【EPA】輸出活用 関税を削減する全手順

EPA輸出活用全手順特定原産地証明書
この記事は約61分で読めます。

外国に商品を輸出するときは、相手先の国で関税(税金)がかかります。これを削減するための仕組みが「EPA(自由貿易)」です。

例えば、インドネシアでは、日本酒に「90%の関税」がかかります。(一つ100円の物に90円の税金が発生)関税が高くなれば、あなたの商品の受け手(輸入者)は、大きな痛手を負います。この問題を解決するのが「EPA=関税ゼロ貿易」です。

2020年現在。日本は、17のEPAを結んでいます。日本から輸出するとき、逆に、日本に輸入するときに、この仕組みを使えば、本来、かかるはずの関税をぐっと削減できます。

では、どのようにすれば、EPAを活用できるのでしょうか? この記事では、あなたが輸出者として、EPAを活用するための方法や手順をわかりやすく解説しています。

記事全体は、約37000文字で構成しています。非常に長いため、目次などを活用し、ご自身に必要な部分のみをご覧ください。一つずつ順番に進めていくことで「特定原産地証明書」を取得できます。関連記事:【関税削減】 輸入者としてEPAを活用するための全手

  1. EPA輸出(関税ゼロ)を実現するための全手順
    1. EPAの活用を検討されている方へ
    2. EPA輸出をするためのプロセス
    3. EPA関連の相談機関
    4. 1.日本と輸出先の国はEPAを結んでいる?
      1. 条件1・輸出先の国が日本とEPAを結んでいる
      2. 日本とEPAを結んでいる国の特徴
    5. 2.商品のHSコードを特定する!
      1. 1.相手先の関税率を調べるとき
      2. 2.相手先の原産地規則を調べるとき
      3. 相手国での完成品HSコードの調べ方は?
        1. 1.大原則!現地の税関に問い合わせる
        2. 2.輸出統計品目表から特定する。
        3. 操作方法
    6. 3.相手国の関税(MFN税率)を調べる方法
      1. MFN税率とEPAの関係
      2. 世界各国のMFN税率を調べよう!
    7. 4.相手国のEPA税率を調べる
      1. 相手国のEPA税率を調べる方法(ワールドタリフ)
        1. 虫眼鏡機能をクリックすると?
        2. 1.貨物に適用できる税率の一覧
        3. 2.協定の内容
        4. 3.関税削減の予定
        5. 4.協定の発効日
      2. 最後に、MFN税率とEPA税率を見比べる
    8. 5-1.輸出商品の原産性を確認
      1. 原産性を満たさない例
      2. 完成品の原産性の意味とは?
      3. 原産品が認められる3つのパターン
      4. 1.完全生産品
      5. 2.自国材料のみを使用した物
        1. 1.すべて日本の原産材料で作った製品
        2. 2.日本の原産材料と外国の材料を混ぜて作った製品
      6. 3.他国の材料をもとにして加工した物
    9. 5-2.外国の原材料を使った商品の原産性
      1. 1.CTCルール(関税分類変更基準)
      2. 2.VAルール(付加価値基準)
      3. 3.SPルール
      4. CTCとVAルールの優先順位
      5. 1.品目別規則を確認する。
      6. 2.CTCルールで検討!変更レベルを満たせる?
      7. 3.CTCルールの変更レベルを満たせない!→原産部品を検討する
      8. 4.原産品にもできない→CTCルールの変更レベルを満たせない!→デミニマス・累積を検討する
      9. 5.やっぱりどうしてもCTCルールを使えない→VAルールを検討
      10. 6.VAルールの内、積み上げ方式か控除方式かを調べる。
      11. 7.ワークシートを作成して「閾値を超えているか?」を確認
      12. 8.閾値を超えていない→原産品を積み上げる。
      13. 9.閾値クリア→VAルールによる証明完了
    10. 5-3.原産品判定依頼の前に用意する資料
        1. 1.輸出者による原産品申請は、製造者の協力が必要
        2. 2.根拠書類は適用するルールにより大きく異なる。
      1. 1.CTCルールで必要な書類
        1. 1.対比表
        2. 2.製造工程フロー図
        3. 3.サプライヤー証明書
        4. 4.価格の根拠を示す書類
        5. 5.委託生産者証明書
      2. 2.VAルールで必要な書類例
        1. 1.ワークシート
        2. 2.製造工程フロー図
        3. 3.価格の根拠を示す書類
        4. 4.利益計算書など(任意)
        5. 5.サプライヤー証明書(ケースによる)
        6. 関連知識:控除方式と積み上げ方式とは?
        7. 控除方式での証明
        8. 積み上げ方式での証明
        9. 6.売買契約書等(任意)
    11. 6.特定原産地証明書の取得方法
      1. 1.第三者証明制度(第一種原産地証明書)
      2. 2.自己証明制度(第二種原産地証明書)
      3. 1.第三者証明制度によるEPA取得手順
        1. 1.日本商工会議所に企業情報を登録
        2. 2.原産品であるかの判定を依頼
        3. 3.特定原産地証明書を発行を申請
        4. 4.外国にいる輸入者へ送付
        5. 5.輸入者が現地の税関へ申告する際に提出して免税措置を受けます。
      4. 2.自己証明制度による方法
      5. 特定原産地証明のよくある疑問
        1. Q.所要日数は?
        2. Q.特定原産地証明書の取得には、お金はかかりますか?
        3. Q.企業登録をするときの書類は?
        4. Q.本当は日本の原産品でないのに、偽って申請することはできますか。
    12. 7.特定原産地証明書を取得した後のお話
      1. 特定原産地証明書の取得後の原本と関連資料
      2. 特定原産地証明書の原本の取り扱い方法
      3. 特定原産地証明書の送付方法
        1. 一般輸出の場合
        2. 国際郵便等の場合
      4. 資料の保管期間
      5. 保管する資料の例
      6. 保管義務を怠ると、どうなるの?
      7. ここのまとめ
    13. 8.特定原産地証明書の問題点とは?
      1. 特定原産地証明書の利益を受ける人?
      2. 特定原産地証明書の遡及発給とは?
        1. 遡及発給の流れ
    14. 9.商品にかかる関税1%の重みとは?
        1. 課税価格が大きい場合
    15. 11.EPA活用のモデル
      1. 1.他国の部材を取り寄せて日本で生産
      2. 2.日本の部材を他国へ送り、他国で生産
      3. 3.EPA域内で生産した完成品を日本へ輸入
      4. 4.部材をEPA域内にある別の国へ輸出して、そこからEPA輸出
      5. 5.EPA域内の外国から生産を受託
      6. 6.他国の農産品を輸入して、日本市場へ流します。
      7. 7.日本の農産品を輸出して、海外市場へ流します。
      8. 8.グローバルファーマー生産モデル(海外向け)
      9. 9.グローバルファーマー生産モデル(他国の国内向け)
      10. 10.グローバルファーマー共同事業モデル
    16. まとめ

EPA輸出(関税ゼロ)を実現するための全手順

EPAの活用を検討されている方へ

EPAは、協定国内(以下の関税を削減する仕組みです。具体的には、輸出国側で「特定原産地証明書」という書類を作成。これを輸入国側の税関に提出すると、関税の削減または減額ができます。

2020年3月現在のEPA締約国一覧
シンガポールマレーシアタイインドネシアブルネイ
アセアン全体フィリピンベトナムインドモンゴル
オーストラリアメキシコチリペルースイス
CPTPP(TPP11)日欧EPA日米貿易協定
今後増えるかもしれない!?
カナダニュージーランドRCEPFTAAP
  1. 輸出国側で特定原産地証明書を発行
  2. 上記を輸入国側の税関に提出する

この2つのプロセスがあります。したがって、おおむね輸出価格が10万円~20万円(輸出する先により基準は異なる。)を超える場合は、コンテナ単位での輸出、LCL単位での輸出、EMSなどの小包による輸出などに関わらず、特定原産地証明書を取得する必要があります。もちろん、取得せず輸出することもできますが、相手国側で関税が発生し、クレームにつながる可能性が高いです。

  1. 輸出価格がおおむね10万円~20万円以上
  2. 上記に該当する場合、輸出規模に関わらず、特定原産地証明書の取得が必要

当記事は、この「特定原産地証明書」を取得するまでのすべてのプロセスをまとめたものです。非常に長い文章ではございますが、上から下までをご覧になるだけで、ほとんどの知識を「体系的」に取得できます。ぜひ、最後までご覧ください。

それでは、まずはジェトロが提供するEPAのメリットや活用のステップ動画をご覧ください。

EPA輸出をするためのプロセス

輸出でEPAを活用するためには?

この答えが特定原産地証明書の取得です。特定原産地証明書は、あなたの輸出する産品が「確かに日本の原産品であること」を証明する資料です。これを取得し、輸入国側に送付する必要があります。

証明書の取得プロセスは、全部で6つあります。

自由貿易 HUNADE

以下の7移行のプロセスは、取得後に必要な知識です。

1.EPA加盟国の確認
2.商品のHSコードを特定
3.相手国のMFN税率を調べる。
4.相手国のEPA税率を調べる。
5-1.輸出商品の原産性を確認
5-2.自国材料のみを使用した物
5-3.他国の材料をもとにして加工した物
6.特定原産地証明書の取得方法
7.特定原産地証明書を取得した後のお話
8.特定原産地証明書の問題点とは?
9.商品にかかる関税1%の重みとは?
10.輸出先国でかかる輸入関税率を調べるには?
11.EPA活用のモデル

EPA関連の相談機関

 

EPAの相談をしたいです!誰に相談をすればいいの?

EPA関連の相談機関は次の通りです。

  1. EPA相談デスク
  2. 日本商工会議所
  3. 弊社の対比表作成サービス

EPA相談デスクは、経済産業省管轄の無料相談窓口です。EPA全般的な質問は、EPA相談デスクを利用します。日本商工会議所は、特定原産地証明書の指定発給機関です。輸出者は、日本商工会議所に原産品判定依頼をして、特定原産地証明書を取得します。証明書を取得するための相談ができます。

弊社もEPAのサポートをしています。主なサービスは、特定原産地証明書を取得するときに必要な原産性資料の作成です。特に原材料のHSコードの特定などは、非常に制度が高く、かつ素早くできることでお褒めの言葉をいただくことが多いです。よろしければ、ご検討ください。

化粧品のHSコード特定サービス 対比表の作成支援
「一般品目」対比表の作成支援サービス

それでは、早速、取得プロセスの説明をしていきます。

1.日本と輸出先の国はEPAを結んでいる?

