海上輸送の基本
国際物流における海上輸送の重要性は年々高まっています。日本の貿易額の99.6%が海上輸送によって担われており、企業の国際展開において欠かせない輸送手段です。
本記事では、輸出入における海上輸送の基礎知識から輸出・輸入業務の流れまでを詳しく解説します。FCL・LCL・フェリーなど様々な輸送形態の特徴や、通関手続きの具体的なステップを理解することで、効率的な貿易オペレーションの実現に役立つ情報を提供します。
種別 | 積み地 | 揚げ地 | 品目 | 輸送モード |
法人 | 横浜 | オーストラリア | 農機具 | FCL |
法人 | 関西空港 | 名古屋 | 飲料水 30トン | 相談希望 |
法人 | 川崎 | ロンドン | 一般雑貨 100kg | 航空輸送 |
法人 | 羽田空港 | チャンギ空港 | 調理器具 | 相談希望 |
法人 | ブラジル | 横浜 | 化学品 | ケミカルタンカー |
法人 | 横浜 | オーストラリア | 農機具 | FCL |
法人 | 関西空港 | 名古屋 | 飲料水 30トン | 相談希望 |
法人 | 川崎 | ロンドン | 一般雑貨 100kg | 航空輸送 |
法人 | 羽田空港 | チャンギ空港 | 調理器具 | 相談希望 |
法人 | ブラジル | 横浜 | 化学品 | ケミカルタンカー |
海上輸送の主な種類
海上輸送には、定期船、不定期船があります。また、その中にいくつかの種類があります。この内、この記事では、定期船かつコンテナ船又はフェリー船に関する知識を説明していきます。
- FCL(コンテナ船)
- LCL(コンテナ船)
- FCL&LCL(フェリー船)
FCL(フルコンテナ)輸送
フルコンテナロード(FCL)輸送は、一つのコンテナを一社で使用する輸送方式です。20フィートや40フィートなどの標準的なコンテナを使用し、大量の貨物を一度に輸送する際に適しています。
主なメリット
- 貨物の安全性が高い
- 他社の貨物との混載がないため、時間調整が容易
- 大量輸送時のコストメリットが大きい
主なデメリット
- コンテナの容量を満たさない場合でも定額料金が発生
- 小口貨物の場合、コスト高になりやすい。
- 海上コンテナの積載量を計算する方法 使えないスペースを考慮!
- 海上コンテナの種類 サイズ、内寸、㎥(容積)など
- 冷蔵・冷凍品ならリーファーコンテナ
- 20フィートと40フィートはどちらがお得?
- フレキシタンク(バッグ)コンテナの魅力
LCL(混載)輸送
レスザンコンテナロード(LCL)輸送は、複数の荷主の貨物を1つのコンテナに混載して輸送する方式です。小口貨物の輸送に適しています。
主なメリット
- 貿易初心者の方に使いやすい。
- 使用したスペース分の料金のみ発生
- 小口貨物でも海上輸送が可能
- 初期コストが比較的低い
主なデメリット
- 料金が1立方メートル単位でかかる。
- 他社貨物の状況により、スケジュールが変動する可能性
- 荷役作業が増えるため、貨物破損のリスクが上昇
- FCLと比較して単位あたりの輸送コストが高い。
FCL(コンテナ輸送)とLCL(混載輸送)のメリット・デメリット
フェリー輸送もあり!
