外国から植物を輸入するときは、植物検疫(防疫法)を守る必要があります。植物防疫法は、「輸入する植物ごと」、「植物の部位(種、根、茎など)」「どこの国の物なのか」によって、輸入の可否、必要書類などが設定されています。同じ植物でも「アメリカの物は輸入できけれど、タイの物は輸入できない」ということがあります。
そこで、この記事では、輸入植物に設定されている条件を検索できる「植物輸入条件データベース」をご紹介していきます。
植物輸入条件データベース
植物検疫(防疫法)は、外国の病害虫が日本に侵入するのを防ぐ目的があります。この目的を達成するために、植物ごと、輸入国ごとに条件が設定されています。つまり、基本的には、植物をそのまま輸入はできない。しかし、設定されている条件を満たす物は、輸入を認めるということです。
輸入条件を満たす植物=輸入ができる。この条件を調べるのが植物輸入条件データベース
植物輸入条件データベースを使えば…
- 原産国(禁止国の産品ではないのか?)
- 植物の部位(種や茎)
- 植物名(学名)
などの三つの情報から、日本国内に輸入できるのか?を判断できます。下の画像をご覧ください。こちらは、輸入できない植物のリスト(一部)です。植物防疫法施行規則別表一という表を表示しています。植物を輸入する人は、この表と照らし合わせて輸入の可否を判断します。しかし、実務上は、この表と照らし合わせるのは困難です。そこで、役立つのが「輸入条件データベース」です。
輸入条件データベースとは?
植物の輸入には、様々な条件があります。この条件を簡単に調べられるのが「輸入条件データベース(英語版)」です。輸入条件データベースは、輸入する植物、国、部位などを指定するだけで、輸入する植物が以下のどれに当てはまるのかがわかります。
- 輸入禁止
- 通常の検査後、持ち込み可能
仮に輸入禁止品の場合、輸入の可否を検討するだけ無駄です。その他、「持ち込む~」系の3つのいずれかに該当する物も、通常よりも複雑な輸入となるため、輸入経験が浅いうちに扱うことは避けたいです。このような理由から、まずは「通常の検査後、持ち込み可能」の部分に該当する植物から検討します。
- 輸入禁止
- 通常の検査後、持ち込み可能
- 持ち込む際に輸出国での栽培地検査が必要
- 持ち込む際に輸出国での検疫措置が必要な物
- 持ち込む際に国内での隔離栽培が必要な物
輸入条件データベースを使うときの5つの注意点
輸入条件データベースは、植物の輸入を検討する中で、とても役立ちます。しかし、このような便利なツールも完ぺきではないことを覚えておく必要があります。具体的には、以下の5つのポイントが利用する上での注意点です。
- すべての植物を網羅していない。
- データベース上の植物名が和名や学名と異なっている場合がある。
- 代表種のみの表示になっていることもある。
- 主に植物防疫法の観点から輸入ができることを示すのみ。
- 国内の病害虫の発生状況によっては、条件が変更される場合もある。
1.すべての植物を網羅していない。
輸入条件データベースに記録されている植物は、キノコ類、藻類、地衣類、コケ類などは含まれていません。
2.データベース上の植物名が和名や学名と異なっている場合がある。
データベースで植物を検索するときに一般的な名称を入力すると、該当しない可能性があります。この場合、その植物の和名または学名を入力します。
例えば、リンゴであれば、学名は「Malus pumila」です。このような植物の学名を調べるときは、グーグルなどで「りんご 学名」と検索してください。
3.代表種のみの表示になっていることもある。
園芸用の植物など「亜種(一つの種の中をより細かく分類しているもの」がある植物は、その代表種のみが表示されていることがあります。
4.主に植物防疫法の観点から輸入ができることを示す。
植物輸入データベースに表示されている植物は「植物防疫法上、輸入可能かどうか」を示しているだけです。もし、輸入する植物がその他の法令に関係するのであれば、関係する法律も守ることが求められます。これを「他法令の確認」と言います。
例えば、植物の中には、部位によって「薬効成分」があります。「植物の果実の部分であれば、植物防疫法上、問題がない。しかし、茎の部分には薬効成分がある」 このような植物を輸入するときは、植物防疫法と薬機法(薬を規制する法律)の2つを守らなければいけません。データベースで表示される「輸入可能」とは「植物防疫法上、輸入できるのか?」を示した物であり、他の法令を含めて輸入できることをしめしていないため、注意が必要です。
5.国内の病害虫の発生状況によっては、条件が変更される場合もある。
通常は、輸入が許可されている植物であっても、国内の害虫の発生状況によっては、制限をかけられていることがあります。輸入データベースで基本的な規制内容を示しておき、国内状況によって、適宜、調整されています。
植物のデータベースを使うときは、上記5つのポイントを意識しましょう! それでは、実際のデータベースの使い方を説明していきます。
植物輸入データベースの操作方法
「輸入条件に関するデータベース」にアクセスします。1番または2番のどちらかに情報を入力すれば、検索できます。「その国の物は、どんな植物が規制されているのか?」など全体的に知りたいときは1番です。「その国の〇〇という植物について知りたい!」ときは、1番を入力した後、2番の植物名の部分に情報を入力します。
1番の操作画面です。州の部分をクリックすると、下に「世界の地域」が表示されます。ここで表示される地域を選択すると、下の「国または地域」の表示内容が連動して変わります。
世界を「アジアや中東、欧州」などと区分けしています。
上アジアにすると、アジア地域に該当する国がずらっと表示されます。下の画像で言うと「香港」を指定しています。赤丸には、現在対象となっている地域に含まれる所が表示されます。
こちらの画面が輸入元を「香港」と指定した後、植物は無指定状態の画面です。この設定で現れる検索結果は…
下の画像の通りです。検索結果は、香港から輸入される植物の全般情報です。(植物を指定していないため)1番の「PDFダウンロードボタン」を押せば、下の検索結果をPDFでダウンロードできます。2番は、検索の条件にしている内容。3番は、検索結果です。
3番の検索結果の部分をクリックすると、画面が下に展開します。この一覧の中に輸入予定の植物が含まれていないかなどを確認します。
1番のダウンロードボタンを押すと、ダウンロードできるPDFファイルです。
次に国名の指定に加えて「植物」を指定してみます。植物名の部分には、一般的な植物名、学名、和名などを入力します。もし、該当しないという表示がでたら、この植物名の部分を切り替えてみましょう。次に「どの部位を輸入するのか?」を指定します。果実であれば「生果実」、豆系であれば「殻がないのか、あるのか」などを指定します。
植物を指定した後の検索結果が以下の画像です。アサガオだけでもたくさんあることがわかりますね。
上の画像の「この植物で検索」というリンクを押すと、以下の画面が表示されます。アサガオは、通常の検査を受ければ持ち込み可能な植物でることがわかります。
以上が植物輸入に関するデータベースの使い方です。
関連記事:輸入できないときのリスクを考えていますか?積戻しと滅却処分
まとめ
海外の植物は、日本へ輸入するときに規制を受けます。この規制には、いくつかの種類があります。完全に輸入禁止の物、通常検査後に輸入できるものなど、輸入する国、植物、部位などによって、細かく決められています。植物を輸入するときは、これら日本側の輸入条件を把握する必要があります。この把握に最も役立つのが「植物の輸入条件データベース」です。
植物輸入データベースは、輸入国名、植物名などを入力するだけで「それが日本へ持ち込みできる植物なのか?」を簡単に調べることができます。海外から植物の輸入ビジネスをするときは、具体的な検討に入る前に必ず「データベース」で確認されることをお勧めします。
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