日本の農産物の関税は高い? マスメディアによる誤情報

農産品の関税 貿易コラム
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TPPなどの自由貿易協定の交渉になると、必ずやり玉に挙げられるのが「農業」です。重要五品目と、あえて品目名が出されているため「農産物だけが過度に保護されている」との誤ったイメージを持たれます。しかし、各国における農産物に対する関税率を調べてみると、日本の農業は過度に保護されているわけではありません。むしろ関税率は、低くて開かれています。

そこでこの記事では「農産物の関税を引き下げる必要があるのか?」についてご紹介していきます。

農産品の関税

日本の農産物に関する関税率は、そんなに高いのか?

日本は、外国と自由貿易の交渉をするときに「農産物の開放」を要求されることが多いです。しかし、実際のところ、日本の農産物に対する関税率は、WTO協定税率(WTOに加盟している国に適用される税率)で平均10%以下であり、少し高い関税率でも20%を超える物は、少ないです。一方、諸外国に目を向けてみると、農産物に対する関税率は、日本よりもはるかに高く設定している国々が多いです。

下の表をご覧ください。こちらは、日本と各国が設定している農産物に対する関税率表です。緑色の背景が日本が設定する関税率です。一方、白色背景は、各国が設定する農産物の関税率です。

例えば、タイの場合、平均的に30%~40%の関税をかけており、10%以下の関税率を設定している品目はほぼないです。お隣の中国の場合も同様です。日本と中国は、自由貿易を結んでいないため、以下に記載されている10%の関税がかかります。

もちろん、下の表に記載されているデーターは、ある一部にすぎません。データー的に不足している部分もありますが「日本の農産物に対する関税率は、決して高いわけではない」といえます。日本の農産物の関税率は高くありません。むしろ、他国よりも低く設定されており、関税上の障壁は、現状でも低いです。

品目 HSコード WTO税率 最も低い税率 タイ ベトナム アメリカ オーストラリア フランス 中国 ブラジル
ばれいしょ 0701.90 4.3 0 0 20 0.005usd/kg 0 5.8 13 10
トマト 0702.00 3 0 40 20 0.039usd/kg 0 14.4 13 10
タマネギ 0703.10 8.5 0 27 15 0.0083usd/kg 0 9.6 13 10
アーモンド 0802.11 2.4 0 10 15 0.077usd/kg 5 6 10 10
バナナ 0803.10 20 0 30 25 無税 0 16 10 10
アボガド 0804.40 6 0 40 15 0.112usd/kg 0 4 7 10
マンゴー 0804.50 3 0 30 25 0.066usd/kg 0 0 15 10
グレープフルーツ 0805.40 10 0 40 40 0.0019usd/kg 0 1.5 12 10
レモン 0805.50 0 0 30 20 0.022usd/kg 0 6.4 11 10
ぶどう 0806.10 17 0 30 10 1.13usd/kg 5 17 13 10
りんご 0808.10 17 0 10 10 0 0 11 10 10
いちご 0810.10 6 0 40 15 0.002usd/kg 0 11 14 10
キウイフルーツ 0810.50 6.4 0 30 7 0 0 9 20 10
平均関税率 7.97 0.00 27.46 18.23 0.11usd/kg 0.77 8.59 12.38 10.00

関税率だけではなく、課税価格を見る

また、農産物の関税率が高いと言い張る方は、関税率ばかりに注目をして「課税価格」に目を向けていません。課税価格とは、関税率をかける対象の価格のことです。人件費が安い国で生産した農産物の課税価格は、当然、安いです。そして、この安い課税課価格に対して、さらに低い関税率を適用したらどうなると思いますか?

日本で生産された農産物は、価格上、どうしても不利になります。だからこそ、自由貿易を推進する一方、農産物に対する関税率は、ある程度、維持されるべきだと考えます。

必要であれば、自由貿易で特定国のみに関税率を下げればよい。

仮に農産物の関税率を下げるのであれば、特定の国に対して、特定品目のみの関税率を下げればいいだけです。「世界」に対して、広く農産物の関税率を下げるのは危険です。

例えば、タイは「いちご」に対して、40%の関税率を設定しています。しかし、日本とタイは、自由貿易協定により、日本産のいちごに対しては「40%→0%」です。タイ向けのイチゴであったとしても、すべての国の物に課税されるのではなく、特定の国以外(タイと自由貿易協定を結んでいない国)の商品ついて高い関税率がかかります。

タイにおけるイチゴの事例からもわかる通り、農産物に高い関税率を設定するのは、決して日本だけではありません。むしろ外国の方が高い関税率を設定している方が多いです。マスコミによる誤った情報を捨て去り、日本の農業をどうするべきなのか? 農業以外の産業をどのようにのばしていくのか?

この2つを推進又は、適切にブロックして、日本国内の生産力の低下を招かないようにすることが重要だと考えます。

まとめ

日本の農産物に対する関税率は、世界的にみても決して高くはありません。むしろ低く設定されている方です。農業は、国内の食糧問題に直結する重要な産業であるため、何でも自由化するべきとの考えには、違和感があります。こんなことを言うと、リカードの比較優位を持ち出される方もいらっしゃいますが、単純に考えて、農産物の生産を国をまたいで他国に依存するとの考えには、大きな危機感があります。

やはり農業は、国の食料に直結する重要な産業だととらえて、対外的には、ある一定の防波堤を築いておき、国内における改革を行うことが大切だと考えます。

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