中国 輸入食品監視データベース|実務強化版
- 中国産食品は品目・数量ともに多く、残留農薬、重金属、食品添加物、微生物汚染が主要リスク。
- 工場ごとの品質差が大きく、原産地証明と冷凍チェーン記録がリスク低減に必須。
- 冷凍枝豆・ほうれん草、うなぎ加工品、えび、餃子、乾燥きくらげ、花椒などは品目別に重点管理項目を設定。
- 中国語からの正確な翻訳と添加物用途名の明記、アレルゲン表示、漂白有無表示が重要。
- 違反歴のある工場や港の情報を輸出前に確認し、出荷前検査と記録の徹底で不適合を防止。
中国は、日本にとって数量・品目ともに最大級の食品供給国です。輸入品は多岐にわたり、冷凍野菜(枝豆、ほうれん草)、水産物(うなぎ加工品、えび)、加工食品(餃子、春巻き)、乾燥農産品(きくらげ、干し椎茸)、香辛料(花椒、八角)などがあります。
2025年の輸入食品監視計画では、特に以下の項目が重点管理対象です。
- 残留農薬
- 重金属
- 食品添加物の不適正使用
- 微生物汚染(大腸菌群、リステリア)
- 漂白剤(亜硫酸塩)
輸入前の準備と対策
中国産食品は工場ごとの品質差が大きく、国内規格と日本の基準値が異なるため、輸出前検査の内容を明確に契約書へ盛り込むことが重要です。以下の準備が推奨されます。
- 原材料仕様書(原産地省、収穫時期まで明記)
- 添加物リスト(中国語→日本語正確翻訳、用途名付き)
- 陰性証明(残留農薬、重金属、食品添加物、微生物)
- 原産地証明(混合原料の場合は全産地記載)
- 港湾保管・冷凍チェーンの維持記録
到着後の対応
モニタリング検査は国の費用で行われますが、過去に違反歴がある品目や工場は「強化検査」や「命令検査」の対象になりやすくなります。これらの場合、検査費用は輸入者の負担となり、検査結果が出るまで通関できません。
検査にかかる日数の目安は、化学分析で3〜10営業日、微生物検査で2〜4営業日程度です。
品目別 実務ポイント
冷凍枝豆・ほうれん草
- 主な検査項目:残留農薬(特にネオニコチノイド系など)、微生物検査
- 収穫後の加熱処理(ブランチング)工程が適切に管理されているかを確認
うなぎ加工品
- 主な検査項目:重金属(カドミウム、鉛)、動物用医薬品(マラカイトグリーンなど)
- 養殖池の水質管理記録が必須
えび
- 主な検査項目:ニトロフラン代謝物、クロラムフェニコール、微生物検査
- 加工段階ごとにロットを分けて管理
餃子・春巻き
主な検査項目:微生物(大腸菌群、リステリア)、食品添加物(漂白剤、保存料)の適正使用
乾燥きくらげ・干し椎茸
- 主な検査項目:残留農薬、漂白剤(亜硫酸塩)、異物(金属片)
- 異物除去工程の監査が必要
花椒・八角
- 主な検査項目:残留農薬、アフラトキシン、異物
- 香辛料特有の油脂分の酸化を防ぐ管理が必要
品目別 比較表(実務用)
品目 | 主な監視ハザード | 推奨LOQ(例) | 推奨サンプリング | 国別実務メモ |
---|---|---|---|---|
冷凍枝豆・ほうれん草 | 残留農薬、微生物 | 農薬:基準値の1/2以下 | ロットごとに複数点 | ブランチング後の冷却・凍結記録を確認 |
うなぎ加工品 | 重金属、動物用医薬品 | カドミウム 0.05 mg/kg以下 | 養殖池単位で3点 | 水質検査記録と薬剤使用履歴必須 |
えび | 動物用医薬品、微生物 | AOZ等 1.0 μg/kg | 加工工程ごとに3点 | ロット混合禁止、冷凍チェーン維持 |
餃子・春巻き | 微生物、食品添加物 | リステリア:不検出 | 製造日ごとに複数点 | 保存料・漂白剤の使用量確認 |
乾燥きくらげ・干し椎茸 | 残留農薬、漂白剤、異物 | SO₂ 50–100 mg/kg | 荷口ごとに2〜3点 | 漂白工程の有無と時間管理を監査 |
花椒・八角 | 残留農薬、アフラトキシン、異物 | AF-B1 1.0 μg/kg/Total 4.0 μg/kg | 20kgごとに1点 | 非照射宣言、酸化防止剤の有無確認 |
実務Tips
- 地方港を経由する輸入品は、港での保管期間が長くなるため、冷凍温度の管理が不十分な場合があります。
- 工場ごとの違反歴は、少なくとも年1回は確認します。
- 中国語の原材料名を日本語に翻訳する際のミスが表示違反につながるため、注意が必要です。
