韓国からの輸入食品とページの目的
- 韓国からの輸入食品は水産品と発酵食品が中心で、かきの三点セット管理と低温連鎖維持が合否の鍵。
- 海藻はヒ素・カドミウム・ヨウ素の濃縮倍率と表示単位を事前設定し、原藻と最終品で一貫運用。
- キムチはpH・温度・塩分の三点記録とCIP/プレオペで品質安定化、必要に応じ加熱表示を追加。
- 魚介類はヒスタミン・酸化対策として加工時間短縮と二段階検査を実施し、中心温度ログを保持。
- 健康食品は輸入可否を事前相談で確定し、国内表示ルールに適合したラベルを作成。
韓国から日本へ輸入される食品は、水産品と発酵食品が大半を占めます。代表的な衛生リスクとして、生食用かきや二枚貝のノロウイルスや貝毒、海藻類の重金属やヨウ素、キムチに含まれる微生物リスク、魚介類のヒスタミンなどが挙げられます。これらは輸入時の重要な管理ポイントです。
このページでは、韓国特有のリスク背景や制度を踏まえつつ、製品と製造環境の二層監視体制、表示基準への適合方法、必要な書類の管理手順までを、現場ですぐに活用できる形でまとめています。
韓国固有のポイント(2025年版)
生食用かき・二枚貝
- 主なリスク:ノロウイルス、腸炎ビブリオ、貝毒(麻痺性PSP・下痢性DSP)。一部では記憶喪失性貝毒(ASP)も監視対象になる場合があります。
- 管理の要点:韓国の採取海域での浄化・検査体制、日本向け輸出証明書(海域証明)、浄化槽運転記録、ロットごとの最終検査結果をひも付け。異常潮位や赤潮発生時には追加サンプリングを実施。
海藻(のり、わかめ、昆布)・海藻加工品
- 主なリスク:ヒ素(無機・有機)、カドミウム、ヨウ素。過剰摂取による甲状腺機能への影響については消費者庁が注意喚起。
- 管理の要点:原藻と最終製品での濃縮倍率を把握し、乾物ベースでの濃度換算根拠を保持。重金属は分析時に無機・有機形態を区別。ヨウ素は表示義務はないが、任意表示で摂取目安を添えることも検討。
キムチ・ナムル等の発酵・惣菜
- 主なリスク:一般生菌数、大腸菌群、黄色ブドウ球菌に加え、Listeria monocytogenesや寄生虫(Cyclospora、Cryptosporidium)といったリスク事例も国際的に報告されています。
- 管理の要点:仕込み段階の塩分濃度、乳酸発酵によるpH変化、CIP(洗浄)やプレオペ(作業前点検)記録を日次で管理。輸送は摂氏5度以下を温度ロガーで証明し、低温途絶を防ぐ。必要に応じ「加熱してお召し上がりください」表示も付ける。
魚介(サバ・マグロ類・イカ等)・乾製品
- 主なリスク:ヒスタミン生成、微生物汚染、酸化(過酸化物価の上昇)。
- 管理の要点:解凍から加工、包装までの作業時間を短縮し、中心温度記録を残す。ヒスタミンは迅速検査と確定試験の二段構えでチェック。乾製品の場合は酸化測定や水分活性の管理を継続。
健康食品
- 主なリスク:医薬的成分の混入、不適切な効能表示。
- 管理の要点:韓国の健康機能食品制度と日本の機能性表示食品制度は基準や表示規制が異なるため、輸入可否を事前相談で判定。ラベルは国内法(食品表示法、健康増進法、薬機法等)に沿って作り直す。
実務TIPS(輸出前〜輸入後まで)
かきの管理(3点セット)
- 海域証明、浄化槽運転記録、出荷直前のノロウイルス/指標菌陰性結果を同一ロットに紐づける。
- 採取→浄化→積込→通関→納入までの時間経過を図にして保存する。
貝毒管理
- 海域モニタリング結果と製品検査を併用。
- 異常潮位や赤潮情報が出た週は追加サンプリングを実施。
海藻の重金属・ヨウ素管理
- 加工段階ごとの濃縮倍率算定表を作成し、測定ユニットを統一。
- ヒ素は無機・有機に分けて報告できる分析法が有利。
キムチの品質安定化
- 仕込み時の塩分、乳酸発酵によるpHプロファイル、CIP(洗浄)・プレオペ(作業前点検)記録を日報で可視化。
- 輸送は5℃以下を温度ロガーで証明。必要に応じて「加熱してお召し上がりください」表示を検討。
ヒスタミン管理(サバ・マグロ等)
- 解凍から加工までの滞留時間を短縮。
- 中心温度記録を保持し、迅速検査キットと確認試験の二段階で検査。
- 乾製品は水分活性の管理も実施。
健康食品の仕分け
- 輸入前相談で輸入適否を確定。
