ごまの種子監視リスク
- ごまは油分が多く酸化しやすく、高温多湿下でアフラトキシンB1やオクラトキシンA汚染のリスクが高い。
- 一部産地では有機リン系・ネオニコチノイド系農薬残留が基準超過する事例がある。
- 日本・EUの総アフラ基準は4 μg/kg、米国は20 μg/kgで、日本・EU基準採用が安全。
- 推奨管理基準は総AF 0.5–1.0 μg/kg、水分7%以下、保管15〜20℃・湿度50%以下、窒素充填推奨。
- 違反防止には輸出前検査、港湾保管短縮、防湿性包装、ロット追跡管理が必須。
ごま特有の酸化・カビ毒・残留農薬リスクと保管条件の影響
ごまの種子は油分が多く、長期保管中に酸化しやすい特性があります。高温多湿環境ではAspergillus属カビが繁殖し、アフラトキシン汚染のリスクが高まります。また、一部産地では栽培期間中に残留農薬(有機リン系、ネオニコチノイド系)が使用され、基準超過となる事例があります。外観上の変化が少ないため、ロット管理と試験検査が重要です。
主なリスク概要
酸化:油脂の酸化は高温、酸素、光で加速し、酸敗臭や栄養価低下を引き起こします。酸化度の指標として酸価(AV)や過酸化物価(POV)の測定が有効です。
カビ毒(マイコトキシン):高温多湿下では Aspergillus 属カビが発生し、強い発がん性を持つアフラトキシンB1などを生成します。近年は一部地域でオクラトキシンAが検出された事例も報告されており、単一項目だけではなく広範なカビ毒検査が必要です。
残留農薬:一部の生産国では有機リン系、ネオニコチノイド系農薬利用が続き、輸入時に基準を超えるケースがあります。
国別違反傾向と原因
- インド:雨季収穫ロットで水分残存が多く、乾燥不十分によるアフラトキシン汚染が続発。
- ナイジェリア:港湾や倉庫での湿度上昇がカビ毒の発生要因。
- エチオピア:農薬残留の基準超過事例が散見され、輸出前検査強化が必須。
国際的基準比較
- 日本:アフラトキシンB1は2 μg/kg、総アフラトキシンは4 μg/kg以下。
- EU:B1で2 μg/kg、総アフラトキシンで4 μg/kgと日本と同等だが、オクラトキシンAの基準(10 μg/kg)が規定されている。
- 米国(FDA):総アフラトキシン20 μg/kg未満と緩やか。
→ 厳格市場向け輸出ではEU・日本レベルを採用するのが安全。
実務者向け推奨管理基準
- 総アフラトキシン:0.5–1.0 μg/kg
- アフラトキシンB1:0.2–0.5 μg/kg
- 水分:7%以下
- 水分活性(aw):0.60以下
- 保管温湿度:15〜20℃、湿度50%以下
- 酸化防止:低温倉庫+窒素置換または酸素吸収剤利用
- 参考防止:受入時に酸価(AV)・過酸化物価(POV)測定
サンプリングと分析のポイント
- ロット全量から均等採取し混和後に粉砕、10kg以上を5kgまで縮分
- アフラトキシンと同時にオクラトキシンA、残留農薬多項目分析を推奨
- 高リスク季節(雨季後)は検査頻度を倍増
受入・法令対応手順
- 輸出前に現地ラボでカビ毒+農薬スクリーニング
- 到着時に酸価・過酸化物価分析で酸化を確認
- 違反時はロット隔離、追加分析、返送または廃棄
- 仕入先へ是正要求(CAPA)と手順改善をフィードバック
保管・輸送管理
- 防湿性の高い袋(アルミラミネート等)+乾燥剤(40ft=20kg目安)
- 温度:15〜20℃、相対湿度50%以下
- 床直置き禁止、壁から5〜10cm離す
- 港湾保管は最短化
農薬管理
- 輸出国の使用履歴確認
- 輸出前検査で輸入国基準適合を確認
- 高リスク国では農薬スクリーニング拡張
改善事例
- 保管湿度対策:港湾保管を短縮、防湿袋+乾燥剤利用でカビ毒ゼロ化
- 農薬管理:高リスク国では輸出前検査を複数ロット実施し不合格ロットを事前排除
- 酸化防止:長期保管用に窒素充填パッケージを標準化し風味保持期間を延長
事前検査パッケージ例
- 輸出前:総AF/B1+農薬スクリーニング(5〜7日、5〜8万円/ロット)
- 到着時受入:総AF/B1+AV/POV(2〜4日)
- 定期モニタ:雨季後は頻度倍増
違反時対応フロー
- 検疫所通知受領
- ロット隔離・流通停止
- 再分析(別ラボ含む)
- 是正処置決定(返送・廃棄・再加工)
- 仕入先への是正要求(CAPA回収)
- 社内手順見直し・監査
ごま輸入で頻発する失敗事例と改善策
- 失敗事例1:港湾保管中に湿度が上がりAF汚染。→ 改善策:港湾保管期間を短縮、防湿対策を強化。
- 失敗事例2:残留農薬検出で出荷停止。→ 改善策:輸出前に複数ロット検査を行い、基準超過リスクを事前に排除。
- 失敗事例3:長期保管で酸化臭が発生。→ 改善策:低温倉庫保管と窒素充填包装を導入。
ごまの表示ルールとアレルゲン・酸化防止剤表示の注意
- 名称:「ごま」または加工品名(いりごま、すりごま等)
- 原材料名:単一品名で明記
- アレルゲン表示:「ごま」必須
- 酸化防止剤使用時は用途名併記
国別違反傾向・推奨LOQ・サンプリング方法と管理メモ
国・地域 | 近年の違反傾向 | 推奨LOQ(総AF/B1) | 推奨サンプリング | 実務メモ |
---|---|---|---|---|
インド | 雨季収穫ロット高リスク | 0.5/0.2 | 全層均等採取 | 乾燥不十分ロットは再乾燥必須 |
ナイジェリア | 保管湿度上昇でAF検出 | 0.5/0.2 | 同左 | 防湿性包装と低温保管を推奨 |
エチオピア | 残留農薬検出事例 | 0.5/0.2 | 同左 | 輸出前に農薬残留検査を徹底 |
ロット追跡の推奨手順
- ロットIDと分析証明をQRコードで紐付け
- 保存サンプルを2年以上保管
- 同ロット分割輸入時は検査結果の流用条件を契約で明記
まとめ
ごまの安全管理は、油脂の酸化、複数種のカビ毒、残留農薬という多面的リスクを同時に抑制する必要があります。各国の規制差を理解し、より厳しい国際基準に合わせた自主規格を設定することで、輸入後の違反防止と品質維持が可能になります。特に港湾や倉庫など「流通途中の環境」がリスク発生の大きな要因であるため、輸出から販売までの全行程を可視化・管理することが鍵です。