コーヒーの輸入を実現するには、輸入手続きの正確な理解と準備が必要です。この記事では、コーヒーを商売目的で輸入するときの書類、輸送手段の選択、税関手続きなどを解説していきます。
*コーヒー豆を商売目的で輸入するために必要な手続きです。
コーヒー豆の輸入方法
この記事は、個人使用目的の輸入ではありませんのでご注意ください。個人使用とは、いわゆる自己消費です。金額の大小に関わらず、販売しないことです。逆にいうと、少しでも販売する場合は、商業輸入に該当します。
あなたの輸入は、商売目的ですか? まずは、この点をお考え下さい。もし、商売目的の輸入に該当する場合は、記事を読み進めてください。
まずは、コーヒー豆を3つの観点から考えます。
- 日本輸入時の関税のお話
- コーヒーの輸入に関係する2つの法律
- 必要書類
1.コーヒー豆の関税率と生産国
コーヒー豆を輸入するときは、日本側で輸入税(関税及び消費税)がかかります。関税は、コーヒー豆の種類、原産国等で変わります。消費税は、軽減税率が適用されて8%です。(2024年現在)
- コーヒーの状態(生豆か?焙煎か?)
- カフェインのあり・なし
- 原産国
コーヒー豆が生豆状態(焙煎前)の物は、無税です。焙煎済みの状態の物は、無税~12%の関税です。ただし、この関税は原産国によって変わります。
関税法上のコーヒー豆の分類
コーヒー豆のHSコードは、以下の通りです。
- 090111=カフェイン×生豆
- 090112=カフェインレス×生豆
- 090121=カフェイン×焙煎
- 090122=カフェインレス×焙煎
HSコードの分類は、煎っているか、いないか、カフェインの有無、原産国です。これらの違いで関税率がかわります。まずは、輸入予定のコーヒーがどのコーヒー豆に該当するかを確認します。
- 煎っている物 12% (カフェインあり・なし)
- 煎っていない物 0%(カフェインあり・なし)
この分類を判断できない場合は、各地の税関の関税監査官に相談をします。又は、事前教示制度を利用しても良いと思います。
コーヒーの生産国
コーヒーの原産国によっても関税率はかわります。日本は、いくつかの国との間で特別なルール(関税等を優遇する物)を設定し、相互に関税を削減しあっています。主な関税削減ルールは次の3つです。
- 特恵関税
- 特別特恵関税
- EPA(経済連携協定)
例えば、0901.21のコーヒーなら….
- ベトナム産=無税
- 韓国産=12%
同じコーヒー豆でも原産国の違いで関税率が大きく違います。
コーヒーは、どこに国から輸入されている?2016年度、50か国の輸入先一覧
コーヒーの関税率の調べ方
では、コーヒー豆の関税率を調べてみましょう。関税率は「ウェブタリフ」で調べます。このサイトのキーワードにコーヒー豆と入れます。
検索結果が以下の画像です。赤枠の所に国と関税率が表示されます。表の左側にある4桁の番号(0901.11~0901.22)の行を右側にみていきます。このとき、輸入される国名がなければ、WTO、特恵、または特別特恵のいずれかに含まれます。
国名がある場合は、それに対応する関税率が適用されます。空欄の場合は、多くの場合、WTO協定税率が適用されます。なお、輸入する額が20万円以下のときは、簡易税率が適用されます。
2.関係する2つの法律
輸入するコーヒーの状態により、適用される法律が変わります。
- コーヒーが生豆状態(焙煎していない)=食品衛生法+植物防疫法
- コーヒーが焙煎状態=食品衛生法
植物防疫法とは?
植物防疫法とは、海外からの害虫の侵入を防止するために作られた法律です。コーヒーの場合、生豆状態(生)の場合に適用されます。焙煎の場合は、適用されないです。植物防疫法で規制される貨物は、輸出国政府が発行する植物防疫書が必要です。または、日本側で燻蒸処理等が命令されます。
食品衛生法とは?
コーヒー豆は、食べ物であるため、食品としての安全性も審査の対象です。これを規制する法律が食品衛生法です。当然、海外から輸入するコーヒー豆も対象です。食品衛生法は、各地の食品検疫所が担当します。また、その関連企業として食品の分析センター等があります。
輸入者は、この食品検疫所に食品届を提出して、コーヒー豆が安全であることを証明します。コーヒー豆の審査では、特に次の点が重視されます。
- 農薬の有無(規定値内又は認めていない農薬の散布)
- 添加物の含有など(日本で認めていない成分又は使用基準など)
3.コーヒーの輸入に必要な書類
コーヒー豆(生豆)の輸入には、食品衛生法と植物防疫法の2つが関係します。
植物防疫法と食品衛生法など複数の法律が当てはまるときは、最初に食品衛生法以外から審査されます。コーヒー豆は、植物防疫法→合格、食品衛生法→合格の流れです。これは、そもそも植物防疫法の時点で不合格なら、食品としての審査をするまでもないとの考えがあるからです。
審査に必要な書類は、以下の通りです。
- 食品届(自社通関)
- 原材料表
- 製造工程表
- インボイス
- B/L又はAWB
- 植物検疫証明書
植物検疫証明書(phytosanitary certificate)」とは?
