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模倣品は毎日95件差し止め|中小輸入者が取るべき知財リスク対策 20250905税関発表

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令和7年上半期・知的財産侵害物品の差止状況

2025年9月5日、税関より「令和7年上半期の税関における知的財産侵害物品の差止状況」が発表されましたので、要約と考察をご紹介します。

深刻な輸入差止めの現状

令和7年上半期、税関での知的財産侵害物品の差止めは17,249件・416,531点となり、1日約95件・2,300点のペースで続いています。

件数と点数は前年より減少しましたが、実務者には依然として大きな影響を与える規模です。仕出国の84%を中国が占め、ベトナムや香港も多いため、アジアからの輸入には常に知財リスクがあると考えるべきでしょう。

商標侵害から意匠侵害へのリスク拡大

差止めの9割以上は商標権侵害ですが、意匠権侵害の点数は前年比2.6倍に急増しています。バッグ付属品や衣類アクセサリーなどのデザイン模倣品が増えており、従来の「ロゴやブランド名の無断使用」から「形状やデザインの模倣」へと監視対象が拡大している傾向があります。

OEMや雑貨輸入では意匠調査を定期的に行う必要があります。

郵便物による小口輸入の危険性

輸送形態では差止件数の86%が郵便物でした。越境ECやサンプル輸入、小規模輸入でよく使われる郵便小包が最大のリスク源となっています。小口輸入だから安全という考えは危険で、特にAliExpressや小規模取引先からの直送では模倣品混入の可能性を常に想定すべきです。

健康・安全関連製品の検査強化

バッテリー、浄水器カートリッジ、自動車付属品などの健康・安全に関わる製品の差止めも続いており、電気製品は前年比3割増となりました。模倣品は性能不良や事故につながるリスクが高いため、税関の監視が厳しくなっています。

輸入者はPSE・PSCマークなどの法規制適合証明を確実に準備することが必要です。

実務者が取るべき行動(詳解・すぐできる対策)

貿易実務者が今日から実装できるレベルまで分解していきましょう!

1.仕入先の正規性を確認しよう(偽物混入の防止)

偽ブランドやデザイン模倣品の混入を防ぐため、仕入先から以下の書類をPDFで取得します。会社登記証明書と税登録証明書で基本的な正規性を確認し、ブランド品を扱う場合は権利者からの販売許諾書、OEM製品なら製造許諾書が必要です。さらに製品のオリジナル性を証明するため、設計図・意匠登録番号・初回販売日を示す資料も求めます。

受領した書類と実際の製品名・型番・ロゴ表示が一致するかをパッケージ写真で確認し、取引前には「国名+社名+scam/偽物/complaint」でインターネット検索を行い、反社や評判をチェックします。これらのやり取り一式は「/IPチェック/仕入先名/日付_版」のフォルダで保存し、見積や発注前の時点で証拠を残すことが重要です。

口頭で「正規です」と言われただけで発注したり、写真と現物でロゴ位置が異なるのに見過ごしたりするような失敗は避けなければなりません。

2.商標・意匠の事前確認(権利衝突の早期発見)

商標だけでなくデザイン権の衝突も早期に発見するため、輸入前に権利関係を確認します。商標についてはJ-PlatPatで商品名やロゴを検索し、該当ブランドの権利者と区分を調べます。意匠についてはJ-PlatPatの意匠検索に加えて、Google画像検索やGoogle Lensを使用して酷似品がないかを確認しましょう。

特にバッグ付属品や衣類付属品などの部材・アクセサリー類は権利衝突が多発しているため、意匠登録の有無を重点的にチェックする必要があります。検索に使用したキーワード、検索日、結果URLのスクリーンショットは「検索ログ」として保存し、証拠を残します。

ロゴがない無地の製品だから安全という思い込みは危険です。近年は形状やデザインによる侵害事例が増加しているため、外観の類似性についても十分な注意が必要です。

3.郵便小包・小口輸送の回避

差止件数の大部分を占める郵便物リスクを下げるため、サンプルでも宅配便を優先し、インボイスには製品名・素材・型番・ブランドの有無を明記します。受取人は必ず自社名に統一し、越境ECでの直送は避けます。やむを得ず郵便を使う場合は、商品写真と仕様書を事前に共有して税関照会にすぐに対応できるようにします。

