この記事は、貿易で使うパレット(燻蒸パレット等)を徹底的に解説しています。パレットには、材質、さし口数、使用回数等により様々なタイプがあります。貿易の現場では、これらパレット毎のメリット、デメリットを考えながら、使い分けています。
輸出者や輸入者が知っておくべきパレットの知識を確認していきましょう!
パレットとは?その役割を紹介
パレットとは、板状の台です。国際物流では、このパレットの上に荷物(段ボール)を載せた後、ストレッチフィルム等でぐるぐる巻きにします。これにより、ストレッチフィルムで荷崩れを防止しながら、フォークリフトやパレットジャッキなどで運搬ができます。=移動をさせやすい。
下の写真をご覧ください。こちらがパレットです。この上に荷物を載せて運びます。
しかし、パレットの上に荷物を置いただけだと、不安定です。これを解消するのが「ストレッチフィルム」です。ストレッチフィルムは、「ラップ」の巨大版だと考えれば良いでしょう。この巨大なラップでパレットと貨物をぐるぐる巻きにして、荷崩れを防止します。
ご覧の通り、フォークリフトで簡単に運べます。これがパレットを使う最大のメリットです。
パレットを使うことで、作業効率が高まるため、バンニングやデバンニングに関わる人件費を少なくできます。コンテナの中にフォークリフトで入り、そのまま貨物を積められます。(出せます)
パレット輸送のメリット、デメリット
パレットを使うことで、荷下ろしや移動等が簡単にできることがメリットです。一方、パレットのデメリットには、次の3つです。
デメリット
- 燻蒸処理の問題
- サプライヤーのパレタイズのスキルに依存する。
- パレットの廃棄等の問題が発生する。
1.燻蒸処理
パレットには、様々な材質があります。(木製、プラスチック等)この内、木製のパレットを使う場合は「燻蒸処理のルール」があります。まずはこの対応が必要です。
2.サプライヤーのパレタイズスキル
2つめは、パレットに貨物を積める人のスキルや経験値による貨物ダメージです。
中国国内の陸送を経て、当社の中国倉庫に到着時には、下段のダンボールカートンが潰れていた。
などの事例が起きることが多いようです。パレットに貨物を積み込むときは、適切な段ボール強度、荷重計算、組み方等があります。サプライヤー(売り手)によっては、この経験値が足らず、輸入時にダメージが発見されることが多いです。
3.パレットの破棄問題
輸入後のパレットの破棄(処理方法)にも気を配ります。海外からパレットで到着した貨物を荷下ろしすると、当然、パレットが不要です。したがって、この不要なパレットの処分までを考える必要があります。
ちなみに、パレットは、業務用であるため、産廃扱いです。産廃処理業者等に持ち込む必要があり、それなりのコストがかかります。パレットで輸入する場合は、日本側のパレットの処分費用も計算に入れておきましょう。
参考記事:個人通関(自社通関)の仕方 未経験者がゼロから挑戦!
パレットの種類とサイズ、重量 一覧(標準サイズ)
パレットには、大きさ、材質、重量等が各国によって変わります。主なサイズは、次の通りです。
- 日本を含むアジア=1100×1100(イチイチパレット)
- アメリカ=1016×1219
- ヨーロッパ=1000×1200
- ヨーロッパ2=800×1200
また、サイズの他、爪を差し込む方向の違い、一回の使用で使う物(ワンウェイタイプ)、材質等の違いがあります。以下は、材質の違いによる特徴です。
種類 | メリット | デメリット |
木製パレット(木パレ)
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*デメリットを小さくしたのが「合板パレット」です。 |
プラスチック(樹脂)パレット
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金属パレット (鉄=スチールとアルミ)
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紙パレット
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木材チップの圧縮
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木製パレットを使うときの注意点 燻蒸処理とは?
