慈善・救援物資と関税免除をめぐる審査事例

救援物資を輸入したにもかかわらず、関税免除を受けられなかった事例を紹介します。貿易実務者が注意すべき手続きの落とし穴と対策を解説します。
事例の資料:関税等不服審査会関税答申120号
事案の背景と経緯
ある会社は2020年4月に救援物資を輸入しました。本来なら「慈善・救じゅつ寄贈免税」を申請すれば関税が免除されるはずでしたが、輸入時に必要な免税申告をせず、通常の関税を納めました。
その後、会社は「救援物資だから免税対象だ」として更正の請求を行いましたが、税関は「輸入時に免税申告をしなかったため対象外」として却下。会社は不服として審査請求を行いました。
審査会の判断と結論
- 免税を受けるには、輸入申告時に免税希望を明示し、寄贈証明や使用目的など必要な書類を提出することが要件。
- 会社はこれを行わず、通常課税を「自ら選択した」と評価される。
- 後から救援物資であることを理由に更正を求めても認められない。

結論:審査請求は棄却。税関の判断は適法とされた。
実務者が学ぶべきポイント
- 免税は事前申告が必須:輸入時に免税を希望し、必要書類を提出しなければならない。
- 選択ミスは救済されにくい:納期や緊急性を理由に通常申告を選んでも、後からの救済は難しい。
- 租税法律主義の徹底:免税・軽減は特例扱いであり、要件を満たさなければ適用されない。
- 緊急時でも手続き必要:災害・感染症などの非常時でも、免税を受けるなら輸入時に正しく申告すること。
法令要件の整理表
要件 | 必要な行為 | 本件での判断 |
---|---|---|
免税適用の意思表示 | 輸入時の申告書に免税希望を記載 | 行っていない |
必要書類の提出 | 寄贈証明・使用目的証明など | 提出なし |
輸入時点での適用 | 関税法・関税定率法の特例規定 | 不適用 |
類似事例との比較
- 災害時の免税適用事例:輸入時に適正な書類提出があれば免税認定されたケースがある。
- 後日請求の却下事例:輸入後に免税申告を試みたが認められなかった例は多数存在。
本件は「輸入時の手続き」がどれほど重要かを改めて示している。
実務チェックリスト
- 救援・慈善物資を輸入する際、事前に免税要件を確認している?
- 免税を受ける意思を申告書に記載している?
- 寄贈証明や使用目的証明など必要書類を揃えている?
- 緊急輸入時でも事務担当と連携し、免税手続を同時に進めているか?
実務へ活かす
緊急時のオペレーション設計
パンデミックや災害時には輸入のスピードが優先されがちですが、免税申告を省くと後から修正できません。貿易会社は緊急対応マニュアルに「救援物資輸入時の免税申告フロー」を組み込む必要があります。
社内体制の弱点
本件のように申告を誤った背景には、輸入担当者と総務・経理部門の連携不足の可能性があります。免税申告に必要な寄贈証明などは輸入実務担当だけでは揃えられないため連携が必要です。
税関との事前相談の活用
特例の適用が迷われるケースでは、輸入前に税関へ事前相談することで誤りを避けられます。特に「救援物資」にあたるか不明な物品は、必ず事前に確認を取るべきです。

税関の関税監査官に相談しましょう!
国際的信用の問題
救援物資輸入で関税を誤って納めた場合、コスト面だけでなく「支援活動の透明性」にも影響します。寄贈先団体や海外の供給者からの信頼を損ねないためにも、免税手続きは重要です。
実務への予防策
典型的なNGシナリオ:
「救援物資を急いで輸入 → 通常申告で関税納付 → 後から免税を求めるが却下」
予防策:
- 緊急輸入の際も免税申告を忘れない体制を構築する。
- 書類の定型フォーマットを事前に準備しておく。
- 関税免除の要件を社内マニュアル化し、担当者に周知する。
- 税関との事前相談をルーチン化する。
まとめ
この事案から学べるのは、救援物資などであっても「輸入時に免税手続きをしていなければ免除は受けられない」という点です。貿易実務者は、通常時も緊急時も関税免除の手続き条件を正しく理解し、社内体制や事前相談を含めて準備することが必要です。
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