航空貨物を利用する皆さんにとって、2025年3月から始まる新たなセキュリティレベル(全カートン確認)の強化は見逃せない問題です。航空輸送に関係する全ての輸出入事業者にとって、コスト増や手続きの煩雑化につながるでしょう。
今回は、国際輸送の初心者でも理解しやすいように、新規制(KS/RA制度)の概要、影響、小規模事業者ができる対応策(KSと非KSの判断方法)について解説していきます。

KS/RA制度は、2005年10月1日から既に実施されています。
航空貨物のKS/RA制度の新規制開始が迫る
Known Shipper(特定荷主)の制度について
KS/RAの新規制とは、2025年3月に開始される検査対象の厳格化のことです。荷主をKS、非KSと分類し、これにより検査基準が大幅に変更されます。
この規制強化は、航空輸送をする全ての荷主さん、フォワーダーさん、輸出梱包業者さんに関係します。ぜひ、この機会にKnown Shipper(KS)/ Regulated Agent(RA)の理解を深めましょう!
- RA=特定航空貨物利用運送事業者等(フォワーダー)
- KS=保安体制に優れている荷主→逆:非KS
RAは、適切な保安措置を講じるフォワーダーや上屋等を指します。一方、KSとは、適切な安全対策を施した荷主を認定する仕組みです。(RAが認定) 一般の荷主さんは、KSが深く関係し、制度への対策を怠ると、大幅なコストアップにつながります。
KSのメリットは、爆発物検査が免除される
KS(優良荷主)のメリットは、航空輸送する際に必要とされる爆発物検査が免除されることです。但し、KSとしての認定には、ガイドラインの遵守(コスト負担含む)が求められます。
非KSのデメリット
- コストアップ
- リードタイムが長くなる
- 開披検査における再梱包不良の発生
では、一般荷主としてどのような影響があるのか?現実的に新規制(KS/RA制度)にどのように対応すればいいのかをご紹介します。
制度変更の要点と影響
KS貨物と非KS貨物の用語の意味
KS貨物と非KS貨物の意味は、次の通りです。
- KS貨物とは、保安体制が優れている荷主の貨物
- 非KS貨物とは、上記の反対
これまでの制度の仕組み
- KSの貨物=爆発物検査が免除
- 非KSの貨物=以下、3つのいずれかの爆発物検査をしていた。
- X線検査装置
- 爆発物検査機
- 開披
包装資材のシュリンクラップのふき取りなど、ある程度の塊(ユニット=外装)でできていた。
しかし、今回の制度改正により……
2025年以降の制度改正、2つのポイント
- 2025年3月からは、それが「全カートン」が検査の対象
- 2026年1月からは、外装検査から「中身」の検査が必要

最終的には、外装検査から中身、かつ、それが全カートンが対象になる、この2つが重要なポイントです。
制度改正により、こんな影響が出ている。
この制度改正により、関連業界は、大きな影響がでています。
例えば…..
- X線検査装置自体が非常に高価
- 作業人員を増強する必要がある。
- 検査をするための搬入を前倒しする必要がある。
などです。当然、この影響は、各荷主にコスト負担としての影響を与えます。なぜなら、RA側が検査体制等を構築するために、様々な設備等を増強、人員の増強等が必要になるためです。
荷主への影響は?
荷主への影響は、次の通りです。
- 爆発物検査料の大幅な増加
- リードタイムが長くなり、遅延リスクが高まる。
1.爆発物検査料(輸送コスト)の増加
爆発物検査の対象となる範囲が拡大することで、荷主として支払う検査料が大幅に増加する可能性があります。(非KS貨物)RA認定のフォワーダー等も新規制への対応費として関連費用を上げる可能性が高いでしょう。
具体的に考えてみましょう!検査対象範囲の拡大とは次の意味です。
従来の爆発物検査料金の課金単位
現在の爆発物検査料は、パレット×シュリンクラップにしていると、これを「一つ」としてカウントします、この場合、爆発物検査料は、一件分です。
従来の計算例:爆発物検査料が600円/1ユニットなら、600円のみです!
改正後の爆発物検査料金の課金単位
改正後の爆発物検査は、その対象範囲が大幅に見直されています。原則、ダンボール単位で爆発物検査が行われます。
例えば、パレットの上にダンボールが60個あると……..爆発物検査料金×60個分の費用がかかります。改正前よりも爆発物検査の対象が必然的に増える為、当然、爆発物検査料も大幅に増えます。
新規制後の例:爆検料が600円/1ユニットなら、ダンボール1つを1ユニットとカウント。600円×60個の料金がかかります!

