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ステーブルコイン(JPYC)で変わる貿易決済|中小企業の新しい資金戦略

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ステーブルコイン(JPYC)と貿易決済

銀行送金の限界とステーブルコインの台頭

貿易取引では、従来から銀行送金が主流となっています。しかし中小企業にとっては、高額な手数料、着金までの時間、為替変動リスクなどが大きな負担となっています。こうした問題は長年放置されてきましたが、デジタル化の波が資金決済にも及び、代替手段として「電子的な日本円」が現実味を帯び始めています。

その一つが日本円建てのステーブルコイン「JPYC」です。(2025年10月27日に開始)JPYCは「1JPYC=1円」に連動する電子決済手段であり、法制度の整備が進んだことで、企業でも合法的に活用できる環境が整いつつあります。

JPYCとは|1円=1JPYCの電子決済手段

JPYCは、日本円を裏付けとしたステーブルコインです。「JPYC EX」というプラットフォームを通じて、発行・償還・送金などができます。

制度上、発行・償還には1回・1日あたり100万円までの上限が設けられていますが、ウォレット間の送金や決済には上限がありません。また、円建てであるため為替変動の影響を受けにくく、実務における安定性が高い点も特徴です。

参考情報

公式サイト(法人向け)では、決済・資産管理の自動化やSDK連携、ノーコードツール(例:ASTERIA連携)などの情報が公開されています。
(https://jpyc.co.jp/corporate/)

貿易実務でのJPYC活用シーン

仕組みを理解したうえで、次に重要なのは「どの場面で役立つか」です。貿易実務では、次のようなケースで特に効果を発揮します。

1.サンプル品・少額決済のスピード対応

新規サプライヤーにサンプル代金を支払う際、銀行送金では数千円の手数料と数日の待ち時間が発生します。一方、JPYCであれば数百円の手数料で、数分以内に送金が完了します。このため、少額取引や初回取引の検証に適しています。

2.少額前払いによる柔軟な仕入れ

最小発注数量(MOQ)が小さい製品を段階的に仕入れる場合、少額の前払いが複数回発生することがあります。JPYCを利用すれば、資金を無駄に寝かせることなく段階的に支払いができ、在庫リスクを抑えながら柔軟に対応できます。

3.展示会・越境ECでの即時支払い

最近では、USDCやUSDTといったステーブルコイン決済に対応する場面が増えています。JPYCから他のステーブルコインへ交換することで、その場で即時に契約・支払いを行うことが可能です。現地通貨を事前に準備する必要がなくなり、商談をスムーズに進められます。

4.高頻度支払い・下請け精算の効率化

輸入加工やOEM契約など、納品単位での少額かつ高頻度な支払いが発生する企業では、JPYCによる自動支払いが効果を発揮します。スマートコントラクトを活用し、ERPや会計システムと連携することで、検収確認後の支払承認と送金を同時化できます。これにより、人為的なミスや支払遅延を大幅に削減できます。

5.グループ内・海外拠点間の資金移動

グローバルに事業を展開する企業では、現地法人や海外倉庫への内部送金が頻繁に発生します。JPYCを活用すれば、即日で資金補充や費用精算が可能となり、従来の国際送金で生じる待機時間や休日の制約を解消できます。これにより、グループ全体の資金効率が向上します。

6.信用スコア・ファイナンスへの活用

JPYCでの取引履歴は、ブロックチェーン上に改ざん不可能な形で記録されます。この透明性を活かし、JPYC決済の履歴を信用スコアデータとして金融機関に提供することで、短期融資や信用保証を受けやすくなる可能性があります。中小企業にとって、新たな与信評価の基盤となることが期待されます。

7.リベート・ロイヤリティ・報酬の自動分配

代理店報酬や販売歩合といった変動報酬をJPYCで自動分配すれば、契約条件(歩合率・数量など)に基づいて瞬時に支払うことができます。手作業での計算ミスや為替差損リスクを解消し、グローバルな販売ネットワークの管理を効率化できます。

実務課題とその解決策

実際の導入段階では、相手国や取引先の理解度に応じた対応が欠かせます。以下では、海外サプライヤーに導入を進める際の実務手順を説明します。

海外サプライヤーへのJPYC導入手順

JPYC導入における最大の障壁は、「相手がJPYCを理解していない」ことです。海外のサプライヤーに提案する際は、以下の手順を踏むことで合意を得やすくなります。

  • メリット:着金速度の速さ、手数料の安さ、為替リスクの回避といった具体的なメリットを説明する。
  • ウォレット開設支援:英語版のガイド資料を共有し、相手の導入をサポートする。
  • 契約書への明記:決済通貨としてJPYCを明記した契約書やインボイスを用意する。

海外サプライヤーは、暗号資産ウォレットを開設することでJPYCを受け取れます。* JPYC EXなどの専用アカウントは不要です。

JPYC決済時の通関・申告フロー

JPYC決済を利用する場合、税関から問い合わせを受ける可能性があります。その場合は、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • インボイスへの記載:「JPYC(1JPYC=1円)」と通貨コードを明記する。
  • 通関士への説明:JPYCが電子決済手段であり、日本円換算で処理である旨を伝える。
  • 金額整合性の担保:決済時のレート(常に1円)を示し、インボイス金額との一致を確認