特定原産地証明書 取得ステップ HUNADE

EPAは、次の2つの条件を満たすと利用ができます。

  1. 日本とEPAを結んでいること
  2. EPAによる税の優遇が受けられる商品であること

ここでは、1番の日本とEPAを結んでいる国を詳しくご紹介していきます。

条件1・輸出先の国が日本とEPAを結んでいる

世界貿易機関(WTO)という機関があります。この機関に加盟している数は、2020年現在、およそ160カ国です。この中で日本とEPAを結んでいるのは、たった17しかありません。日本は、どのような国とEPAを結んでいるのでしょうか? 中国ですか?

2020年現在、日本は、下記の国々とEPAを結んでいます。もし、あなたが輸出する先の国が以下のリストの中に含まれている場合は、EPAによる関税ゼロ輸出を行えます。日本は、東南アジア諸国との締結が中心です。この中でも特に注目すべき国は、インドネシアとベトナムですね。人口が継続的に増え続けており、消費国としての魅力が高まっています。

  1. シンガポール
  2. マレーシア
  3. タイ
  4. インドネシア
  5. ブルネイ
  6. フィリピン
  7. ベトナム
  8. メキシコ
  9. チリ
  10. スイス
  11. ペルー
  12. オーストラリア
  13. モンゴル
  14. インド
  15. TPP
  16. EU
  17. アメリカ

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ブルネイ、カナダ、チリ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、オーストラリア、マレーシア、メキシコ)
アイルランド、ルクセンブルク、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、キプロス、ギリシャ、クロアチア、スウェーデン 、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、イギリス(2020年12月31日で脱退)

日本とEPAを結んでいる国の特徴

  1. 経済発展の可能性が大きい国
  2. 鉱物資源・食料が豊富にある国
  3. 次なる展開の可能性がある国

2.商品のHSコードを特定する!

特定原産地証明書 取得ステップ HUNADE

次に輸出する産品のHSコードを特定します。

あなたの輸出産品は、相手国側でHSコードが何番になるのか?」が重要です。

HSコードは、世界各国が共通して利用する品目コードです。

例:りんご:0808.20、りんごジュース2009.79

関税ゼロで輸出する場合は、このHSコードに次の2つの重要な役割があります。

  1. 相手先の関税率を調べる
  2. 相手先の原産地規則を調べる

相手先の関税率は、あなたが輸出したときに、相手国側で「発生する関税額」を計算するときに関係。一方、原産地規則は、「あなたの商品は、協定国内の原産品であるのか?」を確認するとき関係します。

1.相手先の関税率を調べるとき

EPA(自由貿易制度)輸出をするときは、相手国における自社商品の関税率が重要です。

問:「アメリカに自社商品を輸出するときの関税率は?」

つまり、アメリカの輸入者にかかる税金の率を調べます。この計算により「本当にEPAを活用する必要があるのか?」 や 「自社の商品は、相手国で価格競争力があるのか?」を判断できます。

もしかすると、相手国では、すでに対象商品の関税率がゼロの可能性もあります。その場合、あえてEPAを利用しなくても良いです。

ポイント:あなたの商品は、相手国で何パーセントの関税率が設定されている? すでに無税品目であるなら、あえてEPAを利用しなくてもよい。

2.相手先の原産地規則を調べるとき

HSコードは、原産地規則を調べるときにも使います。原産地規則とは、対象の商品を「締約国の原産品」と認める条件です。

例えば、日本とタイとの間の「日タイ協定」は、日本又は、タイのどちらかの生産物が「日タイ協定上の原産品」です。それ以外の国で生産された物には、日タイ協定の利用はできません。

問:「どのような条件をクリアすれば、原産品と認めるのか?」

上記の条件を明示するのが原産地規則です。そして、この原産地規則がHSコードに紐づけられているのです。原産地規則は、1協定につき一つ存在します。したがって、2020年現在は、17の原産地規則があります。ちなみに、原産地規則は、協定毎に決められている物です。国単位ではございません。

例えば、ベトナムとの間には、TPP、日ベトナム協定、日アセアン協定の3つの協定があります。輸出入するときは、これらの協定の内、最も有利な物を選び適用します。

「ベトナムであるから、日ベトナム協定しか使えない」→ 誤り

1.日本とベトナムとの間には、何協定が存在する?
2.TPP、日ベトナム、日アセアン協定がある
3.今回の産品は、日ベトナム協定の利用が適切→正しい考え方

この原産地規則は、後述する特定原産地証明書の発行にも非常に関係してきます。ぜひ、覚えておきましょう。

ポイント:自社商品の原産地規則を確認すること。この原産地規則がHSコードに紐づけられている。

相手国での完成品HSコードの調べ方は?

相手国のHSコードを調べる方法は、次の2つです。

  1. 輸出者を通じで現地税関に確認
  2. 輸出統計品目表からの特定
1.大原則!現地の税関に問い合わせる

EPAでは、相手国の税関の見解が優先される大原則があります。よって、輸出する商品のHSコードも日本側の税関の見解ではなく、相手国税関の見解が基準です。もちろん、直接、相手国の税関に問い合わせをするのはハードルが高いです。そのため、EPA輸出をするときは、輸出相手を通して、現地税関にHSコードを問い合わせてもらいます。その際、できれば、現地税関の「事前教示制度」を利用します。

事前教示制度とは、現地税関が該当する商品のHSコードを書面などで回答する仕組みです。制度を使う理由は、審査をする税関職員によって商品に対する見解の違いが起きないようにするためです。

例:「事前の相談時には、HSコードが●●番だと回答を得た。この商品は、関税0%だ。しかし、実際に輸入するときの審査では、HSコードは××番だ。よって関税率も10%である」と、事前相談のときの見解とは別の結果となることです。この場合、輸入のコスト計算が大幅に変わるため、非常に困ります。これを防止するのが事前教示制度の目的です。

完成品のHSコードは、輸入者を通して、現地税関に確認しましょう!
2.輸出統計品目表から特定する。

大原則として完成品のHSコードは、現地の税関に尋ねます。ただし、何らかの理由により、この確認が難しいときもあります。この場合は、税関のホームページにある「輸出統計品目表」を利用します。輸出統計品目表には、日本から輸出するときに使用するHSコードが書かれています。ここからあなたが輸出する予定の商品のHSコードを特定していきます。

ただし、一点だけ注意が必要です。輸出統計品目表には、HSコードの新しさがあります。EPAで利用するHSコードは、各協定が締結されたときに使っていたHSコードを利用します。

HS2017日欧EPA
HS2012オーストラリア、モンゴル、TPP11
HS2007スイス、ベトナム、インド、ペルー
HS2002タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ブルネイ、アセアン、メキシコ
操作方法

WEBタリフ輸出統計品目表を開きます。

  • 赤枠・世の中にあるすべての商品は、1類~97類の中に分類される。
  • 緑枠・類の中に含まれている概要。この部分を頼りにして、特定する。
  • 青枠・類の中に含まれる貨物についての注意書きが有り
  • 紫枠・類の中に含まれている詳細な表があり

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上記の紫枠にある「品目表」をクリック。類の中にある貨物がずらっと表示されます。赤枠の中にある上から6桁の数字が「貴社が輸出申告」や「特定原産地証明書」を作成するときに使用するHSコードです。青枠には、それぞれのコードに該当する説明が書かれてています。

例えば、貴社の輸出する商品が「豚であって純粋種」であるならHSコードは「0103.10」です。

ここのまとめ
  • 相手国のHSコードを確定させよう。
  • 確定させるには、輸入者を通して相手国の税関に尋ねることが一番
  • HSコードには、相手国の関税率と原産地規則がかかれている。

3.相手国の関税(MFN税率)を調べる方法

特定原産地証明書 取得ステップ HUNADE

WTO(世界貿易機関)で最も大切な考え方は「最恵国待遇」です。

→「WTOに加盟する国同士は、等しい関税率を設定しなければならない」

例えば、WTOの中にAさん、Bさん、Cさんがいるとします。AさんとBさんは、卵の貿易をしています。Aさんは、Bさんの卵に5%の関税をかけます。この状況の中、新しくCさんがAさんに卵を売りにきました。ところがAさんは、長年のBさんとの関係を考えて、Cさんの持ってきた卵に10%の関税をかけることにしました。

この場合、BさんやCさんとしては、同じ卵を輸出しているのに、Aさんによる不平等扱いにより、卵にかけられる関税率が違います。WTOでは、加盟国内において、このような待遇の差を認設けることを認めていません。この場合、Aさんは、Cさんにも同じく5%の関税を設定する義務があります。これがMFN税率(最恵国待遇制度)です。

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では、このMFN税率(協定税率)とEPAには、どのような関係があるのでしょうか?

MFN税率とEPAの関係

ある国へ商品を輸出するときに、輸出先の国がWTOに加盟していれば「相手国におけるWTO税率」が適用されます。加盟していなければ、相手国における「一般税率」が適用されます。

例えば、A国では、次のように関税率が設定されているとします。日本は、WTOに加盟しているのでMFN税率が適用されます。日本からA国に向けて輸出されたときは、日本のりんごに対して、MFN税率が適用されます。仮に、日本がWTOに加盟していなければ、一般税率の30%が適用されます。

一般税率MFN税率
りんご30%20%

EPAを結んでいる場合を考えてみましょう!この場合、一般税率、MFN税率、EPA税率の3つを比較します。仮にA国と日本がEPAを締結していれば、一番右側にある「EPA税率」が適用されて、関税率はゼロです。

一般税率MFN税率EPA税率
りんご30%20%0%

しかし、商品によっては、このMFN税率とEPA税率との間に……

  1. 大きな差がない場合
  2. MFN税率で関税がゼロの場合

などがあります。この場合は、EPAを適用するだけ無駄になる可能性が高いです。MFN税率は、特に証明資料を用意することなく、輸出をするだけで自動的に適用される税率です。

一方、EPAは、特定原産地証明書を用意する必要があります。だからこそ、EPA税率とMFN税率を比較・検討し、実際にEPA輸出をするのかを検討する必要があります。

一般税率MFN税率EPA税率
りんご30%0%0%

関連:WTOとFTA・EPAは矛盾していないのか?

戦略なしにEPA適用を考えるのは無意味。証明書取得の労力に見合う関税削減の効果があるのか?を検討しましょう。

世界各国のMFN税率を調べよう!

