建設機械の輸出市場の現状
日本の建設機械の輸出市場は、最近大きく変化しています。
全体の輸出状況
2024年の実績
- 建設・鉱山機械の輸出額:1兆7,684億円
- 前年と比べて10%減少[F1]
地域別の状況
- アメリカ向け:5.5%減少
- EU(ヨーロッパ)向け:27.4%の大幅減少
- アジア向け:横ばい(ほぼ変わらず)[F2]
新車市場の状況
- 油圧ショベル(新車):21.6%減少
- ミニショベル(新車):15.4%減少[F3,F5]
新車市場の落ち込みが目立っています。
中古車市場の状況
中古市場では逆の動きです。
- 油圧ショベル(中古車):12.6%増加
- ミニショベル(中古車):27.6%の大幅増加[F4,F6]

中古市場では逆の動きが見られます。
新品から中古品へと市場が変化
需要のシフト
需要が新車から中古品へと移っている可能性が高い状況です。
過去の実績との比較
2023年度の統計では、建設機械の出荷金額は過去最高を3年連続で更新しており、国内外の需要の両面で変化の大きさが目立っています[F7,F8]。
- 新車:全体的に販売が減少している
- 中古車:大幅に販売が増加している
- 地域別:ヨーロッパの減少が特に大きい
- 長期的:過去最高の実績もあり、市場の波が大きい

建設機械業界では、顧客の購入パターンが新車から中古建機に変わってきている可能性があります。
輸出実務の課題
- 市場の変化にどう対応するか:新車の需要が減り、中古建機にシフトしています。その流れに合わせた戦略が必要です。
- 国ごとの規制の違い:輸出先によって求められる基準が異なります。アメリカではEPAやNHTSA、ヨーロッパではCEマーク、中国ではCCC認証が求められます[F19,F20,F22]。
- コストの上昇:建設資材や機械の価格が上がっており、その分だけ輸出の競争力が下がるリスクがあります[F10,F11,F12,F13]。
- リスク管理の必要性:通関の遅れや罰則を避けるためには、最新の規制や市場情報を常に把握しておくことが欠かせません。
中小企業が実践できる戦略
中古建機にひと手間加える
日本の中古建機は整備状態が良く、海外でも高く評価されています[F6]。輸出前に再塗装したり、稼働時間を証明する書類を付けたりすることで「付加価値のある中古建機」として販売できます。こうした工夫は小規模の業者でも収益を伸ばしやすい方法です。
アジア・アフリカ市場を狙う
新興国では輸入の際に第三者による検査証明が必要とされます[F5,F11]。中古建機に検査証明をセットにした「ワンストップ輸出サービス」を提供すれば、競合との差別化につながります。
規制をクリアした中古機で差別化
EUではCEマークが無い中古建機は使えない場合があります[F10]。輸出前にCE基準を満たした状態にすれば、現地で高値で販売できる可能性があります。
オンライン販売で信頼をつくる
中古建機市場は価格が不透明で、買い手が安心できる情報が少ないのが課題です。整備履歴や検査証明をオンラインで公開すれば、信頼を高められます。中小企業でも越境ECを通じて海外の顧客に直接販売できます。
輸送と保険をまとめて提供
建機は重量物なのでRORO船での輸送が中心で、国際輸送保険も一般的に利用されています[F8,F14]。中古建機と一緒に輸送・保険をパッケージで提供すれば、買い手にとって便利なサービスになります。
盗難や不正機械への対策を見せる
日本ではMORISシステムを使って盗難建機との照合が行われています[F7]。輸出する中古建機に「MORISで確認済み」とラベルを付ければ、安心して取引できる業者として信頼を得られます。
輸出先ごとに違う規制
輸出先の国によって、求められる規制が大きく異なることも重要なポイントです。
アメリカの規制
- EPA(環境保護庁)
- NHTSA(高速道路交通安全庁)
- FCC(連邦通信委員会)
など複数の機関の規制があります[F19]
- ヨーロッパの規制:建設製品規則(CPR)に基づくCEマーキングが必要[F20]
- 中国の規制:CCC認証が求められます[F22]
実際の手順(6ステップ)
こうした課題に対応するために、輸出実務を以下の流れで整理するといいでしょう。
- 対象機械の特定とHSコード確認
- 輸出市場ごとの規制調査(米国EPA、EU CE、中国CCCなど)
- 必須書類(DoP、HS-7、CCC証明書など)の準備
- 通関業者と事前協議
- サプライチェーンコスト見積もり調整
- 出荷・通関・販売チャネル最適化
おすすめの対策
新車輸出の強化
- 減少傾向の背景を分析する
- 需要が見込まれる地域(例:北米)に集中する
中古機械市場へのシフト
- 需要増が見られるアジア市場向けに販売体制を再構築する
- 中古車市場の成長を活かす
コストリスク対策
- 契約に価格変動条項を入れる
- サプライチェーンコストを顧客に転嫁できるようにする
💡 実務メモ
新車 vs. 中古車: 日本の輸出市場における需要シフトへ対応をしよう!