爆発物検査をする単位が変更されるため、それにより、荷主が負担する爆発物検査料は、大幅に増加する見込みです。なお、爆発物検査料は、フォワーダーによって非常に違う点にも留意しましょう! 例:数百円前後/個~数千円/個など(最大700%の振れ幅)
2.リードタイムが長くなり遅延リスクが大幅に高まる!
検査数自体の増加、シュリンクを外しての検査の増加
により、検査に要する時間が大幅に増加。結果、積載予定の飛行機にのせられないケースが増えています。RA/KS新制度は、「納期の遅延リスク」と密接に関係します。
しかし、だからといって、比較的、小規模な輸出企業は、すぐにKSになろうとは考えない方が良いです。KSになったり、維持をしたりするのにコストがかかるからです。しかも、実は非KSでも「ある方法」により、新規制に対応できます。
今すぐできる新規制への対応策
新規制への対策は次の4つです。
- KS?非KSのコストや「自社の大切な部分」を考えよう!
- Known Shipper(特定荷主)への登録
- 代替手段を検討しよう。
- 非KSとしての輸送を前提とする。
1.KS?非KSのコストや自社の”大切な部分”を考えよう
「KSになる? KSにならない?」
この選択をじっくりとしましょう。新規制の開始とあわせて、すぐにKSにならなくても良いです。
KSになる=国土交通省のガイドラインを遵守
ガイドラインには、次の条件が記載されています。
KSになる為の条件
- 航空貨物を取り扱う職員の保安管理
- 航空貨物の保安措置及び管理
- 航空保安教育訓練
- 社内マニュアル
- 自主監査
KS荷主は、上記を満たすことが条件です。条件を満たすためには、それなりの人材教育やマニュアルの作成などをしなければならず、ある程度の規模感で輸出をしない限り、逆に費用負担が大きくなります。
つまり….
- 非KSとして爆発物検査を受けた場合の諸費用
- KSとして認定を維持するためにかかる諸費用
を天秤にかけて判断するのが賢明です。当然、KS、非KSの貨物の取り扱いは、コスト面以外の判断要素もございます。
例えば…..
- 「うちは生鮮食品だから開封されたくない」
- 「精密機械部品だから開梱は避けたい」
と考える方もいらっしゃるでしょう。これらは、コストの側面では判断ができない「大切なこと」です。このような場合は、コスト高であることはわかりつつも、あえてKS認定を受けることもありだと思います。
KS荷主のコスト | 非KS荷主のコスト |
|
|

両方をテーブルにのせて検討してみましょう!
2.Known Shipper(特定荷主)へ登録
最終的には、Known Shipper(KS)の認定を受ける方が良いと思います。非特定荷主(非KS)の貨物は、リードタイムがのびやすいです。航空輸送の迅速性を重視したければ、やはり理想は「KS」です。
なお、KSの認定は、RAの認定を受けたフォワーダーが行います。
- RA認定されているフォワーダーに問い合わせをする。
- 特定荷主が遵守すべき事項(ガイドライン)を満たす
- 合意書を締結する
- 特定荷主認定書を受理する
国土交通省とRA、KSの関係
- 国土交通省がフォワーダー等をRA認定する
- RA認定されているフォワーダーが荷主をKS認定する

ガイドラインは、RA認定を受けているフォワーダーが所有しています。そのフォワーダーと取り決め(契約)をして、合意すると、特定荷主として認められます。
3.代替輸送手段について
航空貨物の検査負担が大きくなる中で、海上輸送への切り替えも有効な選択肢の一つです。海上輸送は、航空輸送に比べてコスト削減ができますが、その分、リードタイムが長くなるリスクがあります。特に緊急性の高い貨物には、海上輸送に適さないため、事前に十分に納期の打ち合わせをした方が良いです。

代替輸送にも一長一短があり、航空輸送の代わりとは言い難いです。
4.非KSとしての輸送を前提とする。
4つ目は、最も実用的な対応方法です。これまで通り「非KS」として輸送を依頼し、爆発物検査を受ける前提で輸送する方法です。
ただし、これまで通りの梱包方法で輸送すると、大幅なコスト増につながります。そこで、非KSとして継続する場合は、以下、3つの方法を検討しましょう。
- 木箱梱包をする
- 木枠梱包をする
- 三層ダンボールで梱包する。
3層段ボールによる規制対応例:トライウォールのダンボールで商品を包み込む
3層段ボールによる規制対応例:トライウォールのダンボールにより「積み重ねた段ボール」を覆う。
三層段ボール×オーバーパックによるコスト削減効果
三層段ボールで貨物を包み込むことを「オーバーパック」と言います。オーバーパックをすることで、爆発物検査上の対象数が「1ユニット扱い」となり、爆発物検査料の増加を避けられます。
1パレット50個の貨物を載せている場合の計算例
仮に検査料が一つ600円だとしましょう!1パレに50個の貨物が載っています。
- ※爆発物検査料は、フォワーダーによる振れ幅が非常に大きいです。(最小と最大は700%前後の振れ幅)
- オーバーパックの料金は、一例です。諸条件により前後します。
オーバーパックしていない場合 | オーバーパックしている場合 |
約30,000円の検査代金(600円×50個) | 約10,000円前後 |
オーバーパックすることで、爆発物検査の料金を大幅に下げられる可能性が高いです。当然、オーバーパックは、強化ダンボールで行うため、検疫上の問題もございません。軽くて頑丈に作られているため、重量の増加(輸送費の増加)も最小です。
今回の新規制の対応方法に迷われている場合は、ぜひ、強化ダンボールを検討してみましょう!
新規制への対応方法を検討する手順
- KSになる? ならない?(非KS)
- 非KSを維持する場合は、爆発物検査への対応方法を検討
- 未対応は、爆発物検査料が大幅に上がる可能性あり
- 検査への対応は、木枠、木箱、トライウォール(3層構造)のいずれか。
- 木枠、木箱は、重量や検疫上の問題が発生
- 輸出梱包の基本と最適な資材の選び方
- FCL・LCLの輸送に適した梱包とは?
- 輸送コストを削減するには?
- Known Shipper(KS)制度の強化
- 木箱・ダンボール・強化ダンボールの選び方
- 輸出梱包の基本と最適な資材の選び方
- あなたの梱包は規制に適合している?チェックリスト
- トライウォール梱包6つの利点
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