2023–2025年の日本輸出市場
どの日本製品が海外で売れているのか?
多くの中小企業の担当者が「どの日本製品が海外で売れているか知りたい」と言っています。
今は次のような問題があって、どの国で商品を売るかを決めるのは大変です:
- 円安・円高の変化
- 運送費が高くなっている
- 各国のルールが厳しくなっている
でも、2023年から2025年にかけて、はっきりと成長している日本製品があります。これらの分野に参入すれば、新しいビジネスのチャンスをつかめるかもしれません。[F1,F2,F3,F4,F5]。
気をつけたい間違った考え方
「海外で売れる = どの国でも同じように売れる」と考えるのは間違いです。
実際には:
- 商品によって売れる地域が違う
- 国ごとにルールや需要が大きく違う
成長している日本製品の例
化粧品
- 2023年は前年より14%も多く売れて、過去最高を記録[F1]
- ただし、海外では成分の証明書やラベルの表示が必要
- 単純に商品を送るだけではリスクがある
- 中小企業の戦略:小ロットOEMやオーガニック系ニッチ市場を狙う。EC販売やテンプレ化した規制対応ラベルで迅速に参入可能。
💡 ヒント1:化粧品輸出の伸びを活かす
- やること:アジア市場に合わせた成分適合ラベルを事前に準備する
- 効果:通関時の指摘を減らし、販売スピードを上げる
- 事前に必要なこと:成分証明書を取得しておく
- 注意すべきリスク:規制が厳しくなって追加の対応が必要になる可能性がある
- 成果を測る指標:輸出成約率、返品率
- 出典:[F1]
日本酒
- 2024年に輸出額が500億円を超えた[F2]
- ブランドを守るために地理的表示(GI)の利用が大切
- 中小企業の戦略:地域文化やストーリー性で差別化。酒器や和菓子との抱き合わせ輸出、現地小売との直接取引も有効。
💡 ヒント2:日本酒輸出の持続的な拡大
- やること:GI(地理的表示)マークを使ってブランドを守る
- 効果:高い値段で売れるようになり、偽物対策もできる
- 事前に必要なこと:GI認証を取得しておく
- 注意すべきリスク:偽物が出回る可能性がある
- 成果を測る指標:平均輸出単価(1本あたりの売値)
- 出典:[F2]
EV用電池材料[F3]
- 欧州向け輸出が急増。2023年にEU Battery Regulationが発効。
- 中小企業の示唆:素材輸出は難しいが、検査・試験・リサイクルなど周辺ビジネスに参入余地。国内でEU適合分析代行サービスを提供する可能性。
💡 ヒント3:EV電池材料のヨーロッパ市場対応
- やること:EU Battery Regulation(EUの電池に関する規則)に基づく持続可能な基準を守る
- 効果:輸出停止のリスクを避けて、安定して商品を供給できる
- 事前に必要なこと:原材料から製品までの流れのCO2排出を管理する
- 注意すべきリスク:規則に対応できないと販売停止になる可能性がある
- 成果を測る指標:EU市場向け輸出額
- 出典:[F3]
精密工作機械[F4]
- 米国向け輸出が前年比22%増。
- 中小企業の示唆:単なる販売でなく、リモート診断や教育、部品供給などサービス付加で差別化。測定機器・ソフトウェアなど周辺領域にも機会。
和牛[F5]
- 香港・シンガポールを中心に2桁成長。
- 中小企業の示唆:和牛が扱えなくても調味料や冷凍物流など周辺分野で参入可能。現地イベント型輸出や「日本食材総合セット」提案も有効。
新たに注目すべき成長品目
食品(農林水産物・加工食品)
- 2024年の輸出額は1.507兆円(前年比+3.7%)、過去最高を更新。
- アメリカ向け+17.8%、ベトナム・タイ向け+23%以上の伸び。
- 中小企業戦略:小ロット特産品や調味料、ギフトセット戦略が有効。中国依存を避け、ASEANや欧州に販路を多角化。
自動車・電子部品・医薬品・化学製品
- 2025年上位品目:自動車、半導体製造装置、自動車部品、電子部品、医薬品、鉄鋼、プラスチック製品、光学機器、化学製品。
- 中小企業戦略:完成品ではなく部品や素材でのニッチ参入。医薬品や光学分野では研究開発力を活かした差別化が可能。
アフリカ市場(ポンプ・電気機器)
- 2024年にポンプ輸出が前年比+43.9%、電気機器+23.2%増。
- 中小企業戦略:アフリカなど新興国市場で産業機器の需要が拡大。輸出だけでなく設置・保守サービス込みで提案できる企業に優位性。
再輸出品(トレード・中継貿易)
- 2024年に再輸出シェアが8.3%(10年前の5.2%から拡大)。
- 中小企業戦略:越境ECや再輸出型ビジネスに参入可能。物流・倉庫・仲介サービスの展開も選択肢。
