
中国輸入で必ず押さえるべき「季節イベント」と物流リスク
中国貿易では「春節」「国慶節」といった大型連休や、雨季・台風期など季節要因が物流に直結します。生産工場や港湾業務が停止・縮小するため、発注や在庫計画を誤ると納期遅延や品質低下につながります。本記事では、輸入実務に役立つ視点から対策を整理しました。
春節(旧正月):最大の物流停滞期
- 時期:毎年1月下旬〜2月中旬(旧暦ベース。国務院が前年12月頃に公式発表)
- 公式休暇期間:約7日間。ただし多くの企業・工場が1〜2週間休業。
主なリスク
- 工場の生産停止
- 従業員復帰の遅れによる品質不安定
- 税関・CIQ検査の処理能力低下
- 春節前後のスペース不足・コンテナ不足
実務対応
- 発注は春節45日前までに完了
- 在庫は通常の1.5〜2倍を確保
- CUT日は通常は出港3~7日前を目安。ただし祝日前はさらに2〜5日前倒しとなる傾向があるため要注意
- 春節明け1か月はQC検品を強化
国慶節(10月1日前後)・中秋節(旧暦8月15日)
- 国慶節:10月1日からの7連休(公式)。ただし実際には「前後の土曜出勤で調整される」ケースがある。
- 中秋節:9月中〜10月上旬。国慶節と連続する年もあるが、毎年必ず重なるわけではない。
主なリスク
- 秋冬物需要期と重なり出荷集中
- 断続的な休暇で工場・物流が途切れる
実務対応
- 重要案件は9月上旬までに出荷させる。
- 納期は10月中旬以降に設定
労働節(メーデー)
時期:5月1日前後、公式休暇は3日間(年によって最長7連休)
リスクと対応
- 工場・港湾が一時停止
- 連休前後の物流集中
- 重要案件は連休3週間前までに出荷
- 明けは1週間余裕を持つ
清明節(4月初旬)
時期:毎年4月4日頃、3日間の休暇
リスクと対応
- 港湾・通関が一時的に停止
- 春節ほど大きな影響ではないが、重要案件は事前出荷を推奨
中国南部の「雨季(plum rain season)」(6〜7月)・台風期
中国南部も同様に雨季があります。この時期は天候不順による輸送遅延だけでなく、湿気による商品品質への影響も考慮する必要があります。また、台風等の影響を受けることも多いです。
リスク
- 豪雨・台風による港湾作業中断
- 湿気による商品劣化
- 航空貨物の遅延が増加しやすい。
対応
- 防湿・防水梱包徹底
- +1週間の納期バッファ
- 代替輸送ルートを事前確認
年末繁忙期(11月〜1月)
ブラックフライデー〜クリスマス需要、中国春節準備、日本の年末年始などが重なります。
リスク
- 運賃高騰
- スペース不足
- クリスマス商戦による物流増加
- 年末年始休暇による業務停止
- 寒波による輸送遅延など
対応
- 12/15までに年内必着貨物を出荷
- 年始は1/10以降の納期を推奨
年度末需要(2月下旬〜3月)
日本企業の決算期に当たる3月に向けて、多くの企業が駆け込みで輸出入をするため、物流が増加します。また、春節の影響が残る時期とも重なります。
日本企業の決算需要+春節明け需要
主な遅延リスク:
- 決算期による出荷の集中
- 海上・航空運賃が高騰しやすい。
- 緊急扱いの出荷が増える。
対策ポイント:
- 可能な限り2月中旬までに出荷を完了させること
- 運賃高騰に備えた予算を確保すること
季節イベント×物流リスク一覧
時期 | イベント | 主なリスク | 実務対応 |
---|---|---|---|
1〜2月 | 春節 | 工場停止、人員不足、通関遅延、スペース不足 | 発注45日前、在庫1.5〜2倍、CUT日10日前目安(祝日前は2〜5日前倒し)、QC強化 |
4月 | 清明節 | 港湾・通関3日間停止 | 重要案件は事前出荷 |
5月 | 労働節 | 工場・港湾停止、物流集中 | 3週間前出荷、納期余裕1週間 |
6〜7月 | 雨季・台風期 | 豪雨・台風遅延、湿気劣化 | 防湿梱包、+1週間バッファ |
9〜10月 | 国慶節・中秋節 | 出荷集中、断続的休暇(振替出勤あり) | 9月上旬出荷、納期10月中旬以降 |
11〜1月 | 年末繁忙期 | 運賃高騰、スペース不足 | 12/15まで出荷、年始は1/10以降 |
