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台湾有事に備える貿易実務者の対応策|リスク最小化のための具体的プラン

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台湾有事が日本貿易に直結する理由

台湾は日本にとって最も重要な貿易・物流の要衝です。台湾海峡は日本から中国・東南アジア・欧州を結ぶ主要航路であり、半導体を中心とした供給網も台湾に依存しています。ここで一たび、有事が発生すれば貨物の遅延や供給停止に加えて円相場も大きく変動し、中小企業の輸出入業務に直結する重大リスクとなります。

台湾有事のシナリオと影響

  • シナリオ1:台湾海峡の封鎖
  • シナリオ2:半導体サプライチェーン断絶
  • シナリオ3:米中対立による制裁合戦
  • シナリオ4:保険・運賃の急騰
  • シナリオ5:日本港湾・通関の混乱
  • シナリオ6:金融決済リスク

台湾海峡が封鎖されれば航路が使えなくなり、南シナ海経由への迂回で数日遅延と運賃高騰が発生します。これにより輸出入の納期が狂い、契約違反や顧客離脱のリスクが生じます。

半導体サプライチェーンの断絶では、世界の先端半導体の過半を生産する台湾が供給停止となり、自動車・電機のライン停止につながります。代替調達は困難で、在庫が尽きれば生産ストップとなります。

米中対立による制裁合戦では輸出管理や金融制裁が強化され、信用状の開設停止や送金不可のケースも想定されます。

保険・運賃については、船社が戦争危険料を請求し1TEUあたり数百ドルの追加費用が発生し、長期契約に転嫁条項がなければ企業負担となります。

日本の港湾・通関では安全保障理由で検査が増加し、通関書類に不備があれば1週間以上の停滞も考えられます。

金融決済面では中国・台湾向け送金に規制がかかり、オフショア経由や国内代理店決済が必須となる可能性があります。

特に影響が大きい品目

  • 半導体・電子部品:TSMC依存、代替調達困難。
  • 自動車関連部品:センサー、制御ICが不足。
  • 精密装置・機械:日本から装置輸出、台湾から半導体輸入という相互依存が断絶。
  • 農産物・食品:台湾果物、日本の水産加工品輸出が停滞。
  • エネルギー関連:航路封鎖でLNG輸送コストが上昇。

円相場への影響予測

  • 短期(有事直後):リスク回避で急激な円高。
  • 中期(数か月):日本近接リスクと貿易赤字拡大で円安圧力へ変化
  • 長期(半年以降):米中対立の動向次第で乱高下。非常に広いレンジで推移するリスク。

今からできる具体的対策

起こってほしくない台湾有事。でも実際に起きるかも!?と考えて、実務対応することは重要です。ここでは、平時からできる台湾有事への対策をご紹介していきます。

1.契約条件を整備しよう。

  • 不可抗力条項では「戦争、封鎖、政府規制、輸送停止など当事者の支配を超える事由により遅延した場合、その限度で責任を負いません。発生・終了は5営業日以内に通知します」と追記します。
  • 価格調整では「運賃・保険等の第三者費用が5%超上昇時、同率で価格見直しを協議します。協議成立まで暫定価格を適用します」と規定します。
  • Incotermsは輸出側をFCA・FOB中心とし、輸入側はFOB仕入れで船社・ルート選択権を確保します。

2.重要部品の棚卸しと最小在庫を確保する。

  • BOM*をA・B・C分類し、代替不可・認証必要・売上影響大の部品をAランクとして4~8週分を目安に在庫化します。
  • 管理台帳には品目・型番・重要度・標準リードタイム・現有在庫週数・安全在庫週数・代替候補・担当を記載します。
  • 代替評価は図面差分、小ロット試作、顧客承認依頼の順で社内承認5営業日以内を目標とします。

*BOM(Bill of Materials)とは、製品を作るのに必要な部品・材料・半製品を、数量つきで一覧化した表です。

3.代替調達先の準備と物流を選定する基準を明確にしましょう!