- 国内基準に適合したラベルを事前に作成しておく。
日本語表示ラベルの注意点
- 名称:用途を含めて明記(例:「生食用かき」、「発酵食品」)
- 原材料名:配合比順に列記し、添加物は用途名+物質名
- 原産国名:最終加工国に基づき判断
- アレルゲン:コンタミや共通ラインの使用について根拠を保持
- 栄養成分:発酵等で変動する場合は代表値の設定根拠を添付
- 有機表示:韓国の有機認証は日本の有機JASと同一でないため、再認証または適合確認が必要
品目別比較表(推奨LOQ・サンプリング・国別実務メモ)
推奨LOQは国内基準の1/5〜1/10の安全マージンを運用目安とし、試験法バリデーションで確定
品目 | 主リスク | 推奨LOQの考え方 | サンプリング実務 | 国別実務メモ |
---|---|---|---|---|
生食用かき・二枚貝 | ノロ、腸炎ビブリオ、貝毒 | 微生物25g陰性目安、貝毒は公定法相当でサブppm/ppb級 | 複数個体混合+出荷直前採取 | 海域証明+浄化槽運転記録+最終陰性をロット紐付け |
のり・わかめ・昆布 | 重金属、ヨウ素 | 無機/有機ヒ素分別、乾物ベースでLOQ設定 | 原藻/最終品両方から採取 | 濃縮倍率と表示単位を事前決定 |
キムチ・惣菜 | 一般生菌、大腸菌群、ブドウ球菌 | 微生物n=5/25g陰性目安 | 仕込み終点と最終製品を二点採取 | pH×温度×塩分管理票でトレース |
サバ・マグロ・イカ等 | ヒスタミン、微生物 | 迅速キット閾値<確認試験LOQで二段 | 解凍〜詰めの時間層で採取 | 中心温度ログと水分活性を管理 |
乾製品 | 酸化、微生物 | 過酸化物価の定期測定 | ロット時間層で抽出 | 乾燥条件と包装材記録を保存 |
健康食品 | 成分・表示 | 食品扱い可否確認が前提 | 国内版・輸出国版ラベルを用意 | 機能性表示の取扱方針を事前決定 |
サンプリング設計(現場テンプレ)
- ロット定義(採取海域/浄化日/製造ライン)を明文化
- 多点・層化採取(入数、層、時間で分散)
- 混合試料+留置サンプルを標準化
- 開封動画・封緘写真でトレース担保
- 試験書にロットID、製造指図番号、船名・B/Lを記載
現場実務メモ(韓国)
海域証明の管理
- 韓国の自治体や生産者団体が発行する衛生証明書は形式が複数存在。英訳版のテンプレートを事前に用意し、日本側からの照会に即時提出できるようにする。
低温物流の検証
- 港→内陸→倉庫の輸送過程で温度逸脱が起こりやすいポイントを、過去の温度ロガーデータで特定。
- 温度管理の閾値を設定し、逸脱時にアラートが出る仕組みを構築。
海藻の洗浄水管理
洗浄水の水質基準と更新頻度を標準作業手順書(SOP)に明記し、重金属混入を防止。
監査同席準備
日本側監査に備え、CIP(洗浄)、プレオペ(作業前点検)、環境拭取り記録を英語で提示できる体制を整備。
添付すべき書類チェックリスト
- 海域証明、浄化槽運転記録、出荷前の陰性証明(ノロウイルスなど)
- 海藻の重金属・ヨウ素分析証明(試験方法、検出下限、回収率、不確かさを含む)
- キムチのpH・塩分記録、衛生管理記録、輸送温度ログ
- 魚介類の中心温度ログ、ヒスタミン検査結果
- 日本語表示案(原産国、配合比、アレルゲン根拠、注意表示)
【日本国外】食品の輸入通関違反事例を確認
出典:添付CSV REFUSAL_ENTRY_2024–Jul2025.csv(ISO_CNTRY_CODE=KR 抽出)/ 食品キーワードで抽出後に品目分類。
- 韓国の拒否件数(全品目):898件
- うち食品該当:90件(安全性関連コードを含むもの:39件)
米国における韓国食品の安全性違反事例(2024年7月〜2025年7月)
品目(例) | 件数 | 主な安全性リスク・違反内容 |
---|---|---|
魚類(例:養殖かき/シーフードチャウダー・スープ/一般魚介/乳児向け魚介製品/※ペット用魚介加工品も含む) | 5 | 病原菌検出(リステリア、ビブリオ)、禁止成分、温度管理不備 |
食肉(例:ULTRASOUND, SKIN PERMEATION=非食品の可能性) | 3 | 残留抗菌剤・禁止薬物(※分類上の混入が疑われるため要原票確認) |