相手国のMFN税率やEPA税率の調査は「ワールドタリフ」でできます。(登録方法

重要なポイント:相手先のMFN税率とEPA税率を比較検討すること

4.相手国のEPA税率を調べる

特定原産地証明書 取得ステップ HUNADE

EPA輸出の判断は、MFN税率とEPA税率を比較・検討します。

相手国のEPA税率を調べる方法(ワールドタリフ)

相手国のEPA税率は「ワールドタリフ」で調べられます。通常、このサービスは、有料です。しかし、ジェトロさんを経由して登録することで無料で利用ができます。日本在住の方は、ぜひワールドタリフを使いましょう!関連:ワールドタリフの使い方で説明しています。

ワールドタリフの初期画面から、HSコード検索などを使い対象の貨物を見つけます。

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左側に国名が並んでいます。これが原産国です。(この国から来た貨物は赤枠と青枠部分を適用する意味)この右側に税率(赤枠)と適用できるEPA協定など(青枠)などが書かれています。もし、EPA等を適用できない場合は「MFN Applied」この場合は、MFN税率が適用されます。

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上から順番に見ていくと、アルファベット順の「J列」に日本があります。この貨物の場合「日アセアンEPAを利用すれば、18%の関税を適用する」と記されています。ちなみに、この貨物のMFN税率は30%であるため、EPA税率によって約12%の関税が削減されます。

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下の画像をご覧ください。日本の欄だけ虫眼鏡がありますね。この部分をクリックします。

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虫眼鏡機能をクリックすると?

次の4つの情報がわかります。

  1. 貨物に適用できる税率の一覧
  2. 協定の内容
  3. 関税削減の予定
  4. 協定の発効日
1.貨物に適用できる税率の一覧

対象の貨物に適用できるその他の税率を一覧で確認ができます。下の図をご覧ください。この貨物については、MFN税率、AJCEP(日アセアンEPA)、VJEPA(日ベトナムEPA)のどれかを自由に選択できます。そして、赤矢印の下には、それぞれの税率が書かれています。この赤枠の中にある協定の中で、最も低い税率が適用されるものを選びます。

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2.協定の内容

協定の内容を説明しています。AJCEP=日アセアンEPA協定 B15=協定発効から15年で関税を撤廃 Base rate=基本税率のことです。この基本税率が上記のEPA(AJCEP)で減額されることを意味します。あくまで元々の関税はいくらなのかを示しているだけです。

Hunade

3.関税削減の予定

関税の削減予定を示しています。いわゆる「譲許(じょうきょ)」です。緑矢印の部分が年数になっていますね? これが赤矢印の部分に書かれている税率と対応しています。この貨物の場合、2023年から関税がゼロです。

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4.協定の発効日

協定発効に関する情報が記載されています。この協定の場合は、2008年の12月1日にスタートして、毎年4月1日付で減税されると記載されています。

Hunade

これでEPA税率と協定税率(MFN税率)の2つを知ることができました。あとは、対象貨物のインボイスの価格を考えて、EPAを利用するのかを検討します。

最後に、MFN税率とEPA税率を見比べる

EPAを活用した関税ゼロ輸出を検討するときは、相手国におけるMFN税率とEPA税率を見比べます。一般的に相手国では、EPA税率MFN税率の場合が多いです。

しかし、EPAの発効から年数が経っていないときは、MFN税率EPA税率の可能性があるため注意が必要です。必ずMFNとEPAを比較検討します。合わせて削減できる「関税」を計算すると良いです。

例えば、MFN税率20%、EPAが5%だとします。このとき、インボイス(貨物の価格を記載する資料)の価格が100万円であれば、削減できる関税額は20万円→5万円となり、およそ15万円の関税を削減できます。

では、同じ商品でインボイスの価格が10万円であれば、いかがでしょうか?

2万円の関税が5000円です。別にメリットがないとは言い切れませんが、特定原産地証明書を取得する労力と見合っているのかというと微妙です。日本側における証明書発行の「手間」と相手国における「関税削減の大きさ」を考えて、EPAの利用を検討しましょう!

ここの要点
  • EPA税率はワールドタリフで調べられる。
  • EPA税率とMFN税率を比較検討しよう!

5-1.輸出商品の原産性を確認

特定原産地証明書 取得ステップ HUNADE

「EPAを適用する貨物に値するのか?」

この判断をする基準が「原産地規則」です。

例えば、日タイEPAは、日本又はタイで生産された産品が協定の適用を受けられます。しかし、ここで一つの疑問です。

仮に中国で生産したものが日本経由でタイに輸出された場合は、どうなるのか? もちろん、これは、日本国内の産品にはならないため、日タイEPAを適用できません。このように「何をもって原産品とするのか?」これを明らかにするのが原産地規則(品目別規則等)です。

例えば、次の場合は、必ずしも日本原産品であるとは言えません。

原産性を満たさない例

  • 「日本の工場で生産しているから原産性がある」
  • 「日本のラベルを貼っているから原産性がある」
  • 「日本の委託している工場で生産しているから原産性がある」

原産品の判断基準は、原産地規則にあります。一にも二にも原産地規則が判断の基準です。

2020年現在、日本は17のEPAを交わしています。これら一つ一つのEPAに品目別規則があります。EPA貿易をするときは、品目別規則を見ながら「相手国が定める原産地基準に満たした貨物なのか?」を確認します。

基準をクリアしない→日本原産品ではない。→輸出先国で関税が削減されない。

Hunade

完成品の原産性の意味とは?

輸出産品には、原産性が必要。ただし、これは、使う「原材料」にも原産性を求めているわけではないです。

  1. 原産性が求められるのは完成品。
  2. 完成品の原材料は、原産品でなくてもよい。

例えば、あるテレビを製造したとします。この場合の部品構成は、以下の通りです。テレビが完成品です。EPAでは、この完成品に原産性があるのが条件です。しかし、テレビに使っている部品(原材料)は、日本産である必要はないです。以下の図のように、外国産のものを使っても問題ないです。

完成品(原産性が必要)部品(原産部品でなくてもよい)部品の原産国
テレビモニターマレーシア
配線アメリカ
スピーカーカナダ

なぜ、外国の原材料を使っていても、日本の原産品として認められるのでしょうか? これを理解するためには、原産性と判断するための三つのルールを理解する必要があります。

原産品が認められる3つのパターン

輸出商品が次のいずれかに該当すると「完成品に原産性がある」と判断されます。

  1. 協定国で取れた完全生産品
  2. 自国(EPA締約国内)の材料のみを使用した物なのか?(原産材料のみ)
  3. 他国の材料を使い「決められた加工」をした物なのか?(非原産材料)

原産地規則

1.完全生産品

完全生産品とは、自然的にうまれる産品です。製造より「生産」や「採取」という言葉の方がしっくりきます。

例えば、日本国内の牧場で飼っている牛や馬の「肉」、そこからとれる「ミルク」、山からとれる鉱物資源、海で獲れる「魚」など、自然から得られる産品です。これ以外にも完全生産品には、次の物があてはまります。いずれも日本国内であることが絶対条件です。

植物性の産品果実、花、野菜、海藻
生きている動物そのもの牛、馬、羊、鶏など
動物から得ることができるものミルク、骨の加工品など
山や海底にあるもの鉱物、油、岩塩など
副次的な産物採掘・農業・建設、プラスチックなどで生じる「クズ」など

2.自国材料のみを使用した物

EPA締約国内の材料(原産材料)のみを使用して作られた物です。この場合は、次の2つのパターンがあります。

  1. すべて日本の原産材料を使って作られた製品
  2. 日本の原材料と外国の原材料(非原産材料)を合わせて作られた製品

なお、ここで言う「原産材料」とは、日本とEPA相手国で生産された物。「非原産材料」とは、それ以外の国で生産された材料です。

非原産材料 HUNADE

1.すべて日本の原産材料で作った製品

日本の原産品のみ使って作られているため、文面通り、原産品としての扱いを受けられます。

2.日本の原産材料と外国の材料を混ぜて作った製品

最終完成品に外国産の原材料が含まれていても基準をクリアすれば、日本の原産品です。

例えば、カップラーメンを考えてみましょう!カップラーメンには、日本産の「麺」「野菜」などが入っています。野菜は日本の野菜であり、完全な「原産品」です。一方、麺に注目すると、日本で製造しているけれど、小麦はロシアから輸入しています。

このとき、カップラーメン自体を「最終完成品」と言います。そして、この最終完成品を作るために直接、使った原料を「一次材料」といいます。上記の場合「麺」や「野菜」のことです。麺は、大元をたどると「外国産の小麦(ロシア)」です。

では、この場合は、どのような取扱いになるのでしょうか?

大元が外国産の材料(麺の材料である小麦粉がロシア産)であったとしても、一次材料(小麦粉から麺に変化したとき)で日本産に変化していれば、問題ないとされています。よって、この最終完成品(カップラーメン)は、「日本の原産品」の扱いを受けられます。ポイントは、完成品に使用する直前の材料(一次材料)が日本産であることです。

3.他国の材料をもとにして加工した物

3つ目は、他国の原料(非原産材料)を使用して、日本国内で製造した物です。一般的な工業製品をつくるときに最も当てはまるパターンです。日本は加工貿易が一般的であるため、このルール3に当てはまる物として証明することが最も多いです。ルール3の中には、さらに次の3つがあります。

  1. CTCルール(関税分類変更基準)
  2. VAルール(付加価値基準)
  3. SPルール(加工工程基準)
ここの要点
  • 原産地規則を基準に原産性があると判断する。
  • 例えば、日本国内で作っている~などの点だけで、必ずしも原産品にはならない。
  • 原産性には、完成品と構成材料の2つがある。これを区別して考えること
  • 原産地規則に基づき原産性があるかを判断するときは、三つのルールから検討する。

次の章でこの部分をさらに詳しくご紹介していきます。

5-2.外国の原材料を使った商品の原産性

特定原産地証明書 取得ステップ HUNADE

協定上の原産品とは、「完成品」のことであり、完成品に含まれる原材料(部材)等に、原産性を求めているわけではないです。

  • 完成品の原産性
  • 完成品を構成する部材の原産性

この2つをしっかりと分けて考えます。そして、完成品を構成する部材が「協定国外」つまり、外国産材料の場合は、次の三つの内、いずれかのルールを満たせば、構成部材が外国産材料でも、完成品は「原産性がある」と判断されます。

