物流の基本知識(FCL/LCL・航空便・混載便)
このレッスンで学べること
- 国際物流で使われる主な輸送手段の種類と、それぞれをどう選べばよいかがわかります
- FCL(フルコンテナ)とLCL(混載便)の違いや、状況に応じた使い分け方を学べます
- 航空便と海上便のコストや納期の違いを比較し、どちらを選ぶべきか判断のヒントが得られます
- 混載便や急ぎの出荷が必要なときの手続きの流れと、実務で気をつけるポイントがわかります
- フォワーダー(国際物流業者)の役割や、信頼できるパートナーを選ぶための考え方も紹介します
国際物流の役割とは?
物流は「ただ荷物を運ぶだけ」ではありません。輸出ビジネスの信頼を支えるポイントです。
- 納期を守る
- 商品を壊さずに届ける
- コストをおさえる
- 通関(税関手続き)に対応する
こうしたことをきちんと管理できると、取引先との信頼が深まり、リピート注文にもつながります。このレッスンでは、よく使われる国際輸送の方法であるFCL(コンテナ貸切)・LCL(混載便)・航空便について、それぞれの特徴や使い分け、コストの違いをわかりやすく説明します。
海上輸送の基本:FCLとLCLとは?
FCL(Full Container Load:コンテナ貸切)
FCLは、1社がコンテナ1本をまるごと使う輸送方法です(例:20フィートコンテナなど)。
メリット
- 他の荷物と混ざらないので、紛失や破損のリスクが低い
- 荷物が多いと、1個あたりの輸送コストが安くなる(目安:10㎥以上)
向いている商品
- 大型の機械
- パレットでまとめた商品
- 数量が多い出荷品
実務のポイント
- パレットの大きさや荷姿を調整すると、効率よく積めて費用が下がります
- ただし、荷物が少ないとLCL(混載便)より高くなることもあるので注意しましょう。
LCL(Less than Container Load:混載)
LCLは、コンテナを他の会社と一緒に使って荷物を送る方法です。荷物が少なくても海上輸送ができるので、小ロット出荷やサンプル発送に便利です。
メリット
- 少量でもコンテナ便が使える
- スポット出荷やお試し輸出に向いている
デメリット
- 他の荷物と一緒になるため、遅れやトラブルのリスクがある
- 最小料金があるので、極端に少ないと割高になる
向いているケース
- 月に数回くらいの出荷
- 試験的な輸出
- 少量の在庫出荷など
実務のポイント
- LCLでは、港での荷下ろし費用(デバンニング)や倉庫代などの追加費用がかかることがあります。特に輸入先でのCFSチャージ(混載の取り扱い料)が高いと、後でクレームになることも。
- すべての費用を事前に確認しておくのが大切です。
航空輸送とは?スピード重視の物流手段
航空輸送は、スピードと信頼性を重視する場面で選ばれます。
納期
目安1〜7日で目的地に到着(ルートや通関事情により変動)
コスト
- 割高だが、機会損失や緊急性を考慮すれば選ばれる場面は多いです。
- 向いている商品:精密機器、小型軽量、保冷が必要、生鮮品、緊急代替品
- 実重量と容積重量(1立方メートルあたり167kg)を比較し、高い方を基準に料金計算
注意
繁忙期(旧正月・年末など)はスペース不足・価格高騰リスクが高いため、事前予約とフォワーダー確認を徹底します。
フォワーダーの役割と物流実務の流れ
フォワーダー(国際貨物利用運送業者)は、輸送のプロとして輸出者と船会社・航空会社をつなぐ存在です。ほとんどの貿易実践者は、フォワーダーに対して輸送を依頼します。(直接、航空会社等に依頼するのは稀です)以下の業務を包括的に担当します。
- 輸送モードの選定(FCL/LCL/航空)と手配
- 通関書類の準備と申告代行
- 輸送保険や危険物申告の手配
- ドア・ツー・ドア輸送や現地配送の調整
- 輸送スケジュール管理
特に海外に支店や代理店を持つフォワーダーは、現地通関のフォローやトラブル対応(現地語対応含む)においても安心です。
フォワーダーを選ぶときの基準
- 対応の速さ
- 提案力・言語対応(英語・中国語など)
