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EPAとFTAの意味と違い。WTOとの関係は?

この記事は、EPAとFTAの意味と違い。WTOとの関係性について説明しています。

日本は、経済分野で交流を深めるために、経済連携協定(EPA)を積極的に締結しています。他方世界では、EPAではなく、FTAを結んでいます。一体、この2つには、どのような違いがあるのででしょうか?



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EPAとFTAの違い。

EPAもFTAも国の経済を活発化させるためのルールです。しかし、両者には「自由化の対象としている範囲」に決定的な違いがあります。

FTA=Free Trade Agreementの略であり、日本語でいうと「自由貿易協定」です。一方、EPA=Economic Partnership Agreementの略であり、日本語では「経済連携協定」です。

FTA(自由貿易協定)とは?

外務省の資料によるとFTAとは、以下のように定義されています。

自由貿易協定 Free Trade Agreement
特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の
障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定

引用元:外務省の資料

定義によると、FTAとは「関税」と「サービス貿易の障壁」をなくすことです。関税の撤廃とは、相手国の商品が入ってくるときに「税金をかけない」または「他国よりも低率にする」ことです。

一方、サービス貿易の障壁は、関税以外の分野で障害になる「規制」などを取り払うことです。%e9%96%a2%e7%a8%8e2-hunade例えば、何らかの規制により海外の企業が進出できないとします。FTAは、このような規制をできるだけ無くし「相手国の企業」が参入しやすい環境を構築します。一言でいえば「相手国の不利になるルールを撤廃する」ことです。

FTAの先例として、2007年4月1日に「米韓FTA」が締結されています。この締結により、韓国のサムスンなどは、アメリカに輸出するときに「関税上で有利な取扱い」を受けられます。一方、アメリカと自由貿易協定を結んでいない日本企業は、同種の製品をアメリカに輸出するときに、韓国の企業より関税上、不利な立場になります。これがFTAによる効果です。

経済連携協定

次に経済連携協定(EPA)について確認しましょう。同じように外務省の資料によると…

経済連携協定 Economic Partnership Agreement
貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や
競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の
要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定。

この文を要約すると、経済連携協定は貿易の自由化に加えて「投資」や「人の移動」「知的財産」などを含めて連携するこがわかります。上記で紹介をしたFTAよりも「幅が広い分野」をカバーしていることがわかります。投資や人の移動とはどのようなことなのでしょうか。

例えばある企業を例にとってみましょう。A社は産業用の歯車を製造するメーカーです。今度、EPAを結んでいる国へ工場を建てることになりました。

これを実行するために主に2つの観点で「非関税障壁(関税分野以外で問題となる規制など)」があると気づきました。

  1. 外資系企業が現地に工場を建てるときの規制
  2. 人の移動の規制

海外に工場を建てる行為は企業でいう「投資」にあたります。これを実際に実行するときは、現地政府のさまざまな制約を受けることがあります。

例えば、現地企業の資本が何十パーセント含まれている「合弁会社」としての運営を求められることがあります。また、共産圏の国であると「国有企業」との兼ね合いで、工場の進出が不許可になることもあります。このように外国企業が進出できるのかは、現地政府の意向により決まることが多いです。

これは進出する外国企業にとって非常に問題です。EPAでは、このような外国政府の規制による発生する諸問題についても、一定のルール付けによって対処しています。

次に問題となるのが「人の移動」です。これから海外に工場を建てるとなると、当事国同士を行ったり来たりする必要があります。一般的に外国へ行く際にはパスポートのほかにビザが必要です。日本国籍を持っている方であれば、ビザなし渡航が簡単にできてしまうため、このような問題はあまり感じないかもしれません。

しかし、この逆の場合(外国人が日本へ入るとき)は、パスポートの他にビザが必要になる場合が多いです。もちろん、ビザの発給要件には、年収要件など、さまざまな規制がかけられています。そこで、EPAによって、このようなビザの発給要件を緩和して「人の移動」がスムーズに行われるようにしています。

この制度のおかげで、A社としては、自社の社員が相手先の国へ渡航しやすくなりました。また、現地で採用する有能な外国人を日本に招いて働いてもらうこともできます。このように人の移動を活発化させることにより、今まで以上に物やサービスのやり取りが活発に行われるようになります。これが両国の経済発展にもつながります。

EPAの効果が出ている分野

EPAの結果は、ざまざまな分野に現れています。

例えば、フィリピンやインドネシア人への「看護師分野」の開放です。一定の要件を満たした上で看護師試験に合格すると、日本で看護師として働くことができる制度です。これは、EPAの「人の移動の自由」が形になった物です。

また、日本とタイのEPAには「タイ人コックに関する日本での就労要件」が規定されています。これによると、タイで10年間タイ料理のコックをしていた人は、日本の飲食店で就労することを認めています。日本は、世界的にみても「閉ざされた国」であると言われています。しかし、EPA締結により、少しずつさまざまな分野で門扉を開こうとしています。

EPA、FTAとWTOの関係とは?