  1. CTCルール(関税分類変更基準)
  2. VAルール(付加価値基準)
  3. SPルール(加工工程基準)

1.CTCルール(関税分類変更基準)

CTCルールは、3つの加工ルールの中で、最初に検討する物です。完成品のHSコードと、それに使われている原材料のHSコードの間に「指定の変化」があるかで判断します。

完成品完成品のHSコード原材料原材料のHSコード
ケーキ1905小麦粉1101
0407
砂糖1701

表の左側が完成品(ケーキ)のHSコード(1905)です。右側がそのケーキに使われている原材料(小麦、卵、砂糖)のHSコード(1101、0407,1701)です。原材料を使ってケーキを作ることで、HSコードが変化していることがわかりますね。この変化がCTCルールによる原産品判定の基準です。

ctc 対比表

2.VAルール(付加価値基準)

VAルールは、商品の最終価格のうち「日本でどれだけ付加価値を与えているのか?」によって原産性を判断することです。付加価値には、日本の原材料の他、製造に要する人件費、製造コスト、販管費、会社の利益などを含みます。これらの合計が最終的な商品価格に対して一定の割合以上であることが原産品の条件です。

VAルール

  • *1.QVC/RVC(原産資格割合)です。基準値は、品目ごとに決められている。40%前後
  • 原産資格割合(QVC)の公式=FOB価格-非原産部分)/FOB価格×100
  • ポイント:商品価格の中に「どれだけ日本の原産部分(材料費・人件費・製造経費)などを含むのか?」です。この数値(原産資格割合)が一定を超えると、日本の原産品となる。

3.SPルール

SPルールは、ある商品を製造するときに決められた加工方法にそって製造されているのかを判断の基準とする考え方です。このルールは、とても狭い分野に適用されるものであるため、当記事では省略させていただきます。

以上の3つが外国産原材料を使っても日本産の商品にできる条件です。基本的に、これらのルールは、品目別規則で指定されていない限り「輸出者の自由な選択」に任されています。とはいえ、基本的に第一に検討するべきルールは、CTC。次に検討すべきものがVAルールです。

CTCとVAルールの優先順位

CTCルールとVAルールの内容をふまえて、実際の検討手順をご紹介します。

  1. 品目別規則を確認して、原産性ルールを確認
  2. CTCルールで検討を検討。変更レベルを満たせる→CTCルールで証明
  3. CTCルールの変更レベルを満たせない!→原産品にならないかを検討
  4. 原産品にもできない→CTCルールの変更レベルを満たせない!→デミニマス・累積を検討
  5. CTCルールを使えない→VAルールを検討
  6. VAルール:積み上げ方式か控除方式かを調べる。
  7. ワークシートを作成して閾値を超えてないかを確認
  8. 閾値を超えていない→原産品を積み上げる。
  9. 閾値クリア→VAルールによる証明完了

1.品目別規則を確認する。

各協定ごと、品目ごとに決められている「原産品ルール」を確認する。→原産地規則ポータル)ここで協定名とHSコードを指定すると「VA40%以上」や「●●項への●●以外の類の変更」などの条件が書かれています。前者がVAルールによる証明の条件、後者がCTCルールによる証明の条件を示します。

2.CTCルールで検討!変更レベルを満たせる?

ご自身の完成品の原材料(部品部分)を対比表にリストアップしていきます。完成したら、完成品と原材料のHSコードを見比べて、原産品ルール通りにHSコードが変更されているのかを確認してください。

このとき、すべての原材料を「非原産品」とします。本当に日本で生産していても非原産にします。原材料リストが変更レベルを満たせば、これで原産品の証明は完了です。その他、必要な書類を用意して、原産地証明書発給システムから原産品判定依頼を出しましょう!

もし、これらの原材料リストの中に一つでも変更レベルを満たさない物があれば、次のステップ3に進みます。

3.CTCルールの変更レベルを満たせない!→原産部品を検討する

原材料リストの内、変更レベルを満たさない部品は「原産材料にならないか?」を検討します。実は、HSコードの変更が求められるのは非原産材料のみです。

逆に言うと、原産材料であれば、HSコードが不要になるため、HSコードの変更が難しい物は「原産材料にできないか?」を考えます。もし、原産品であるときは、その部品を供給する会社から「サプライヤー証明書」を提出してもらいます。

原産品にできれば、証明は完了です。もし、これでも原産品にならないときは、ステップ4に進みます。

4.原産品にもできない→CTCルールの変更レベルを満たせない!→デミニマス・累積を検討する

もし、原産品にできない部品は「求償ルール」を検討します。求償ルールには、デミニマスと累積規定などがあります。デミニマスとは、変更レベルを満たせない部品であっても、それが全体に占める割合の僅かであれば、無視できるルールのことです。

商品によっても異なりますが、およそ5%以内と決められています。累積とは、協定の締約国である相手の原産品であれば、日本の原産品としてみなすルールのことです。

5.やっぱりどうしてもCTCルールを使えない→VAルールを検討

求償ルール(デミニマスや累積)も使えないときは、初めてVAルールを検討します。

6.VAルールの内、積み上げ方式か控除方式かを調べる。

VAルールには「積み上げ方式」か「控除方式」の2つがあります。「どちらを使えばいいのかは、ご自身の好みです」と言いたい所ですが、実は協定ごとにどちらを使えばいいのかが決められています。

基本的に東南アジア諸国は、控除方式による証明を認めておらず、すべて積み上げ方式を要求しています。どちらの方式が採用されているのかは「各協定のVAルール証明方式まとめ」でご確認下さい。

7.ワークシートを作成して「閾値を超えているか?」を確認

VAルールで必要になる「ワークシート」を作成します。最初に材料をすべて「非原産扱い」にしてリストアップしていきます。商品全体の価格を入力した後、「非材料部分の原産部分(人件費、製造費)を入力して、その時点における閾値を確認します。もし、これで閾値を超えなければ、次に原材料部分に「原産品を積み上げらないか?」を検討します。

8.閾値を超えていない→原産品を積み上げる。

閾値が超えていなければ、不足分を補うように原材料を「原産品」として積み上げます。原産品として積み上げる場合は、その部材を供給するサプライヤーにも大きな負担がかかります。したがって、この負担を必要最小限にするために、まずは非原産、必要な範囲で「原産部材」として積み上げてきます。

→原材料を「原産品扱い」にするのは、閾値を満たす範囲+アルファの部分にすることをお勧めします。

9.閾値クリア→VAルールによる証明完了

無事に閾値をクリアすれば、VAルールによる証明は完了です。その他、必要書類を用意して、発給システムから原産品判定依頼を行いましょう!

関連記事:VAルール(付加価値基準)の混乱を解決!内製品とは?

メーカー(製造者)が特定原産地証明書を取得する方法(VAルール使用)

ここの要点
    • 原産品の判断は、CTCルール→VAルールの順に検討する
  • CTCルールは、原材料をすべて「非原産品」として申請する
  • VAルールは、閾値を超えないときに、必要最低限の範囲で、原材料を「原産品」とする。
  • CTCルールは、関税分類の変更を基準とする。
  • VAルールは、商品価格が基準です。

5-3.原産品判定依頼の前に用意する資料

特定原産地証明書 取得ステップ HUNADE

「対象の商品を原産性があるあると主張するなら、その根拠を示せ!」

この根拠となる書類が「特定原産地証明書」です。すでに何度も述べている通り、特定原産地証明書は、輸出者が輸出国側で発行を受けて、それを輸入者に送付して使います。

要は、日本から産品を輸出するのであれば、輸出者であるあなたが根拠資料を取り揃えた上で、日本商工会議所に申請する必要があります。(別に自己証明制度ともあり=この記事では省略)と

  • 輸出者が特定原産地証明書を入手する義務がある。
  • この特定原産地証明書を入手する過程で「根拠書類」が必要。

つまり…..

  1. 原産性があることを証明する根拠書類の用意
  2. 日本商工会議所に原産品判定依頼をする。
  3. 1の根拠書類を提出&審査を受ける。
  4. 判定される。合格であれば、特定原産地証明書を入手できる。

この1~4のステップがあります。この流れの中で最も重要な物は、1番の根拠資料の用意です。実は、ここまでの文章で説明してきた内容は、すべてこの根拠書類の取り揃えに関することなのです。

あなたは、輸出商品に対する原産性の根拠を示す書類を用意しているのか?

この点が非常に重要です。では、どのような資料を根拠書類というのでしょうか? 一応、経済産業では「経済産業省の保存するべき資料の例示」を公開しています。しかしながら、少しざっくりしているため、ここでは、この内容をさらに詳細に説明していくこととします。

まず、大前提として、次の2つのことを頭に入れてください。

  1. 輸出者による原産品申請依頼は、製造者の協力が必要
  2. 根拠書類は適用するルールにより大きく異なる。
1.輸出者による原産品申請は、製造者の協力が必要

原産品判定の書類を用意するときは、輸出者と製造者の協力が必要です。原産品判定を受けるには、完成品に使われている原材料リストや、製造工程を示す書類を用意する必要があるからです。これは、あなたが輸出者兼製造者であれば何も問題はありません。あなたが輸出者であり、別に製造者がいるときに当てはまります。

仮のお話として、大企業が販売している商品を仕入れて、外国へ輸出をするときは、原産品判定依頼の協力を得ることは難しい場合が多いです。この場合は、証明書の取得をあきらめるか、その製造企業から「生産者同意通知」を受けるのかのどちらかです。

いずれにしろ、輸出者として原産品判定をするときは、製造者の方から何らかの形で協力を得ることが重要です。もし、製造者の協力が得られないときは、その商品の原産判定依頼は、あきらめなければならないです。それでは、この前提をふまえて、原産品判定依頼をするときの資料をご紹介していきます。

2.根拠書類は適用するルールにより大きく異なる。

原産品判定依頼をするときの資料は、利用する証明ルールによります。証明ルールとは「関税分類変更基準(CTCルール)」や「付加価値基準(VA基準)」などです。これらのルールごとに用意するべき資料は、それぞれが「何を基準にして原産品として認めているのか?」というポイントを考えるとわかりやすいです。

例えば、CTCルールは、材料と完成品の「HSコードの変更」を基準にしています。VAルールは、商品価格に占める「日本で付加された価値」が基準です。よって用意するべき資料も、これらの点を審査できるように整えます。特にVAルールを使うときは、価格を基準に考えるため、CTCルールを使うよりも、必要な資料が多いです。