木製パレットを利用して輸送する場合は、国際的な条約に基づき「燻蒸(くんじょう)」が義務付けられています。輸入国によっては、輸出国側での燻蒸証明がないと拒否されるところもあります。なお「木製パレット」には、パレットの他、次の物も含まれます。
燻蒸処理の対象
基本的に、木で作られている製品は、すべて対象になると考えたが方が良いでしょう。
- 木箱、木枠
- ドラム、堰板
- とめ木、ダンネージ
燻蒸処理の対象外
合板、パーティクルボード、オリエンテッドストランドボード、ベニヤなど加工・処理された梱包材
燻蒸には、臭化メチルと熱処理の2つの方法があります。
- 臭化メチルくん蒸(MB): 温度に応じて48-64g/m3、24時間
- 熱処理(HT): 材中心温度 56℃、30分
これらの内、どちらかの方法で燻蒸が終わると、燻蒸済のスタンプが押されます。
なお、消毒の実施機関は「一般社団法人 全国植物検疫協会」に登録されている業者が行います。上記のサイトには、専用のマニュアルもあり、利用方法、燻蒸手順や期限、燻蒸処理の方法、燻蒸マークなどの解説がされています。ぜひ、ご覧ください。
例えば「タイの燻蒸パレットの規制は?台湾は?シンガポールは?アメリカ?」など、各国のパレットの規制を知りたいときは各国の木製パレットに関する規制のページを確認します。
日本のパレットに関する規制のまとめ
日本では、農林水産省が中心となり、木製のパレットの燻蒸等の管理をしています。日本への輸入と日本からの輸出それぞれの規制内容は、次の通りです。
輸入規制
農林水産省の「輸入植物検疫規程の一部改正(輸入貨物に使用される木材こん包材に対する検疫措置の導入)について」の資料の中で、木材梱包に関する規制が記載されています。
ポイントは、次の2つです。
- 輸出国側で燻蒸処理されているパレットは、検査をしない。(処理済表示がある物)
- 輸出国側で処理されていない場合は、日本側でする。
輸出規制
輸出場合も、相手国側で同様の木製パレットの規制があります。そのため、輸入時のトラブルを防止するためにも、日本側で燻蒸処理をするか、燻蒸処理の対象外となる木製パレットを使います。
輸出時の梱包方法(積み込み方法)
輸出時にパレットを使う場合は、段ボール等で積みあげる高さの上限は200cmにしてください。重い貨物を下側に積み込むことはもちろんの事、段ボールの組み方にも注意します。(ケースマーク等も忘れずにすること)
物流現場通信のサイトによると、パレットの積み込み方法には、次の7つの方法があります。
- ブロック積み
- 交互列積み
- ピンホール積み(風車形積み付け)
- ダブルピンホール積み
- レンガ積み
- スプリット積み
- 窓積み
上記の全ての注意点を守った上で、最後は、ストレッチフィルムなどでぐるぐる巻きにします。
コンテナとパレットの違いは?
- コンテナ=箱型の入れ物
- パレット=硬質アルミ製の板
palletとpaletteの違いは?
- pallet=物流等で使うパレット
- palette=画家が使うパレット
余談:中国CFS倉庫の現場と木製パレットの実情
中国のCFS倉庫では、木製パレット、金属パレット、プラスチックパレットについて次の認識を持っている方が多いそうです。
中国のCFSでは、木製パレットを輸出用の梱包だけではなく、一時的な移動用(仮置き用)とし利用することも多いです。木製パレットを使う理由は、次の三つです。
- 破損しても修理して使用できる
- 軽量である
- 比較的廉価である
CFSによっては、金属製のパレットを使用する倉庫もあります。
- ほとんど破損しないため耐性があるから。
- 木製パレットを嫌がる荷主がいるから。
逆に、プラスチック製パレットは、CFS倉庫では使わないです。
- フォークリフトの荷捌きで簡単に破損する、破損すると使用できない。
- 耐荷重に制限があり、一部の貨物には使用できない、むしろ軽量の荷物にしか使えない。
余談2.パレタイズの実情と書類関連
パレットの上に荷物をのせる場合は、CFS倉庫のフォークリフトで荷下ろし及び荷揚げを行います。また、配送先がパレットに対応している場合は、そこでもパレット単位で荷物を移動します。
また、パレット単位で貨物を輸送する場合は、B/L表記やパッキングリストは、カートンではなくパレット単位(●●Pallet)になることも覚えておきましょう!
まとめ
- パレットを使うと、一度にたくさんの貨物を移動できる。
- パレットのサイズは「イチイチ」と覚えておきましょう!
- パレットは、木製が一般的。しかし、燻蒸のルールがあるため注意
- 他のパレットは、燻蒸対象外。貨物等に応じた適切な物を選ぶこと