ドライフルーツ輸入の現状と品質リスク
- ドライフルーツ輸入はカビ毒(アフラトキシン・オクラトキシンA)、残留農薬、保存料、異物混入、微生物が主要リスク。
- 過去3年違反国例:トルコ(干しイチジクAFB1・二酸化硫黄)、イラン(ピスタチオ混合AF)、中国(レーズン二酸化硫黄・金属片)、米国(クランベリーソルビン酸・石片)、フィリピン(ドライマンゴー保存料・昆虫片)。
- 高リスク品目は水分活性0.6以下管理+ロット別アフラ・オクラトキシン分析証明添付。
- 輸出前にISO17025認定ラボでプレシップメント検査、カビ毒+保存料一括分析(5〜7日、5〜8万円/ロット)。
- ロット番号と検査証明をQRコード化し追跡管理、厚労省違反データを毎年更新し仕入先・監視計画に反映。
ドライフルーツは保存性が高く輸送にも適した食品ですが、輸入時にはカビ毒、残留農薬、保存料、異物混入、寄生虫、微生物などの複合的なリスクがあります。厚生労働省の輸入食品監視指導計画でも重点品目として扱われ、品目や輸出国ごとに違反傾向が異なります。
ドライフルーツ・ナッツ類の主な輸入リスクと違反傾向
ドライフルーツやナッツ製品には、輸入時に注意すべきいくつかの代表的なリスクがあります。
カビ毒(マイコトキシン)
乾燥や保管が不十分だと「カビ毒(マイコトキシン)」が発生します。特にアフラトキシンやオクラトキシンAはよく知られたリスクで、干しイチジク、レーズン、ピーナッツ入り製品などは高リスク品目です。
残留農薬
輸出国で使われた農薬が日本の基準値を超えることがあり、有機リン系、ネオニコチノイド系、殺菌剤などが検出されるケースがあります。これらは輸入時に重点検査の対象になります。
保存料の過剰使用
二酸化硫黄、ソルビン酸、安息香酸などが基準値を超えて含まれている事例が毎年複数確認されています。
異物混入
石、金属片、昆虫片などが、手作業での選別やバルク輸送時に混入することがあります。
生物的リスク(微生物・寄生虫)
大腸菌群やサルモネラ属菌、寄生虫卵の検出例があります。乾燥が不十分な製品で見られることがあり、頻度は低いですがゼロではありません。
過去3年の違反国例:
- トルコ:干しイチジクのアフラトキシンB1超過、二酸化硫黄超過
- イラン:ピスタチオ入りドライミックスでアフラトキシン違反
- 中国:レーズンの二酸化硫黄超過、金属片混入
- アメリカ:クランベリーのソルビン酸超過、石片混入
- フィリピン:ドライマンゴーの保存料超過、昆虫片混入
品質管理とリスク対策
カビ毒対策
乾燥後は水分活性を0.6以下に管理し、高湿度での保管は避けます。出荷前にはロットごとにアフラトキシンB1、総アフラ、オクラトキシンAを分析し、高リスク品目は必ずロット別証明書を添付します。
残留農薬対策
日本のポジティブリスト制度に基づいて基準値を確認します。輸出国での栽培や使用農薬履歴(Pesticide Use Record)を事前に確認し、輸出前に多成分一斉分析(GC-MS/MS、LC-MS/MS)を行います。
保存料の使用管理
二酸化硫黄、ソルビン酸、安息香酸の含有量を輸出国と日本の基準で照合。無添加表示をする場合は検出限界まで分析し、証明書を添付します。
異物混入防止
ふるい、風選、金属探知機、X線検査機を併用し、手選別工程の衛生管理を監査します。包装前には全数外観検査を実施します。
生物的リスク対策
水分量が高い製品は、大腸菌群やサルモネラの検査をロットごとに実施。乾燥に加え、低温殺虫処理や蒸気殺菌を併用します。施設の衛生レベルは定期的に監査します。
表示・規格管理
食品表示法に従い、保存料・漂白剤・添加物を正確に表示。原産国やブレンド比率を明記し、アレルゲン混入の注意喚起も行います。
検査効率化
定期輸入ロットでは事前検査結果を活用し、複数品目同梱時はリスクが最も高い品目を優先して検査します。
輸送環境管理
40ftコンテナに乾燥剤20kg、断熱シート、通風コンテナを併用します。夏季は冷蔵コンテナ利用も検討。温湿度ロガーで輸送中の状態を記録し、逸脱を可視化します。
実務TIPS
- 違反が発生した場合は、まず検疫所に連絡し、その後輸出者に通知します。次に、廃棄・返送・再加工のいずれかの処理判断を行い、最終的に社内報告をします。
- 輸出前には、輸出国のISO17025認定ラボでプレシップメント検査を実施し、その結果証明書を添付します。
- カビ毒と保存料を一括で分析する場合、検査期間は約5〜7日で、費用は1ロットあたり5〜8万円程度です。
- ロット番号と検査証明をQRコード化し、追跡可能な管理体制を整えます。
- 厚生労働省が公表する国別・品目別の違反傾向データを毎年更新し、仕入先の選定や監視計画に反映します。
ドライフルーツ輸入監視の要点まとめ
- ドライフルーツはカビ毒、保存料、異物混入のリスクが高い
- 高リスク品目はロット別検査を必須化
- 厚労省データを活用し、国別・品目別の対策を立案