2〜3月 | 年度末需要 | 出荷集中、運賃高騰 | 2月中旬まで前倒し、予算に反映 |
実務での情報収集の基本
- 中国国務院「放假安排」(毎年12月頃発表)の確認
- 船会社・フォワーダーのCUT日情報を必ずチェック
- サプライヤー休暇計画をWechat等で共有
- 代行業者の受付停止日を把握(例:タオバオ・アリババ取引は春節前後2週間程度注文不可となるケースがある)
中国の長期連休における5つの注意点
春節や国慶節の時期は、以下の点に注意が必要です。
1. 連休前に十分な在庫を確保する
春節期間中は生産工場も運送会社もすべて休業となり、仕入れや配送が一切できません。1月上旬までに、連休明けまでの在庫を確保しましょう。
2. 在庫切れのリスクが高まる
連休明けの工場は、休み中に溜まった注文から処理するため、通常より製造・配送に時間がかかります。このタイミングを見誤ると在庫切れを起こす可能性があります。
3. 不良品率が上がる
連休明けは工場が混乱し、休暇から戻らない従業員もいるため人手不足になりがちです。製造を優先するあまり品質管理が疎かになることがあります。工場や商品によりますが、連休前に余裕を持った在庫確保をおすすめします。
4. 生産終了になりやすい
売れ行きの悪い商品は、連休前に生産終了となるケースが多いです。「連休明けに仕入れればいい」と考えて予約注文を受けても、後から「生産終了しました」と連絡が来る場合があるため、安易な予約受注は避けましょう。
5. 物流が大幅に遅れる
世界中の販売者が連休前に在庫切れを避けるため大量発注し、連休明けも在庫補充のため注文が殺到します。物流機関がパンク状態となり、通常2〜3日で届く荷物が1週間以上かかることも珍しくありません。この遅延を見越した在庫確保が必要です。
連休対策のポイント
1. 情報収集と共有
物流の遅延には必ず前触れがあります。日頃から情報を集め、関係者と共有することで予期せぬトラブルを防げます。
- サプライヤーの休業日を事前確認(工場の休み、現地の祝日、臨時休業など)
- 船会社・航空会社の運航スケジュール変更をチェック(台風などの気象情報も含む)
- 現地スタッフと密に連絡を取る(LINE、WeChat等を活用)
- 中国輸入代行業者の注文・発送停止期間を把握する
2. 在庫管理
適切な在庫管理で遅延の影響を最小限に抑えましょう。ただし、過剰在庫は資金繰りを圧迫するため、バランスが重要です。
- 主力商品は連休前に在庫を増やす
- 季節商品は3ヶ月前から準備開始
- 安全在庫レベルを設定する
Amazon等で販売している場合、日別・週別の販売数から逆算すれば、中国への発注タイミングが分かります。ただし、季節によって配送期間が変わるため、1ヶ月前の発注で十分な時期もあれば、2ヶ月前に発注しないと間に合わない時期もあります。
在庫数の計算方法
代行業者の休業期間、配送停止期間、春節前後の混雑期間を考慮し、約2ヶ月分の在庫を確保すると安心です。発注先や代行業者によって連休前の注文期限が異なるため、早めの確認が必要です。
3. 納期設定
現実的な納期設定が顧客との信頼関係を築きます。
- 連休前後1週間はバッファとして確保
- 顧客への納期は実際の予定より1週間余裕を持たせる(通関トラブル等に備える)
- 天候リスクが高い時期はさらに余裕を持つ
連休期間は通常より輸送に時間がかかります。無理な納期設定は遅延につながり、損害賠償請求に発展する可能性もあります。早めの到着は顧客満足度を高めますが、遅延すれば一気に信頼を失います。余裕を持った納期設定を心がけましょう。
納期管理の三原則
- 先手:重要シーズンの2か月前から準備
- 余裕:標準納期+休暇影響期間を追加
- 共有:顧客・フォワーダー・サプライヤーと透明化
まとめ
春節・国慶節・清明節・雨季・年末商戦など、中国輸入には季節的な物流リスクが必ず存在します。実務者は「CUT日逆算」「在庫1.5〜2倍」「春節明けQC強化」といった具体的手法でリスクを管理することが重要です。情報の先取りと共有で、遅延・品質トラブルを最小化できます。


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