理が働きますので、とりあえず何番カウンターかしら、と足が向かうのも当然です。
ここが大きな罠なのです。
税関のスタンプを押してもらうには、「出国手続前」の一角に詰めている係官の窓口に出向く必要があります。しかし、出国準備に追われた私たちは、その存在を極めて容易に忘れ去ってしまいます。
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隅っこにひっそりと配置。見事なまでにステルス性能を発揮する窓口。右下が税関詰所。
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空港突き当たりにある詰所でスタンプをもらう。急いでいれば尚更、その存在に気が回らなくなる。
私たちが税関からスタンプをもらうことなく出国手続ゾーンに足を踏み入れた時点で、もはや還付金は戻らないことが確定するのです。
罠4.手持ちは少なくしたい。荷物はキャリーケースに詰め、機内に預け入れた
「税関係官の窓口だろ。ちゃんと初めにスタンプをもらってきたぜ。その後にチェックインしたから俺は大丈夫だ」
いや、安心するのはまだ早いですよ。あなたは購入した商品をキャリーケースに入れ、機内預入しませんでしたか? 購入した商品は後にもう一度、返金窓口でも提示しなければならないのですよ。
機内預入した荷物は日本到着時にベルトコンベアーから流れてきますから、しばらく手にすることはできないことに想いを馳せて頂きたい。係員に提示するためには、購入した商品を客室持込の手荷物へと仕分けしておく必要があるのです。
繰り返しますが、返金窓口は出国手続後の制限区域に設けられています。したがって、いかに書類が整っていたとしても、現物をチェックインカウンターで機内預入してしまったらゲームオーバーとなるのです。
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ステルス窓口に貼られていた案内図。なぜか積極的に広報されてはいない。左奥は閉鎖済。
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爆買いしない国民だからか、相手にする必要がないからか、日本語案内は作られていない。
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「10の贅沢品を提示せよ」 嵩張るものでも手荷物としなければならず、負担を強いられる。
最大の疑問、「なぜ窓口を隣同士で設置しない?」
ここまで読まれた諸氏の中にもお気づきの方がおられるでしょう。つまり、なぜわざわざ税関詰所をチェックイン前に設置したのか、そのイジワルな姿勢が腑に落ちないのです。
返金窓口を出国後に設けるのは首肯できます。なぜなら、帰国者のための還付制度だからです。自由に出入りできる出国前ゾーンに窓口を設置したのでは制度趣旨が達せられません。
しかし、税関窓口をあえてそこに設置し、一たびスタンプをもらい忘れたら試合終了にする必然性はないはずです。制限区域内に窓口を2つ並べれば我々の利便性が向上しますし、何より合理的です。それをしないのは、帰国者のうっかりミスによる返金漏れを密かに意図しているように思えてなりません。そっくりそのまま、タイ政府の利益となりますから。
実試験に出る! チェックポイントをおさらい
以下、ひとつでもNOがあると還付金を受取れません。
- 買い物するそこはVAT扱い店であり、パスポートを持参していますか?
- 買い物をした際、忘れずに書類を作成させましたか?
- 商品は手元にありますね、帰国前に日本に送っていませんね?
- 出国手続前に税関詰所でスタンプをもらいましたか?
- チェックイン時、商品を機内預入しておらず、手荷物としていますね?
- 出国手続後、現物持参で返金窓口に行きますか?
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総括「還付金を取戻すなら、あなたは探検者であることを自覚せよ。一つのミスが命取り」
ここまで述べたとおり、タイで還付金を取戻すにはいくつもの関門を突破する必要があります。洞窟の地下深く眠る財宝を目指す探検者のように、たった一つのミスが失敗に直結します。そう、あなたはその実、スペランカーなのです。楽しかったタイ仕入れを嫌な出来事で締め括らないためにも、細心の注意を払っていただきたい。
私からの伝言は、以上となります。
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