乾燥いちじく監視リスク
- 乾燥いちじくは総アフラトキシン10µg/kg、B1 5µg/kg(国内基準)、推奨LOQは総AF0.5〜1.0、B1 0.2〜0.5µg/kgで地面乾燥や乾燥不足ロットが高リスク。
- 高リスク国:イラン(地面乾燥高値ロット)、トルコ(SO₂処理ムラ・乾燥不足)、スペイン/フランス(小規模事業者品質差)で全ロット検査推奨。
- サンプリングは袋ごと複数点採取で10kg→縮分5kg、中心部と表面を混合し糖結晶除去せず粉砕検査。
- 保管はRH60%以下・10℃以下推奨、輸送は脱湿剤・バリアライナーで結露防止、SO₂処理後は残存量2g/kg以下確認。
- 違反防止にはホットスポット検出、糖結晶判定基準化、SO₂処理均一化と再湿潤防止の監査強化。
乾燥いちじく特有の乾燥・保管工程によるカビ毒発生リスク
一部の産地では、いちじくを樹上で自然乾燥させ、熟した果実が自重で地面に落ちた後、そのまま再乾燥する方法が今も使われています。この方法では、土や空気中のほこりからカビの胞子が付きやすく、アフラトキシン汚染の原因となります。
近年は、棚干しやネットで受ける方法、機械乾燥など、地面に直接触れない製法が増えていますが、従来型の方法では管理が不十分な場合に汚染リスクが残ります。
乾燥後の注意点
乾燥が終わっても、果実内部にわずかな高水分部分(ホットスポット)が残ることがあります。ここではカビ毒が生成されやすくなります。また、果実表面に出る白い糖の結晶は、カビの菌糸と見た目が似ているため、外観検査だけでは間違って判断する恐れがあります。
近年の違反傾向と原因(国別事例・SO₂処理時の注意含む)
- イラン:地面で乾燥させる割合が高い農園で、アフラトキシン濃度の高いロットが散発的に発生しています。
- トルコ:継続的に監視が必要な国です。SO₂(二酸化硫黄)処理のムラや、水分が残ったままの状態によって、内部でカビ汚染が発生した事例があります。
- スペイン/フランス:スポット的な監視対象ですが、小規模事業者のロットでは品質差が大きく見られます。
注意点
雨期に収穫されたロットや乾燥不足のロットでは、アフラトキシンB₁の高濃度検出が特に多く見られます。また、「有機」や「無添加」と表示された製品でも、このリスクは軽減されません。
実務者向けLOQ設定・サンプリング・前処理・供給者監査ポイント
管理目標値(社内推奨 LOQ)
- 総アフラトキシン:0.5–1.0 μg/kg
- AFB₁:0.2–0.5 μg/kg
※ これらは法的基準ではなく、「早期検知」目的の自主管理目標。
主要法定基準(参考)
- 日本:総AF ≤10 μg/kg、AFB₁ ≤5 μg/kg
- EU:総AF ≤4 μg/kg、AFB₁ ≤2 μg/kg
- 米国FDA:AFB₁ ≤20 μg/kg
サンプリング・前処理・検査のポイント
サンプリング方法
1袋につき複数の場所から最低5点を採取します。方法はコア抜きとランダムな粒の採取を組み合わせます。総量10kgの試料を均等に縮分し、最終的に5kgの検体にします(四分法または二分法を使用)。検体は半割りにし、果実の中心部50%と表面50%を混ぜ合わせます。
前処理
糖結晶は取り除かず、そのまま粉砕して均一にします。水洗は測定値が変わるため禁止です。
供給者監査のチェック項目
- 落果率の記録
- 乾燥棚や地面に接触していた時間
- 虫害や裂果の選別基準
- 写真記録の有無
また、落下後はできるだけ早く回収し、衛生的な場所に保管するよう指導します。
SO₂処理の管理
処理濃度や時間を記録し、処理後には水分を再測定します。防湿包装を使用し、相対湿度60%以下で保管を徹底します。さらに、日本基準(乾燥果実のSO₂残存量は2 g/kg以下)を守っているか確認します。
乾燥いちじく輸入で頻発する失敗事例と改善策
糖結晶をカビと誤認し全ロット廃棄
改善策:糖結晶とカビの外観・顕微鏡・簡易試験(KOH処理等)を含む判定基準を事前作成。
サンプリングを1袋1粒のみで実施しホットスポット見逃し
改善策:袋ごとの複数点採取を義務化し、中心部も採取対象に。
SO₂処理ロットでも高値検出
改善策:処理後の内部水分・均一性を確認し、残存SO₂定量検査を実施。
再汚染防止と流通時の管理
- 保管温湿度管理:常温輸送でもRH 60%以下を維持、可能なら低温(10℃以下)推奨。
- 輸送コンテナ内では結露防止のため脱湿剤やバリアライナー活用。
- 加工後も再乾燥や衛生的包装で微生物増殖を防止。
乾燥いちじくの表示ルールと添加物・保存方法の表示義務
- 名称:「乾燥いちじく(原産国名)」
- 加糖の有無で表示変更
- 酸化防止剤(亜硫酸塩)使用時は特定原材料に準ずる表示と残存量確認
- 保存方法:開封後は10℃以下で要冷蔵、再湿潤防止を明記
国別違反傾向・推奨LOQ・サンプリング方法と管理メモ
国・地域 | 近年の違反傾向 | 推奨LOQ(総AF/B1) | 推奨サンプリング | 実務メモ |
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イラン | 高値ロットが散発 | 0.5/0.2 | 10kg→5kg縮分 | 地面乾燥率の高い農園に偏在 |
トルコ | 継続的監視 | 0.5/0.2 | 同左 | SO₂併用時は基準相互影響に注意 |
スペイン/フランス | スポット監視 | 0.5/0.2 | 同左 | 小規模事業者ロットは品質差大 |
入荷時のチェックポイント
- COAの確認:分析項目、LOQ(定量下限)、分析日を確認し、ロットIDが一致していることを必ず確認します。
- 水分測定:規定値以下であることを確認します。
- 温湿度ロガー記録:輸送中の記録に異常がないことを確認します。
- 外観確認:カビや糖結晶の有無を、定められた判定基準に沿って確認します。
- 表示確認:名称、原産国、加工内容、添加物情報が正確かを確認します。
- 違反履歴への対応:過去3か月以内に違反履歴がある産地からのロットは、検査頻度を増やします。
まとめ
乾燥いちじくのカビ毒管理では、加工前後の水分管理と衛生管理、さらに正確な検査体制が重要です。特に、地面乾燥を行う産地や雨期収穫のロットは高リスクのため、より厳しい管理値の設定と頻度の高いサンプリングが必要です。また、糖結晶をカビと誤認するリスクや、SO₂処理後の再汚染といった現場特有の問題も想定し、科学的根拠に基づいた判定や監査を行うことが不可欠です。