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タイ|輸入食品規制・重点品目と違反事例データベース

タイ 輸入食品監視データベース|実務強化版(差別化版)

  • タイ産冷凍養殖えび、果物、香辛料・ナッツ類は過去違反率が高く、輸出前検査と港湾保管記録が必須。
  • 養殖えびはクロラムフェニコール等、果物は農薬・防カビ剤、香辛料・ナッツはアフラトキシン等の検査を実施。
  • 雨期(5〜10月)はロット間品質差が大きく、季節別のリスク管理を徹底。
  • DoA発行の証明書と第三者検査証明をセットで取得し、LOQを明記。
  • ラベル表示は品種・配合比・アレルゲンを正確に記載。

タイは世界的に水産物・果物・香辛料の輸出大国であり、日本は冷凍養殖えび、いか、缶詰パイナップル、生鮮マンゴー、カレー粉や唐辛子、カシューナッツなど多岐にわたる食品を輸入しています。

厚生労働省の「輸入食品等監視指導計画」(令和6年度・令和7年度予定)では、過去違反率が比較的高かった品目や項目が重点的に検査対象とされており、特に以下がリスクの高い項目です。

  • 養殖えび:動物用医薬品(クロラムフェニコール等)
  • 果物:残留農薬、防カビ剤、二酸化硫黄(SO₂)
  • 香辛料・ナッツ類:アフラトキシン(カビ毒)、異物混入

タイは5〜10月が雨期で湿度や気温が高く、生産ロット間の品質変動が大きいことから、季節・ロットごとのリスク管理が重要です。

輸入前の準備と対策

輸入者は、食品衛生法(第27条〜第28条)および食品表示法に基づき、以下の書類・証明を事前に確保します。

  • 原材料仕様書・製造工程表(港湾保管を含む)
  • 添加物リスト(用途名と物質名)
  • 非照射宣言書(香辛料)
  • タイ農業局(DoA)発行の輸出前検査証明書(残留農薬・カビ毒)
  • 第三者検査機関の陰性証明(品目別LOQを明記)

港湾保管が長くなりやすい主要港(レムチャバン港、バンコク港)経由では、温湿度管理記録が欠かせません。

到着後の検査対応

モニタリング検査(国費負担)

違反歴がないロットを対象に行われる検査です。費用は国が負担します。

命令検査(輸入者負担)

過去3年間に違反のあった品目や、類似品が対象となります。費用は輸入者が負担します。

検査期間の目安

  • 化学分析(農薬・動物用医薬品):3〜10営業日
  • カビ毒(アフラトキシン類):2〜5営業日
  • ヒスタミン:1〜3営業日

通関制限

命令検査の対象となった場合、検査結果が出るまで通関はできません。

品目別 実務ポイント

冷凍養殖えび

AOZ、AMOZ、SEM、AHD、クロラムフェニコール、テトラサイクリン類の検査が必須です。養殖場ごとの薬剤使用記録を確認し、異なる養殖場のロットを混ぜないようにします。

いか類

ヒスタミン、鉛、カドミウムの検査が必要です。特に船上凍結品は、解凍履歴の有無を必ず確認します。

缶詰パイナップル・マンゴー

SO₂残留、缶の膨張やサビの有無、内容物のpHを測定します。SO₂は品種や加工方法によって残留量が変動しやすいので注意します。

生鮮マンゴー・マンゴスチン

農薬残留と防カビ剤(イマザリルなど)の検査が必要です。輸出前の燻蒸処理証明を必ず確認します。

カレー粉・唐辛子

残留農薬、アフラトキシン、異物(金属片など)の混入防止工程を監査します。

カシューナッツ

アフラトキシンとサルモネラの検査が必須です。特に港湾保管時の湿度変動による品質劣化に注意します。

品目別 比較表(実務用)

品目主な監視ハザード推奨LOQ(例)推奨サンプリング国別実務メモ
冷凍養殖えび動物用医薬品、重金属、微生物AOZ等 1.0 μg/kg/クロラム 0.3 μg/kg養殖場別に各3袋以上港湾保管中の温度記録必須、養殖場ロット混合不可
いか類ヒスタミン、重金属ヒスタミン 100 mg/kg以下漁船単位で3点船上処理工程の衛生記録を添付
缶詰パイナップル残留農薬、SO₂SO₂ 50–100 mg/kg加工工場ロットごとに2〜3点缶の膨張・腐食チェック必須
生鮮マンゴー残留農薬、防カビ剤農薬:基準値の1/2以下輸出前処理ロットごとに複数点燻蒸・防カビ処理証明を確認
カレー粉・唐辛子残留農薬、アフラトキシン、異物AF-B1 1.0 μg/kg/Total 4.0 μg/kg20kgごとに1点非照射宣言、異物除去工程の動画確認推奨
カシューナッツアフラトキシン、サルモネラAF-B1 1.0 μg/kg/Total 4.0 μg/kgコンテナ単位で5点以上港湾保管中の湿度記録添付

