国内の工場を海外に移転するメリットがあるのかを検討

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日本国内の市場縮小や人材不足、製造コストの削減などを目的として、工場の海外移転を検討するときがあります。一般的に会社の経費の中で最も固定的で負担が重いのは人件費です。この部分を軽くするために、日本よりも賃金水準が低い海外へ活路を求めるのは自然のことです。しかし、実際に移転をするときは「本当に移転する必要があるのか」をもう一度、じっくりと考えていただきたいです。

日本は、自由貿易協定(FTAやEPAと言われています。)を様々な国々と結んでいます。2019年現在は、17の国と地域との間で協定が結ばれており、少し前、EU(ヨーロッパ連合)とも大枠合意したところです。あなたは、この事実をどのように思われますか?

日本のマスメディアの中には、自由貿易協定の発行=国を売るや日本の農業を崩壊させる。産業の空洞化を招くと主張することろが多いです。しかし、それらの主張は、どれもFTA(EPA)の一方的な側面を伝えているだけにすぎません。むしろFTA(EPA)は、売国どころか海外への生産拠点移転(工場移転)を食い止める唯一の仕組みであると考えなければなりません。

そこで今回は、なぜFTAが海外への移転を防止できるのか?についてご紹介します。

FTAは「海外展開」のキッカケや「海外移転」の防止に役立つ

商品が国境をまたぐときは、関税と呼ばれる税金がかけられます。関税は、輸入する品目ごとに細かく決められています。

基本的に経済力が小さい国ほど、商品に高額な関税率を設定している所が多く、アメリカなどの先進国は低い関税率を設定しています。日本については、工業系製品には、ほぼ無税に近い関税が設定されおり、農産品については、高い関税が設定されている状況です。FTA(EPA)と言われる自由貿易協定を結ぶと、これらの関税が一気に無税になったり、無税にはならなくても大幅な減額になったりします。

FTA(EPA)の魅力とは?

先ほども述べた通り、EPAを結ぶと、相手国で関税がかからなくなります。外国へ商品を輸出しているのに、関税がかからないのであれば、日本国内と同じように販売ができますね。つまり、これは国という形はあるにしろ、経済的には「一つの大きな共同市場」が出来上がったことと同じです。

日本の会社やFTAの相手国の会社は、この出来上がった一つの大きな市場に対して、自由に販売活動ができることになります。これがEPAの魅力です。

関税がかからない市場=圏内マーケット

EPAを結んだ国との間には、商品の関税がかからない場合が多いです。そのため、輸出者は国内と同じように販売ができます。しかし、これからの貿易では、この国内販売という言葉よりも「圏内販売」の方が物事を正しく理解していると思います。ここで言う圏内販売とは、日本とFTA(EPA)を結んでいる国々における販売活動のことです。この圏内販売がメインになることにより、次の2つの現象が起きてくるはずです。

「1.積極的な海外展開」「2.海外移転の延期」

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1.積極的な海外展開とは?

FTA(EPA)を結ぶと、協定を結んでいる国同士では、原則的に関税無税で貿易ができます。この事実を別の視点から考えると「協定国内の工場であればどこでも良い」ことになります。

例えば、日本とタイとの間には、日タイEPAが結ばれています。これにより、タイの商品は日本市場へのアクセスがしやすくなり、逆に日本の商品はタイ市場へアクセスしやすくなります。協定国同士の商品であれば、関税がかからないため、日本企業がタイの工場で生産した物を日本へ輸出することもできます。もしかすると、タイからさらに別の協定国へ輸出をした後、必要な加工を終えてから日本に向けて輸出することもできます。

ここで大切なことは、FTA(EPA)が結ばれることは、日本の国内市場が広がるということです。日本でいうと、東京に本社を構える企業が沖縄や北海道に工場を建てる感覚で、複数の国で工場を運営することが可能になります。なぜなら、どこの国の工場で製品を作ったとしても、原則的に関税無税で貿易ができるからです。しかし、これでは、日本国内の工場がますます空洞化しそうですね。「海外移転の防止どころか促進ではないか!」と考えてしまいがちです。

しかし、もう一度、FTAの効果を考えていただきたいです。FTAは、協定国内で製造された商品は原則的に無税でやり取りができる仕組みです。協定国で作られた商品であれば、日本側で関税を課税しません。その反対に、日本で製造された商品も海外の協定国で課税されないのです。もう一度、申し上げます。日本で製造された商品も関税がかからないのです。

日本の会社が海外移転を考えるときのポイント

日本の会社が海外で現地の工場を建てる理由を考えると、大きく分けて「人件費」と「関税」にあります。このうち、人件費については、コストとして大きなメリットがあることは否定できません。しかし、この人件費だけのメリットを考えて海外移転を検討してはいけません。人件費は、生き物と同じであるため、必ず経済成長と共に上昇してきます。この代表例が中国です。

一昔前、中国の豊富な労働力と安い人件費を求めて、こぞって海外進出をしていました。しかし、それから十数年たった今までは、賃金が大幅に上昇してしまい、さらに人件費が安いインドネシア、ベトナム、バングラデッシュに移転をしています。これが人件費だけを考えて移転を決めた場合のデメリットです。

その他、現地の会社と合弁で作らなければならない規制があったり、海外人材の教育に苦労したりすることもあります。資本比率の規制もあります。海外で工場を運営するのは、考えている以上に大変であることがわかります。だからこそ、できることなら日本の工場で製品を製造して輸出する形をとりたいですね。そのために問題となるのは「関税」です。しかし、実はこの関税の問題は、ある特定の国との間ではすでに解決済ですね。それが先ほどからお伝えしている「FTAの協定国」です。

日本で製造された商品であってもFTAを締結している国への輸出であれば、現地の税関で関税を課せられることはありません。これは、現地で工場建てて、現地へ国内販売していることと同じであるといえます。しかも、製造工場を日本に置いたまま実現することができます。

この事実からわかる通り、FTA(EPA)は、確かに海外移転を促進する効果があるのは事実です。しかし、その反面、日本に製造拠点を置いたまま輸出しようとする企業を増やすことでもあります。ようは、決してEPAの締結が日本にとって悪い物だと決めつけるのではなく、二方向以上の側面から判断していくことが大切であるということです。

まとめ

EPA(FTA)は、必ずしも国内の空洞化を招くわけではありません。協定国への輸出において関税がかからないため、日本に製造拠点を置いたまま輸出することが考えられるからです。もちろん、海外へ移転するとなると、人件費の抑制などのメリットがあるのは事実です。しかし、人件費は毎年、毎年上昇していくものであるため、いつかはメリットがなくなるときがきます。その将来のことを考えても、海外への工場移転を行うのかを考えるべきです。

日本は、すでに15の国とEPAを結んでいます。これに加えて、先進諸国であるEUとのEPAも大枠で合意しています。これら関税ゼロエリアが拡大しても、なお海外へ工場を移転するメリットがあるのかをしっかりと検討するべきです。

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