少量発注可能なサプライヤーをリスト化し、「当社は貴社型番○○の代替候補を検討中です。最小発注数量、標準リードタイム、初回小口の可否、技術資料の提供可否をご教示ください」のテンプレートで連絡します。

フォワーダーには、代替航路の所要日数、追加サーチャージ有無、混載枠確保状況、目的港変更可否、空輸切替条件を確認し、粗利と空輸追加コストを比較して粗利が上回る分のみ小口空輸、他は海上維持とします。

4.通関・規制と保険・決済の対応

該非・HSコードは社内から通関業者への二段階ダブルチェックで台帳化し、EPAが使えない時の非特恵証明を確認します。

書類は品名・型番・単価・数量・正味重量の整合と用途の一貫表記を最低基準とします。

保険では戦争・ストライキ危険の付保範囲と除外条件を代理店に文書照会し、事故時は48時間以内に初期通知からサーベイヤ手配、書類収集、進捗共有を実施します。決済は国内代理店・円建て選択肢を用意し、小口は前受け比率引上げ、大口は分割請求とします。

5.小規模体制の構築

営業・購買・物流から2~3名の横断チームを指定し、毎週15分で在庫・輸送・代替の進捗を共有します。

有事発生後の対応策(プレイブック)

実際に台湾有事が発生した場合は、以下の通りに対応していきましょう!

発生直後〜数日

  • 顧客・仕入先へ短文通知: 「台湾情勢の影響で一部出荷に遅延の可能性があります。現時点の見込み:○○。次回ご案内:○月○日。担当:△△(連絡先)」
  • 在庫の可視化:A部品の在庫週数を確認し、止めたくない顧客から順に出荷計画を組む。
  • 輸送判断:B/L未発行はルート変更を優先。出港間際は目的港変更の可否を確認。
  • 支払い・入金:送金遅延が出たら円建て・国内代理店に切替を打診。

1〜2週間

  • 顧客の優先区分:A(納期厳守)/B(納期調整可)/C(延期可)を合意。Aに人手と在庫を集中。
  • 代替調達の実行:商社・小口対応可能なサプライヤーへ同時照会。まずは最小ロットで発注しテスト。
  • 価格・納期の暫定覚書: 「暫定期間:○月○日まで/サーチャージは実費連動/納期は+△日を目安/毎週×曜日に状況共有。」
  • 保険・クレーム:滞留・破損は48時間以内に保険者へ一次通知。

3〜6週間

  • 販売計画の引締め:在庫確保が難しい商品は一時的に受注制限。粗利の薄い案件は延期交渉。
  • 資金繰り:金融機関へ相談(短期運転資金、ファクタリング)。回収サイトの短縮交渉。
  • 定例アップデート:主要顧客に週1回、在庫・輸送・価格の見通しを共有。

長期化した場合

  • 調達先の二重化:台湾依存A部品は他国品へ段階移行。単一供給は在庫連携を条件に継続。
  • 共同対策:重要顧客と共同安全在庫や図面更改を検討。
  • 学びの固定化:今回の暫定運用(通知文、在庫基準、ルート判断)を平時SOPに組み込む。

すぐ使える短文テンプレ

  • 遅延見込みの連絡: 「件名:出荷見込みのご連絡/本文:台湾情勢の影響で○○品の出荷が△日遅れる可能性があります。最新の見込みは○月○日にご案内します。担当△△(連絡先)。」
  • 代替見積の依頼: 「○○の代替候補××について、MOQ、標準LT、初回小口の可否、技術資料提供の可否をご教示ください。」
  • 暫定条件の覚書: 「暫定期間中、運賃・保険等の第三者費用の変動分は実費連動とします。納期は基準より+△日を目安とし、毎週×曜日に更新します。」

チェックリスト(実務者用)

  • 契約:不可抗力・制裁条項を明記済か?遅延ペナルティの上限は設定されているか?
  • サプライチェーン:台湾依存部材をリスト化し、代替先を確保しているか?
  • 在庫:半導体・車載ICを最低3か月分保持しているか?
  • 保険:戦争・ストライキ危険が付保されているか?
  • 決済:L/C以外の決済ルートをシミュレーション済か?
  • 為替:予約・オプションを複数回に分散して導入しているか?
  • 輸送:南シナ海迂回ルートの所要日数・費用を試算済か?
  • 通関:インボイス・パッキングリストを毎ロット事前審査しているか?

まとめ

台湾有事は「供給」「輸送」「為替」の三重リスクを伴います。特に半導体・電子部品は致命的な影響を受け、円相場も短期円高・中期円安の振れ幅が拡大します。

中小企業は、契約修正・在庫確保・為替ヘッジ・代替調達の4本柱を今から整備することが必須です。有事発生時には、即時通知・代替提案・契約交渉・金融回避策をスピーディーに実行し、被害を最小化する姿勢が求められます。

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