輸出国側の政府が病害虫がついていないことを証明する書類です。書類は現地の輸出者を経由して入手します。
「原材料リスト」と「製造工程表」とは?
原材料リストは、コーヒー豆以外の成分が含まれている場合に提出します。製造工程表は、コーヒー豆の生産~採取、パッキングなどの流れを書面にした物です。いずれのフォーマットは決まっていないため、輸入者や輸出者が用意します。フォーマットは決まっていませんが、レターヘッドの部分に、生産者や包装者の情報(会社名、住所、電話番号など)が必要です。
コーヒー豆を輸入する具体的なステップ
ここから先は、実際に豆を現地調達するところから、日本へ輸入するまでの流れを考えてみます。もし、ここまでの説明を見て難しいと感じられた場合は、ゼロイチコンサルで支援します。
通関業者は、このような複雑な輸入手続きを代行してくれます。ここから先は、代行サービスを利用されず、ご自身で輸入手続きをされる前提で説明をしていきます。
コーヒー豆の輸入 全体の流れ
コーヒー豆の買い付けから、輸入手続きまでは以下の10ステップです。
- 求められているコーヒーを調べる。
- 現状、日本に輸入されているコーヒーの価格を調べる。
- コーヒーを輸入する場合のコスト(船賃、関税率など)を計算
- 食品検疫所と植物検疫所に、コーヒー豆の輸入に必要になる手続きを相談
- 現地でコーヒー豆を仕入れる。(日本で必要になる書類を出せる業者)
- 植物防疫所と食品検疫所に必要書類を提出。
- 植物防疫所や食品検疫所から検査の通知があれば従う。
- 合格をすると、食品届出済証が発行される。
- 税関へ輸入申告。(正確に言うと、これは食品検疫所と同時進行)
- 税関審査開始、必要であれば「税関検査」を受ける
- 輸入許可となり、貨物を引き取る。
今回は「コーヒー豆の輸入手続きの方法」であるため、4番~11番のみを説明します。1~3番のステップは「輸入の始め方」を参考にしてください。
ステップ4~11の詳細
4.食品検疫所と植物検疫所に相談
輸入食品の相談は、食品検疫所や植物防疫所でできます。国の機関であるため、相談料は不要です。ただ、食品検疫所などは、とても忙しい部署です。親切丁寧に教えてくれるのかは担当者により異なります。できる限り、事前に調べた上で相談に行きましょう。
食品検疫所や植物防疫所への相談は、具体的な情報や書類がいります。相談内容に具体性がないと、答える方ともしても大変です。この場合の具体性とは、以下の通りです。
食品検疫所
- 食品の原産国
- 商品は何か?
- どんな原材料が含まれる?
- どんな添加物が含まれる?
- 加工方法
植物防疫所
- 食品の原産国
- 商品は何か?
- 商品の加工状況を具体的に。
食品検疫所や植物防疫所に相談をするときは、これらの情報をまとめた資料を用意しておきます。食品検疫所は、相談者の情報によって、輸入食品に対する「検査状況」や、提出しなければならない書類などを案内してくれます。
一方、植物防疫所では、植物防疫法に該当するのか?の観点で審査をします。もし、該当する場合は、どのような書類が必要になるかなども教えてくれます。
特に重要な情報
- 食品検疫所は、日本で認められていない添加物の含有と農薬
- 植物検疫所は、豆の状態(焙煎か生豆)
5.仕入れ先を決めるときは、輸入に必要な書類の用意も考慮する
日本側で必要となる各種輸入書類を手に入れられるか?を考慮しましょう。どれだけ良いコーヒーでも日本で必要な書類を用意できなければ意味がないです。
6.植物防疫所と食品検疫所に必要書類を提出
事前確認済の必要書類を提出します。食品輸入届は、貨物が到着する7日前から申請ができます。できる限り、早く書類を提出するようにして、日本の港で保管する日数を短くします。
基本的に貨物は、港にて5日間ほどは無料で保管できます。しかし、これ以上の日数になると「デマレッジ」と呼ばれる延長料金がかかります。特にリーファーコンテナ(温度調整ができるコンテナ)の場合は、一日経過するごとに3万円ほどの延長料金がかかるため、注意が必要です。
7.植物防疫所や食品検疫所から検査の通知があれば従う。
初めての輸入では、100%の確率で検査にあたります。植物防疫法、食品検疫所のどちらの検査も受ける可能性があります。食品の輸入検査は、食品検疫所の指定を受けている民間業者が実施します。輸入者が「指定検査機関」を選び検査をしてもらい、その結果を食品検疫所に報告します。
輸入検査になることを前提として、最寄りの指定検査機関とも相談をしておくと良いです。商品によっても異なりますが、1件当たり3万円~5万円が相場です。
8.合格すると、届出済証が発行される。
植物防疫法と食品衛生法の2つに問題がないと判断されると「届け出済証」が発行されます。この書類は、厚生省などが税関に対して次のような通知をしています。
