この記事では、食品輸入手続の命令検査、自主検査、モニタリング検査の違いを説明しています。
海外の食品を輸入するときは、税関への申告とは別に厚生省への届け出が必要です。この届け出をするときは、食品ごとに決められている「輸入食品の中身を示す書類」を提出します。その後、この書類が審査されて、必要であれば食品検査が実施されます。
食品の輸入検査には、命令検査、自主検査、モニタリング検査の3種類があります。この中の一つである「自主(指導)検査」は、次の三つの方法から検体(輸入する予定の商品)を指定の検査機関に提出をして、試験成績書を取得した後、それを厚生省へ提出します。
- 本貨物による自主検査
- 先行サンプルによる自主検査
- 外国機関による自主検査です。
輸入者はこれらの三つの方法から、支払う費用や必要日数、破棄リスクなどを考えて、最も適している方法で自主検査します。そこで、この記事では、命令検査と自主検査の違い、特徴、メリットなどをご紹介していきます。
食品の輸入
食品を輸入するときの検査には、次の三つがあります。それぞれの違いは、次の通りです。
- 命令検査
- モニタリング検査
- 自主検査
1.命令検査
厚生労働大臣(食品検疫所)は、輸出国からの情報や過去の輸入違反状況を考慮して、輸入者の負担で検査を義務付けています。この検査を「検査命令」と言います。根拠法:食品衛生法26条 検査命令を受けた輸入者は、拒否はできず、また、検査結果が出るまでは、手続きを進められません。
この検査命令は、毎年の年度初め(四月頃)、検査命令実施通知の中で公示されます。初めて食品を輸入する者や、日本にあまり入ってこない食品、又は、社会的に大きな食品事件になった(偽装や毒餃子事件など)食品に対して実施されることが多いです。
実際の検査は、厚生労働省に登録している検査機関が行います!=厚生労働大臣から、登録検査機関の検査を受けるように「命令」されることです。
2.モニタリング検査
モニタリング検査は、国が多様な食品の輸入状況を把握するために「ランダム」で対象者を選ぶ検査です。モニタリング検査は「食品監視指導計画」の中で公示されます。この検査は、輸入実態の把握の側面が強く、輸入者は、貨物を留置する必要はないです。
モニタリング検査の注意点
モニタリング検査の結果、何かしらの違反が見つかった場合は、全量を回収する義務が発生するため、一般的には、検査結果が判明するまでは留め置くことが多いです。ちなみに、モニタリング検査は、任意性の部分があるため、正当っぽい理由を伝えれば、断ることもできます。
- モニタリング検査は任意。断ることもできる。
- 但し、実際は「けっこう強制感」を感じる。
- モニタリング検査の結果を待たずに貨物をリリースできる。
- 但し、リリース後に「全量回収するリスク」があることに留意する。
- 基本は、モニタリング検査の結果を待った方がよい。
*モニタリング検査は、検査命令の品目に加えるのか?等のデータとしても活用しています!
3.自主検査(指導検査)
自主検査は、厚生労働省(食品検疫所)の指導に基づき行う検査(根拠法:食品衛生法26条)です。自主検査は、食品検疫所が輸入者に対して、食品衛生法に適合しているか?の判断をするために、初回の輸入時又は、定期的に実施しています。
自主検査が終わると、試験成績書が発行されます。この試験成績書は、一年間有効であり、二回目以降に同じ商品を輸入するときに、過去の輸入許可書等を併せて提出します。
自主検査には、日本で検査をする方法、外国政府機関で検査を行う方法、先行サンプルによる方法などがあります。いずれも検査後に「試験成績書」が発行されます。輸入者は、これら三つの方法から、費用、手間などを考えて、最も都合が良い方法を選んでいます。
では、この自主検査をさらに詳しく確認していきましょう!