上記、2つの条件を頭に入れておきながら以降の記事をご覧ください。

  1. CTCルールで必要な書類例
  2. VAルールで必要な書類例

1.CTCルールで必要な書類

CTCルールとは、完成品のHSコードと原材料のHSコードに変化があるときに原産品とする仕組みです。そのため、CTCルールの重要な書類は、関税の変更がなされているのか?を示す対比表と、その加工手順を示す製造工程フロー図です。

  1. 対比表(原材料・部品リスト)
  2. 製造工程フロー図
  3. サプライヤー証明書
  4. 価格の根拠を示す書類
  5. 委託生産者証明書
1.対比表

下の図が対比表です。左側に完成品のHSコード、右側に材料のHSコードを一覧にまとめます。その後、左右を「対比」して、HSコードの変化を確認します。

例えば、商品の完成品が「1450.01」。この商品に使われている原材料(部品)のHSコードが「1203.05」、「1301.00」だとします。この場合、原材料と完成品との間にHSコードが変更しているため、原産品として認められます。この変化を書面にしたものが対比表です。(対比表のテンプレートは、こちらからダウンロードできます。)

対比表

VAルールで使うワークシートと、CTCルールで使う対比表は、どちらも原産品判定依頼のときに「日本商工会議所」に必ず提出するべき資料です。具体的には、ウェブ上で原産品判定依頼をした後、メールに添付する方法でワークシートまたは、対比表を送ります。

2.製造工程フロー図

製造工程フロー図とは、工場に納入される部材が、どのような加工を得て「完成品に至るのか?」を示す書類です。一例をあげると….

  1. 客先と打ち合わせ
  2. 部材納入
  3. 部材チェック
  4. 部材の内、Aを旋盤加工、Bを○○加工
  5. 部材AとBを組み付け加工
  6. 完成品の傷チェック
  7. 最終検査&梱包

など、第三者が資料を見ただけで、原料の投入から、完成品の製造までわかる資料にします。また、この製造工程フロー図の重要なポイントは「EPAで認められていない加工作業のみを行っていないのか?」です。

実は、EPAには「加工とはみなされない作業」が決まっています。もし、輸出する商品の加工作業が、加工とはみなされない作業に当てはまるときは、いくら日本の工場で生産していたとしても、協定上の原産品とすることはできません。日本商工会議所は、製造工程フロー図を通して、この加工部分を重点的にチェックします。

製造工程フロー図は、輸出者、製造者、どちらが作成してもいいです。製造工程フロー図のテンプレートを加工して、貴社の工場の実体に合わせて資料に追記していきます。

■製造工程フロー図のポイント

  • 第三者が資料を見ただけで、原料の納入から完成品に至るまでの工程がわかるようにする。
  • EPAで認められていない加工のみを行っていないのか?をチェックしている。

関連記事:製造工程フロー図の書き方

3.サプライヤー証明書

サプライヤー証明書は、原材料を「原産材料」として申請するときに使う書類です。基本的に、CTCルールは、原材料をすべて「非原産」として申請を試みるのが一般的です。非原産として証明を試みた結果、関税分類変更基準を満たせないときに、非原産材料→原産材料上で、サプライヤー証明書を使います。

基本的にサプライヤー証明書は不要。ただし、ケースによっては使う。

特定原産地証明書の取得 サプライヤー証明書のひな形 ダウンロード可能

4.価格の根拠を示す書類

基本的に価格の根拠を示す書類も不要です。ただし、CTCルールを使う上で、変更基準を満たせないときは、次の2つの方法の内、いずれかの救済措置を取ります。

  1. 非原産材料→原産材料にする(サプライヤー証明書を使う)
  2. HSコードの変更基準を満たせないものにデミニマスルールの適用を考える

デミニマスは、完成品に含まれる原材料が僅かであれば、関税変更を無視できる仕組みです。デミニマス適用の基準は、価格または重量など、証明する品目により異なります。どちらを基準にするにしても、それを示す根拠資料が必要です。

仮に価格を基準にするのでれば、その部材を仕入れたときの請求書をエビデンスにします。もちろん、このデミニマスを使わない限り、こちらの価格根拠資料も不要です。

5.委託生産者証明書

生産委託証明書は、製造者であっても、製造者でないときに利用する証明書です。

例えば、A社は製造メーカーとして存在している。ただし、それが登記上のことであり、実際の生産は他社に「生産委託している」ケースなどがありますね。いわゆる「OEM」です。

特定原産地証明書の取得ができるのは、商品の生産者または輸出者です。そのため、どこかの会社に委託生産しているときは、委託先の会社が生産者となり、自社が生産者になれなくなります。この問題を解決するのが「委託生産者証明」です。

委託生産者証明は、自社の監督の下、設計や製造などのすべての指揮監督権を有しているときに限り、生産を委託する側と、委託される側の両方を「生産者」とするための資料です。

一昔前は、この委託生産をするための証明は、とても大変でした。しかし、改正などによって、現在では、生産委託証明書を提出するだけで、委託している会社も「みなし生産者」の立場になれます。

2.VAルールで必要な書類例

VAルールは、完成品の価格の中に「日本で加えた価値が何パーセント以上であるのか?」を基準にする仕組みです。おおむね40%前後を基準としていることが多いです。つまり、日本の工場において、最終完成品価格の内、40%以上を付加していれば、協定上の原産品です。VAルールは、価格を基準にするため、価格を示す根拠資料が必要です。

  1. ワークシート
  2. 製造工程フロー図
  3. 価格の根拠を示す書類
  4. 利益計算書(人件費や製造経費などの計算)
  5. サプライヤー証明書等
  6. 売買契約書(任意)
1.ワークシート

ワークシートは、商品の価格全体と、その価格を構成する内容を記載します。

例えば、外国産材料は●●円、製造に要する人件費、販売管理費などは●●円など、商品を生産するために必要となる原材料費や生産費・人件費等がどれくらい占めているのかを計算します。つまり、こららの「原産部分が一定以上であるのか?」を証明します。計算ワークシートは、テンプレートに必要な部分を変更して作成します。

ワークシート

VAルール ワークシート HUNADE

2.製造工程フロー図

製造工程フロー図とは、先ほどのCTCルールと同じです。EPAで認められていない加工作業だけをしていないのか?をチェックするために作成します。原料の投入から、完成品の作成までの流れが第三者でもわかるように作成します。

3.価格の根拠を示す書類

VAルールは、完成品に占める部材の価格が重要です。「どれだけの非原産部材が使われているのか?」を示すのが控除方式です。この場合は、非原産部材の価格が重要です。

一方「どれだけの原産部材が使わているのか?」を表すのが積み立て方式になります。この場合は、原産部材の価格が重要になります。

このように、どちらの方式を利用して証明するときも、必ず部材価格が重要になります。そのため、この部材価格を示す請求書などを用意します。もし、原産部材であって、自社の工場で部材を生産(内製品)しているときは、次のようにして部材の価格を証明します。

1.完成品の部材として使っている物を生産するときの部材(二次部材)の請求書などを集めます。

2.二次部材を加工するときの加工賃を含めます。

よって一時部材の価格=二次部材の購入費+加工賃となり、一次部材のまとまりが完成品となります。

部材価格の証明方法

1.仕入れ先からの請求書の価格
2.部材を内製しているときは、二次部材の購入費+相応の加工コストの合計価格

4.利益計算書など(任意)

商品を製造したときに、どれくらいの生産費用が掛かったのか? 部材は、いくらかかったのか? 投入した人材の数や生産時間などから人件費などを計算した後、その完成品を売却して、どれくらいの利益がでるのかを計算します。ここで求められる利益は「原産部分」に積み上げられるため、できるだけ正確に行うことがポイントです。

ちなみに、VAルールのワークシートの中に書き込む「利益部分」の数字と、この利益計算書の数字が同じになるようにします。ワークシートの中に記載している数字の根拠として、別に一枚の利益計算書を作成するイメージです。

VAルールは、工場での経費、人件費、利益などを積み上げられます。もし、この部分を積み上げたいときは、利益計算書や製造経費計算書などを別に用意します。

利益計算書

5.サプライヤー証明書(ケースによる)

ワークシートの中に「原産品」として申請する物は、その材料が原産品であることを証明する「サプライヤー証明書」が必要です。サプライヤー証明書は、各材料を供給する業者に頼んで、原産品であることを証明してもらう資料です。そのため、メーカーにとって負担になるため、できるだけ「頼まないようする」のが望ましいです。

では、どのようにすればいいのでしょうか? その秘密は「原産性」にあります。実は、サプライヤー証明書は、商品に使っている部材が日本原産品であることを証明する資料です。つまり「日本原産品でなければ…….」、資料は不要です。

「でも、実際、部品は国内で作られているし….」と考えられましたか? そうですね。たしかに、日本国内で作られていれば、多くの場合は、原産品である可能性が高いです。しかし、だからといって、特定原産地証明書を発行するときに、必ずしも「原産品として申請」しなければならないわけではありません。

実は「原産品をあえて非原産品として申請すること」が認められているのです。つまり、本当は、原産品をあえて非原産にすることにより、サプライヤー証明書の提出を回避するのがポイントです。もちろん、非原産として申請するときは、他の所(人件費や利益など)で、一定の付加価値基準(40%)を満たしていることが重要です。

サプライヤー証明書は、足りない付加価値基準を補うときに必要最小限お願いする書類です。

関連記事:VAルールの混乱を回避!内製品とは?

関連知識:控除方式と積み上げ方式とは?