大口決済への道筋と将来展望

現状、JPYCの発行・償還には1日100万円という上限がありますが、これは法制度による制約です。今後の法改正や事業者連携により、上限が拡大される可能性があります。

金融庁では、OTC(店頭取引)や銀行接続型モデルの導入が検討されており、大口決済への対応が進む見通しです。また、企業間のJPYC取引を補完するカストディ事業者との連携も進行中であり、複数企業間での大規模取引にも応用できるようになることが期待されています。

信用リスク管理とJPYC決済

銀行決済と比較すると、JPYCでは信用補完の仕組みがまだ十分に整備されていません。そのため、以下のような対策を講じることで安全性を高められます。

  • 貿易保険(NEXI):現時点では直接的な対応はありませんが、電子決済を補完対象に含める方向性が議論されています。
  • スマートコントラクト型エスクロー:条件付き支払いを自動実行できるため、信用状(L/C)に代わる仕組みとして注目されています。
  • 信用管理の徹底:取引先のウォレットアドレス管理や入金確認ログを社内で共有し、トレーサビリティを確保する。

以上の安全対策を踏まえたうえで、従来の銀行送金とどの程度違うのかを整理してみましょう。

JPYCと銀行送金の比較

項目銀行送金JPYC送金
手数料3,000〜8,000円数百円〜1,000円程度
着金時間1〜3営業日数分〜数時間
為替リスク発生なし(円建て)
送金上限実質無制限発行・償還:1日100万円/送金:上限なし
システム連携銀行API中心SDK・ASTERIA等で自動化
チャージバック場合によりありなし(即時確定)

※数値は一般的な目安です。各社条件・時期により変動します。

導入ステップ(実装の流れ)

実際にJPYCを導入する際の流れを、ステップごとに整理します。

  1. 法人ウォレットの選定:複数承認や権限管理が可能な法人向けウォレット(例:N Suite、HashPort Wallet)を選定する。
  2. アカウント開設とKYC:会社情報および担当者の本人確認を実施し、AML/CFT(マネーロンダリング対策)に対応する。
  3. 発行・償還の運用ルール策定:JPYC EXでの入出金フローを設計する。発行・償還は1日100万円の上限に合わせて運用する。
  4. 社内システムとの連携:会計・契約・在庫管理システムと連携する。SDKやノーコードツール(ASTERIA)を活用し、送受金の自動仕訳・照合を設計する。
  5. 取引条件の明記:見積書・契約書・インボイスに「JPYC決済」を明示する。返品・返金時の扱いについても定義しておく。
  6. 小口から試験運用を開始:サンプル代金や少額前払いから始め、コスト・時間・ミス率などの効果を測定しながら、段階的に適用範囲を拡大する。

注意点(制度・地域・実務)

JPYCを導入・運用する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 制度上の上限:発行・償還は1回・1日あたり100万円まで。ただし送金・決済には上限なし。
  • AML/CFT対応:本人確認と取引モニタリングが必須。社内の承認フローを明確にすること。
  • 地域規制:中国本土は資本規制により利用不可。香港・米国・EUでは制度整備が進展中。最新の規制情報を確認すること。
  • 会計・税務処理:評価方法、換金タイミング、為替差損益(該当する場合)の扱いについて、顧問税理士と事前に確認すること。
  • 相手先管理:ウォレットの管理体制、送金ミス時の対応、運用責任の所在について事前に合意しておくこと。

インサイト(経営・実務への効果)

JPYCの導入により、以下のような効果が期待できます。

  • キャッシュフローの安定化:即時決済により資金繰りを正確に管理できる。
  • コスト削減:小口決済や試作品支払いのコストを90%以上削減可能。
  • 取引スピードの向上:従来3日かかっていた送金が数分で完了する。
  • 業務の自動化:会計システムやERPとAPI連携し、自動記録が可能になる。
  • 信用力の向上:海外のWeb3対応取引先に対して、技術的な信頼を得られる。

よくある質問(FAQ)

中国との取引に使える?

A. 中国本土では利用できません。香港など、合法的なルートでの利用を検討する必要があります。

100万円の上限は不便では?

A. 上限があるのは発行・償還のみで、送金・決済には上限がありません。小口決済や国内決済には十分実用的です。

為替リスクはどうなる?

A. 円建てのため、基本的に為替リスクは回避できます。ただし、裏付資産や運営体制については公式情報で随時確認することを推奨します。

銀行送金との使い分けは?

A. 大口取引は銀行送金、小口・サンプル・前払いはJPYCという二本立てが現実的です。

要点まとめ

最後に、本記事の要点を整理します。

  • JPYCは金融庁の監督下にある円建てステーブルコインであり、中小企業でも合法的に利用可能。
  • 海外サプライヤーへの導入には、英語の支援資料と契約書の整備が重要。
  • 通関・会計・税務上の整合性を保つための実務対応が必要。
  • 大口取引や信用補完への発展可能性が高く、将来性が期待される。
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