「税関さん、この食品は、食品衛生法上に問題がある貨物ではありません。厚生省としては、その点をしっかり確認しています。税関さんの関税徴収の観点から審査が終っていれば、許可を出してもいいです!」つまり、輸入者は、この書類を税関へ提出することによって、厚生省などの他法令の確認を受けていることを証明します。(ステップ10)
9.税関へ輸入申告する(食品検疫所と同時進行ok)
ここまでの説明は、厚生省などへの輸入申請でした。ここからは税関への申告です。実は、ここからのプロセスは、ステップ6の厚生省などへの申請と一緒に行うのが一般的です。厚生省と税関の審査を同時並行させることによって、貨物の引取りまでの時間を短縮する狙いがあります。
税関への輸入申告は、次の書類を提出します。
- 輸入申告書(●●を輸入します!と宣言する書類です。関税などを自分で計算して申告)
- インボイス(輸出者と取引した価格を示す書類です。)
- パッキングリスト(どのように梱包されているかを示す書類)
- アライバルノーティス(船の到着を知らせる書類→船会社が発行)
- イラスト(補足図・写真など)(輸入する貨物のカタログや絵など)
- 食品届出済証の写し(ステップ8で発行された書類)
10.必要であれば「税関検査」を受ける。
税関へ輸入申告書を提出すると、書類の内容について審査が行われます。審査の結果によっては、税関検査にあたります。税関検査には、大型x線や開披検査と呼ばれる物があります。どちらかだけ行うときもあれば、両方行うこともあります。
もちろん、これらの費用もすべて輸入者の負担です。よって、はじめて食品関係を輸入するときは、最大3つの検査を受ける可能性があります。輸入するときに「輸入者符号」を使って実績をためていくことによって、少しずつ検査になる確率が下がっていきます。
以上がコーヒー豆を輸入するまでの全体的な流れです。以下でよくある疑問をご紹介しておきます。
よくある疑問
1.宅配貨物だとどうなる?
EMSなどの小包で届いた食品は、税関外郵便出張所からハガキが届きます。ハガキに書かれている通りに手続きを進めてください。あらかじめ食品の小包が届くことがわかっている場合は、その旨を到着する空港を管轄する食品検疫所に伝えてもいいです。できるだけ早く受け取りたいのであれば、事前に動かれることをお勧めします。
国際郵便などを使って食品を輸入する場合は。相手国で発送するときに「インボイス」などを添付してもらいます。また、宛名の部分は「社名・屋号」などにした上で、商業用の小包であることを外装などに表示するようにしてください。これで誤って個人用の貨物として通関されることを防げます。
2.コーヒーの主な輸入国と輸入価格は?
コーヒーの輸入国や輸入価格については「コーヒー輸入状況まとめ」でご紹介しています。こちらで、コーヒーの加工状況ごとの主な輸入国と日本港到着時の価格をご紹介しています。
3.個人輸入もできますか?
個人的使用目的の場合は、食品届は不要です。ただし、税関からは「確認願い」を求められる可能性があります。これは、厚生省が「個人使用目的であるから食品衛生法を適用されない」ことを示した書類になります。輸入者は、厚生省へ個人使用目的であることを伝えて、この確認願いを入手した後、税関へ提出します。(求められた場合)
4.販路の開拓先は?
まずは、輸入コーヒーで求められている物を探します。探し方は、ネットショップの売れ筋ランキングを見ていく方法があります。そこで「なぜ、そのコーヒーが売れているのか?」を見ていくと、関連して売れそうな分野がわかるはです。人それぞれ、コーヒーに求めている物は違う前提に立った上で「大手が入り込めない小さな市場」に参入するようにします。
例えば「コーヒーを飲みたい!でも、睡眠障害は嫌だ!」という方のために、カフェインレスのコーヒーがあります。これは、コーヒーという大きな市場の中にある「しっかり睡眠したい市場」をうまくターゲットにできている例だといえます。
5.転売することはできる?
正規の輸入手続きを行えばできます。この記事でお伝えした「コーヒーを商売目的で輸入する方法」に従って手続きをします。輸入時に「個人使用目的」と偽って輸入申告した物を販売することは、法律違反です。必ず、輸入申告をするときに「商売用」として輸入することを伝えてください。
まとめ
コーヒー豆の輸入に関係する法律は「植物防疫法」と「食品衛生法」の2法です。これらの法律を管轄するところは、植物検疫所と食品検疫所です。輸入者は、これらの機関に対して、求められている書類(植物検疫書など)を提出することによって、他法令の確認を受けます。この確認が終ると、輸入者に対して「届け出済証」が交付されます。
輸入者は、税関への申告のときに、この届け出済証を添付することで税関からの許可を得られるということなります。以上が海外からコーヒー豆を輸入する方法です。
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