サンプル依頼書テンプレートを自社様式で作成し、内容物と非侵害の表明を記載させて証拠を残します。CN22/23に「gift/sample」とだけ書いて、ブランド名や内容物の具体性がないと疑義で止められる失敗例があります。

4.規制品の法令適合(安全規制との二重違反回避)

知財侵害と安全規制の二重違反を避けるため、電気製品ではPSEの適合確認、リチウム電池や内蔵品ではUN38.3試験報告と輸送申告書・SDSを入手します。無線機能がある場合電波法の技適相当の適合を確認します。

  • 浄水器カートリッジなどは、食品衛生法の材質適合
  • 自動車部品では純正品や適合品の根拠となる品番クロスや適合表を添付

試験報告書・適合証明・ラベル図面一式を製品ごとにまとめて保管します。市場で普通に売られているからOKと考えて検査書類を用意しない失敗は避けるべきです。

5.契約条項(損害の支払先を明確化)

差止め・回収・損害の支払先を契約で固定するため、以下の条項を含めます。

  • 売主による知的財産権の非侵害表明と保証
  • 侵害主張に起因する全ての損害賠償(保管・廃棄・再輸送・逸失利益含む)
  • 侵害疑義期間中の対価留保権
  • 権利者証明書等の提出義務
  • 侵害確定時の売主費用負担による回収・交換を規定します。

契約・発注書・仕様書・写真は同一フォルダで管理し、改訂履歴を残します。見積・発注メールだけで合意し、補償条項がないために費用が全て自社負担となる失敗を避けるべきです。

6.仕入〜通関〜販売の工程管理(週次タイムライン)

抜け漏れを防ぐため、工程別に管理します。

  • 出荷30〜14日前にKYC・権利確認・規制該当性判定を実施
  • 13〜7日前に契約締結と試験成績書の確認
  • 6〜1日前にインボイス・パッケージ写真・HSコード・表示事項を確定します。
  • 出荷時はクーリエを優先し、到着後1〜7日で照会があれば当日回答

必要に応じて48時間以内に輸入留保・返送を決定します。販売前はロット・シリアル管理と法令ラベルの最終確認を行います。チェックリストを案件フォルダの先頭に配置し、出荷後の書類不足による足止めを防ぎます。

7.差止発生時の緊急対応(48時間以内)

損害拡大を防ぐため迅速に対応します。

  • 税関照会の案件番号・担当者・連絡先を記録し、通関業者と当日中に方針決定します。
  • ブランド許諾・意匠権者承諾・試験報告等を1つのPDFにまとめて提出
  • EC在庫の公開を一時停止します。
  • 契約の補償条項に基づく正式請求予告を仕入先に送付し、証明が弱い場合は早期に返送・廃棄に切り替えて保管料を最小化します。
  • 提出資料・通話記録・判断メモは「Incident_YYYYMMDD」で保管します。

8.社内体制・教育・継続監視

属人化を避け再発防止の工夫をします。

  • IPチェック・規制確認・契約の担当者を明確化
  • IPチェック実施率・差止件数・照会応答時間・補償回収率を月次KPIで管理
  • 四半期ごとに差止事例を振り返り、仕入先のリスク格付けを更新
  • 財務省・税関の公表を月次でウォッチし、NGブランド・NG品目リストを運用して対象案件は役員承認制とします。
  • KPIダッシュボードをスプレッドシートで管理し、更新ログを残して古い基準での仕入れ再開を防ぎます。

まとめ

今回のポイントは….

  1. KYCと権利確認を“書類化”する
  2. 郵便小包を基本回避する
  3. 規制品は知財+安全規制を二重で確認
  4. 契約で損害の行先を決める
  5. 工程SOPと48時間プランで遅れを潰

の5点です。今日からテンプレとチェックリストを整備し、案件ごとに証拠を残す運用へ切り替えましょう。 今回の財務省統計から、模倣品取締りは依然として高水準であること、そして「小口輸送」「意匠侵害」「安全関連製品」が新たな焦点であることが明らかになりました。輸入実務に携わる方は、調達・通関・契約のすべての段階で知財リスクを織り込み、具体的な防御策を取ることが不可欠です。

第1回|輸入ビジネスで注意すべき「商標権」の基礎|正規品でもNGになる理由とは?

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