実務Tips

  • 雨期出荷の果物は、港に到着した際にカビ臭がないか必ず確認します。
  • DoA発行の検査証明書は、有効期限とロット番号を照合します。
  • 缶詰は輸送中の衝撃や温度変化で膨張することがあるため、到着時に外観チェックを必須とします。
  • 香辛料は、現地工場での異物除去工程を写真や動画で確認します。
  • カシューナッツは船積み前に水分測定を行い、12%以下を維持します。

近年の違反事例と現場対応ポイント

2023年:冷凍養殖えびの薬剤残留

  • 検出内容:クロラムフェニコール0.5 μg/kg(基準超過)
  • 対応:輸入者が自主回収。
  • 原因と対策:養殖場での薬剤使用リストを出荷前に再確認し、週1回の水質検査と残留検査を実施する。

2024年:缶詰パイナップルのSO₂基準超過

  • 検出内容:SO₂(二酸化硫黄)180 mg/kg(基準超過)
  • 原因:収穫後の漂白工程でのSO₂管理不足。
  • 対策:加工工程ごとにSO₂測定を行い、ロット単位で記録・管理を義務化。

2024年:カシューナッツのカビ毒汚染

  • 検出内容:アフラトキシン総量8.5 μg/kg(基準超過)
  • 原因:港湾での保管中に湿度が上昇。
  • 対策:コンテナ内に湿度計(ロガー)を常設し、到着後すぐに乾燥処理を行うルールを設定。

2025年:カレー粉の金属片混入

  • 原因:現地の粉砕ラインにある磁選機の性能低下。
  • 対策:磁選機を年2回点検し、異物除去工程を動画で記録・提出することを義務化

日本語表示ラベルの注意点

  • 果物の品種名はカタカナ+英語併記(例:マンゴー「ナムドクマイ」 Nam Dok Mai)
  • カレー粉は香辛料配合比の省略不可
  • アレルゲン(えび、落花生、カシューナッツなど)は必ず表示
  • 缶詰・瓶詰は開封後の保存方法を明記
  • 輸入者氏名または名称・住所、原産国名、賞味期限(西暦表示推奨)を明記

【日本国外】食品の輸入通関違反事例を確認

ここでは、米国向けの食品(米国通関違反事例)と欧州向けの食品(欧州通関輸入違反事例)をご紹介します。これらの情報を知ることで、より俯瞰した形で食品の完全性を検討できます。

米国通関違反例 タイ食品の安全性

出典:添付CSV REFUSAL_ENTRY_2024–Jul2025.csv(ISO_CNTRY_CODE=TH 抽出)/ 食品キーワードで抽出後に品目分類。

  • タイの拒否件数(全品目):536件
  • うち食品が該当するもの:224件(安全性関連コードを含むもの:103件
  • 期間:2024年7月〜2025年7月

詳細表(品目別)

品目(例)件数主な安全性リスク・違反内容
乳製品(例:SUTROPICAL AND TROPICAL FRUIT, JUICE, MILK, CREAM / COCONUT MILK & CREAM, N.E.C. / EVAPORATED MILK)54必要証明未提出(安全性確認不備)・不衛生条件(微生物汚染)
果物(例:TAMARIND (SUBTROPICAL/TROPICAL FRUIT PULP) / RAMBUTAN / MANGO, FROZEN)43(データ上の偏りなし/表示関連中心)
(例:RICE, GLUTINOUS, PROCESSED (PACKAGED) / DENTIFRICE, RICE / RICE FLOUR)27不衛生条件(微生物汚染)
ナッツ類(例:CASHEW, NUT FLOUR/MEAL / BETEL NUT, SHELLED / GROUNDNUTS (PEANUTS))23誤表示・有害・有毒物質・ラベル規則違反
ソース類(例:CHILI SAUCE / SAUCES, N.E.C. / FISH SAUCE, FISHERY PRODUCTS)20腐敗・劣化・有害・有毒物質・誤表示
野菜(例:BEAN, CORN, PEA, DRIED OR PASTE / VEGETABLES, N.E.C. / DRIED BEAN PRODUCTS)19(データ上の偏りなし/表示関連中心)
魚類(例:FISH, N.E.C. / SHRIMP AND PRAWNS, AQUACULTURE PRODUCTS / TILAPIA, FROZEN)16(データ上の偏りなし/表示関連中心)
果汁・飲料ベース(例:SOYBEANS (SEE INDUSTRY 37 FOR ‘BEAN CURD’), JUICE DRINKS, N.E.C. / FRUIT JUICE MIXES)4(データ上の偏りなし/表示関連中心)
香辛料(例:CAPSICUMS (CAYENNE CHILI, HOT PEPPERS), GROUND / MIXED SPICES, N.E.C.)2誤表示・腐敗・劣化・有害・有毒物質