- 次の一手: 中古機械の調達・整備・流通プロセスを強化し、オンライン販売チャネルを構築。
- 狙う効果: 新車市場の落ち込みをヘッジし、中古需要の成長を収益に変換。
- 出典: [F1,F3,F4,F5,F6]
規制の三竦み: 米国・EU・中国向け輸出における個別コンプライアンス戦略
- 次の一手: 市場別の規制に基づく独自チェックリストを整備。
- 狙う効果: 通関遅延・罰則リスクを削減し、安定的な輸出運用を実現。
- 出典: [F19,F20,F21,F22]
EU域内の罰則リスク: 統一された法律と、統一されていない罰則を理解する事
- 一手: 輸出先加盟国ごとの罰則内容を事前確認。通関業者との契約でリスク分担を明記。
- 狙う効果: 不測の高額罰金や法的リスクを回避。
- 出典: [F25,F26,F27,F28]
FAQ
- 基礎編:CEマーキングとは? → EU市場で流通する建設製品に必須の表示[F20]。
- 中級編:中古機械にも規制は適用される? → 適用の有無は市場・製品分類ごとに異なる。
- 上級編:米国EPA規制の最新動向は? → 不明(要確認)。ただしEPAは環境基準適合を重点化している[F19]。
よくある実務トラブル例は?
- 米国:HS-7フォームやEPA書類の不備で通関遅延が発生しやすい[F19]。
- EU:DoPの記載不備で出荷停止リスクあり[F21]。
- 中国:CCC証明書の取得遅延が現地販売に直結[F22]。
要点まとめ
- 日本の建機輸出は2024年に10%減少、新車が大幅減、中古が増加[F1,F3,F4,F5,F6]。
- 米国・EU・中国は規制アプローチが根本的に異なるため、市場別のコンプライアンス戦略が必須[F19,F20,F21,F22]。
- サプライチェーンコスト上昇が実務に影響し、価格変動条項やPPI監視が重要[F10,F11,F12,F13,F29]。
- EUの罰則は非統一的で、加盟国ごとに高リスクが潜在[F25,F26,F27,F28]。
- 世界市場は短期的に鈍化するが、2026年以降は安定的な成長予測[F16,F17]。
- 中小企業は「新車輸出」よりも 中古機・整備・証明・パッケージ化 に活路を見出すべき。
- 規制適合済み中古機・ワンストップ検査サービス・透明性の高いEC販売 は、中小企業の実現可能性が高い戦略。
- 盗難機械対策や輸送・保険を含む総合サービスは、大手との差別化ポイントになる。
出典一覧
- F01:中古建設機械は東南アジア・アフリカなどで高需要。
出典:国土交通省「建設機械の海外展開に関する調査」 - F02:輸出時には中古品でも日本の輸出関連法(外為法、関税法等)が適用。
出典:財務省「関税法」・経済産業省「外為法」 - F03:建設機械はHSコード第84類または87類に分類され、輸出入統計や規制の対象。
出典:財務省「輸出入統計品目表(HSコード)」 - F04:相手国により、輸入時に排ガス規制や安全基準が異なる。
出典:各国政府の環境規制(例:EU排ガス規制Stage V、米国EPA基準) - F05:アフリカや中東では非関税障壁として「検査証明書」の提出が必須。
出典:JETRO「輸入規制・検査要件に関するレポート」 - F06:日本国内の中古建機は整備状態が良好で海外市場から高評価を得ている。
出典:日本貿易振興機構(JETRO)レポート - F07:盗難機械の輸出防止のため「建設機械管理機構(MORIS)」で照合が行われている。
出典:一般社団法人 建設荷役車両安全技術協会「MORISシステム」 - F08:船積み港では重量物であるためRORO船(自走式)や在来船が主に利用される。