この他、VAルールには「控除方式」と「積み上げ方式」の違いによっても必要となる資料が違います。控除方式は、商品全体の価格から非原産部分の材料費」を引いていき、残りの部分(原産部分)がある一定の値(閾値)以上である物を原産品として認めることです。

他方、積み上げ方式とは、この考え方とは逆です。日本の原産部分を積み上げていき、ある一定の値以上の物を原産品として認める方式です。商品価格から引くのが控除方式、原材料部分を足していくのが積み上げ方式です。どちらを使えばいいのかは、各協定の本文三章あたりに書かれています。

控除方式での証明

この方式で重要になるのは「非原産品の価格」です。よって、この非原産品の価格を証明する資料(請求書)を用意します。

積み上げ方式での証明

積み上げ方式は「原産品の価格」が重要です。このとき、原産品として、積み上げるべき対象は、その商品を製造したときの人件費、生産コスト、販管費、利益、原産品の原材料費などがあります。

例えば「この商品を作るときの時間は●●時間、投入する人件費の単価は●●、よって製造に要する人件費は●●円かかる」などのように計算していきます。販管費だったら●●円、製造コストは、油代が●●円などです。これらの資料は、第三者からみて合理的な計算に基づいていることが求められます。

ある作業の時間当たり人件費を4000円で計算しているのに、この作業だけ時給10,000円で計算をしているなどが当てはまります。別に作業内容によって、時間当たりの単価を変えることは良いです。しかし、その単価が変わる合理的な理由があるのか?が問われるのです。

6.売買契約書等(任意)

売買契約書は、商品の買い手(輸入者)、売り手(輸出者)、商社、製造者がそれぞれ違うときに使います。売買契約書の目的は、それぞれの関係性を書面によりつなげることです。

例えば、商品の買い手Aと売り手Bが「XXZ」という商品の輸出契約を結んだとします。しかし、売り手であるBは生産者ではないため、国内商社Zから商品を仕入れます。ただし、商社Zも製造しているわけではなく、製造者Cから仕入れた後に、売却しています。つまり、関係性としては、次のようになります。

1.輸入者Aと輸出者Bが売買契約
2.輸出者Bと国内商社が売買契約
3.国内商社と製造者が売買契約

このようなとき、買い手Aから、製造者までが書面上でつながるように、売買契約書などを揃えます。もちろん、立場によっては、売却金額を知られたくないこともあります。その場合は、価格部分を黒塗りにして「誰と誰の契約書なのか?」をわかるようにします。

6.特定原産地証明書の取得方法

特定原産地証明書 取得ステップ HUNADE

「根拠資料の作成も終わった。日本商工会議所には、どのように申請をすればいいのか?」

ここでは、原産性資料の作成後のプロセスを詳しく説明していきます。なお、日本において特定原産地証明書の発行は、次の2つの方法があります。

  1. 第三者証明制度(第一種原産地証明書)
  2. 自己証明制度(第二種原産地証明書)

1.第三者証明制度(第一種原産地証明書)

第三者証明制度は、政府の認定を受けた機関(日本:日本商工会議所)に特定原産地証明書の発行を依頼する制度です。特定原産地証明書は、頭に「特定」と書かれています。この意味は「EPA制度専用の原産地証明書」です。各地の商工会議所で発行する一般的な「原産地証明」とは種類が異なることに注意してください。

日本で特定原産地証明書を発給できる機関は「日本商工会議所」のただ一つ(全国で24箇所)です。

2.自己証明制度(第二種原産地証明書)

自己証明制度は、比較的新しく始まった制度です。この制度は、経済産業省から認定を受けた「認定輸出者」が自ら「原産品申告書」を作成して貨物の原産地を明らかにするものです。「第三者証明制度」は発給依頼をする度に所定の費用を支払わなければなりません。しかし、自己証明制度であれば、この部分をカットできます。

ゼロから覚える自己申告制度とは?TPP・日欧EPAで重要!

1.第三者証明制度によるEPA取得手順

特定原産地証明書を取得するまでの流れは、以下の1~5のステップです。

  1. 日本商工会議所に企業情報を登録
  2. 原産品判定を依頼
  3. 特定原産地証明書の取得
  4. 輸入者(貿易相手)へ送付
  5. 輸入者が現地の税関に提出

日本商工会議所

1.日本商工会議所に企業情報を登録

日本商工会議所では、日シンガポール以外のEPAで使用する特定原産地証明書を取得できます。日シンガポールEPAで使う特定原産地証明書は、日本商工会議所で申し込みます。

特定原産地証明書を発行してもらうために、最初に日本商工会議所に「法人」や「個人」いずれかとして企業登録します。必要な事項を記入してください。なお、ここで登録した情報は二年間有効です。企業登録が完了すると、ステップ2「特定原産地発給システム」に関する情報(ログインURLなど)がわかります。このとき、輸出者と生産者が異なる場合は「特定原産地証明書の申請者における注意事項」の記事も合わせてご覧ください。

2.原産品であるかの判定を依頼

依頼者は、EPA上の原産品であるかを日本商工会議所に判定してもらいます。原産品判定依頼は「特定原産地証明発給システム」から行います。システムからの判定依頼後、原産性を証明する資料(対比表やワークシートなど)を日本商工会議所へ送付します。(判定依頼後、速やかに送付)詳しくは「日本商工会議所への資料送付方法」をご覧ください。無事に判定が下りると「原産品が承認」されます。

関連記事:原産品判定の入力方法

3.特定原産地証明書を発行を申請

承認された貨物について特定原産地証明書の発行手続きをします。このとき、一つだけ注意したいことがあります。それは「輸出者として承認を受けたのか?」「製造者として承認を受けたのか?」です。もし、あなたが製造者として承認を受けた場合は、輸出者が別にいらっしゃるはずです。この場合は、自ら特定原産地証明書を発行する必要はありません。特定原産地証明書を必要としている輸出者に対して「生産者同意通知」をします。

生産者同意通知とは、製造者の方が取得した原産品情報を輸出者に対して使わせることに「同意」することです。これによって、輸出者の方は、原産品判定を行わず、すぐに特定原産地証明書を取得できます。

生産者同意通知は、少し勘違いしやすいことがあります。それは「輸出者に生産者同意通知をすることによって、日本商工会議所に提出した情報が筒抜けになるのでないか?」ということです。この点は、一切心配ないためご安心下さい。

輸出者は、生産者が提出した情報を一切見ることはできません。原産品承認されたという情報(情報の中身は見えない)だけを使って、特定原産地証明書を取得できるだけです。審査機関は、およそ三営業日です。

関連記事:特定原産地証明書の発給申請の方法

発給申請に関する3つの変更点 更新:2019年4月1日~

1.事前振込等連絡票のファックス→廃止
2.郵送方法の変更 代引き書留→レターパックプラスに変更
*取得代金+510円で送付可能
3.手数料の支払い方法にクレジットカードを追加

関連ニュース:「重要」日本商工会議所・EPA判定資料の規制強化

4.外国にいる輸入者へ送付

発給された特定原産地証明書は、相手国の輸入者が必要とします。一般的にこの書類は貨物とは別に送付します。クーリエ、EMSなどを使い「素早く、かつ特定できる方法」で送付します。間違っても普通郵便などで送付をしてはなりません。

5.輸入者が現地の税関へ申告する際に提出して免税措置を受けます。

輸入者は、あなたから送られてきた特定原産地証明書を現地の税関に提出します。これによって、EPA税率を適用した輸入ができます。

2.自己証明制度による方法

2020年現在、日本は、日欧EPA、日豪EPA、日米貿易協定を結んでいます。これらの協定は、これまでの第三者発給制度による原産地証明書の入手ではなく、自己証明制度の仕組みが取り入れられています。「自己証明」との名の通り、ご自身により「これは原産性があります!」と証明をします。

例えば、日欧EPAの場合は、次の手順で自己証明により原産性がある商品だと宣言します。

  1. 輸出者が輸入国側のHSコードから原産地規則を調べる。
  2. 根拠書類を作成する。
  3. 輸出インボイスに「原産性の申告文を追記」する。
  4. インボイスの原本を輸入者に送付する。
  5. 輸入者は、輸出者の宣誓文入りのインボイスを税関に提出する。
  6. 5によりEU側の関税が免税又は減税される
  7. 日本側で2の根拠書類を5年間保管しておく。

上記の通り、第三者が全く仲介せず原産性を証明する仕組みです。

特定原産地証明のよくある疑問

Q.所要日数は?

最初の企業登録から、特定原産地証明書の取得までには、およそ3週間~4週間かかります。そのため、今すぐEPAを利用する予定がない方であっても、まずは企業登録だけを済ませておくことをお勧めします。

Q.特定原産地証明書の取得には、お金はかかりますか?

申請料金が必要です。基本料金の2,000円に加えて、アイテム数に応じて加算されています。

Q.企業登録をするときの書類は?

法人 登録申請書、履歴事項全部証明書
個人 登録申請書 戸籍抄本または住民票 印鑑証明書

Q.本当は日本の原産品でないのに、偽って申請することはできますか。

可能かどうかというと、仕組み上は可能です。ただし、特定原産地証明書は、過去にさかのぼって調査されます。数年前のことであっても、偽り行為が判明した場合は、重大なペナルティが課せられます。

他の日本の輸出者に迷惑をかけるだけでなく、国と国の国際問題にもなりかねない重大な違反行為に当たります。聞くところによると、過去に免税を受けた総額の5倍ほどのペナルティを課せられたケースもあるそうです。

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ここのポイント
  • 判定依頼をするときは根拠書類が必要
  • 根拠書類は、利用するEPAで異なる。
  • 証明方法は2つある。第三者証明制度と自己証明制度
  • 今後のEPAは、自己証明制度が主流

7.特定原産地証明書を取得した後のお話

ここでは、特定原産地証明書の取得後について詳しく説明します。例えば、保管期間など。

特定原産地証明書の取得後の原本と関連資料

実際、特定原産地証明書の一連の取得行為をすると、手元には、次の2つの書類が出来上がります。

  1. 特定原産地証明書の原本
  2. 証明書取得時の関連資料

特定原産地証明書の原本は、輸出先(貿易相手)に送ることにより、相手国側で関税の削減を受けられます。一方、取得時の関連資料とは、特定原産地証明書を取得するときに、日本商工会議所へ提出した資料を指します。(作成のみ未提出も含む)以下で、これらについて詳しく説明していきます。

特定原産地証明書の原本の取り扱い方法

特定原産地証明書の原本を取得したら、それを貿易相手に送付します。

  1. 日本側で取得
  2. バイヤーに送付
  3. バイヤーが輸入国税関に提出
  4. 関税の減免等を受けられる。

特定原産地証明書の送付方法

一般輸出の場合

コンテナ(FCL)やコンテナ未満(LCL)を使って輸出するときは、特定原産地証明書の原本をEMS(国際郵便)などを使って貨物とは別口で送付します。一般的な輸出の場合、EMSなどを使って、一部の貿易書類(B/Lなど)を送付する方もいらっしゃるはずです。あれらの書類と同じように、貨物とは別に書類のみを送ります。書類を送るときは、必ず特定原産地証明のコピーをした上で、表題をつけて送付します。

