WTOとFTA(EPA)は矛盾していないのか

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世界の貿易に関するルールを定めるのが「WTO=世界貿易機関」です。2016年現在、日本を含めて161カ国が加盟しています。「世界中の貿易を公平にする」を目的として、具体的なルールづ作りを行っています。加盟国は、世界貿易機関で決められたルールに基づいて、自国の関税などを設定したり、関税対抗措置(セーフガード)を発動したりします。WTOのルールがあるため、世界貿易の秩序が守られているといえます。

例えば、2010年9月の日本政府の「尖閣諸島国有化」における中国政府の対抗措置として、レアアースの輸出規制に踏み切りました。一見、輸出をしている中国側の判断であるため、特に問題がないような気がします。しかし、WTOのルールからいうと、この行為は明確な違反に当たります。

WTOのルールの中には「明確で合理的な理由がないにも関わらず輸出規制をしてはならない」と決められいます。つまり、2010年9月に発生した尖閣諸島の国有化を理由として、レアアースの輸出規制を行ってはならないことになります。これは、国家によって貿易取引を自由に制限されると、世界経済にとってマイナスになるからです。

このように、WTOは国家間の貿易取引を円滑な物にするため、さまざまなルールを制定しています。この記事では、WTOのルールよりもう少し大きな枠組みである「理念」の部分と、EPA(経済協定)は矛盾していないのかについて説明をします。

WTO(世界貿易機関)とEPAの兼ね合い

世界貿易機関では、国家間の貿易に関するルール作りをしています。加盟している各国は、このルールに沿うように関税を設定したり、輸入規制(数量制限)などを行っています。そのため、WTOでのルールは、各国家における貿易政策の「骨組み」といえる根本的な存在になります。

では、なぜこのような世界貿易機関が誕生したのでしょうか。実は、それを知るには1930年代までさかのぼります。

当時、「世界恐慌」と呼ばれる大不況時代でした。このとき、世界の各国は、自国の産業を保護するために外国製品(第三国)に高い関税を設定していました。自国と自国の植民地、協定関係にある国との間だけを有利にしていた為「ブロック経済」と言います。これが世界中で行われたため、どんどんと外国間の経済交流が減ってしまいました。

そして、このようなブロック体制が、有名な「第二次世界大戦」の一因になってしまったのです。もちろん、戦争に至るまでには、これ以外にも要因がいくつか存在します。しかし、お金(経済的)の行き詰まりが、武力による衝突を引き起こす大きな原因になることは間違いありません。

そこで、このようなブロック経済的な政策をお互いに解除して「自由で活発な貿易取引を行うこと」を目指して設立されたのが「WTO(世界貿易期間)」です。正確にいうと、前段階として「ガット」などが存在しますが、その点は重要ではありませんので省略をします。

WTOは、自由で活発な貿易取引を目指します。他国を排除するようなルールを作ってはならないことになっています。

EPAとは何か

自由で活発な貿易取引を目指したのがWTOです。しかし、近年のTPP(環太平洋パートナーシップ)やEPA(経済連携協定)と呼ばれる「特定の国との経済的な結びつきを強める制度」が次々と締結されています。EPAとは、お互いの国の関税などを撤廃しあったり、人的交流、投資に関するルールなどを「加盟国内に限り」恩恵を与える制度です。これが世界中のさまざまな国同士で自由に行われています。

しかし、ここで「WTOとEPAが矛盾しているのではないか」という疑問が浮かんできます。

先ほど、WTOは「世界中の国との間で自由で活発な貿易取引を目指している機関」と説明しました。一方、EPA(経済連携協定)は「加盟国内に限り」恩恵を与える貿易上の提携になります。EPAという制度を詳しく知らなくても、WTOの精神と矛盾していることがわかります。

なぜ、WTOはこのような矛盾を認めているのでしょうか。それは「WTOの決められる限界」が関係しています。

WTOの決議はコンセンサス方式!スピードダウン

国際貿易の大元になっているWTOのルールは、経済力などに関係なく「コンセンサス方式」で決まります。これは加盟している国の中で反対の意思表示をしない限り、成立する方式です。

例えば、1クラス40人の教室があるとします。この教室内のルールを決めるときは、一般的な決め方であれば「多数決」を採用します。多数決は、賛成と反対の人数を数えて、どちらか多い方の意見でまとめることを言います。

一方、コンセンサス方式とは、このような数による物事の決定は行われません。WTOに加盟している国々の中で、一国でも反対の意思表示をすると、その議案は成立しないことになります。

2016年現在、世界貿易機関の加盟国数は161です。これらの国は、経済の規模、発展具合、貧富の差など、数えられないほどの「格差」があります。したがって、それぞれの国では、それぞれの思惑があるため、大多数が賛成でも少数の国が反対をして「不採用」になることが多くなりました。これがWTOの限界と言われる問題点です。

あまりにも巨大な組織になりすぎたため、コンセンサス方式でのルール作りが不可能になりつつあります。そこで、このような現実的に発生をしている「決められない状態」を少しでも打破するために設けたのが「EPA(FTA)」です。

少しずつ自由化の枠組みを大きくする戦略

EPAは、特定の加盟国内の経済的交流を活発にするための優遇措置です。2016年現在、日本は16の国と地域との間にEPAを締結しています。もちろん、これは日本だけのお話ではなく、各国においてそれぞれ締結されている状況です。

例えば、タイのEPA(経済連携協定)の状況を確認してみます。日本以外にも8カ国とEPAを締結していることがわかります。日本は15カ国、タイは8カ国、オーストラリアは○○国など、それぞれの国の思惑によって、EPA(FTA)が次々と締結されています。

タイ日本
オーストラリア
ニュージーランド
中国
インド
カンボジア
ラオス
シンガポール
ペルー

 

この状況を見ると、第二次世界大戦のきっかけとなった「ブロック経済」と同じように感じてしまいます。しかし、今日のEPA(FTA)は、どんなに経済規模が小さな国であっても「自由に特定の国とEPAを締結」できます。

それぞれの国が先行して経済協定を締結をしていけば、結果として世界の国々の中で「自由貿易圏」が合わさっていき、最終的には、世界中で自由な貿易を実現するWTOの理念に沿うようになると考えられているのです。

まとめ

WTOとEPAは、一見すると矛盾しているように感じます。しかし、これは「自由貿易圏を実現する」目標に達するまでのプロセスが異なるだけです。なぜ、このようなことになったかのいきさつは、WTOのルール決めの「限界点」を指摘しました。加盟数が161国であるうえ、物事を決定する「コンセンサス方式」が大きな問題です。この決められない現状を打破するのが、特別なルールであるFTAやEPAです。

EPAは、二国間など、特定の国との間に関税の撤廃などによる恩恵をあたえる物です。このEPAは世界中の国々が、自国の利益に関係する国との間に自由に締結をしているため、結果として自由貿易市場を推し進めることになります。

世界中で一気に自由化を進めることは難しい、だからこそ、まずは少数の国同士で自由な経済を構築していこうとしているのです。

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