フェリー輸送は、主に近距離の国際輸送で利用される方式です。トラックやトレーラーごと船舶に積み込んで輸送します。
メリット
- ドアツードアの一貫輸送が可能
- 積み替え作業が少なく、貨物へのダメージリスクが低減
- 比較的短い輸送時間
- 定時運行率が高い。
デメリット
- 長距離輸送には不向き
- 特定航路のみの運航
- 安価で輸送できること
- 信頼して輸送できること
- 貨物ダメージを少なくできること
- 商品が時間と共に劣化等をすること
- 納品先の納期が厳しいなど
輸送日数&費用 | 最適な利用 | |
クーリエ | ★☆☆☆☆☆ |
|
航空便 | ★★☆☆☆☆ |
|
DIGISHIP Super Express | ★★★☆☆☆ |
|
DIGISHIP | ★★★★☆☆ |
|
コンテナ船 | ★★★★★☆ |
|
輸出、輸入業務の種類
輸出と輸入には、次の業務があります。大別すると、商流と物流の2つがあります。
商流とは、商売上の書類(契約書等)を指します。他方、物流とは、通関や船積書類などです。これらを様々な場面で処理をしていき、滞りなく貨物が到着するようにするのが貿易実務です。
輸出業務
- 商品代金の受け取り
- 輸送費の見積
- ブッキング
- 必要書類の用意(インボイス、原産地証明書など)
- 税関対応(輸出通関)
- 通関業者、フォワーダーとの調整
- 書類の送付
輸入業務
- 商品代金の支払い
- 必要書類の取得
- 他法令のチェック(輸入規制)
- 税関対応(輸入通関)
- 通関業者、フォワーダーとの調整
- 客先との納期調整
- 輸入貨物の在庫管理など
輸出業務(海上輸送)の流れ(船積手配)
以下、2つの流れで説明します。
- 輸出×FCL
- 輸出×LCL
1.輸出×FCL(コンテナ)
- 必要書類の用意
- 見積を依頼する。
- ブッキングする
- 貨物を梱包する(バンニングする)
- コンテナ搬入表を記載する。
- 輸出通関、搬入
- 許可後、本船に積み込み
1.必要書類を用意(船積書類の準備)
- インボイス
- パッキングリスト
- 船荷証券(B/L)
- 保険証券(I/P)
- 原産地証明書(C/O)
- 船積指図書(S/I)
インボイス |
|
パッキングリスト |
|
船荷証券 |
|
保険証券 |
|
原産地証明書 |
|
2.見積を依頼する。
貨物の輸送価格は、フォワーダー等で見積もり依頼をして確かめます。最近は、DIGISHIP(中国特化輸送サービス)などを使うと、オンライン上ですぐに見積もり価格がわかります。なお、フォワーダーに見積もりを依頼する場合は、インボイスやパッキングリストの他、船積み地等、見積もりに必要な情報を用意した方が良いです。
3.ブッキング
フォワーダーへのブッキングは、船積指図書(S/I)を使います。必要事項を記入の上、フォワーダー等に送信します。なお、最近は、この指図書の代わりに、全てオンライン上で手配するのが主流です。
4.コンテナピック、貨物の梱包、バンニング
コンテナ単位(FCL)の場合は、空のコンテナを港から引き取り、自社の倉庫等に移動。そこでバンニング(コンテナ詰め)をすることが多いです。
- 港から空のコンテナが到着する。(コンテナピック)
- バンニングの前に輸出申告をする。
- コンテナに詰める。
- 実入りのコンテナをCY(港)に移動する
又は、自社ではバンニングをせず、港にいる海貨業者等に依頼することもあります。その場合は、上記の手順とは変わります。なお、輸出申告、船のブッキング、空コンテナの手配等は、全て通関業者/フォワーダーが行ってくれます。また、このコンテナ移動で使われるのがドレーです。
すべての作業が終わったら、コンテナにシールをして、コンテナ貨物搬入表を記載します。
空バンピック いつから?
CYオープン日は、本船到着日の10日前後(土日祝日含む)からです。なお、リーファーコンテナや特殊コンテナは、カット日当日にしか搬入はできないです。どうしてもピックアップ日を早めたい場合は、ドレー会社やフォワーダーなどに相談をしましょう!
5.コンテナ搬入票(CLP)は誰が記載する?
バンニングが終わったら、コンテナ搬入票(CLP)の記載をします。コンテナ搬入票は、各社から出ています。なお、CLPの作成者は原則、輸出者です。
しかし、通関業者がサービスで作成していることも多いです。記載内容は一文字一句間違えないようにします。何等かの間違いによる損失は、書類の記載者(荷主)が責任を負います。
6.通関通関、搬入
輸出通関には、船積書類に加えて、次の書類を用意します。
- コマーシャルインボイス
- パッキングリスト
- シッピングインストラクション
- 委任状
- イラスト(写真)
- 他法令の確認書類(必要な場合)
港(CY)に貨物が到着すると、場合によっては税関検査が行われます。
- 税関検査(必要な場合)
- 許可後、本船に積載する
7.許可後、本船に積み込み
無事に輸出許可をできたら、実入りコンテナは、ようやく本船に積載されます。積載後、B/Lが発行されます。これを輸入者に送付して完了です。
2.輸出×LCL(混載貨物)
4以外は、同じです。LCL貨物は、貨物を積める場所が違います。ブッキングした先のフォワーダーから、貨物の搬入場所(CFS)を指定されます。荷主は、この場所に自社トラックや路線便、あるいは宅配便で貨物を送ります。その後、バンニングは、保税倉庫内で行われます。
搬入場所に到着した貨物は、ケースマーク等の確認が行われます。書類と貨物内容の一致が確認出来たら、搬入は完了です。
なお、指定日までに届けないと「本船のカット日」に間に合わず、船積みができないため注意しましょう!もし、輸出品が他法令対象の物である場合は、事前に入念な下調べが必要です。
バンニング後、搬入されて税関に輸出申告。輸出許可を取得します。LCLは他の荷主の貨物と合積みになるため、同様の許可取得を荷主分だけ行います。コンテナ1本分の輸出許可の取得が終わったら、ようやく貨物は、本船に積載されます。
倉庫への搬入→ブッキングナンバーが重要
倉庫への配送は、一般の宅配等でも可能です。配送手段に関わらず、伝票には、輸出者名とブッキングナンバーを記載します。保税倉庫では、入庫検量がされるため、パッキングリストと違いが出ている場合は、差し替えを求められます。
搬入方法は自由です。但し、配送業者によっては、時間の関係上、港湾倉庫への入庫を断ることも多いです。一度、配送業者さんに確認をしましょう!