紛失時に責任の所在が明確になるように「送った事実を後から追跡できるようにすること」がポイントです。具体的には、EMSのトラッキングナンバー、インボイスナンバーなどを別紙に控えておき、上記の特定原産地証明書のコピーと一緒に保管します。このようにしっかりと「送付したことを証明」できようにします。

国際郵便等の場合

国際小包などに入れて輸出するときは、税関告知書(いわゆる送付状)などを保管する透明な袋の中に「特定原産地証明書の原本」を入れておきます。国際郵便の宛先部分、中に入れている商品名などが「特定原産地証明書と一致している」ようにしましょう!送り状を作成するときは、宛名部分や送付する商品詳細部分を十分に気を付けて記載してください。

以上が特定原産地証明書の原本の取り扱いに関することです。要は特定原産地証明書の原本は、相手側が必要としていること。送るときは、こちらが原本を送付したことを証明できるように送ることが重要になります。それが達成できるのであれば、送る方法などに制限はありません。

資料の保管期間

特定原産地証明書を取得するときは、日本商工会議所に対して、ワークシート(VAルールの場合)、または対比表(CTCルールの場合)を提出します。また、これとは別に、作成はするけれど、日本商工会議所へ提出しない資料があります。

例えば、原材料リストや生産工程フロー図、サプライヤー証明書などがそれにあたります。原材料リストとは、その完成品に使われているすべての部材(原材料)を一つずつリスト化した物です。

生産工程フロー図とは、どのような工程を経て商品が完成したのかをまとめた資料です。これらの資料は、作成する必要がありますが、日本商工会議所へ提出する必要はありません。ただし、これらの資料は、次の期間、貿易書類と合わせて保管する必要があります。

5年間保管する義務がある協定

メキシコ、オーストラリア、モンゴル、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、フィリピン、インド、ペルー、TPP、日欧EPA、日米貿易(不明)

3年間保存する義務がある協定ブルネイ、アセアン、スイス、ベトナム

保管する資料の例

特定原産地証明書を取得したときの全ての関連資料は、5年、または3年間保管します。具体的には、次の書類を一式にして保管しておくことが望ましいです。

一般輸出インボイス、パッキングリスト、B/L、ワークシート又は対比表、原材料リスト、生産工程フロー図。その他、ワークシートなどの根拠を示す書類
小包による小さな輸出インボイス。パッキングリスト、EMS送付状、ワークシート又は対比表、原材料リスト、生産工程フロー図、その他、ワークシートなどの根拠を示す書類

保管義務を怠ると、どうなるの?

特定原産地証明書は、取得から数年後に相手国から「事後的な確認」が行われることがあります。輸出者は、そのときに説明できるように資料を保管します。もし、明確に答えられないときは、これまで認めてきた関税削減の取り消しや、何らかのペナルティが課せられる可能性があります。

相手国が関税の免除を与えているのは「相手国の関税収入を自ら捨てていること」と同じです。関税の収入を自ら捨てているのだから、本当に「関税を捨てのるに値する貨物であるのか」を厳しくチェックしています。当然、様々な部分で厳しく監視されていると理解しておきます。甘い考えで特定原産地証明書を不正に取得して関税の減免を受けることは「相手国にケンカを売る」と同じです。

ここのまとめ

特定原産地証明書を取得し終わった後は、貿易相手に原本を送付します。送付方法は、一般輸出の場合、貨物とは別にEMSなどを使って送付します。国際小包による輸出であれば、書類を保管する透明な袋の中に入れて送付します。どちらの場合でも、必ず特定原産地証明書のコピーをした後に送付します。また、特定現地証明書を取得するときの資料の保管にも気を遣います。

特定原産地証明書を取得するときの関連資料は、協定ごとに定められている期間、保管することが決められています。3年間、または5年間です。特定原産地証明書を取得したときは、これらの機関、インボイスに始まる関連資料を保管するようにしておきましょう!

8.特定原産地証明書の問題点とは?

特定原産地証明書は、受益者にメリットがある仕組みです。そのため、取得に関わる費用等は、輸入者側が負担するべきだとの考え方もございます。この他、何らかの理由により、輸出後に証明書が欲しいと言われることがあります。この「遡及発給」の点も合わせてご紹介します。

  1. 特定原産地証明書の受益者は輸入者
  2. 遡及発給とは?

特定原産地証明書の利益を受ける人?

輸出者は特定原産地証明書を取得するために様々な苦労をします。しかし、実際に関税削減の恩恵を受けられるのは、輸入者側であるため、輸出者は、特定原産地証明書の取得の手間だけがかかります。つまり、輸出者にとって、特定原産地証明書の取得メリットは、ゼロに近いです。もちろん、ここで言うゼロとは、関税削減による「オーダー数増加など、副次的な効果」を含めているわけではありません。あくまで取得することによる「直接的な利益」のことです。

では、この場合、どのようにすれば、お互いメリットがあるようにできるのでしょうか?

仮のお話として、特定の国との間で「輸出入」の取引があるのであれば「お互い様」で妥協は可能です。しかし、相手と「輸出取引だけしている」となると、あなたは、特定原産地証明書の取得の苦労ばかり負わされます。そこで一つの方法として、取得に関わる費用等を請求するなどです。

例えば、証明書を取得するためにHSコードの採番に5万円。保存書類を整えるのに3時間かかったのなら…

50000円+4000×3=62000円を輸出者に負担してもらうなどです。つまり、逆に言うと、この場合は、62000円以上の関税削減効果がない場合は、あえて取得を諦めてもらうことも一つの方法です。

特定原産地証明書の遡及発給とは?

EPAを利用するときの特定原産地証明書は、貨物を船積みするまでに取得します。しかし、中には、船積み間際になって、バイヤーから「特定原産地証明書が欲しい」と言われることがあります。一般的に特定原産地証明書を取得するには、新規取得でおよそ3週間ほど、二回目以降の取得で3~5営業日ほどかかります。取得には、以外に日数がかかります。

そこで便利な制度が「遡及発給(そきゅうはっきゅう)」です。遡及発給とは、貨物の船積み後、具体的には、B/L上の出港日を過ぎている貨物に対して、特定原産地証明書を発行することです。この遡及発給の仕組みを利用すれば、とりあえず貨物は先行して輸送、書類は、後追いで提出できます。すでに日本から離れており、貨物が到着するまでに時間がかかるときに有効です。

ただし、遡及発給は、EPAの制度上、存在はしていても、実務的に取り扱っていない現地税関も多いです。そのため、実際に遡及発給をするときは、輸入者を通して、現地税関に対して「遡及発給した特定原産地証明書を認めてくれるのか?」を確認してください。もし、書類より貨物が先に着いたときは「輸入申告を行わず」現地の保税地域に留め置きます。このとき、デマレッジ(保管料金)が発生するときは、それらを含めて証明書を取得するのかを検討します。

遡及発給の流れ
  1. すでに貨物が日本から離れている
  2. 日本商工会議所に対して遡及発給の申請をする
  3. 特定原産地証明書原本の発行が完了したら、相手に送付する
  4. 輸入者は、現地税関に対して「遡及発給された」特定原産地証明書を提出する。
  5. 無事に認められると、免税で輸入ができます。

関連記事:特定原産地証明書の遡及発給とは?

ここの要点
  • 特定原産地証明書の利益は輸入者にある。
  • お互いに話し合いをし、取得費用等について調整をするといい。
  • 輸出後でも一年以内であれば、遡及発給できる。

9.商品にかかる関税1%の重みとは?

インドネシア向けに日本酒を輸出するときは、およそ「90%」の関税がかかります、これは、100円の商品を購入したとすると、およそ90円の税金がかかることと同じです。このような極端に高い関税率は抜きにしたとして、相手国における関税の有無は、現地の輸入原価にどのような影響を与えることになるのでしょうか?

一般的に外国へ商品を輸出するときは、輸入する相手が関税を支払います。

例えば、あなたが日本のAさんであり、外国のBさんに品物を輸出しているのであれば、Bさんが関税を支払う義務を負います。では、このとき、Bさんが支払う関税額は、どれくらいになるのでしょうか? 支払うべき関税額の根拠は、課税価格と関税率の2つにあります。

課税価格とは、決められた関税率をかける母体になる数字です。100円の商品に対して10%の消費税がかかるのであれば、この100円が課税価格です。この課税価格は、貿易取引では、商品の価格+送料+その諸経費を合算した物とされています。よって、貿易相手の立場で考えてみると「商品価格+日本からの輸送代金+保険代金」が課税価格です。

次にその課税価格に対して決められた関税率をかけます。この関税率は、商品ごとに細かく決められており、輸入する商品に最も適した関税率を適用します。外国税関の関税率は、「ワールドタリフ」(登録方法)で調べます。これで関税額を計算するための2つの情報(課税価格と関税率)がそろいました。

実際に支払う関税額を計算するときは「課税価格×関税率」です。では、課税価格と関税率の変化は、商品の輸入原価にどのようなインパクトを与えるのでしょうか?