ナッツ類(例:豚耳ペット用おやつ/ナッツ不使用のハードキャンディ=実質ナッツ原料でない) | 2 | カビ毒(アフラトキシン)想定領域だが、今回レコードは非食品・菓子系が中心 |
野菜(例:エシャロット(タマネギ類)/葉茎野菜の乾燥・ペースト) | 2 | 不衛生条件(細菌汚染リスク) |
香辛料(例:香辛料・香料・食塩(その他)) | 1 | サルモネラ汚染+必須表示欠落 |
食用油(例:精製オリーブオイル/※一部は化粧品用途のオイルが混在) | 3 | 酸化・品質劣化 |
果物(例:フルーツ飲料ベース/ぶどう飲料ベース/乳児向けトマト/カボチャ製品/カボチャ) | 5 | 残留農薬・不衛生条件の複合 |
食品輸入の実務者向けコメント
米国FDAの輸入拒否データ(2024年7月〜2025年7月)から見ると、韓国食品では魚介類・加工魚介製品における微生物汚染(リステリア、ビブリオなど)や温度管理不備、果物や野菜の残留農薬・不衛生条件、さらにオリーブオイル等の酸化劣化が目立ちます。
この傾向は日本向け輸入でも十分に関連性があります。なぜなら、リステリアやヒスタミンといった病原菌・化学的リスクは国境を越えて発生し得るものであり、輸出国側の製造・保管・輸送管理の質が直接影響するからです。
特に注意すべき点は以下の通りです。
- 冷蔵・冷凍品(魚介・肉類)の温度逸脱防止
- 輸送経路ごとの温度ロガー記録を必ず取得し、ロットごとに証拠として保管。
- 残留農薬・カビ毒検査の事前実施
- 果物、ナッツ類はISO17025認定機関の試験成績書を添付。
- 酸化・劣化対策
- 食用油や乾製品は酸化度(過酸化物価等)測定を輸出前に行い、基準適合を確認。
- 微生物検査の頻度と範囲の見直し
- 加工魚介や香辛料はサルモネラ・大腸菌群・一般生菌数を複合的に監視。
出典情報:FDA Import Refusals(添付CSV:REFUSAL_ENTRY_2024–Jul2025
欧州における韓国食品の輸入違反事例
件数概要
- 総違反件数:14件
- 食品カテゴリー該当:14件(全件食品関連)
- 期間:2024/7/14~2025/7/14
主なカテゴリーと件数
- ノンアルコール飲料:3件
- 調理済み食品・スナック:3件
- スープ・ソース・調味料:3件
- 果物・野菜:2件
- その他混合食品:2件
主な違反理由(上位)
- ヨウ素含有量過剰(Iodine high content)
- タウリン過剰(Taurine too high content)
- グルタミン酸ナトリウム過剰(E621 – Monosodium glutamate)
- ミネラルオイル混入(Mineral oil)
- カビ汚染+未承認成分混入(Moulds / unauthorised novel food ingredient)
実務者向けコメント
欧州RASFFデータでは、韓国原産食品の違反は飲料、調理済み食品、ソース・調味料に集中し、特に成分含有量の過剰(ヨウ素、タウリン、グルタミン酸ナトリウム)や異物混入(ミネラルオイル、カビ)が目立ちます。これらは日本向け輸入でも十分起こりうるリスクであり、輸出国側での製造・原材料管理が不可欠です。
日本向け輸入での注意ポイント
- 成分規格の事前確認:ヨウ素やタウリンは、日本の基準・ガイドラインを参照し、輸出前分析で基準適合を確認。
- 製造ライン衛生管理:カビ汚染防止のため、製造環境のCIP(洗浄)と環境モニタリングを実施。
- 異物混入防止:ミネラルオイルや異物混入の可能性がある包装・輸送条件を見直し。
- 添加物使用ルールの比較:グルタミン酸ナトリウムの使用基準や表示義務は国ごとに異なるため、日本基準に合わせたレシピ調整が必要。
出典:RASFF(欧州食品・飼料安全警告システム)通知データ 2025年3月〜7月 抽出(原産国=韓国)
まとめ
- 韓国は水産×発酵が柱。かきの三点セットと低温連鎖の死守が合否を分ける
- 海藻は濃縮倍率と表示単位を事前設定し、原藻と最終品で一貫運用
- キムチはpH×温度×塩分の三点記録とCIP/プレオペで安定化
- 表示は名称・原産国・アレルゲン・栄養の整合を最初に設計。有機・機能性表示は国内ルールに合わせる
※ LOQ値は安全マージンを考慮した推奨値であり法的義務ではありません。