日中貿易は、両国にとって重要な経済関係の一つです。2023年の日本から中国への輸出額は約17兆円に達し、特に半導体製造装置、原動機、自動車部品、電子部品、プラスチック、鉄鋼が主要な輸出品目です。
この記事では、日本から中国に商品を輸出する方に対して、中国側でかかる関税率等の輸入諸税、HSコードを調べる方法を説明します。なお、中国側の関税は、中国に輸入する人が中国税関に納めるべき物です。
=日本から輸出する人は、直接関係しない。
中国輸出時に関係する関税制度
基本的な知識
関税は、輸入国側(中国側)で発生するものです。
例えば、日本から中国に商品を輸出する際「日本側で輸出関税がかかる」これは完全な誤解です。関税は、中国側の買い手が中国税関に対して関税を支払います。(中国に商品を輸入する人)
=日本の商品を中国側に輸出場合、中国側の関税は直接的に関係しないです。
中国の関税制度の基本
中国の関税制度は「中華人民共和国税関法」を基本法とし、「輸出入関税条例」によって具体的な運用が定められています。関税率には、以下の種類があります。
- 最恵国税率:WTO加盟国に適用される基本的な税率
- 暫定税率:一定期間、一般税率より低い税率を適用
- 協定税率:自由貿易協定(FTA)に基づく特恵税率
- 特恵税率:途上国に対して適用される税率
- 普通税率:上記4つに含まれない物に対する税率
2024年現在、日本と中国との間には、2022年1月1日に発効されたRCEPが有効です。=日本産品には、RCEPに規定する税率が適用される。RCEPは、日本や中国を含む複数の国々の産品に対して互いに優遇した税率を適用する仕組みです。
基本的に日本産品には、RCEP税率が適用されます!
中国のHSコードの体系
では、どうすれば、中国側の関税率を調べられるのでしょうか? 関税率を調べる場合は、商品に割り当てられているHSコードの理解が必要です。
HSコードとは、HS条約により定められている品目コードです。世界各国が共通で利用し、物品の判断を正しくできるようにしています。そして、中国のHSコード(関税分類コード)は、世界共通の6桁に+4桁をした10桁で運用されています。
- 前6桁:国際統一コード
- 後4桁:中国独自の分類
例:8443 9990 90
関税率の調べ方
商品のHSコードから中国の関税率を調べます。調べ方は、以下のいずれかです。ユーザビリティーなどを考えると、ワールドタリフの方をおすすめします。
なお、日本産品に対するRCEP税率の中国側の譲許表(何年後に何パーセントに名はる~などの情報)は、外務省のページにも記載されています。
ワールドタリフを使って中国側の関税率を調べてみよう!
まずは、ワールドタリフの会員登録をします。(日本在住者は無料)
検索画面
- 1番=CHINA RPCを選択
- 2番=品目のHSコードがわからない場合に使用(分類から検索)
- 3番=2番及び4番を空欄にした上で一般的な品目で検索するときに使用
- 4番=2番及び3番を空欄にした上でHSコードで品目を検索するときに使用
*2~4番は、ご自身の状況で使い分けましょう! どのように品目を検索するのか?の部分を選ぶところです=どれでもOKです。
- SECTION NOTES、CHAPTER NOTE、END NOTE=品目に関する各種の注意事項が記載されている。さらに、END NOTEには、将来の関税削減予定が記載されている。
- 5番=検索を開始する。
- 6番=検索結果に表示された品目です。番号の部分(HSコード)を押すと、詳細画面が表示されます。
検索結果
検索結果の上部には、関税以外に係る税金が記載されています。この品目の場合は、関税の他、VATがかかることがわかります。
一覧を下にスクロールして「JAPAN」の個所を見つけます。
この品目(日本製)に対する中国側の関税率が記載されています。
主要輸出品目の関税率例(2024年現在)
日本から中国に輸出される代表品目と関税率は、次の通りです。
- 半導体製造装置:0〜5%
- 原動機:5〜10%
- 自動車部品:6〜15%
- 電子部品:0〜5%
- プラスチック:6.5〜10%
- 鉄鋼:0〜10%
関税分類の判断が難しい場合の対処法
関税分類の判断が難しい場合(適切なHSコードがわからない)場合は、次のいずれの方法により中国側のHSコードを調べましょう!
- 中国側の買い手により調べてもらう。
- 日本側の税関に調べてもらう(参考情報)
1.中国側の買い手により調べてもらう
基本的に関税分類の判断は、輸入国側の税関の見解が優先される原則があります。中国に輸出する場合は、中国側の税関が判断するHSコードが正しいです。よって、中国側のHSコードは、中国側の買い手に依頼をして、中国側の税関に問い合わせをするのがベストです。なお、この問い合わせの時に「事前教示制度」を活用してもらうのも良いです。
1.日本側の税関により調べてもらう
参考情報として、日本側の税関に調べてもらうこともできます。但し、上記の通り、参考情報であり、中国側の税関の見解が優先されることには十分に留意しましょう!
情報収集先リスト
中国側の関税制度や法規制に関する情報は、以下のサイトでキャッチアップできます。
- 中国税関
- JETRO
参考情報1:中国からタイ側の関税率はこう調べる!
中国からタイに向けて商品を輸出する場合は、タイ税関の中国製品に対する関税率表を確認します。タイ側の関税率表サイトにアクセスして、CHINAの部分を確認します。
参考情報2:中国からアメリカ側の関税率はこう調べる!
中国からアメリカに向けて商品を輸出する場合は、アメリカ税関の中国製品に対する関税率表を確認します。アメリカ側の関税率表にアクセスして確認します。なお、2024年現在、アメリカでは、中国製品に対して追加の関税を設定しています。(最大25%)この制裁の対象となる品目は、HTSのサイト上部にある「China Tariffs」で確認ができます。
参考情報3:中国の自動車製品に対する追加関税の適用状況は?
例えば、以下の自動車部品は、2024年11月現在も追加関税が適用されています。
- オルタネーター 8511.50
- バッテリー 8507.10
- ベアリング 8482.40
- ブレーキ材 6813.81
- カムシャフト 8483.10
- シャーシ(原動機付き) 8706.00
- コンプレッサー 8414.80
- ディーゼルエンジン 8408.20
- ガソリンエンジン 8407.34
- エンジン部品(ガソリン) 8409.91
- エンジン部品(ディーゼル) 8409.99
- フィルター 8421.23
- ゴム製フロアマット 4016.91
- インジェクター 8409.99
- 燃料噴射装置 8481.80
- ワイヤーハーネス 8544.30
- ヒーター 8415.20, 8516.29
- ホーン 8512.30
- 照明用機器 8512.20
- ミラー 7009.10
- シート 9401.20
- 点火プラグ 8511.10
- スピードメーター 9029.20
- タイヤ 4011.10
- ターボチャージャー 8414.59
- フロントガラス 7007.11
- ワイパー 8512.40
まとめ
中国輸出では、関税率の確認だけでなく、各種規制や認証要件の把握が極めて重要です。特に、主要6品目については、それぞれに固有の規制や要件があります。
本稿で紹介した情報源を活用し、必要に応じて専門家に相談しながら、適切な輸出管理を行ってください。また、制度変更は頻繁に行われるため、定期的な情報更新を心がけることをお勧めします。
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