課税価格が大きい場合

かける関税率は同じであり、掛けられる課税価格が変化したときを考えてみます。

例えば、課税価格が10,000円、課税価格が100,000円、関税率は5%だとすると、納める関税額は以下の通りです。当然ですが、同じ関税率であっても、それをかける課税価格が大きくなるほど、支払うべき関税額は大きいです。

課税価格関税率関税額
10,000円5%500円
100,000円5%5000円
1,000,000円5%50,000円

次に課税価格は100,000円で、関税率が10%の場合と、5%の場合を考えてみます。課税価格は、同じであっても、かける関税率が違うことでも納めるべき関税額が大きくことなることがわかります。この2つの事例から、支払うべき関税額は「課税価格」と「関税率」に大きな影響を受けます。

課税価格関税率関税額
100,000円10%10,000円
100,000円5%5,000円
100,000円15%15,000円

では、最後に課税価格が同じであり、かける関税率が1%違うだけで、支払う関税額は、どれだけ変わるのかです。

課税課価格が1%変化するごとに、支払うべき関税額は、およそ10000円変化しています。ただし、この10000円は、あくまで「課税価格が1,000,000円のとき」の変化です。仮に課税価格が500万円であれば、この5倍の変化があります。つまり、課税価格が大きくなればなるほど、関税率1%の変化による影響を強く受けます。

先ほどから1%単位の変化のことをお伝えしていますが、実際、EPAを利用することによって、どれほどの関税率を削減できるのでしょうか? もちろん、物によってもことなりますが、20%近い関税率が一気にゼロになる可能性もあります。数パーセントどころの変化ではなく、一気に10%以上が消えることも珍しくないのです。

課税価格関税率関税額
1,000,000円10%100,000円
1,000,000円9%90,000円
1,000,000円8%80,000円
この記事の要点
  • 支払う関税額は 課税価格 と 設定されている関税率に大きな影響を受ける。
  • 課税価格が大きくなればなるほど、関税率1%の変化は大きい。
  • EPAを利用すると、一気に10%以上もの関税率を削減できる。
  • 貿易相手が支払う関税額に注目。貿易相手は、あなたから購入した商品を輸入するときに、指定の関税額を支払う義務があります。この関税額は、商品の価格と、商品ごとに設定されている関税率により決まります。商品の価格(課税価格)が大きくなればなるほど、支払う関税額に大きな影響を与えます。また、それとは別に関税率も重要です

11.EPA活用のモデル

EPAの仕組みを利用すると、どのような貿易モデルを作れるのか? ここでは、この部分について詳しく考えてみます。

例えば、日本からタイに向けて輸出すると、本来は20%の関税がかかる商品があるとします。しかし、日本とタイとのEPAを活用すれば、この20%が一気にゼロになれば、タイ向けに輸出しているというより、日本国内へ販売していることと同じです。もちろん、物によっては、関税以外の障壁になっている部分もありますが、基本的には、関税の撤廃=国と国との経済的な壁がなくなると考えて良いです。実はそれだけではありません。

EPAは、関税以外にも通関制度や検疫制度などにも統一した規格を適用しています。また、各国の公共事業に外国企業の参入を認めたり、人的な交流が活発になるように労働ビザの発給条件の緩和などをしたりしています。EPAは、関税以外にもあらゆる部分で、自由化を推し進めます。これらは「なるべく壁がない経済的な交流」を実現するための政策といえます。

ここまでの内容をまとめると、

  • これからは、国単位から「圏単位」に思考を広げる必要がある
  • 関税以外のあらゆる部分で自由化の波が押し寄せている

ということになります。では、私たち日本企業は、このEPAの状況を考えて、どのような行動をしていけばいいのでしょうか? どこかの業界団体のように「EPA脅威論」を声高に叫んでいればいいのでしょうか? 違いますね。カタツムリのように守りに入るのではなく「どのように、EPAを活用するのか?」これを考えることに尽力すべきだと考えます。

少子高齢化、国内市場の縮小が進んでいる日本を考えれば、EPAは既定路線です。「反対、反対、反対」と叫んでいても、制度はゆっくりと確実に実施されています。それに対して、一業界が反対を示していても「無意味」なのです。いつまでも既存の甘い蜜を吸い続けるのではなく、新しい変化を積極的に受け入れていただきたいと考えます。

さて、先ほどから申し上げている通り、当サイトはEPA脅威論ではなく、EPA活用論を述べていきたいと考えております。EPAの関税ゼロで貿易ができるメリットを考えた上で、現状、考えられるビジネスモデルをいくつか考えてみました。

1.他国の部材を取り寄せて日本で生産

まずは、EPA締約国の部材などを取り寄せて、日本で生産するモデルです。完成品の価格を引き下げて、日本国内市場へ供給できます。多国間EPA(日アセアン)であれば「累積」を活用して、日アセアンEPA締約国の部材+日本の部材で生産した物をEPA締約国へ販売もできます。部材の調達から完成品の販売まで域内で完結しているため、関税等はかかりません。

2.日本の部材を他国へ送り、他国で生産

完成品の中でも重要なパーツを日本で生産して、その他の部分をEPA締約国で生産するモデルです。このモデルの場合、送った相手国が締結しているEPAにも注目する必要があります。

例えば、タイであれば、日本以外にも中国とEPA協定を結んでいます。したがって、まずは日本から「日タイEPA」を使って部材を輸出します。タイの工場で完成品にしたものを「タイと中国のEPA」を活用して中国へ輸出するモデルなどが考えられます。これであれば、日本からタイへの部材供給時、タイから中国への完成品の輸出時ともに関税削減の恩恵を受けられます。

タイからEPA輸出できる国は多いため、実際に行うときは、輸出する先のマーケットのニーズをしっかりと汲みとり、適切な輸出先(タイ発)を探すようにします。要は、必ず「日本ありき」の貿易スキームは、すでに時代遅れになっているということです。部材の調達先、完成品の輸出先は、EPAベースで無限に存在していることがわかります。

3.EPA域内で生産した完成品を日本へ輸入

これは、かなり単純なモデルです。いわゆる日本とEPAを締結している国で生産された完成品をEPA輸入することを指します。特に日本では、商品によって高額な関税率が設定されている物ががあります。あえてそれらの高関税品を狙って、EPA輸入すると、何かしらの扉が開けるかもしれません。

4.部材をEPA域内にある別の国へ輸出して、そこからEPA輸出

これから結ばれるであろう多国間EPAのときに実現しそうなモデルです。いわゆる国をまたぐ「OEM(製造業でありながら、製造設備をもっていない会社が、他社に製造を委託して生産する方法)」のことを言います。

例えば、日本は、A国、B国、C国、D国と多国間EPAを結んでいるとします。この場合、日本を含めて、A国~B国は「域内」という概念になります。これらの国では、基本的に関税等はかかりません。そのため、それぞれの国の強みを生かして、一つの製品を完成させられます。

日本は高度な先端部材の開発を得意としています。しかし、人件費が高く、世界市場の供給する上で、価格競争で負けてしまいます。そこで、人件費が安いC国の工場に部材を送り、その工場で完成品を生産します。次に、この商品を購入してくれそうな国がどこなのか?を考えます。様々な国がありますが、域内でいうと、国民所得が高いB国が有力になりそうです。そこで日本の会社は、C国からB国へ輸出して販売しています。

いかがでしょうか? この部分をもう一度まとめると、以下の通りです。

それぞれの国を部材供給元、生産国、消費国と考えて、それらを域内で完結させるモデルです。もちろん、それぞれのポジションにあたる所が複数あっても構いません。それぞれの地域における得意分野を考えて、最適な物を最適な場所に移動させることが最も重要です。当サイトでは、これを「国際OEM依頼モデル」と呼んでいます。

日本先端部材の開発を得意としている。しかし、人件費が高い
C国失業率の上昇、余剰の生産工場により生産コストが安い
B国域内で最も国民所得(可処分所得)が高く、市場が広がっている。消費地としての魅力が大きい

EPA輸出

5.EPA域内の外国から生産を受託

日本には、中小を含めて様々な企業があります。それぞれの企業は独自の加工技術を持っていますが、それらがうまく活用されていない現実があります。単なる大企業の下請けだけではもったいない企業は、たくさんあるはずです。そこでこれらの余剰生産能力を活用して「EPA域内にある海外企業から生産を受託するモデル」が考えられます。本当は、このように加工したいけれど、精度が求められるから日本で生産したい! そんな外国企業がターゲットです。

EPA域内であれば、日本へ送るときも、日本から出すときも関税という障壁はありません。あとは、輸送費用と加工賃などの兼ね合いから、商売になるのか、ならないのかを判断すれば良いだけです。EPA域内の概念では、このような生産モデルを考えることができます。したがって、もし、この記事をお読みになっている中小企業の方は、なるべく早い段階から、自社の技術を英語ベースでアピールするサイトを製作されることをお勧めします。

当サイトでは、このビジネスモデルのことを「国際OEM受託モデル」と呼んでいます。

6.他国の農産品を輸入して、日本市場へ流します。

まずは、最も単純な輸入モデルです。EPA域内で生産された農産品であり、日持ちして、関税削減効果が高い物を輸入します。国内産の物の価格が高い物がねらい目です。

7.日本の農産品を輸出して、海外市場へ流します。

こちらも単純な輸出モデルです。現状、日本から盛んに農産品を輸出している先の国は、台湾と香港です。理由は、農産品に対する検疫制度です。また、理由は不明ですが、オマーンにも日本の農産品が輸出されています。一つ一つがかなり高額で輸出されているため、気になる方はお調べください。

現状のEPAの域内で考えると、農業強国ばかりであり、あまりEPA輸出モデルを考えることはできないです。現実的には、このモデルは厳しいと思います。

8.グローバルファーマー生産モデル(海外向け)

EPA域内にある国で土地を借りて農産物を生産するモデルです。日本の農業技術を使い、他国の安価な労働力を活用して、高品質な農産物を安く生産します。生産した農産物は、日本を含めて、同じEPA域内へ輸出できます。日本の閉鎖的な農業環境を考えれば、これからは、このようなモデルが十分考えられます。そのため、農産物によっては、EPA域内生産品と大きくバッティングする可能性もあります。しかも、日本の農業技術を使った他国産の農産物です…汗

9.グローバルファーマー生産モデル(他国の国内向け)

先ほどのケース8と同じですが、主な販売先のターゲットを進出した先の国内市場に向けています。このモデルの場合、やはりある一定のレベルで国内市場が成熟している必要があります。また、現地で販売されていない農産物、かつ需要がある物を見極めた上で、生産する力が求められています。特に世界的に問題となっているのは「塩害」です。塩害により、農産物の生産に適していない土地なども考えられるため、十分に検討する必要があります。

10.グローバルファーマー共同事業モデル

おそらく農業分野でEPAを活用するときの最高の形だと思います。EPA域内にある他国の農業事業者と手を組み、市場情報、資材調達、技術情報の共有を行います。

例えば、日本市場で「●●が高値傾向にある」という情報を共有して、提携している農家から農産物を調達して、日本市場へ流すなども考えられます。単なる農家ではなく、農産品取引も兼ねて行うグローバルファーマーの概念です。その他、農業で必要な資材の共同購入、技術情報の共有などを行うことによりEPA域内にあるグローバルファーマー同士が高度に連携する姿が考えられます。必要であれば、農業技術のコンサルなどを行い、コンサル契約を結ぶこともできます。

まとめ

EPAは、既存の貿易の概念を大きく変える力を持っています。まだ、表面的に大きな動きにはなっていませんが、既存の当たり前が「当たり前でなくなる日」は遠くないです。特に経済的な部分で国という概念から「経済圏」という概念に移行したことは、大きな変化です。この記事では、そんな経済圏へと移行したときに考えられるEPA活用ビジネスモデルを10個ほどご紹介していきました。皆様のビジネスヒントになることを祈っております。

2020年6月27日
by HUNADEチーム

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