この記事は、インコタームズのリスク(危険負担)を説明しています。
インコタームズには「費用負担」と「危険負担」の二つがあります。費用負担は、費用についてのルールだとわかります。しかし、危険負担と聞いても、中々、イメージができないですね! そこで、この記事では、インコタームズが示す「危険負担」の意味を解説していきます。
インコタームズの危険負担(リスク)とは?
危険、危険と言われても貿易書初心者には「どのような危険があるのか?」がわかりません。代表的な危険には「貨物の紛失、壊れる、腐る」などがあります。要は、何らかの原因により貨物本来の価値が失われてしまい「損失」が発生することです。この損失を輸出者と輸入者のどちらの負担にするのかを明確にするのがインコタームズです。
では、貿易上、損失が発生しやすいのは、どのような場合でしょうか。ざっくりと考えるだけで、次の5つのポイントが考えられます。
貨物に損失が発生する5つのポイント
輸出国の工場で貨物が製造されてから、実際に輸入者へ届けられる間には、商品の価値をなくす事故が発生しやすいポイントがあります。主なケースとしては、次の5つがあります。これらのポイントを輸出国内と輸入国内でのことと分けてご紹介します。
- 工場や倉庫などから輸出港までの国内輸送
- 輸出港到着後のバンニング作業による事故
- 海上輸送中の事故
- 輸入港で貨物をおろすときの事故
- 輸入国内の配送リスク
輸出国内での事故発生ポイント
1.商品を製造する工場から、輸出港までの国内配送時に事故に遭う可能性
2.輸出港到着後、倉庫内でのバンニング作業での事故発生(CFSの場合)、ターミナル内での事故発生(CYの場合)
3.本船で海上を移動中における貨物の劣化、損失など
輸入国内での事故ポイント
4.船からコンテナを下ろす場合に事故が発生
5.輸入港から納品先までの配送中に事故が発生
上記のポイント1~5までを確認すると、どれも発生する可能性がある事故であることがわかります。インコタームズによる「危険」とは、それぞれのシーンごとに発生する可能性がある貨物へのダメージを意味します。インコタームズでは、これを「危険負担」と呼び、輸出者と輸入者のどちらに属するのかを明確にしています。
下の表をご覧下さい。インコタームズに定義されているさまざまな条件に、ポイント1~5のシーンに当てはめて検証してみました。それぞれのポイントで事故が発生したとして、売り手と買い手の負担は、以下の通りです。この表からもわかる通り同じ「事故」であっても条件により、買主の負担になったり、売主負担になったりすることがわかります。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
EXW | 買主 | 買主 | 買主 | 買主 | 買主 | 買主 |
FCA | 売主 | △ | 買主 | 買主 | 買主 | 買主 |
FOB | 売主 | 売主 | 買主 | 買主 | 買主 | 買主 |
CIF | 売主 | 売主 | 買主 | 買主 | 買主 | 買主 |
DDP | 売主 | 売主 | 売主 | 売主 | 売主 | 売主 |
まとめ
インコタームズに規定されている定義には、費用負担と危険負担の二つがあります。このうち、危険負担に関しては、輸送途中による貨物への損失が発生した場合に、どちらが責任を取るべきかを明確にしています。貿易条件ごとに、異なる危険負担が設定されているため、結ぼうとしている条件(FOBなど)と、その条件に設定されている「危険負担」と「費用負担」の2つを確認しましょう。
【図解!インコタームズ入門・2020年版】どんな条件で貿易をする?
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