貨物外装へのケースマークは必須
貨物の外装梱包には、必ずシッピングマーク(ケースマーク)を付けます。これにより、書類と実物の照合が簡単にできます。ケースマークの目的は、他の荷物と間違われないことにあります。そのため、記載方法等も自由で決まりはないです。
例:2個の段ボールがある場合は、PKG NO.1/2、PKG NO.2/2と複数あることを記載します!
輸出通関のよくある疑問
Q.土日も対応している?
航空輸送の場合は、土日も対応している可能性があります。一方、海上輸送は土日は休みです。
Q.カット日は決まっている?
CY(コンテナ)の場合は、ヤードオープン日以降、カット日までに許可を取得します。一方、CFS(コンテナ未満)の場合は、少なくてもカット日の前々日は入庫が必要です。
Q.自分で輸出通関はできる?
可能です。これを「自社通関」と言います。自社通関をする場合は、フォワーダー等が貨物の輸送滝として指定する「保税倉庫がある地域を管理する税関」に対して申告をします。
Q.輸出通関費用、義務とインコタームズの関係
各インコタームズでは、輸出義務と輸出費用の扱いを規定しています。
例えば、FCA、FOBの場合は、売り手側(輸出者側)に輸出通関の危険負担と費用負担の義務があるとしています。具体的には、次のことを完了するべきと規定しています。
- 輸出許可書の取得
- 輸出に必要な安全確認
- 船積み前検査
- その他、公的許認可
Q.消費税はどうなる?
海外に商品を輸出すると、国内で物品を仕入れたときの消費税を還付してもらえます。
輸入業務(海上輸送)の流れ(受け取り手配)
以下、2つの流れで説明します。
- 輸入×FCL
- 輸入×LCL
本船が仕向け地(輸入港)に近づくとアライバルノーティスが届きます。(基本は荷主に対して)通知を受けとった後の流れは次の通りです。
1.FCL(コンテナ)
- 本船が到着する。
- 本船から貨物が降ろされる
- CYに搬入される。
- 輸入申告&許可
- 許可後、コンテナが配送される。
1.本船が到着する。
輸入港に本船が到着するとアライバルノーティスが届きます。通常、アライバルノーティスが届く前に予備申告をしておくことが多いです。予備申告をすると審査区分が判明します。
- 区分1は簡易審査扱い=申告した瞬間に税関審査が終了
- 区分2は、通常審査扱い=税関職員による書類審査
- 区分3は、検査扱い=税関検査をして実物を確認
2.本船から貨物が降ろされる
ガントリークレーン等により、本船からコンテナが降ろされます。
3.CYに搬入される。
CY(コンテナターミナル)に貨物が格納されます。格納されたら、電子管理システム(ナックス)に搬入したことを登録します。=搬入があがる。 通常、この搬入は、本船到着日(ETA)の翌日です。
4.輸入通関&許可
輸入通関で必要な書類
輸入通関では以下の書類が必要です。書類を揃えた後、通関業務を依頼する業者に転送して予備申告をしてもらいましょう!
アライバル到着後、予備申告をしていた方は「本申告切り替え」を行います。このとき、審査区分が1の方は、即時、輸入許可に至ります。区分3の方は、税関検査の日程を決めます。混雑時期は、税関検査の日程及び税関検査を受ける為の輸送(ショートドレー)が手配できず、納期が大幅にのびる可能性があります。納期には、バッファを用意するべきとの考えは、この理由からです。
輸入税の支払い方法は?
