HSコードと関税率の調べ方
このレッスンで学べること
HSコードってなに?どういう仕組み? HSコードは、世界中で共通に使われている「商品の分類番号」です。この番号を使って、どんな商品なのかを判断します。
なぜHSコードが重要なの? 関税や輸入のルールは、HSコードをもとに決まります。どの税率がかかるか、輸入していいかどうかも、まずはHSコードで判断されます。
関税の調べ方:「タリフ検索システム」の使い方 日本関税協会が提供している「タリフ検索システム」を使えば、商品にかかる関税やルールが簡単に調べられます。このツールの使い方を実例で解説します。
関税や消費税ってどうやって計算するの? 輸入品には、関税や消費税がかかります。その計算方法をわかりやすく説明します。
EPAを使えば関税が安くなる?注意点は? EPA(経済連携協定)を使うと、関税がゼロになる場合もあります。ただし、使うにはルールがあるので、その仕組みと注意点も紹介します。
HSコードとは? 輸入実務の“出発点”
HSコード(Harmonized System Code)は、世界各国の税関で共通に使用される「品目分類コード」です。日本では、財務省および税関がこの分類を運用しており、全ての輸入品はこのコードに基づいて通関・関税計算が行われます。
HSコードは、以下の階層構造で成り立っています。
- 6桁まで:国際共通(WCOが管理)
- 7桁以降:各国が独自に細分化(日本は9桁または13桁)
たとえば「焙煎していないコーヒー豆」は….
- 国際的なHSコード:0901.11
- 日本国内の統計品目番号:0901.11-000
日本では国際的なHSコードの下の部分に3桁を加えて、9桁でHSコードを運用しています。輸入申告時にHSコードが適切でないと、関税率が変わったり、規制品目と誤認されて貨物が差し止められたりすることがあります。
なぜ、HSコードを正確に調べる必要がある?
HSコードは、関税やルールを決める基準になります。間違ったコードを使うと、追加の税金や罰則が発生することもあります。
- 関税が決まる:コードが違えば、税率も変わります(例:5〜20%の差)
- 規制品かどうか判断:食品・薬・電気製品などは、法律の対象になるかがHSコードで決まります
- EPAの対象か確認:原産地証明と一緒に提出します。
分類が難しい例
- 靴:素材や使い方で分類が変わる
- バッグ:皮か布か、旅行用かで違う
- 加工食品:何が入っているかで変わる
タリフ検索システムの使い方(日本関税協会)
タリフ検索サイト:https://www.kanzei.or.jp/statistical/tariff/top/index/j
トップページで検索方法を選択
- キーワード検索(例:leather bag、green tea)
- HSコード/数字(4桁・6桁)検索も可能
- 該当する分類をクリックして詳細へ進む
確認ポイント
- 「関税率」「統計品目番号」「品名・細分類」を確認
- 税率の種類を確認(一般税率/暫定税率/WTO税率/EPA税率)
- 課税価格の考え方(商品のCIF価格に基づいて関税が課される。送料・保険料含む)
関税と消費税の計算例
- 仕入価格:100,000円
- 関税率:5%の場合
関税 = 100,000 × 5% = 5,000円
消費税 =(100,000 + 5,000)× 10% = 10,500円

※関税があると、消費税の金額も増えます。
関税が0%になることも(EPAの活用)
日本はベトナム、タイ、中国、EUなどとEPA(経済連携協定)を結んでおり、条件を満たせば関税が0%になることがあります。
必要な条件:
- 対象商品である(HSコードがEPAの対象)
- 原産地証明書(Form Aなど)を提出できること
※手続きにミスがあると適用されません。心配な場合は通関業者に相談しましょう。
2025年2月現在 | |
発効済(利用できる国) | シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12、TPP11、日EU・EPA、米国、英国、RCEP(韓国+中国+アセアン+オーストラリアなど) |
交渉中 | トルコ、コロンビア、GCC、日中韓 |
その他(交渉中断等) | カナダ、韓国 |
HSコードに関する実務的な注意点
関税は「優先順位」があり、より優遇された税率が優先されます。
例:EPA税率 → 暫定税率 → 一般税率の順。
- 類似品や複数の素材を使った商品(例:革と布のバッグ)は分類が難しいです。
- 輸出国と日本で、HSコードの下の桁(7桁以降)が違う場合もあります。
- HSコードは改定されるため、最新版(たとえば2020年改正)を使うようにしましょう。
税率の種類 | 適用対象 | 優先順位 |
---|---|---|
EPA税率 | 協定国 | 最優先 |
WTO税率 | 加盟国 | 次点 |
暫定税率 | 特定措置 | 条件次第 |
一般税率 | 全世界 | 最後 |
※必ず対象品目と税率の関係をタリフ検索で確認し、適用税率を誤らないこと
補足情報
HSコードの構造
HSコードは、大きく21の「部」に分かれ、
- 「類」(2桁)
- 「項」(4桁)
- 「号」(6桁)
という順に細かく分類されています。たとえば「第8部」は、皮革や毛皮などのグループです。
HSコードは定期的に見直される
HSコードは約5年ごとに改正されます。2022年の改正では、電子たばこ・3Dプリンター・ドローンなどの新製品が新たに分類されました。
HSコードの調べ方
HSコードは以下の方法で調べられます。
- 税関のタリフ検索システム
- 輸出統計品目表(税関サイト内)
- JETROのQ&Aページ など
- 事前教示
- フォワーダーや通関業者への確認
複数の情報を見比べて確認するのが確実です。
HSコード・関税計算に関するよくあるスタートアップQ&A
Q1. HSコードは自分で決めても大丈夫ですか?
A. 原則として輸入者責任でHSコードを申告します。ただし、判断が難しい場合は通関業者や税関の事前教示制度を活用し、正確な分類を確認します。誤分類は追徴課税リスクがあります。
Q2. タリフ検索で出てくる税率が複数あります。どれを使えばいいですか?
A. EPA税率 → WTO税率 → 暫定税率 → 一般税率の順に適用優先度があります。まずEPA適用対象か確認し、適用できない場合は次点の税率を確認します。
Q3. EPAを使えば必ず関税はゼロになりますか?
A. いいえ。EPAの対象品目(HSコード)に該当し、かつ原産地証明書が正しく提出された場合のみ免税適用となります。書類不備や誤分類だと却下され、通常の関税が課されます。
Q4. CIF価格って何ですか?どこまでの費用を含みますか?
A. CIFはCost(商品代金)+ Insurance(保険)+ Freight(運賃)を含む価格で、これが関税・消費税計算の基準です。EXWやFOBで購入しても、申告時にはCIF価格で計算します。
Q5. HSコードは輸出国と日本で異なる場合がありますか?
A. はい、あります。HSコードは6桁までは国際共通ですが、それ以降は各国独自の細分化があります。日本への輸入時は必ず日本の統計品目番号で確認しましょう。
まとめ
HSコードは「関税」「規制」「EPA」のすべてに関わる最重要情報です。間違えると余計な関税、トラブル、検査の原因になります。タリフ検索システムを使って、商品ごとの分類と税率を事前に確認しましょう。EPAを使う場合は、対象コードと原産地証明の準備も忘れずに行いましょう。
次の記事>>「第6回:輸入に必要な手続き・書類一覧とその意味」
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