冷蔵庫、洗濯機などの中古家電を輸出する場合は、どのような規制があるのでしょうか?
この記事では、中古家電の輸出規制「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律=バーゼル条約」について説明しています。
中古家電の輸出とバーゼル条約
バーゼル条約とは?
バーゼル条約の目的は、有害な廃棄物の国境の移動を制限して、人体や環境等を保護することです。
条約は、有害な廃棄物を「有害な廃棄物」と「他の廃棄物」の2つに分類し、それらに該当する物は、締約国の権限のある当局(日本は経済産業省)が監視するとしています。
そして、このバーゼル条約と関係するのが中古家電の輸出です。「普通の中古家電」でない限り、バーゼル条約の規制対象です。
では、ゴミではない中古家電とは、どのような物でしょうか? なお、バーゼル条約の「有害廃棄物」や「他の廃棄物」とは、次の定義です。
有害廃棄物とは?
下記、1又は、2のいずれかに該当する場合
- 附属書Ⅰの廃棄物(附属書Ⅲの有害な特性がない物は除外)
- 1に非該当×輸出入国又は中継国の国内法で規制する物
附属書Ⅰ(規制する廃棄物の分類=附属書Ⅲの有害な特性を持たない物は除く) |
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附属書Ⅲ(有害な特性) |
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他の廃棄物とは?
附属書Ⅱに該当する廃棄物(10ページ)
- 家庭から収集される廃棄物
- 家庭の廃棄物の焼却からでるゴミ
中古家電の輸出とバーゼル条約
基本的に中古家電の輸出は、バーゼル条約の附属書Ⅳの「処分作業」を行うための輸出ではないため、バーゼル法の規制対象外、つまり、輸出貿易管理令の承認等は不要です。
バーゼル条約の附属書Ⅳの「処分作業」とは?
バーゼル法の条文の12ページに記載。D1~D15の作業(R1~R13の作業に該当しない場合)
しかし、中古家電でも「ゴミのような物」=単なる部品どりの目的で輸出する場合は、バーゼル法で規制されます。=輸出貿易管理令に基づく「該非判定」が必要です。
中古家電の輸出目的はなに? 輸出先国で単なる部品取り等で使われていない?
ゴミかどうかの5つの判定基準=中古品判断基準
ゴミではない
中古家電= バーゼル法附属書Ⅳに規定する「処分作業を予定していない物」です。
具体的には..
- 次の条件を全て満たす物は、正常な中古家電=バーゼル法の非該当
- 一つでも満たさない物は、ゴミ扱い=バーゼル法の規制対象
特定家庭用機器以外の場合
- 破損等は汚れがないこと(大規模な修理が必要な物=ゴミ)
- 通電検査をして、正常に機能していること
- 適切な荷姿(梱包をしていること)
- 契約書等などで中古品の販売先が明確。かつ、部品取りでないことが明確に証明すること
- 輸出先の国で、その商品を販売する中古市場があること
特定家庭用機器の場合
機械の種類 | 該当するとゴミとみなす基準 |
エアコン (製造から15年以内) |
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テレビ (製造から15年以内) |
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冷蔵・冷凍庫 (製造から10年以内) |
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洗濯機 (製造から10年以内) |
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輸出者が確認するべきこと
では、実際に中古家電の輸出を検討している場合は、どのようにすればいいのでしょうか? 主な観点は、次の3つです。
- 輸出先(輸入国側)の中古家電に対する規制の有無を確認
- 売り先と十分な意思疎通(処分行為を行わない旨の確認)、ライセンスの有無の確認
- 中品判定基準に基づく商品の選別
1.輸出先(輸入国側)の中古家電に対する規制の有無を確認
東南アジア各国は、中古家電に対する厳しい規制をしています。
例えば、ベトナム、中国、タイ、インドネシア、シンガポール、台湾などに輸出を検討している場合は、まずは、相手国で規制内容を確認しましょう!
確認方法は、ジェトロの国別情報等からわかります。もし、わからない場合は、ジェトロの窓口に行き相談をしましょう!
2.売り先と十分な意思疎通
輸出先国側の規制をある程度、把握したら、買い手に輸入ライセンスの有無、輸入後の処分方法の確認を取ります。
例えば、中古家電として輸出したつもりでも買い手は、それを部品どりにする可能性がないかを確認します。売買契約書等で、その部分を盛り込んだ方が安全だと思います。
3.中品判定基準に基づく商品の選別
上記2つの他、自ら輸出予定の家電製品に対して「中古品判定基準」に基づく判断をします。通常の用途では使えない家電を輸出することは、バーゼル法9条の「不正輸出」に該当する可能性がでてきます。必ず商品の選別が必要です。
不正に輸出するとどうなる
万が一、ゴミに該当する中古家電を輸出した場合、又は、輸出先でバーゼル条約附属書Ⅳの処分作業が行われている場合は、バーゼル法の規制を受ける可能性があります。
結果的に、バーゼル法の適用を受けることになった場合は、次の2つの違反になります。
- 輸出貿易管理法違反(外為法違反)
- バーゼル条約の違反
輸出貿易管理令に違反すると、経済産業省の公式サイトで社名等を公表される可能性もあります。また、バーゼル条約に違反する場合は、シップバック等が実施されることもあり、その場合の責任や費用は、全て輸出者が負います。
費用的にも、経済的にも多大な損害につながる可能性があるため、事前に十分な確認が必要です。
まとめ
- 基本的に中古家電の輸出に承認は不要
- ゴミ家電を輸出すると、部品取りに使われる可能性があるから、バーゼル法で規制の対象となる=輸出承認が必要。
- 本当に使える家電を輸出する場合は、バーゼル法の適用外=輸出承認不要