冷凍えび輸入ガイド
- 冷凍えびは総輸入量約23万トン(2024年)、主供給国はベトナム・インド・インドネシア・タイで全体の7割超を占め、微生物(サルモネラ・腸炎ビブリオ)と残留薬剤(クロラムフェニコール・ニトロフラン類)リスクが高い。
- 高リスク国の違反傾向:ベトナム(クロラムフェニコール・AOZ)、タイ(腸炎ビブリオ)、インド(ニトロフラン類)、インドネシア(複合薬剤+微生物)。
- 輸入前はISO17025認定ラボで全ロット検査、養殖場薬剤履歴・HACCP認証確認、衛生証明書取得を実施。
- 輸送は−18℃以下を維持し温度ロガーで監視、温度逸脱ロットは廃棄、再冷凍禁止。
- 命令検査解除には一定期間の基準適合証明、生産・加工改善報告、輸出国監視強化記録が必要。
冷凍えびは、2025年度の輸入食品監視指導計画で重点品目に指定されました。えびは日本の水産物輸入で大きな割合を占め、国内消費量も高い水準を維持しています。
主なリスク
- 微生物汚染:サルモネラ菌、腸炎ビブリオなど。
- 残留抗菌剤:クロラムフェニコール、ニトロフラン類。
- 特に養殖えびは、飼料や薬剤管理の不備によって違反事例が続発しています。
検査強化の背景
養殖えびの違反が継続していることから、輸入時の検査は年々強化されています。
輸入統計(2024年)
- 輸入量:約23万トン
- 輸入額:約2,000億円
- 主な仕入れ先:ベトナム、インド、インドネシア、タイ(4か国で全体の7割超を占める)
冷凍えびの輸入リスクと発生傾向
冷凍えびには以下のような衛生・品質リスクがあります。
- 微生物汚染:サルモネラ、腸炎ビブリオ など
- 残留動物用医薬品:クロラムフェニコール、ニトロフラン類(AOZ含む) など
過去5年間の違反傾向では、
- ベトナム:クロラムフェニコール、AOZの反復検出
- タイ:腸炎ビブリオ陽性事例が年次で継続
- インド:ニトロフラン類残留基準超過が散見
- インドネシア:複合薬剤残留と微生物汚染が同時検出される事例あり
これらは養殖段階での薬剤管理不足や、加工・保管時の衛生不備が原因となります。
法的基準と違反時の措置
法的根拠は食品衛生法第11条および関連告示に基づきます。
基準不適合品は、
- 廃棄または積戻し
- 加熱加工を行っても国内市場への再流通不可
となります。
冷凍えびの輸入前にできる微生物・残留薬剤対策と検査方法
輸入前対策
- 自主検査:ISO17025認定ラボなどで微生物と残留薬剤の検査を実施し、ロットごとに検査証明を取得します。
- 養殖場管理の確認:飼料や薬剤の使用履歴、HACCP認証の有無を確認します。
- 必要書類の整備:輸出国政府発行の衛生証明書、養殖・加工工程の記録を収集します。
輸送管理
- 冷凍輸送では、常に−18℃以下を維持します。
- 温度記録計で全工程を監視し、温度が逸脱した場合は即時判定します。
- 再冷凍は不可とし、温度異常があったロットは現地または国内で廃棄します。
- 基準に再適合することが確認されるまで出荷は禁止します。
命令検査の概要と解除条件
命令検査の発動条件
- 過去3年以内に同一品目で違反歴がある場合
- 高リスク国からの輸入
- モニタリング検査で基準超過が判明した場合
手順
- 届出 → 検査指示 → サンプリング → 分析 → 結果通知
- 費用は1ロット数万円〜、期間は5〜10営業日が目安。
解除条件
- 一定期間の輸入ロットについて継続的に基準適合を証明
- 生産・加工体制の改善報告を提出
- 輸出国当局による監視強化措置の実施記録
事前準備チェックリスト(冷凍えび輸入版)
- サプライヤーとの契約書に「全ロット事前検査」条項を明記
- 養殖場の薬剤使用履歴と加工工程記録を取得
- マイナス18℃以下での輸送温度管理計画を作成
- 検査証明書・衛生証明書を通関書類と共に保管
実務者向けヒントと品質・納期リスク低減策
- 養殖場や加工場を定期的に訪問し、第三者監査を実施します。
- 出荷前にランダムサンプリング検査を導入します。
- 冷凍コンテナは事前に予冷し、輸送中の温度変動を最小化します。
- ロット番号管理と証明書の紐づけでトレーサビリティを強化します。
- BtoB顧客へ納品する際、検査証明書を同梱して信頼性を可視化します。
まとめ:冷凍えび輸入を安全に行うためのポイント
冷凍えびは微生物汚染や残留薬剤のリスクが高く、2025年度の重点品目として監視が強化されています。輸入前の自主検査、現地での管理体制の確認、輸送時の温度管理、そしてトレーサビリティの徹底が、通関リスクと品質リスクを大幅に減らす鍵です。さらに、命令検査解除条件を理解しておくことで、長期的な取引の安定化に繋がります。