輸入税(関税及び消費税)の支払いは、通関業者に立て替えてもらった後に支払う方法と自社の銀行口座から直接引き落とす仕組みの2つがあります。リアルタイム口座をご覧ください。
5.許可後、コンテナが配送される。
輸入許可後、コンテナはコンテナターミナルから搬出されて各配送先に輸送されます。なお、このピックアップを少しでも早めたい場合は、区分審査1であることを条件として、当日ピックアップをすることもできます。
配送は、コンテナ単位で行われます。(ドレージ)
2.輸入×LCL(混載貨物)
LCLは、上記の流れの内、3番と5番が違います。
- コンテナ船からコンテナが降ろされる。
- CFS(倉庫)にコンテナを移動される。
- CFSでデバンをする
- デバン後、検数、ケースマークチェックなどを行い搬入する。
- 許可後、混載便に載せられて配送される。
FCLの場合よりもCFS倉庫での作業が増える為、納期が遅くなります。
LCLの標準ピックアップ可能日:入港日の翌々日
許可後は、混載便による配送が行われる。
輸入許可後は、混載便よる配送が行われます。混載便で指定できるのは、AM又はPMまでです。時間帯指定は不可です。時間帯指定や混載便で運べない貨物の場合はチャータートラックを使います。
その他、海上輸送に関する疑問
その他、海上輸送でよくある疑問をご紹介します。
海上輸送(所要)の日数の調べ方は?
日本からアメリカまでは何日かかる? 航海日数を調べたいときは「コンテナ輸送関連サイト」が便利です。積み地、揚げ地を指定するだけで、およその日数がわかります。
海上輸送と航空輸送のメリット、デメリットは?
には、次の3つのポイントがあります。
- 輸送品目
- 時間的劣化
- 付加価値
海上輸送×コンテナで運べる物は?
海上輸送コンテナは、大量、重量物、かさばる、危険物を輸送するときに便利です。例えば、以下の商品も海上輸送できます。
スクラップ、自動車、自転車、家具、本、タイヤ、トレーラー、ドローン、ネオジム、バッテリー、蓄電池、アルコール、ボタン電池、精密機器など
海上輸送と危険物輸送の関係は?
は、次の2つの条約を根拠とし、IMO(国際海事機関)が定めるIMDGコードで判断しています。このコードは、非常に細かく分類されており、取り扱い条件や表記方法等も様々です。よって、危険品の輸送を考えている場合は、危険品輸送が得意なフォワーダーを選びましょう。
- 海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS)
- 国際汚染防止条約(MARPOL)で規制
例えば、リチウムイオン電池・SP188(UN3480、3481、3090)、バッテリー、ガソリンエンジン等、磁石、磁性物質、アルコール、アンモニア等です。これらは、輸送途中で爆発する可能性があるため、危険物の指定をし、定められた方法で輸送する義務があります。
トラブル事例と対策(温度・湿度・水濡れなど)は?
海上輸送するときは、自然環境などによるトラブルに見舞われます。コンテナは、温度、塩害、湿度、結露、さび対策、水切り、衝撃、振動から守るため、特殊な防錆加工が施されています。
しかし、実際は、防錆加工をしているにも関わらず、次のトラブルが発生します。特に「水漏れ」の被害はよくあります。
例:洋上のコンテナ内部温度は、70℃近くに達するともいわれている。
- 水濡れ
- 内部温度の上昇
- 外部温度と内部温度差による結露
- 害虫被害
- 作業による貨物ダメージ
- 振動によるダメージ
- 錆
対策商品例(防錆等)
コンテナ輸送時の様々なトラブルを防止するためのアイテムがございます。主に次の物があります。
- 乾燥剤
- 遮熱シート
- 温度計、加速度計
- 揺れ防止パレット
- 錆や結露の対策→「ファインドライ」「防錆フィルム」
例えば、温度管理が必要な貨物を輸送する場合、コンテナ内に「データロガー」を設置します。これは、輸送途上「コンテナ温度を保って輸送したのか?」を確認するために使います。
クーリエから海上輸送に切り替える基準は?
輸送の切り替えは、次の4つのポイントで検討します。
- 価格
- 速度
- 品質
- 手間
もし、重量のみで切り替えを検討する場合は、およそ100kg以上が目安です。100kgを超える場合は、LCL等を含めて他の輸送方法を検討しましょう![/hunade_toggle]
これは少し難しい質問です。輸送路線、その路線の価格と貨物情報(実重量と容積等)を総合的に検討する必要があります。
コンテナ輸送をするときにコンテナを買う必要がありますか?
コンテナは、輸送の予約をすることで、船会社から提供されます。荷主がコンテナを所有するSOCはかなり稀です。基本は、船会社から提供されるコンテナを使います。
普通のコンテナで果物を運べますか?
通常のコンテナは、洋上で70度前後に達します。温度管理が必要な貨物はリーファーコンテナを使います。
オンデッキ、アンダーデッキとは?
オンデッキは、コンテナ船の甲板に載せることです。アンダーは、甲板の中に搭載することです。当然、アンダーデッキの方が人気です。