出典:日本船主協会「自動車船輸送の実態」 - F09:主要輸出港は横浜港・神戸港・名古屋港など。
出典:国土交通省「港湾統計」 - F10:中古機械は「CEマーキング」が無いとEUで使用できない場合がある。
出典:欧州委員会「Machinery Directive」 - F11:アフリカ向け輸出では「第三者検査機関(SGS、Bureau Veritasなど)」の検査が要求される。
出典:SGS・Bureau Veritas公式サイト - F12:現地での登録に必要な書類(インボイス、輸送書類、排ガス証明等)が求められる。
出典:各国通関当局ガイドライン - F13:輸出先によっては「中古品の輸入禁止」国も存在する。
出典:ケニア政府・ナイジェリア政府の輸入規制情報 - F14:国際輸送保険(Institute Cargo Clauses)でカバーするのが一般的。
出典:ロイズ協会「Institute Cargo Clauses」 - F15:中古建設機械は価格変動が激しく、需要国の景気や為替に左右される。
出典:国際建設機械見本市(bauma)市場調査資料 - F16:国際貿易における通関検査は、リスク評価に基づき実施される。
出典:世界税関機構(WCO)「Risk Management Compendium」 - F17:貿易統計に基づくリスク分析は輸入監視計画の基礎資料となる。
出典:財務省「日本の貿易統計」 - F18:日本の輸入食品監視指導計画では、毎年度の重点品目を告示する。
出典:厚生労働省「輸入食品監視指導計画」 - F19:残留農薬基準値は食品衛生法に基づき設定され、輸入時にも適用される。
出典:厚生労働省「食品衛生法に基づく残留農薬基準」 - F20:国際的なリスク情報は、INFOSANやRASSFを通じて共有される。
出典:WHO/FAO「INFOSAN」、EU「RASSF Annual Report」 - F21:輸入違反事例は厚生労働省が毎年度「輸入食品監視業務実績」として公表。
出典:厚生労働省「輸入食品監視業務実績」 - F22:通関検査区分(A/B/C)は輸入者の実績やリスク評価によって変動する。
出典:財務省税関「輸入申告における審査・検査」 - F23:輸入食品は港や空港の検疫所でモニタリング検査を受ける。
出典:厚生労働省検疫所「輸入食品の検査」 - F24:違反が確認された場合、廃棄・積戻し・改善命令が行われる。
出典:食品衛生法 第55条、第56条 - F25:アフラトキシン、残留農薬、抗菌剤残留などが近年の主要リスク。
出典:厚生労働省「輸入食品監視指導計画」/WHO「Food Safety Fact Sheets」 - F26:ISO/IEC 17025認定試験所での検査証明は信頼性が高いとされる。
出典:ISO「ISO/IEC 17025:2017」 - F27:検査費用は輸入者の負担であり、国は原則的に補助しない。
出典:財務省税関「輸入通関手続き」 - F28:NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)により事前教示が可能。
出典:日本貿易振興機構(JETRO)「NACCS解説」 - F29:FDA(米国食品医薬品局)は輸入拒否データを公開している。
出典:U.S. FDA「Import Refusal Report」 - F30:EUはRASSFを通じて輸入食品の違反事例を迅速に公表している。
出典:European Commission「RASSF Annual Report」