実務プランの整理
輸出を拡大するためには、以下の実務フローに沿って行動をしていきます。
- HSコード確認:税関照会で正確な分類を取得。
- 規制調査:輸出貿易管理令や現地規制を事前確認。
- 証明書準備:食品は衛生証明書、化粧品は成分証明書、日本酒はGI認証など。
- 物流戦略:海上輸送コストの変動に備え、複数ルート・複数港を検討。
- 現地提携:商社依存だけでなく、小売やECと直接連携。
各国の規制
日本
- 日本では「輸出貿易管理令」という法律で輸出規制品目が決められている
- 許可なしで輸出すると刑事罰の対象になる[laws_and_notices]
- つまり、警察に逮捕される可能性がある
ヨーロッパ(EU)
Battery Regulation(電池に関する規則)
- 2023年に始まった新しい規則[F3]
- 電池材料の持続可能な基準を守ることが義務になった
- この規則に違反すると輸出ができなくなる
- 環境に配慮した材料や製造方法が必要
食品関係の規則
衛生証明書の提出
- 食品系の商品では衛生証明書の提出が義務
- 農林水産省が証明書を発行する
- 食品が安全であることを証明する書類
スタートアップ向け戦略ヒント
輸出を始める新しい会社に向けて、FACTから得られる戦略をご紹介します。興味のある方は、各自で詳しく調べてください。分からない場合は、輸出コンサルをご利用ください。
化粧品輸出[F1]
- スキンケアやオーガニック系製品も海外で需要が拡大する可能性がある
- 日本製の安全・高品質というイメージを活かす
- OEM(他社ブランドでの製造)や小ロット工場と組む
- ニッチなブランド展開で他社との差別化を図る
- 大手と競争せずに、特色のある商品で勝負する
日本酒輸出[F2]
- GIラベル(地理的表示)を武器にする
- 関連商品(酒器・和菓子・発酵食品)との抱き合わせ輸出を検討する
- 小規模輸出でも現地の飲食店やセレクトショップと組めば参入する余地がある
- 日本酒だけでなく、日本文化を丸ごと提案する
EV電池材料[F3]
- 電池以外の「次世代モビリティ部材」(絶縁材、リサイクル技術)にも応用市場がある
- 電気自動車関連の幅広い分野にチャンスがある
- 直接供給が難しくても、検査・分析・再利用など周辺ビジネスでの参入機会がある
- 大手企業ができない細かいサービスで勝負する
精密工作機械[F4]
- 米国市場での需要増に伴い、工具・測定機器・ソフトウェアなど周辺分野も拡大している
- 機械だけでなく関連商品も一緒に成長している
- 単なる機械販売ではなく「メンテナンス・教育・リモート監視」サービスで差別化する
- アフターサービスで継続的な収入を得る
和牛輸出[F5]
- 高級食材マーケットが拡大している
- 併せて日本の調味料、調理器具、冷凍物流サービスも需要が増加している
- 和牛を扱えなくても「日本食材総合セット」や「体験型フードイベント」で参入可能
- 和牛の周辺にある様々な日本の食文化を商品にする
まとめ
- 成長品目は化粧品、日本酒、EV電池材料、精密工作機械、和牛に加え、食品、自動車部品、電子部品、医薬品、アフリカ向け機器、再輸出品など。
- 中小企業は大企業のメイン市場を避け、小ロット・周辺サービス・ニッチ市場で勝負することが現実的。
- 規制対応や証明書取得を前倒しすることで、通関トラブルを防ぎ、参入スピードを上げられる。
- 新興国市場(アフリカ、ASEAN)や再輸出の仕組みを活用すれば、成長機会を広げられる。
- 日本の化粧品、日本酒、EV電池材料、精密工作機械、和牛が2023–2025年に海外市場で拡大[F1,F2,F3,F4,F5]。
- 製品ごとに規制・証明・認証が異なるため、事前調査と準備が不可欠。
- 商機マップと90日プレイブックを活用し、短期・中期で優先行動を明確化。
- KPIとアラートを組み合わせ、社内と外部環境双方を管理する体制が必要。
FACTリスト(出典付き)
- [F1]日本の化粧品輸出は2023年に前年比14%増、過去最高を更新|出典:日本貿易振興機構(JETRO)
- [F2]日本の日本酒輸出額は2024年に初めて500億円を超えた|出典:財務省 貿易統計
- [F3]EV用電池材料(セパレーター、正極材)が欧州向けに急増|出典:欧州委員会 Trade Statistics
- [F4]米国における日本製精密工作機械輸入は2024年に前年比22%増|出典:US Census Bureau – Trade Data
- [F5]和牛の輸出は2023年以降、香港・シンガポール中心に2桁成長|出典:農林水産省 食品輸出データ