- 海上・航空それぞれの実績と得意分野
- 現地ネットワークやトラブル対応力
- 透明性ある料金体系と明確な見積書
実務での選定ポイントと注意点
輸送方法を選ぶときは、以下の点に気をつけましょう。
- LCL(混載便)は他の荷物と一緒に送るため、タイミングによっては出荷が遅れることがあります。
- 航空便はサイズに厳しく、数センチの違いで料金が大きく変わることも。梱包前にサイズ確認をしっかり行いましょう。
- 荷物の梱包方法やラベルの書き方は、輸送方法によって違います(例:防湿対策や言語表示など)。
- 国によって通関ルールや必要な許可書が違うため、事前にフォワーダーに確認しておくと安心です。
補足情報
LCL・航空便の主な追加費用例
LCL(Less than Container Load)の場合の追加費用例
- CFSチャージ(混載作業料)
- デバンニング費用(コンテナからの荷降ろし作業費)
- 保管料
- B/L発行料
- THC(ターミナルハンドリングチャージ)など
航空便の場合の追加費用例
- 燃油サーチャージ
- セキュリティチャージ
- 書類作成料など
LCL輸送における具体的なリスク例
- 同じコンテナ内の他社貨物から液体が漏れたり、破損したりすることで自社の貨物が影響を受けるケース
- 混載貨物の積み替え作業時にラベルが剥がれてしまい、その結果として誤配送や貨物の紛失が発生した事例
国際物流に関するスタートアップのよくあるQ&A
Q1. FCLとLCL、最初はどちらを選ぶべき?
A. 出荷数量が少ないうちはLCL(混載便)が現実的です。ただし、10m3を超える場合や定期出荷が見込める場合は、FCLを検討することでコスト効率が改善する可能性があります。
FCLとLCLのメリット・デメリット 分岐点の計算もできる!
Q2. LCLの最低チャージって何ですか?
A. LCLには最低課金量(例:1m3分)が設定されており、実際の貨物が小さくても、その最低チャージ分の費用が発生します。極小ロットなら航空便の方が割安になる場合もあります。
Q3. 航空輸送の容積重量って何ですか?
A. 航空便では、実重量(kg)と容積重量(縦×横×高さcm÷6000)を比較し、高い方が適用されます。軽くても大きい商品は容積重量で計算されるため、梱包サイズには注意が必要です。
Q4. 航空便の繁忙期っていつ?
A. 旧正月(1〜2月)、年末商戦(11〜12月)、ブラックフライデー前後などが航空便の繁忙期です。この時期は価格高騰やスペース不足になるため、早めの予約とフォワーダーへの確認が重要です。
Q5. フォワーダーはどう選べばいい?
A. 実績、対応の速さ、料金の透明性、現地対応力(通関やトラブル対応)を基準に選びましょう。特にスタートアップの場合、親身に相談に乗ってくれる担当者のいる会社が安心です。
Q6. FCLとLCLは納期も違いますか?
A. はい。FCLは船積みから直行的に届けられるため、納期が比較的安定しています。LCLは他社貨物との混載・積み替えがあるため、追加で1〜3日程度遅れることがあります。
Q7. LCLの追加費用ってどんなものがありますか?
A. 港でのデバンニング費用、保管費用、混載手数料などが加算されることが多いです。見積書にはすべて明記されているか、事前にフォワーダーに確認しましょう。
Q8. フォワーダーを使えば通関手続きも任せられる?
A. はい。多くのフォワーダーは通関業務をセットで対応可能です。特に初心者は、輸送・通関一括で任せることでミスやトラブルを防げます。
まとめ
- 国際物流は「商品特性 × 納期 × コスト」で最適化する
- FCL:コスト効率がよく、安定性も高い(大量出荷向け)
- LCL:少量出荷時に有効だが納期・梱包・最低コストに注意
- 航空便:納期優先時に最適、コストとのバランスを見極める
- 信頼できるフォワーダーは貿易業務全体を支える重要なパートナー
次の記事>>「第7回:梱包・保険・マークの実務知識」
基幹記事
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