日本と世界の港湾混雑指数とは
港湾混雑がビジネスに与える影響
輸出入の実務に関わる中小企業にとって、港湾混雑は避けて通れないリスクです。荷物が港に到着しても停泊場所が空かず数日待機したり、通関が遅れて納期がずれ込んだりすることは珍しくありません。こうした事態は信頼やコスト負担につながります。そのため「港湾混雑指数(Port Congestion Index)」を理解し、実務判断に組み込むことは重要です[F1,F2]。
日本と世界の混雑状況
まずは、日本と世界の混雑状況をご紹介します。
日本の状況
主要港(横浜・神戸・名古屋)は、大型船の寄港が減少傾向にあります[F1]。これは、大手のメガキャリアが日本の港を使わず、韓国などの周辺国の港を使うようになったためです。(阪神淡路大震災からの転換
世界の状況
- 世界平均の港湾回転時間:1.2日[F2]
- 米国西岸港:2021年に深刻な物流危機を経験[F3]
- 中国・上海港:旧正月前後に混雑が集中[F4]
- 欧州ロッテルダム港:デジタルツインやバース予約システム導入で効率化[F5]

重要な点:2023年世界平均は1.2日だが、地域差が大きいです。また、混雑は偶然起きるものではなく、構造的・周期的なリスクです。
港湾混雑指数(Port Congestion Index)とは?
港湾混雑指数(Port Congestion Index)は、世界各地の港でどの程度コンテナ船や貨物船の混雑が発生しているかを数値化した指標です。貨物船の滞留時間や停泊待機の状況をもとに算出され、港湾の効率や輸送ルートのリスクを把握する際に活用されます。
例えば、主要港湾で混雑指数が高い場合、荷役に時間がかかり、輸送の遅延や追加コスト(滞船料・保管料)が発生しやすくなります。逆に指数が低ければ、貨物の取り扱いがスムーズに進み、リードタイムの予測精度が高まります。

指標は、輸入者・輸出者やフォワーダーがルートを選定する際の判断材料として使われます
港湾混雑指数を調べる方法
1.UNCTAD(国連貿易開発会議)
- 「Maritime Transport Review」で世界の港湾回転時間(port call turnaround time)を公表
- 2023年の世界平均は1.2日[F2]。
2.世界銀行 / IHS Markit “Liner Shipping Connectivity Index”
混雑そのものではなく、港の接続性や効率性を数値化しています。(各国の比較に便利)
3.国土交通省(日本)・各国の港湾庁
日本では「港湾統計」、米国は US DOT MARAD、中国は交通運輸部(MOT)、EUは各港湾局が速報値を発表しています。
4.MarineTraffic / Port Congestion Monitor
マリントラフィック。リアルタイムの混雑状況(待機船数・入港予定)を表示。速報性が高いが、公式値との差異があります。
5.Lloyd’s List / Drewry / Clarkson
海運市況レポートに混雑指数や港湾効率のランキングを掲載。業界利用が多いです。

「Congestion Index」「Port Congestion Monitor」 など、それぞれが独自の名称で公開しています。
実務での活用方法
- 船会社のスケジュールを確認する。
- 混雑指数を確認する
- 通関・配送計画を調整
航路別の特徴も重要です。例えば、東アジア航路は旧正月に混雑リスクが高まります。この情報を踏まえることで出荷タイミング調整や代替港利用が可能になります。
💡 中小企業向・混雑指数6つの活用ポイント
1.見積もりの精度を高める
港が混雑すると、滞船料や保管料がすぐに増えます[F1,F3]。混雑指数を確認し、余裕を持った見積もりを出せば、赤字リスクを避けられます。
2.フォワーダー選びに使う
ロッテルダム港のようにデジタル予約システムを導入している港は、混雑が少ない傾向があります[F5]。フォワーダーや代替港を選ぶときの判断材料にできます。
3.信頼性を示す材料にする
UNCTADの港湾滞留時間データは国際的な基準です[F2]。顧客への納期説明で活用すれば、「リスクをきちんと管理している会社」として信頼を得やすくなります。
4.ルート変更の工夫に役立てる
上海港は旧正月の前後に混雑が集中します[F4]。この時期は釜山や横浜経由に切り替えることで、納期遅延を防ぎやすくなります。
5.料金交渉のカードにする
米国西岸港の深刻な混雑データ[F3]を示せば、船会社との料金交渉で有利になります。UNCTADなどの公式データを使えば、客観性があるため割増コストを避けやすい[F2]。
6.コスト管理に組み込む
混雑指数を参考に、滞留料などの追加コストを事前に計算して見積もりに含めておく。事前に顧客へ説明すれば、信頼を得やすくなります。
要点まとめ
- 港湾混雑は周期的・構造的リスクである[F1,F2,F3,F4,F5]
- 混雑指数を活用することでリードタイムとコストを安定化できる
- 代替港やスケジュール調整で柔軟に対応することが重要
- 新しい会社は「指数の活用」を差別化ポイントにできる
FACTリスト(出典付き)
- F1: 日本の主要港(横浜・神戸・名古屋)の大型船寄港はアジアでのハブ機能が釜山・上海に移ったため、日本主要港における大型船寄港シェアは低下傾向。出典:国土交通省 港湾統計 https://www.mlit.go.jp/k-toukei/
- F2: UNCTADは港湾混雑を「turnaround time」と定義。2023年世界平均は1.2日。出典:UNCTAD Maritime Transport Review https://unctad.org
- F3: 米国西岸港(ロサンゼルス・ロングビーチ)は2021年に物流危機で滞船が常態化。出典:US DOT Maritime Administration (MARAD) https://www.transportation.gov/marad
- F4: 中国・上海港は世界最大取扱量を維持。混雑は旧正月前後に集中。出典:中国交通運輸部 (MOT) https://www.mot.gov.cn/
- F5: 欧州のロッテルダム港は港湾デジタルツインでバース予約システムを導入。出典:Port of Rotterdam Authority https://www.portofrotterdam.com