実務者向けメモ

乳製品が最大の違反
  • 主な違反:必要証明の未提出、不衛生条件。
  • 特にココナッツミルクやエバミルクは輸出国当局の衛生証明が必須。
  • 対策
    • 衛生証明のフォーマットを事前に確認(日本と米国で要求が異なる場合あり)。
    • 製造・充填工程の環境衛生モニタリング(空中落下菌、環境拭取り)を強化。
果物類(冷凍・加工含む)
  • データ上の違反は表示関連が中心。
  • 実務では残留農薬や冷凍品の温度逸脱が潜在リスク。
  • 対策
    • 輸出前の残留農薬試験。
    • 輸送時に温度ロガーを添付。
米製品
  • 不衛生条件の指摘が複数あり。
  • 精米・製粉・包装時の防虫・防カビ管理が重要。
  • 対策
    • 異物混入防止の物理的対策。
    • 倉庫の湿度管理。
    • 輸出前の微生物検査。
ナッツ類
  • 違反内容:誤表示、有害物質。
  • アフラトキシン汚染リスクが高い。
  • 対策
    • 輸出前のアフラトキシン試験。
    • 保管時の温湿度管理。
    • 殻付き原料の輸送管理。
ソース類
  • 主な違反:腐敗・劣化、有害物質、誤表示が多い。
  • 特にチリソースやフィッシュソースで多発。
  • 対策
    • pH管理。
    • 熱殺菌条件の妥当性検証。
    • 密封状態の検査。
    • 保存安定性試験の実施。
魚類・野菜・香辛料
  • データ上は特定リスクの偏りなし。
  • 想定リスク:魚介はヒスタミン・微生物、野菜は残留農薬・微生物、香辛料はサルモネラ
  • 対策
    • 品目別の輸入検査計画を作成。
    • リスクに応じた事前試験とサプライヤー監査を実施。

日本輸入への実装ポイント

  • タイ産乳製品は証明書の事前取得と検証を最優先。
  • ナッツはカビ毒対策、ソース類はpH・熱プロセス・密封管理、米製品は環境衛生が要点。
  • FDA拒否データは、輸入前の自主検査や監査項目設定に活用可能。

欧州におけるタイ食品の輸入違反事例

件数概要
  • 総違反件数:67件
  • 食品カテゴリー該当:65件
  • 対象期間:2024年7月14日~2025年7月14日
主なカテゴリー(件数)
  • 果物・野菜:20件
  • その他混合食品:9件
  • 穀類・ベーカリー製品:9件
  • ココア・コーヒー・茶:5件
  • ハーブ・香辛料:5件
  • スープ・ソース・調味料:3件
  • ノンアルコール飲料:3件
  • 魚介類:2件
  • 菓子類:2件
  • 肉類(鶏肉以外):2件
主な違反理由(例)
  • 農薬:イプロジオン、カルベンダジム、クロルピリホス、ラムダ-シハロトリン など
  • アレルゲン非表示:卵
  • 添加物過剰:二酸化硫黄(E220)、合成着色料(E102, E110, E133)
  • 重金属:鉛(高含有)
  • 医薬成分混入:シルデナフィル
通報国(一例)

オランダ、イタリア、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー など

実務者向けコメント(日本向け輸入への活用)
  1. 農薬残留(果物・野菜・ハーブ)
    • 輸出前に日本とEUの残留基準値(MRL)を照合し、超過の恐れがある農薬は禁止
    • 産地・収穫日ごとにロット分けを行い、混載リスクを低減。
    • LC-MS/MSやGC-MSで複数農薬を同時分析(サブppb級)。
  2. アレルゲン表示(卵など)
    • 共通製造ラインを使用する場合は、洗浄バリデーションとコンタミリスク評価を実施
    • 日本語表示に正確なアレルゲン情報を反映。
  3. 添加物過剰(二酸化硫黄・合成着色料)
    • EUで許可されても日本で不許可、または基準値が異なる場合があるため、輸入前に成分仕様書と表示案を確認。
  4. 重金属(鉛)
    • 特に香辛料や茶類で発生しやすい。
    • 産地土壌や加工工程における鉛汚染リスクを評価。
  5. 医薬成分混入(シルデナフィル)
    • 健康食品やサプリは輸入前相談で適法性を確認。
    • ISO17025認定ラボで成分分析を実施。
  6. 包装・輸送管理
    • 保管・輸送中の温度や湿度を記録。
    • 農薬や添加物以外の汚染(ミネラルオイルなど)も防ぐための管理を行う。

要点まとめ

  • タイ産食品は港湾保管や季節による品質差に注意。
  • 過去違反の多い品目(えび、果物、香辛料)は輸出前検査必須。
  • 港湾保管記録、現地工程確認でリスク低減。
  • DoA証明と第三者ラボ検査をセットで活用。
  • ラベルは品種・配合比まで含め、正確に作成。

食品届(輸入貿易コンサル

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