- 原産地が複数ある場合は、すべての産地を表示して追跡できるようにします。
- 花椒や八角は香りを保つため、低温での輸送が推奨されます。
最近の違反事例(実務者向け)
冷凍ほうれん草
- 残留農薬(クロルフェナピル)が基準を超過
- 港湾での保管時に温度逸脱があり、冷凍チェーンの記録も不足
うなぎ加工品
- 養殖池由来のカドミウム汚染
- 水質検査記録に不備があり、出荷前検査の項目も不十分
えび
- ニトロフラン代謝物(AOZ)を検出
- 加工工程でロットが混ざったため、トレーサビリティが確保できず
餃子
- リステリア菌を検出
- 製造日の温度管理記録がなく、保存料使用量の記録にも不備
干し椎茸
- 漂白剤(SO₂)が基準超過
- 漂白工程での水質管理が行われていなかった
花椒
- アフラトキシンB1を検出
- 収穫後の乾燥条件が不適切でカビが発生
総括
これらの事例から、出荷前検査の項目設定、記録の徹底、港湾保管や加工工程での温度・湿度管理、原材料段階でのカビや異物混入防止が不可欠であることが分かります。
【日本国外】食品の輸入通関違反事例を確認
ここでは、米国向けの食品(米国通関違反事例)と欧州向けの食品(欧州通関輸入違反事例)をご紹介します。これらの情報を知ることで、より俯瞰した形で食品の完全性を検討できます。
米国通関違反例 中国食品の安全性
出典:添付CSV REFUSAL_ENTRY_2024–Jul2025.csv(ISO_CNTRY_CODE=CN 抽出)/ 食品キーワードで抽出後に品目分類。
- 中国の拒否件数(全品目):6,833件
- うち食品該当:663件(安全性関連コードを含むもの:312件)
詳細表(品目別)
品目(例) | 件数 | 主な安全性リスク・違反内容 |
---|---|---|
乳製品(例:MILK, FLAVORED (CHOCOLATE, ETC.) / SOFT DRINK, MILK …GG N.E.C.) | 104 | 虚偽・誤解表示・栄養成分表示違反(※安全性への波及あり得る)・不衛生条件(微生物汚染) |
野菜(例:GINSENG, DRIED OR PASTE (ROOT & TUBER VEGETABLE) / GI…S (OTHER THAN PULSES) BAKED) | 84 | 禁止添加物・残留物質・ラベル規則違反・虚偽・誤解表示 |
果物(例:CHINESE RED DATE (JUJUBES, ZIZIPHUS JUJUBA) (PIT FRUI…CED COOKIES,BISCUITS AND WAFERS) | 80 | ラベル規則違反・禁止添加物・残留物質・誤表示 |
魚類(例:SHRIMP AND PRAWNS, AQUACULTURE HARVESTED FISHERY/SEAF…RVESTED FISHERY/SEAFOOD PRODUCTS) | 57 | 腐敗・劣化・ラベル規則違反・有害・有毒物質 |
香辛料(例:CAPSICUMS (CAYENNE CHILI, HOT PEPPERS), WHOLE (SPIC…OUND, CRACKED (SPICE)) | 57 | 不衛生条件(微生物汚染)・虚偽・誤解表示・禁止添加物・残留物質 |
茶類(例:ANGELICA (HERBAL & BOTANICALS, NOT TEAS) / TEA, GREEN / TEA, BLACK) | 44 | 不衛生条件(微生物汚染)・ラベル規則違反・必要証明未提出(安全性確認不備) |
米(例:RICE CRACKERS / RICE STARCH SNACKS, BAKED / RICE PROTEIN) | 41 | 虚偽・誤解表示・栄養成分表示違反(※安全性への波及あり得る)・禁止添加物・残留物質 |
ナッツ類(例:CHESTNUT, SHELLED / FLAVORED CANDY, SOFT (LIVE SAVE… NUT PRODUCTS (NOT COCONUT)) | 31 | 禁止添加物・残留物質・虚偽・誤解表示・ラベル規則違反 |
実務者向けコメント(重大性の高い違反に重点)
香辛料(唐辛子・混合スパイス等)
- 微生物(サルモネラ)を中心とした衛生リスクに留意。乾燥低水分食品でも環境経由で汚染が起こり得る。