自主検査と食品成績書の関係
自主検査の方法は、次の3つです。輸入者は、次の内、最も都合がいい方法を選びます。
- 日本で到着した本貨物で行うこと
- 先行サンプルを送って行う方法
- 外国の検査機関で行う方法
自主検査1.日本へ到着をした本貨物で行う方法
本貨物による検査です。これは日本へ本貨物が到着したら、港(冷蔵施設)などで仮置きをして、食品検査を受ける方法です。このとき、食品検査がきるのは「厚生省の登録検査機関」です。もし、本貨物の検査を受けたい場合は、あらかじめこれらの機関と打ち合わせをしておきましょう。
検査費用は輸入する貨物によっても異なりますが、平均として一件当たり2万円~5万円かかります。そして、試験結果が出るのは、およそ一週間後となります。もし、本貨物を仮置きして検査を受ける場合は、延長料金や保管料なども含めて、しっかりとしたコスト計算が必要です。
自主検査2.先行サンプルで行う方法
外国の貨物サンプルを先行的に送付して、食品検査を実施する方法です。具体的には、コンテナなどで本貨物を輸送する前に、EMSや航空便等で小口で輸送し、日本の検査機関で分析をします。もし、検査の結果、NGが出たら、本貨物の輸入をキャンセルしてリスクを最小にできます。
ただ、先行サンプルによって自主検査を受ける場合は、次の2つの点に注意します。
- 外国の発送人(工場や輸出者)から、日本の指定検査機関へ直送されていること
- 指定検査機関に事前連絡をしておくこと
もし、荷物を発送する人が間違えて、輸入者へ送付した場合は、検体は無効な物として扱われます。必ず、配送先の宛名や住所を必ず「指定の検査機関」にします。そのほか、いくつか細かいルールがあるため、必ず指定検査機関と事前相談をしておきましょう!
例:日本食品分析センターでの先行サンプル検査の流れ
によると、先行サンプル検査は、次のように進めていきます。
- 輸入食品等分析依頼書に必要事項を記入する。
- 輸出者に依頼して、貨物に同梱する書類を用意する。(詳細は、上記資料を確認)
- 製造所又は、輸出者から、日本食品分析センターに検体を直送する。
- 日本食品分析センターで検体と書類を確認する。
- 分析試験をする。
- 結果報告(試験成績書の発送)
なお、品目登録制度を使うか、使わないかによっても、若干、提出するべき資料がかわります。
自主検査3.外国政府機関で行う方法
最後は、厚生省が認めている外国の検査機関で検査をする方法です。実は、この方法が、最もリスクがなくお勧めです。具体的には、厚生省が指定する「外国の指定検査機関」で食品分析を行い、食品成績書を取得します。これを輸出者から送付してもらい、日本の食品検疫所に提出します。これあれば、日本側としては、特に何かをする必要もなく、仕入れ先の方へ取得を頼めばいいだけです。
ちなみに、外国の指定検査機関は、先進諸国であれば、いくつかあります。しかし、仕入れる国によっては、一つもない所があります。また、検査機関があっても、輸出者が分析作業をしてくれないこともあります。輸出者は、ある種の手間が発生するため、ケースによっては、手数料を取られることもあります。
上記3つのいずれかの方法で自主検査が終わると「食品成績書」が発行されます。この食品成績書は、一年間有効です。二回目以降に同じ貨物(命令検査の対象物以外)を輸入する場合は「食品の輸入届」と「食品成績書」を添付するだけで、食品検疫所への輸入届け出が完了します。つまり、食品成績書は、同じ貨物を繰り返し輸入するときに、スムーズな手続きをするために必要な書類です。
輸入食品等試験成績証明書の有効期限は一年間。但し、品目による異なります。
Q.検査に不合格になるとどうなる?
輸入検査に不合格になると、次の3つの内、いずれかの選択をします。
- 積戻し又は破棄→ 要するに、ゴミにすること
- 保税中に修正処理をする。→(保税工場等で、衛生処理加工等をする)
- 食用以外として輸入する→(家畜用の餌など)
食品を輸入するときの自主検査のまとめ
食品を輸入するときは、命令検査、モニタリング検査、自主検査のいずれかの検査を受ける可能性があります。このうち、自主検査についいては「日本の本貨物で行う方法」「先行サンプルで行う方法」「外国検査機関で行う方法」の三つがあります。これらの方法によって、検査結果による損失の規模が異なるため、十分に注意が必要です。最もリスクが小さい方法が「輸出国で検査をする方法」です。他方、高いのは日本の本貨物で検査をする方法です。
どの方法が最も適しているのかは、費用負担と手間との兼ね合いから慎重に検討してください。いずれの方法を選んでも、自主検査後には「食品分析書」が発行されます。これを次回以降の輸入時に、食品検疫所へ提出することで食品分野における通関をスムーズに通過させることができます。
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