世界の貿易ルールを作る国際機関としてWTOがあります。日本を含めて多くの外国がこのWTOに加盟しています。WTOの原則的なルールとして「加盟国に等しい取扱いをする」ように決められています。等しい取扱いとは、商品にかける「関税など」をさします。これをある特定の国に対して特別に有利な関税を適用したり、逆に不利な関税を適用してはならないことになっています。

しかし、この原則には大きな例外規定があります。それが「EPA」や「FTA」です。すでに述べた通り、EPAやFTAは加盟国同士の関税を原則「無税」または「低率」にする制度です。したがって、WTOの原則的なルールである「加盟国に等しい関税をかける」ことに矛盾しています。

なぜ、このようなことになっているのでしょうか。それは、世界貿易機関の意志が決定する方法に原因があります。実はWTOによる意志の決定は、原則加盟国の「コンセンサス方式」により決まります。これは、加盟しているすべての国が「賛成」することを言います。もし、一国でも反対があると、意志は決定されません。

2016年現在、WTOに加盟している国は161か国にも及びます。冷静に考えると、これらの国がすべて賛成することは稀です。当然、意思決定はなかなかできません。WTOは「自由な貿易環境を目指している」のに、意思決定ができないため先に進めることができない現状なのです。

この問題を現実的に解決していく仕組みとして「FTA」や「EPA」制度があります。FTAやEPAは、二国間など、特定の国々だけを有利にする制度です。この仕組みを各国同士が次々と締結していけば、将来的にWTOが目指している「自由な貿易環境の構築」につなげるのが狙いです。

WTO加盟国は自分の国の強み、国内産業などを考えながら、EPAやFTAを締結するべき国を決めていることになります。2019年現在、日本は17のEPAを締結しています。

WTOの決議はコンセンサス方式!スピードダウン

国際貿易の大元になっているWTOのルールは、経済力などに関係なく「コンセンサス方式」で決まります。これは加盟している国の中で反対の意思表示をしない限り、成立する方式です。

例えば、1クラス40人の教室があるとします。この教室内のルールを決めるときは、一般的な決め方であれば「多数決」を採用します。多数決は、賛成と反対の人数を数えて、どちらか多い方の意見でまとめることを言います。

一方、コンセンサス方式とは、このような数による物事の決定は行われません。WTOに加盟している国々の中で、一国でも反対の意思表示をすると、その議案は成立しないことになります。

2016年現在、世界貿易機関の加盟国数は161です。これらの国は、経済の規模、発展具合、貧富の差など、数えられないほどの「格差」があります。したがって、それぞれの国では、それぞれの思惑があるため、大多数が賛成でも少数の国が反対をして「不採用」になることが多くなりました。これがWTOの限界と言われる問題点です。

あまりにも巨大な組織になりすぎたため、コンセンサス方式でのルール作りが不可能になりつつあります。そこで、このような現実的に発生をしている「決められない状態」を少しでも打破するために設けたのが「EPA(FTA)」です。

少しずつ自由化の枠組みを大きくする戦略

EPAは、特定の加盟国内の経済的交流を活発にするための優遇措置です。2016年現在、日本は16の国と地域との間にEPAを締結しています。もちろん、これは日本だけのお話ではなく、各国においてそれぞれ締結

それぞれの国が先行して経済協定を締結をしていけば、結果として世界の国々の中で「自由貿易圏」が合わさっていき、最終的には、世界中で自由な貿易を実現するWTOの理念に沿うようになると考えられているのです。

2022年1月現在 日本のEPA締結・交渉状況

2024年4月現在
発効済(利用できる国)シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12、TPP11日EU・EPA米国、英国、RCEP(韓国+中国+アセアン+オーストラリアなど)
交渉中トルコ、コロンビア、GCC、日中韓
その他(交渉中断等)カナダ、韓国

まとめ

FTAとEPAは、自由化する対象分野の広さに違いがあります。日本は、より範囲が広い「EPA」の締結を積極的に行っています。これにより様々な分野の関税が撤廃されたり、関税分野だけではない「非関税障壁」の撤廃がされていたりします。日本は失われた20年と言われるように低成長な時代が続きました。

そんな日本がEPAにより、閉ざされていた市場を開放しようとしています。これはチャンスでもあり、同時に危機でもあります。この記事をご覧になっている方は、ぜひ「チャンス」としてつかんでいただきたいと考えています。

「まずはEPAの全体像を学びたい」→初心者向けEPAマニュアルをご覧ください。

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