- 対策:出荷前のサルモネラ・一般生菌スクリーニング、必要に応じ蒸気殺菌/照射、低水分専用ゾーニング・異物対策。
乳製品(乳飲料・粉乳など)
- 低水分菌(Cronobacter/Salmonella)と衛生不備、さらに表示・栄養成分の不整合が散見。
- 対策:製造環境の環境モニタリング(エア/表面)、ロットごとの微生物試験、証明書・配合表の事前整合、アレルゲン管理。
魚介類(えび・魚加工品等)
- 腐敗・劣化と温度管理の問題が主眼。海上輸送の長距離で品質劣化が進みやすい。
- 対策:低温連鎖の徹底(温度ロガー添付)、ヒスタミン迅速検査+確認試験、中心温度ログ、包装密封の確認。
野菜・果物(乾燥・加工含む)
- 禁止添加物/残留物質の指摘が多い。乾燥根菜やドライフルーツ、餡・ジャム系でも添加物/残留農薬に注意。
- 対策:残留農薬試験(輸出前)、添加物の使用基準確認、必要に応じ金属・ヒ素など無機成分のモニタリング。
米・米菓・でん粉系スナック
- 表示不整合や添加物に関連した指摘が中心だが、実務上は製造環境の衛生と長期保管時の品質安定が鍵。
- 対策:ゾーニング、異物・害虫管理、水分活性/吸湿対策、包装後の保存安定性試験。
日本輸入への実装ポイント
香辛料=サルモネラ、乳製品=低水分菌+証明書整備、魚介=冷鎖+ヒスタミン、果物/野菜=残留農薬・添加物、米菓=環境衛生・吸湿対策を基本方針に、自主検査と監査計画を組む。
欧州における中国食品の輸入違反事例
件数概要
- 総違反件数:309件
- 食品カテゴリー該当:200件
- 期間:2024-07-16 〜 2025-07-14
主なカテゴリー(件数)
- 果物・野菜:42
- ココア・コーヒー・茶:30
- ハーブ・香辛料:28
- ナッツ・種子類:19
- その他混合食品:13
- 穀類・ベーカリー製品:13
- 特殊用途食品(サプリ等):11
- 菓子類:10
- 魚介類:9
- 食品添加物・香料:5
主な違反理由(例)
- 遺伝子組換え作物(GMO)未承認:12件
- カビ毒:アフラトキシンB1、総アフラトキシン(計10件)
- ヨウ素過剰:4件
- 添加物過剰:二酸化硫黄(E220)4件
- 残留農薬:クロルピリホス、エチレンオキシド(各4件)
- カビ毒:オクラトキシンA(4件)
- 微生物:サルモネラ(4件)
通報国(一例)
オランダ、ドイツ、ポーランド、ベルギー、フランス、スペイン、イタリアなど
実務者向けコメント(日本向け輸入に活かす)
1) GMO未承認(大豆・トウモロコシ等)
- 日本のカルタヘナ法に基づく承認状況を確認し、未承認品種は輸入不可。
- ロット単位でGMO検査(定性・定量)を実施し、陰性証明を添付。
2) カビ毒(アフラトキシン、オクラトキシンA)
- ナッツ類、茶葉、香辛料で発生頻度が高い。
- ISO17025認定試験所でB1・総アフラ・オクラを同時分析し、基準適合を確認。
3) ヨウ素過剰(海藻類)
原藻と最終製品のヨウ素濃度を把握し、必要に応じて任意表示で摂取目安を提示。
4) 添加物(二酸化硫黄)
乾燥果実・香辛料では漂白・防腐目的で使用されるため、日本の使用基準と表示義務を遵守。
5) 残留農薬(クロルピリホス、エチレンオキシド)
- 使用履歴の事前確認と残留分析を実施。
- エチレンオキシドは包装殺菌にも使用されるため、包装工程の管理も重要。
6) 微生物(サルモネラ)
原料受入時の検査、製造環境の衛生ゾーニング、最終製品のロット別検査を徹底。
7) 包装・輸送管理
湿度・温度記録をロットと紐付けし、汚染や変質のリスクを最小化。
日本語表示ラベルの注意点
- 原材料名は中国語原表記を基に正確に翻訳する
- 添加物は用途名+物質名を記載する
- アレルゲン表示(えび、小麦等)を漏れなく。
- 乾燥農産品は漂白の有無を表示(必要に応じ)。
- 輸入者名・住所、原産国名、賞味期限を明記。
- 期間:2024/7/14~2025/7/14
要点まとめ
- 中国産食品は品目・数量ともに多く、工場ごとの品質差が大きい。
- 残留農薬、重金属、食品添加物、微生物汚染が主要リスク。
- 原産地証明と冷凍チェーン記録でリスク低減。
- 中国語からの正確な翻訳と添加物用途名の表示が重要。
- 違反歴のある工場・港の情報を輸出前に確認。